様々な害を防げ!”IPM”で変わる未来の農業のかたち

農業での環境保全に向けて色々な政策が行われているのはご存知でしょうか。

環境保全の中には農薬の使用による土壌汚染の対策や害虫、地球温暖化問題など様々なものがあります。

近年の傾向として消費者も環境保全の意識が高まり肥料や農薬の使用に関心をもつ人が増加している傾向があります。

これに伴い日本でもIPM(総合的病害虫管理)について色々な取り組みがされています。

現在も農薬はかなり厳しい基準を設けた中から基準をクリアした物しか農薬の登録は行うことはできません。

しかし、基準をクリアした農薬であっても国民(消費者)の環境問題や食の安全に対する関心が高まり、国民から支持される食料供給の実現のためには今まで以上に環境保全に対する取り組みを行っていかなくてはいけなくなってきました。

この記事では農林水産省が国民から支持される食料供給の実現のために行っているIPM(総合的病害虫管理)について簡単にまとめて紹介いたします。

農作物を栽培している農家の人にとっても必要な知識であるとともに、消費者としても農作物が安全に栽培されているのかを知るために必要な知識になります。

ぜひ最後まで一読してください。

IPM(総合的病害虫管理)とは

そもそもIPM(総合的病害虫管理)とはなんなのかですが、Integrated Pest Management”の頭文字を取ったものです。

日本語訳としては、「総合防除」とか、「総合的有害生物管理」が使われています。

結局のところ何?って感じだと思います。

IPMは農作物に対して有害な害虫や雑草を色々な技術を用いて防除することをいい、この色々な技術には農薬も含まれていますが、農薬以外の技術の導入や人や環境へのリスクを最小限に抑えることを意味しています。

このIPMを導入することの目的は具体的にどんな経緯があったのでしょうか。

IPMの導入の経緯

日本の農薬は厳しい基準が設けられているため農薬として登録されている物を適切に使用すれば、人や食の安全だけではなく環境にも悪影響を与える物はないとされています。

しかし、平成17年に『食料・農業・農村基本計画』において、「環境保全を重視した施策の展開」を図ることが 改革に当たっての基本的視点として位置づけられました。

これによってどうなったかというと農業生産によって使用されている農薬は人口化合物であり、多くの食用品に使用することを考えれば必要最低限に使用を抑える取り組みが必要だとされるようになりました。

これは今まで国や農家が環境保全や食に対する安全について考えていたものが、消費者も環境保全や食に対する意識が高まり健康を意識するようになったことから農作物の栽培に対しての意識が強まったことがIPM導入の経緯と言えます。

そのため、IPM(総合的病害虫管理)では人と環境に対する負荷を最小限にするとともに消費者に支持される食料供給を実現していくことを目的としています。

メリット

IPMのメリットは農業者にも消費者にも双方にメリットがあります。

それぞれにとってのメリットとしてどんなものがあるでしょうか。

まず、農業者のメリットを見てみましょう。

IPMを導入することで第一に消費者に安全で信頼される農作物を安定して生産を確保することができます。

これはIPMの導入では病害虫、雑草の発生状況によって最適て最小限の防除手段を用いることからも農作物に対して必要以上な負荷をかけていないことからも食に対する安全を確保しているから消費者からの視点を考えた際には信頼できる証拠となります。

次に消費者側のメリットはなんなのでしょうか。

IPMの導入と実践によって農薬の使用履歴や栽培管理状況を記録することになるため消費者はこの情報を知ることができるようになります。

特に健康意識が高まりつつある中でも農薬や栽培管理がどのようにされているのかを消費者自ら確認することができるのは非常にメリットがあります。

農業者でも自身の農作物がきちんと管理されていることの証明にもなるので消費者と農業者にとって農作物の管理を誠実に行っていることを確認できる証明手段となります。

このようにIPMの導入実践は双方にとって証明となるため安心を持つことができます。

基本的な実践方法

IPMの実践方法としては3段階に分かれています。

1.予防的措置

2.判断

3.防除

基本的にはこの3段階の流れで行うことになります。

具体的にはどんな内容になるのでしょうか。

1.予防的措置

病害虫に対しての抵抗性を持つ品種を使用することや、環境本来持ち合わせている機能を活用して病害虫と雑草の発生しにくい環境を整えることを第一に行うこと

2.判断

病害虫と雑草の発生状況を把握して、防除をの必要性を適切に判断すること

3.防除

2の結果、防除が必要と判断された場合には、病害虫・雑草の発生を経済的な被害が生じるレベル以下に抑制する多様な防除手段の中から、適切な手段を選択して防除を行う。

IPM実践指標

IPMを実践的に取り組む中で指標とういものがあります。

このIPM実践指標とは、IPMを実践する上で必要な農作業の工程と各工程における具体的な取り組み内容を示すことをいいます。

これは農業者自身がIPMに関する取組の程度を容易に把握するためのものであり、都道府県が地域の実情に応じて選定した作物ごとに策定するものです。

この指標を用いることで農業者は前年度と比較して取り組みが今年度の取り組みがどうだったかを評価することができ、次年度の目標設定を行うことができる指標になります。

これによって毎年IPMに対する取り組みがステップアップしていくことが可能となるため、実践指標の導入はIPMの取り組みの道標になるとされています。

IPM実践指標活用

IPMの実践的な導入に向けて日本ではまず初めの指標として各都道府県の水稲を対象としたIPM実践指標が策定されています。

水稲を最小の実践指標のモデルとして策定したのは日本における代表的な農作物であるためです。

今後この水稲を参考に色々な農作物にたしてのIPMの実践指標を展開していく予定としているが水稲においても各都道府県の独自のIPMの実践指標の導入を積極的に取り組んでいくことが望ましいとされています。

IPM推進に向けた取り組み

IPMを推進していくためにはまず農業者に理解して協力してもらう必要性があります。

国としては、IPM実践指標の策定を行いましたが、これが本当に使用できるものなのかを実証する必要性があります。

そのためIPM実践農業者とIPM実践モデル地域を設定して適用地域におけるIPM実践指標が活用できるのかをチェックリストを元に指導して取り組んでいる。

1.IPMモデル地域の農業者の実情を正しく把握した上で、IPM実践指標に照らして、当該地域における目標を明確に定める。

2.IPM実践指標に記録した取組結果について評価を行い、翌年度の取組に反映させる。

3.化学農薬、生物農薬等の使用履歴を記録し、いつでも情報提供できる状態とする。

このモデルケースをえて現在では各都道府県ではそれぞれの農作物ごとにおけるIPM実践指標をホームページに掲載してIPMの推進を図っています。

IPM推進に向けた課題

IPMの実践指標は各都道府県地域によって適切なものにしていかなければいけないためそれぞれで新たな技術や実証データを蓄積して随時見直していく必要性があります。

特に新技術の導入については人の健康と環境に対するリスクを最小限にすることはもちろんのことですが、十分な防除効果がないといけません。

また、新技術にありがちな費用が高くなることで農業者に負担をしいるようではIPMを推進していく中でうまくいかないためしっかりと検証と検討をしていく必要性があります。

他にもIPMを推進していくためには病害虫の発生状況の予測と監視が非常に重要であることはお分かりかと思います。

今後、病害虫や雑草の発生状況などを予測するような技術を開発していく必要があるのと農業者自身でも実施可能な簡易な発生量調査手法の研修などを行い病害虫などを発見することができるようにしていかなければいけません。

まとめ

IPM(総合的病害虫管理)では、病害虫や雑草に対して一番効率よく防除することはもちろんのこと人の健康に対するリスクと環境に対しても最低限にしていかなければいけません。

これを実践するための指標としてIPM実践指標がありますが、IPM実践指標は各都道府県によって指標が異なります。

これは各地域の特性によって病害虫や雑草の発生状況が一概に同じではないためそれぞれにあった指標にしなくてはいけません。

そのため、各都道府県はベースとなる指標からそれぞれに合わせた指標を農作物ごとに作成する必要性があります。

また、IPMを推進していくためには農家の協力と理解が必要不可欠なところがあります。

病害虫や雑草の発生状況のデータを取るためには農地で実際にデータを取る必要があります。

他にも農家には病害虫の発生状況を診断できるようになってもらわなくては実践指標ができたとしても防除するまでの判断ができないことになります。

そのため、農家には発生状況の診断ができるようになって頂くことやIPMの実践指標を活用してもらわなくてはいけません。

また、IPMを実施する際には農薬の使用履歴や栽培管理方法なども記録として残しておかなければいけません。

消費者にとっては安全と安心を確認できるようになるわけですが、農家としてはこれまでの作業に加えて行わなければいけないといった点もあります。

しかし、このIPMは日本だけではなく世界的にも取り組まれている内容となっているため日本としても浸透させていく必要があります。

農家にとっては最初は手間に感じることもあると思いますが、農作物の安全と安心を消費者まで確実に届けることを考えればぜひ進んで取り組んで頂ければと思います。

参考、引用元:農林水産省『総合的病害虫・雑草管理(IPM)実践指針』https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/g_ipm/



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