始めに
この記事では、栽培の基礎知識として「養分欠乏」について紹介していきます。この記事を読んでいる人の中には、これから農家を目指している人、農地や農機具など必要な物を揃えて本格的に栽培を始めようと考えている人、自家用として農作物を栽培しているが中々上手く農作物が育たないで悩んでいる人など様々な人がいるのではないかと思います。
これから農家としてお金を稼いでいくには、ただ量を栽培するだけでなく味にもこだわっていく必要があります。味を追究していくためには、日光や朝と夜の寒暖差・降水量といった気候条件も大切ですが、作物を栽培する際に土台となる「土づくり」が必要不可欠です。
土壌環境が悪いと農作物の生育障害が発生してしまいます。その生育障害の1つが今回紹介する「養分欠乏」です。では、早速「養分欠乏」とはどのような症状なのか、どうすれば「養分欠乏」を防ぐことができるのかについて今回はみていきたいと思います。
農作物に関わる病害虫について
人が気候、気温といった環境の変化などで体調を崩すことがあるように、植物も降水量、気温、土壌環境といった環境の変化で病気にかかります。農作物がかかってしまう農業病害には大きく分けると「伝染性障害」と「非伝染性障害」に分けられます。まずは「伝染性障害」と「非伝染性障害」について説明していきましょう。
伝染性障害について
「食物連鎖」という言葉があるように私たちが生活している世界は「食べる・食べられる」の関係で成り立っています。農作物を主な食料として生きている動物・虫がいて、農作物といった植物を食べている草食動物を主食としている肉食動物がいて、その肉食動物や農作物を食べさせていただいているのが私たち人間です。
農作物といった植物は私たち人間だけでなく、多くの動物(虫を含む)の食料にもなっています。自然の中で農作物を栽培していると自然のなかで生活している虫などが栽培中の農作物を食べていまい上手く農作物が育たないなんてことも起こってしまいます。
さらに、基本的に自然の中で成長する農作物は降水量、気温といった環境の変化で病原菌が発生してしまい病気にかかります。こうした病原菌や害虫といった要因により農作物の栽培で影響がでてしまうことを「伝染性障害」といいます。
農家は「伝染性障害」に農作物を感染させないために、葉っぱの様子や果実の様子を観察しながら病気にかかっていないか日々観察すること、病気にかからないように、害虫に食べられてしまわれないように農薬散布などで予防することが必要になってきます。
ここまで伝染性障害について説明していきました。続いて「非伝染性障害」とは何かについて見ていきましょう。
非伝染性障害について
前項で「伝染性障害」とは病害虫によって発生する植物の障害であることを紹介しました。反対に「非伝染性障害」は病害虫といった間接的な要因ではなく、農作物の生育に関する環境条件によって引き起こされる生育障害のことを「非伝染性障害」と言います。
今回紹介する養分欠乏は「非伝染性障害」に分類されます。養分欠乏以外にも「農薬による薬害」や栽培する農作物が必要としない養分が蓄積されることで起こる「過剰障害」も非伝染性障害に含まれます。これらついても後ほど少し紹介していけたらと思います。
では、ここからはタイトルにもあるように「養分欠乏」とはどんな症状なのか、どうすれば防ぐことができるのかについて見ていきましょう。
養分欠乏とは?
ここまで「養分欠乏」について書いてきたことをまとめてみると…
- 作物を栽培する際に土台となる「土づくり」が必要不可欠で土壌環境が悪いと生育障害が発生
- 生育障害の1つが「養分欠乏」
- 「養分欠乏」は非伝染性障害に分類される
では、ここからは具体的に「養分欠乏」とは、どのような症状なのかについて説明していきたいと思います。「養分欠乏」という名前からイメージできる人も多いと思いますが、栽培する農作物に必要な養分が不足すると葉っぱが枯れてしまう、葉の色が黄色くなるといった症状が出始めます。
人も生きていくためには水分を始め、糖質や脂質・タンパク質といった3大栄養素が必要なように農作物にも生長するために必要な養分があります。ここからは農作物を栽培する際に重要な「養分」とはなんなのかについて紹介していきたいと思います。
農作物の生長には欠かせない【肥料の3要素】について
この記事の序盤で、農作物を栽培する際に土台となる「土づくり」は、とても大切であると紹介しましたが、農作物が育ちやすい「土づくり」をするためには農薬を使用し農地を消毒したり、肥料を加えて耕したりといった作業が一般的です。
農地に肥料を加えることが「土づくり」をおこなう上で重要であるということを紹介しましたが、農作物を上手に生長させるために欠かせない3つの養分について紹介していきます。
【肥料の3要素】
- 窒素
- リン酸
- カリウム
上記で紹介した3つの要素が「肥料の3要素」と呼ばれるものです。この3要素以外にも農業をおこなう上で必要な養分はありますが、特に重要なものが、ここで紹介した「窒素」・「リン酸」・「カリウム」です。これらの養分が欠乏することで栽培している農作物に「養分欠乏」の症状が表れてしまう可能性があります。また、欠乏だけでなく養分を多く与えすぎても「過剰障害」で農作物が上手く育たないことがあるので注意が必要です。
ではここからは「窒素」・「リン酸」・「カリウム」が欠乏することでどのような症状が起こるのかについてみていきましょう。
窒素の欠乏(主な農作物:全ての植物)
【症状】・葉っぱの色の変化(淡緑色→黄色) ・葉や茎などの生長が抑制され、生育が衰える(生育障害) etc |
リン酸の欠乏(主な農作物:ほうれん草・トマト・トウモロコシetc)
【症状】・花の数が減る ・開花や結実が悪くなる ・成熟が遅れる ・果実の甘み減少 etc |
カリウムの欠乏(主な農作物:ジャガイモ・トマト・リンゴetc)
【症状】・葉が枯れる(葉の色:緑→黄色→枯れる) ・新芽の生長が衰える ・根が伸びにくくなり、根腐れが起きやすくなる ・果実が大きくならない etc |
【農業病害まとめ】「非伝染性病害」とは。代表的な養分欠乏・過剰の例まとめ。 | 農業メディア│Think and Grow ricci (kaku-ichi.co.jp)
ここまで「窒素」・「リン酸」・「カリウム」の欠乏が起きると、どのような症状が起こるのかについて紹介していきました。具体的にどんな症状が起きるのかを知ると「土づくり」の重要性に改めて気づかされるかもしれません。
ここまで知ると、その他にはどのような養分があって、どんな症状が起こるのか、「養分欠乏」を起こさないためにどのような対策をおこなっていけばいいのか気になってきたのではないでしょうか。
ここからは、肥料の3要素以外にどのような「養分欠乏」があるのか。また「養分欠乏」を防止するためにどのような対策を取ればいいのかについてみていきましょう。
「肥料の3要素」以外の要素とは?
- マンガン(小松菜・春菊・イチゴ・メロンetc)
- 鉄(ラズベリー・なし類etu)
- カルシウム(リンゴ・柑橘類・トマト・レタス・白菜etc)
- ホウ素(リンゴ・ブロッコリー・セロリetc)
上記で紹介した要素が不足しているまたは、多すぎている場合でも「養分欠乏」・「過剰障害」を起こす可能性があります。症状についても「肥料の3要素」で紹介した症状に似ていて、葉っぱの色が変わっていき、悪化すると枯れてしまう症状や新芽や根の生育に悪影響を及ぼしてしまう可能性があります。
ここまでをまとめると、良い農産物を栽培するためには「土づくり」が大切で、土壌環境が悪いと生育障害が起こります。生育障害は「窒素」・「リン酸」・「カリウム」など、良い農作物を栽培するために必要な養分が不足してしまう、もしくは多すぎてしまうことで「養分欠乏」・「過剰障害」が起こり、農作物の味や形が悪くなってしまいます。
では、農産物を栽培しているなかで「養分欠乏」を予防するために、または「養分欠乏」が起こってしまったらどのような対策をすればいいのでしょうか。ここからは、「養分欠乏」の予防と対策についてみていきましょう。
養分欠乏の対策について
ここからは、養分欠乏の対策についてまとめていきます。栽培している作物が養分欠乏になってしまった時の対策方法は意外とシンプルで、不足した養分を補ってあげることが大切です。
窒素が欠乏しているのならば窒素肥料を追肥し、リン酸が欠乏しているならばリン酸を追肥してあげるといった対策が必要です。よりイメージが湧きやすいように具体例を示しながら紹介していきたいと思います。
窒素欠乏の対策
・窒素が含まれている肥料を追肥 【肥料の種類】:硫安(硫酸アンモニウム)・塩安(塩化アンモニウム)・硝安(硝酸アンモニウム)・尿素・石灰窒素etc |
リン酸欠乏の対策
・リン酸が含まれている肥料の追肥 【リン酸が多く含まれる有機肥料】:・骨粉・鶏ふん・米ぬかetc 【リン酸が多く含まれる化学肥料】:・熔リン・過リン酸石灰etc |
カリウム欠乏の対策
・カリウムが含まれている肥料の追肥 【カリウムが多く含まれる有機肥料】:草木灰 【カリウムが多く含まれる化学肥料】:硝酸カリ(硝酸カリウム)・塩化カリ(塩化カリウム)etc |
最後に
ここまで「養分欠乏」に注目して「養分欠乏」とはどのような症状なのか、栽培している農作物が「養分欠乏」になってしまった場合どのような対策をおこなえばいいのかについてまとめてきました。基本的に栄養が不足している土壌には、追加で肥料を与えてあげることが1番の対策です。もし農作物を栽培しているなかで生育障害がでてきたら、生育障害の症状にあう肥料を選び、追加で与えるようにしてみましょう。もちろん肥料の与えすぎも「過剰障害」を引き起こす原因になってしまうので注意が必要です。
今後、農家として働いていくなかで様々な疑問や問題がでてくるかと思います。自然の中でおこなう農業は、いくら農作物が病気にならないように注意していても相手は自然なので、いつどこで病原菌が発生するかはわかりません。やはり経験を積み重ねていくなかで知識を身に付けていく必要があると思います。
ただ、この記事のように農業に関わる知識をインターネットなどを活用して自分で調べることで、様々な農業に関する知識を身に付けるということも今の時代可能です。「みんなで農家さん」では、農業に関する様々な記事を読むことができるだけでなく、実際に農家になって農家として稼ぐための農業を学ぶ事業をおこなっています。少しでも農業について知りたい、農業として働いてみたいけど中々きっかけがつかめないという人は是非1度「みんなで農家さん」のサイトを調べてみてはいかがでしょうか。
【詳しくはコチラ】:みんなで農家さん (minnadenoukasan.life)
【参考】
窒素肥料(N)とは|効果や使い方は?どんな種類がある?人体に有害って本当?|🍀GreenSnap(グリーンスナップ)
リン酸肥料(P)とは|花肥や実肥と呼ばれる効果は?種類と使い方は?|🍀GreenSnap(グリーンスナップ)
カリ肥料(K)とは|根肥と呼ばれるその効果は?種類や使い方は?|🍀GreenSnap(グリーンスナップ)
【農業病害まとめ】「伝染性病害」とは。原因となる微生物や発生要因について | 農業メディア│Think and Grow ricci (kaku-ichi.co.jp)
【農業病害まとめ】「非伝染性病害」とは。代表的な養分欠乏・過剰の例まとめ。 | 農業メディア│Think and Grow ricci (kaku-ichi.co.jp)
作物の生育障害、土壌に着目した原因と対策 | 農業メディア│Think and Grow ricci (kaku-ichi.co.jp)
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