低温障害とは?低温障害が作物に与える影響と対策法

あなたは「低温障害」を知っていますか?

農業に携わっている人は知っている方も多いかもしれませんが、農作物に与える影響を充分に理解している人は少ないかもしれません。

低温障害は農作物に悪影響を与え、しっかり対策をしないと大きな損害を被る可能性もあります。

そこで今回の記事では、低温障害の概要や農作物に与える影響、対策方法などを解説していきます。

農作物の低温障害とは?

気温や地温の低下によって、農作物の生育が抑制される現象を低温障害と呼びます。気温が低いと、農作物の光合成や生長が遅れ、果実や野菜の品質が悪化することがあります。また、霜や凍結などの影響によって、農作物が枯死してしまうこともあります。

気温や地温の低下に伴って生育が抑制されること

低温障害は、気温や地温の低下によって発生します。例えば、霜や凍結は、気温が氷点下に下がることによって引き起こされます。果樹や野菜の場合、春先に急激な気温変化があると、芽や花が凍結してしまい、収穫が大幅に減少することがあります。

また、霜によって枯れた草木が発生すると、その草木が腐敗してアンモニアを発生させ、周囲の土壌のpH値を低下させます。これによって、根に付着した菌類が死滅し、生育が抑制されることがあります。

露地栽培だけでなくハウス栽培でも起こり得る障害

低温障害は、露地栽培だけでなく、ハウス栽培でも起こり得る現象です。ハウス栽培では、霜よりも害が出る低温障害が起こりやすく、特に根腐れや冠水が起こりやすくなります。

ハウス栽培では、栽培環境を制御することができるため、温度や湿度、照明などを調整して、低温障害を防止することができます。しかし、ハウス内で気温が下がりすぎると、設備の故障や電力不足などによって、低温障害が起こることもあります。

低温障害になりやすい農作物となりにくい農作物

低温障害は、農作物によって発生しやすさが異なります。以下では、低温障害になりやすい農作物と、低温障害になりにくい農作物について説明します。

なす、ピーマンなどの夏野菜は低温障害になりやすい

夏野菜の中で、ナスやピーマン、トマト、キュウリ、オクラ、エダマメ、ゴーヤなどは、低温障害になりやすい農作物とされています。これらの野菜は、高温多湿な環境で栽培することが多く、気温が下がりすぎると生育が抑制される傾向があります。特に、霜や凍結が起こると、収穫量が激減することがあります。

低温障害を防ぐためには、ハウス栽培や寒冷地での栽培を避けることが重要です。また、低温期の気温管理や、保温材を使用して地温を上げることなどが有効です。

冬から春に収穫をする作物は低温障害になりにくい

一方、冬から春に収穫をする作物は、低温障害になりにくい傾向があります。イチゴ、ハクサイ、ブロッコリー、キャベツ、ダイコン、ホウレンソウなどは、低温に強く、霜や凍結にも耐性があります。

これらの作物は、冬から春にかけて生育が進むため、気温が下がっても生育が継続しやすい傾向があります。また、ハウス栽培においても、気温管理がしやすく、低温障害になりにくいとされています。

低温障害が引き起こす農作物への影響

農作物に低温障害が発生すると、さまざまな影響が出てきます。ここでは、低温障害が農作物に与える具体的な影響について説明します。

葉の変色

低温障害が発生すると、農作物の葉に変色が現れることがあります。これは、低温によって葉緑素の合成が抑制され、葉の色が変化するためです。また、低温によって細胞内の水分が凍結してしまうことで、葉の細胞壁が破壊され、葉が傷つくこともあります。

葉の萎れ

低温障害が発生すると、農作物の葉に萎れが現れることがあります。これは、低温によって水分が凍結してしまい、細胞内の水分が蒸発してしまうためです。また、低温によって根からの水分吸収が低下することもあります。これによって、葉が水分不足になり、萎れてしまうことがあります。

茎の凍傷

低温障害が発生すると、農作物の茎に凍傷が現れることがあります。これは、低温によって茎内部の水分が凍結してしまい、茎が破壊されるためです。特に、露地栽培の場合、地温が下がることで、根元から凍傷が生じることがあります。

生育の遅れ

低温障害による生育の遅れは、特に野菜の生産者にとって深刻な問題です。低温障害が起こると、植物の生育が抑制され、開花や収穫が遅れることがあります。例えば、トマトの生育には20℃以上の温度が必要ですが、この温度以下では受粉率が低下し、果実の形状や色、糖度に影響が出ます。低温障害により生育が遅れると、収穫期が遅れ、生産者にとって損失につながることがあります。

果実の品質の低下

低温障害によって、果実の品質が低下することがあります。野菜の場合、品質の低下は色合いや糖度、栄養成分の低下に現れます。例えば、トマトは低温にさらされると、色合いが悪くなり、果実の硬度が低下し、糖度が下がることがあります。これによって、商品価値が下がり、収穫量が減ることがあります。同様に、果物でも低温による品質低下が問題となります。果物は成熟期に低温にさらされると、熟度が進まずに品質が低下することがあります。また、低温障害によって果実が痛みやすくなり、傷がつきやすくなることもあります。

枯死

低温障害が植物に与える最も深刻な影響の一つが枯死です。低温が続くと、根や茎、葉などの部位が凍傷を起こし、水分が凍結して細胞が破壊されることがあります。このため、植物の栄養や水分の供給が途絶え、最終的には枯死してしまうことがあります。特に、野菜のような短期間で収穫される作物においては、低温障害による枯死は深刻な問題となります。

露地栽培の低温障害への対策

低温障害による被害を最小限にするためには、農作物に対する対策が必要です。ここでは、露地栽培での低温障害に対する具体的な対策を紹介します。

被覆資材を活用する

露地栽培においては、被覆資材を利用することが有効な手段です。被覆資材を敷くことで、地表面の温度を上げ、農作物の低温障害を軽減することができます。被覆資材には、ポリエチレンフィルム、アグリファブリック、不織布などがあります。ポリエチレンフィルムは光透過性が高く、温室効果があります。一方、アグリファブリックや不織布は透湿性があり、防風効果もあるため、霜害対策にも適しています。被覆資材の敷き方については、作物によって適した方法がありますので、農作物の栽培方法に応じて使用する被覆資材を選択することが重要です。

葉面散布を行う

葉面散布は、葉の表面に液体肥料やアミノ酸液、ホルモン液などを散布する方法です。この方法は、農作物の生育を促進するだけでなく、低温障害から保護する効果もあります。

低温障害からの保護効果は、葉面散布によって農作物の生育を促進し、その結果、植物の免疫力が向上するためです。また、葉面散布によって、葉の表面に液体肥料やアミノ酸液などが付着し、葉の表面温度を上昇させることができます。

マルチングを行う

マルチングとは、土壌表面に有機質のマルチング材を敷き詰めることで、土壌の温度や湿度を調整する方法です。露地栽培で低温障害を防ぐために、マルチング材として麻や稲わら、落ち葉などを使うことが一般的です。

マルチングによって土壌表面の温度を上げることができ、また、土壌表面を覆うことで水分の蒸発を抑えることができます。そのため、霜や凍結などの低温障害から農作物を保護することができます。

水はけを良くする

低温障害から農作物を守るためには、水はけを良くすることが大切です。水はけが悪い場合、水分が溜まって土壌が冷え込みやすくなります。そのため、低温障害の発生率が高くなるとされています。

水はけを良くする方法は、排水溝を掘る、土壌改良剤を使う、畝を作るなどがあります。これらの方法を用いて水はけを良くすることで、露地栽培における低温障害から農作物を守ることができます。

ハウス栽培の低温障害への対策

低温障害による被害を防ぐためには、ハウス栽培でも対策が必要です。ハウス栽培で低温障害に対処するためには、以下のような方法があります。

被覆資材を活用する

ハウス栽培では、外気から遮断することができる被覆資材を使用することで、気温の低下を防ぐことができます。一般的には、ポリエチレンフィルムやポリカーボネート板が使われます。この被覆資材を使用することで、室内の温度を一定に保つことができます。特に寒冷地や冬季には、被覆資材を重ねて使用することで、更に効果的に低温対策を行うことができます。

暖房機を活用する

ハウス栽培においては、暖房機を使用することで、室内の温度を一定に保つことができます。暖房機は、石油ストーブやガスストーブ、電気ストーブなどがあります。また、最近ではバイオマスボイラーを使用して、燃料を再生可能なバイオマスに変えて、環境に配慮した農業を行う取り組みもあります。ただし、暖房機の使用にはコストがかかります。使用する前に、コストとのバランスを考慮する必要があります。

温度のムラを少なくする

ハウス栽培では、暖房機を使用することで温度を上げることができますが、温度が均一でない場合、生育に悪影響を及ぼすことがあります。特に、冬場の夜間には温度が下がりやすく、根や茎が凍傷を受けやすくなります。そのため、ハウス内の温度を均一に保つことが大切です。

温度のムラを少なくするためには、まずハウス内の換気をしっかり行うことが必要です。換気によって空気を循環させることで、温度ムラを軽減することができます。また、ハウス内にファンを設置することで、より効果的な空気循環を促すことができます。

さらに、温度計を設置し、定期的に温度を確認することも大切です。温度が下がりやすい場所を特定し、そこに暖房機を置くなどして、温度ムラを少なくする工夫が必要です。

まとめ

農作物の低温障害は、気温や地温の低下によって引き起こされるもので、露地栽培だけでなくハウス栽培でも起こり得ます。低温障害によって、葉の変色や茎の凍傷、果実の品質の低下、枯死などの被害が発生するため、対策が必要です。

露地栽培においては、被覆資材を活用したり、葉面散布を行ったりすることで、低温障害から農作物を守ることができます。また、ハウス栽培においては、暖房機や温度調整によって温度を上げ、温度ムラを少なくすることが重要です。

農業においては、天候や気温などの自然環境に左右されることが多く、その中での低温障害への対策は欠かせません。適切な対策を行うことで、安定した収穫を目指しましょう。

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