食料自給率向上を目指すには?農政の現状と課題

国内で消費された食料のうち、国産の占める割合のことを「食料自給率」と言います。
テレビやSNSでよく聞く言葉であり、なんとなく知っていると言う方も多いのではないでしょうか?

農林水産省では2021年に日本の食料自給率は「38%」となっており、2018年から少しづつではあるが上昇傾向にあります。
しかし依然として62%は海外輸入に頼っているということになります。
本記事では、食料自給率向上の方法について、農業政策の現状と課題について詳しく解説していきます。

日本の食料自給率はなぜ低いのか?

まずは「日本の食料自給率がなぜ低いのか?」原因について理解しておく必要があります。

食料需要の増加と食糧生産の減少

日本の人口減少や食生活の多様化に伴い、食料需要が増加している一方で、農業生産が減少しているため、自給率が低下しています。
特に戦後まもない頃はお米を主食として食べていましたが、ヨーロッパなどの食文化が浸透しており、日本人がお米以外の主食(パンや麺)などを習慣的に食べていることが原因と言われています。

農業生産の高コスト化と労働力不足

日本の農業は生産性が低く、生産コストが高いことが懸念されています。
また、農業労働者の高齢化や後継者不足も影響しており、生産量の低下につながっています。

農業政策の複雑性と不十分な支援

農業政策が複雑であり、農家への十分な支援が不足していることも、要因の一つです。
農家の経営支援や農業技術の普及が必要です。

自然災害のリスク

日本は自然災害が多く、農作物の生産に影響を与えることがあります。
台風や豪雨、地震などの災害による農作物の被害が自給率低下の要因となっています。
自然災害は止めることのできない問題であり、自然災害による被害を0にすることはできません。

輸入食品の依存度の増加

日本は食品の輸入に依存しており、輸入食品の割合が増加しています。
特に輸入品の方が安価であるため、消費者からするとスパーや市場などで国産を購入する人が減っています。
国産の売上が悪いと、農家の売上は必然的に減っていくので悪循環に陥っています。

これらの要因が複合的に影響し、日本の食料自給率が低い状況が続いています。

食料自給率が低いと国にどんな影響を及ぼすのか?

日本の食料自給率が低いことはそもそもいけないことなのか?と思う方もいるかと思いますので、食料自給率低下で国にどのような影響を与えるのか?解説します。

食料自給率が低いと、国内での食品供給が不安定になり、外部からの食品輸入に依存することになります。国際情勢の変化や輸送インフラの問題などにより、食品の供給が途絶える可能性があり、食品安全保障の脆弱性が高まります。

また、国内の農業生産が減少し、農業・農村地域の経済的な衰退が懸念されます。
農業関連の雇用の減少や農村地域の過疎化が進み、農業文化や地域の持続可能性が損なわれる可能性があります。
食料自給率が低いということは輸入に頼っているということです。
食品の輸入に頼ることで、外貨を使っての輸入支出が増加し、国の経済に負担をかけることがあります。また、食品価格の変動により、国内の消費者や企業の経済的負担が増加する可能性があります。

また国内で生産される食品の種類や量が減少する可能性があり、食文化や食の多様性が喪失する恐れがあります。

これらの影響を考えると、食料自給率の低下は国の安全保障、経済、環境、社会的な側面において様々な課題を引き起こす可能性があるため、食料自給率の向上が重要とされています。

農政の取り組みと効果

農政の取り組みによって食料自給率の向上を狙うことができます。
ここからは具体的な取り組み内容に関して紹介します。

①農業生産性の向上
農業生産性の向上は、食料自給率を高めるために不可欠です。
農業生産性を向上させるためには、農業技術の改良、農業機械の導入、農業労働力の教育・訓練、農業用地の整備などが必要です。

②農業の多面的機能の強化
農業は、食料生産だけではなく、環境保全や地域活性化など様々な多面的機能を持っています。
農政の取り組みによって、これらの多面的機能を強化し、農業の持続可能性を高めることができます。

③農業者の所得増加の支援
農業者の所得を増やすことは、農業の生産性向上や地域経済の発展にもつながります。
農政の取り組みによって、農業者の所得増加を支援することができます。

④農業の多様化と加工・流通の拡充
農業の多様化や、加工・流通の拡充によって、新しい需要を創出し、農業の収益性を高めることができます。
農政の取り組みによって、農業の多様化や加工・流通の拡充を支援することができます。

これらの取り組みによって、食料自給率の向上が図られ、食糧安全保障が強化されます。しかし、農業は自然に左右されることが多く、気象条件や天候の影響を受けやすいため、農政の取り組みが確実に向上を期待できるわけではありません。

食料自給率向上のための課題

食料自給率の向上には様々な課題をクリアする必要があります。

1つ目は人口減少に伴う農業労働力不足です。
日本を含め、先進国では人口減少が進んでおり、農業労働力不足が深刻化しています。
高齢化が進んでいる農業地域では、後継者不足や労働力不足が問題となっています。
このような状況下では、農業生産性の向上や自動化技術の導入などが求められます。

次に耕作放棄地の増加です。耕作放棄地とは、農地の所有者が放置し、耕作しなくなった土地のことです。耕作放棄地は農地の生産性低下や環境問題の原因となることがあります。
耕作放棄地の増加を防止し、耕作されるようにすることが必要です。

3つ目は気象条件や天候の影響です。農業は気象条件や天候の影響を受けやすく、異常気象や災害が発生すると収穫量や品質が低下することがあります。
気象条件や天候の影響を受けにくい施設栽培や、防災・減災対策の強化などが必要とされています。

最後に農業の担い手の確保です。
農業の担い手である農業者の高齢化や、若者の農業離れが進んでいます。
農業の持続可能性を確保するためには、若者の農業への就農促進や、農業者の所得増加などが必要です。

これらの課題に対して、政府や地方自治体、農業関連団体などが取り組んでいます。また、消費者側も、地産地消や食の安全に関心を持つことで、食料自給率の向上に貢献することができます。

農業生産性の向上と技術革新の必要性

農業の生産性を高めることと技術革新は、食糧自給率の向上や持続可能な農業を実現するために欠かせない要素となっています。
農業生産性を高めることと技術革新がなぜ必要なのかについて説明します。

①労働力不足の解消

高齢化によって、農業労働力が不足している現状があります。このような状況で、労働力を削減することなく農作業を行うためには、自動化技術の導入や効率的な農業生産システムの構築が必要です。

②農産物の品質向上

農産物の品質を高めるためには、適切な栽培方法や施肥管理、病害虫対策などが必要です。また、情報技術や農業機械の進歩によって、品質管理が向上し、より高品質な農産物を生産することが可能になります。

③生産量の増加

農業生産性を向上させるためには、単位面積あたりの生産量を増やすことが重要です。適切な種子選択、施肥管理、農薬散布の効率化、機械化による効率的な作業などが必要です。

④環境保全

農業による環境破壊や地球温暖化を防ぐためには、環境に配慮した農業技術の開発や、省エネルギー型の農業システムの導入が必要です。

以上のように、農業生産性を高めることと技術革新は、労働力不足の解消や品質向上、生産量の増加、環境保全など多岐にわたる課題解決に必要不可欠です。
技術革新によって、より高い生産性を持つ農業が実現され、良質な食生活や地域経済の発展につながると考えられます。

食料自給率向上のための新たな取り組みと展望

最後に食料自給率向上の新たな取り組みと展望を解説します。
これからの食料自給率向上のための取り組みでありますので、ぜひ参考にしてみて下さい。

スマート農業の推進

スマート農業は、IoT、ビッグデータ、AI、自動化技術などを活用して、より効率的かつ持続可能な農業を実現する取り組みです。
スマート農業によって、生産性の向上、コスト削減、品質管理の改善などが期待できます。

食品ロス削減

食品ロスは、生産、流通、消費の過程で発生する食品の廃棄や損失のことで、食料自給率の向上に大きな障害となっています。
食品ロスの削減に向けた取り組みとしては、生産者と消費者のマッチング、販売期限の延長、リサイクル、寄付などが挙げられます。

地域資源の活用

地域資源を活用した農産物の生産・加工・販売によって、地域の食料自給率の向上が期待されます。
地産地消や農山漁村の振興によって、地域の経済発展とともに、地域特産品の価値向上や地域の文化の継承にもつながります。

持続可能な農業の推進

持続可能な農業は、環境に配慮し、地域の文化や風土を尊重しながら、高品質な農産物を生産する取り組みです。化学肥料や農薬の過剰な使用を避け、地力の回復を図る有機農業や自然農法、輪作などが代表的な手法として挙げられます。

これらの取り組みによって、食料自給率の向上や持続可能な農業の実現に向けた展望が広がっています。

まとめ

本記事では食料自給率向上にあたり様々な視点で解説しました。

食料自給率は先進国の中でも低いと言われている日本ですが、これからは輸入に頼らず自国で生産したものを消費するような働きが必要になってきます。
また国民一人一人の少しの行動で変えることもできます。

例えば、スーパーでお肉を買うときに外国産ではなく、国産を購入することで向上を目指すことができます。ぜひ本記事を読んで1人でも多くの方の意識を変えていけると幸いです。

また、リンク先の「みんなで農家さん」では、農業が好きな方、農家を志す人、農業従事者の方へ役立つ最新情報やコラム、体験談などを幅広い切り口でお届けしています。
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最後までご覧いただきありがとうございました。

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