種子消毒とは?その特徴を知ろう

種子消毒はどうやってするの?

そもそも、どんなこと?

そう疑問に思ったことはありませんか?

そんな疑問を持った方たちに、今回は少しでもわかりやすく種子消毒についてお伝えできたらと思います。

種子消毒とは?

種子、種(たね)いも、球根などに潜在する植物病原微生物が原因で発病する種苗の病気の予防手段のことを指します。

播種(はしゅ)後に土中の病原菌で感染するのを防ぐ目的で処置する場合もあり、イネ苗腐(なえぐされ)病や野菜などの苗立枯(なえたちがれ)病の予防のために種子に薬をつけておくのは、このためです。

種子消毒の手段としては、熱による方法と薬による方法があります。

種子消毒の手段

●熱による方法

種子に害がなく有害微生物のみを殺すよう長年の試行錯誤の結果案出されたもので、有効な種子消毒剤がなかった時代には広く実行されましたが、近年は下火となっています。

熱消毒法には次の4つの方法があります。

①温湯浸(おんとうしん)法

サツマイモ黒斑(こくはん)病予防に種いもを47~48℃の湯に40分間浸漬(しんし)する、イネ線虫芯枯(しんがれ)病予防に種もみを57℃の湯で15分間加熱するなどの処置を言います。

②冷水温湯浸法

コムギの種もみを15~20℃の水に5~10時間浸漬後、50℃の湯に2~3分間入れて予熱し、54℃の湯に5分間入れ、取り出して冷水で冷やす処置です。

③風呂湯浸(ふろゆしん)法

入浴後にコムギの場合は46℃、オオムギは43℃に加温して、火を完全に消し、種もみを入れて蓋(ふた)をすこし透かし、翌朝に取り出す処置です。

④太陽熱利用法

オオムギ種もみを水に4~6時間浸して莚(むしろ)に広げ、直射日光を3~6時間照射して加熱する処置のことを言います。

●薬による方法

古くは硫酸銅、ホルマリン、炭酸銅などが使われ、人尿に浸漬した記録もあります。

1937年ころから、種子消毒剤として開発された酢酸フェニル水銀やメトキシエチル塩化水銀が使われ、水溶液へ種子を浸漬したり、これらの化合物をタルクで薄めた粉剤で種子を粉衣(ふんえ)する方法で著しい効果をあげていましたが、毒性問題のため1971年以後は使われていません。

現在は、ジクロン(「スパーゴン」)やチラム(TMTD、「チウラム」など)や、チラムとベノミルの混合剤(「ベンレートT」)が浸漬法や粉衣法で使われ、保菌種子の消毒や発芽直後の土壌病原菌による感染防止に卓効を奏しています。

これらの種子消毒剤(種子殺菌剤)が有効な主要種子感染病としては、イネの馬鹿苗(ばかなえ)病、ごま葉枯(はがれ)病、線虫芯枯病、ムギの斑葉(はんよう)病、腥黒穂(なまぐさくろほ)病、トマトの萎凋(いちょう)病、スイセンの乾腐(かんぷ)病、ウリ類のつる割(われ)病・つる枯(がれ)病、レンゲソウの菌核(きんかく)病、各種の草花や野菜の苗立枯病などが挙げられます。

ベンレート水和剤

こちらは薬による方法でも紹介した種子消毒で使われる薬剤になります。

ベンレート水和剤は、いわゆる「殺菌剤」でカビや病原菌の発生を抑制したり、既に植物体内で発生した病原菌にも作用して治療する効果のある薬剤です。

水和剤なので白い粉末状の剤形で、水に溶かして希釈液を作って散布します。

殺菌剤の種類についてはダコニールの記事で詳しく解説していますが、ベンレート水和剤は「治療殺菌剤」ですので、予防効果だけでなく既に発生してしまったカビの殺菌にも効果があります。

ベンレートは「ベンゾイミダゾール系」の殺菌剤に分類されますが、チオファネートメチルを有効成分とする「トップジンM」も同様にベンゾイミタゾール系殺菌剤に含まれます。

簡単に言うと、植物体内で作用する時にトップジンMもベンレートと同じような活性体に変化して殺菌効果を発揮する為で、いずれも病原菌の有糸分裂(細胞分裂)を阻害して死滅させる作用機序を持ちます。

トップジンMゾルとの違いは?

コーデックスのように、多くの人が種子の殺菌にベンレートを使っていることを考えると、海外や他の園芸家が採取した種子を購入して播種する時に、何度もベンレートを使うのはもしかしたらあまり良くないのかもしれません。

ベンレートとベンレートTの違い

ベンレート水和剤には「GFベンレート水和剤」と「ベンレートT水和剤」の2種類が主にホームセンターなどで見かけることがありますが、主な違いは下記の通りです。

・ベンレートはベノミル50%、ベンレートTはベノミル20%&チウラム20%

・ベンレートの有効期限は4年、ベンレートTは3年

・適用範囲はベンレートの方が広い

一番の違いは、ベンレートTには「チウラム」が含まれているという点です。

厚労省HPを見ると、チウラムはジチオカーバメード系殺菌剤として園芸で用いられるほか、ゴムの弾力を大きくする促進剤として使われているようです。

ゴムの製造で欠かせない添加物のひとつとして挙げられるチウラムは、「ゴムアレルギー」の原因物質のひとつと言われていて日本人の1割弱にアレルギー反応陽性を示すと言われています。

ベンレート水和剤の毒性及び薬害について

ベンレート水和剤は、先に述べたように使用範囲は広く様々な病害に有効ですが、「耐性菌が出やすい」という欠点があります。

使い勝手がいい分頻繁に使用してしまうと、病気の蔓延を招く可能性もあるので使用には注意が必要です。

また、水生動物や無脊椎動物(ミミズなど)に強い毒性を持つので、使用後の薬液の処理には十分注意してください。

また、皮膚や眼への刺激性がある点も忘れてはいけません。

ベンレート水和剤の使い方

ベンレート水和剤は、粉末を水に溶かして希釈液を作り使用します。

水1リットルに対して一包を溶かせば2000倍の液体が出来ます。

浸水時間はだいたい10〜12時間ほどです。

このように使い方はとても簡単です。

ちなみにネットでも売っているうえに、料金も現時点で597円と手が出しやすい価格なので、簡単に試してみることができます。

熱による方法か薬による方法、自分のやりやすい方法で試してみてください。

種子消毒を行う上でのメリットとデメリット

では、次に種子消毒を行う上でのメリットやデメリットについて説明していきます。

メリット

・効果は農薬と同等以上

・環境に優しい

・発芽率は変わらない

・農薬の廃液処理の負担が省ける

デメリット

・専用の機械が必要になる場合がある

・手間がかかる

・お湯を使った消毒の場合気をつけて乾燥させてないとカビが生える可能性がある

こうしてみてみると、熱による消毒の場合、種子消毒が優秀であることがわかります。

無農薬栽培に拘る方や、感染病を予め予防したい方におすすめな手法です。

環境にも人にも優しいので、迷っている方は一度試してみてはいかがでしょうか?

事例【オオムギ黒節病】

また、こちらではオオムギ黒節病に対する種子消毒法の事例が記載されています。

これの背景や狙いとしては、オオムギ黒節病は細 菌による種子伝染性病害であり、本病は多発すると収量や品質の低下を引き起こします。

平成21年には採種圃場において、本病の多発により採種不可能となる事例も発生しました。

種子生産や高品質麦の安定生産のためには防除が重要ですが 、登録農薬はなく有効な防除手段がありませんでした 。

そこで、黒節病に対して種子消毒剤を用いた防除法を確立したようです。 

成果の内容・特徴 としてはおおまかに、このような記載がありました。

・オオムギ黒節病に対して、金属銀水和剤(商品名;シードラック水和剤)による 20倍10分間種子浸漬処理は防除効果が高い

・オオムギ黒節病に対して、金属銀水和剤による種子重量 0.5~1%湿粉衣処理並びに塩基性硫酸銅水和剤(商品名;Zボルドー)による種子重量1%湿粉衣処理は防除効果がある 

・湿粉衣処理は、乾燥種子重量の約3%の水を種子に添加し、適度に湿らせた状態で薬剤を粉衣する方法で、処理後は風乾せずに使用できる。

・既存のコーティング機等を利用して容易に実施できる。

このことによって、オオムギ黒節病に対して、金属銀水和剤による種子浸漬処理及び金属銀水和剤並びに塩基性硫酸銅水和剤による湿粉衣処理は茎立期の発病増加を抑制し、有効であることがわかったようです。

このように、種子消毒で感染予防ができるということが実証されています。

これから先、農薬ではなく環境に優しい方法で予防できるといいですよね。

詳細はこちらのPDFに記載されていますので、ぜひ参照してみてください。

※オオムギ黒節病に対する効果的な種子消毒法

※まとめPDFより

まとめ

種子消毒について、どうやって行うものなのか、どのような予防ができるのか、その特徴についてわかりましたでしょうか?

この記事で少しでも理解が深められたら幸いです。

もし興味を持った方がいましたら、ぜひ挑戦してみてください。

そして「みんなで農家さん」では、農業が好きな方、農家を志す人、農業従事者の方へ役立つ、最新情報やコラム、体験談などをこれからもお届けいたします。

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