【農薬】なぜ除草剤は雑草駆除に有効なのか?

農業を営む上で厄介な存在の一つが「雑草」です。
放置しておけば、農作物自体にも悪影響を及ぼします。

駆除する方法はたくさんありますが、今回は除草剤による駆除を解説します。
ぜひご一読いただいて、農業にお役立てください。

1.雑草対策をしよう

雑草は生育旺盛なため、農作物の生育に悪影響を及ぼすことがあります。

とはいえ、古来から人間の生活に関わってきた植物ともいえます。
例を挙げると、農地によく生えているドクダミやハコベ。
これらは、「薬草」としても親しまれ活用されてきたのです。

畜産のエサとしても活用されます。

当然、雑草は他の植物同様、温度や光などの影響を受けて生育します。
ですが、農地の管理状況にも影響されて育つわけです。
つまりは、雑草の種類や生え方により、

  • そこがどのような土地、環境なのか
  • 行われている農業の形態

これらの特徴がわかると言えます。
つまり、その土地の性質を占う「バロメーター」の役割も担うのです。

とはいえ、放置してしまえば肝心の農作物に悪影響が出ます。
農作物の生育を阻害する場合には、駆除などの対策を考えるべきでしょう。

農作物以上に土の養分や水分を吸収したり、
雑草が生い茂ることで農作物に日が当たらなくなったり…。
さまざまな悪影響も考慮する必要があります。

放置しておけば「厄介な存在」へと変貌するのです。
さらに被害が進めば、病原菌の温床になることもあります。
雑草駆除のための対策を考えていきましょう。


2.除草剤による雑草駆除

雑草駆除の方法はたくさんあります。
まずは除草剤を使った対策について考えてみましょう。

雑草も田畑で育つ作物も植物です。
つまり、生理機能は基本的に同じです。

除草剤使用の際に、注意が必要なのは、
「非選択性除草剤」と呼ばれる除草剤を使ってしまうと、
雑草も作物も区別せずに枯らしてしまうという点です。

その一方で、「選択性除草剤」と呼ばれるものは、雑草と植物を区別します。
これは雑草と植物のわずかな性質の違いを利用しているのです。
(例えば根や葉の形や大きさ、除草剤の植物体内への吸収のされ方など)

「選択性除草剤」については、以下の様な性質があります。

物理的差異を利用した選択性除草剤とは、土壌表層0~1cmに除草剤の層(薬剤処理層)をつくり、種子の小さい雑草の大部分が土壌表面の浅い部分から出芽することを利用して、幼芽などが処理層に触れて枯死させるというものです。

引用元:今月のテーマ: 除草剤①除草剤の選択性

さらに、

  • 作物が除草剤の効果を不活性化させる酵素を持っている
  • 雑草が除草剤の効果を活性化する酵素を持っている

これらのことを利用して、雑草と植物を区別する除草剤もあるのです。

この除草剤の仕組みに対しては、
遺伝子組み換えによって決まった薬剤に耐性を持つようになった作物と
セットで考えると効く仕組みがより理解しやすいでしょう。

除草剤をまくと、その除草剤に耐性をもった作物だけが枯れることなく育ちます。
農作物まで枯らしてしまっては、元も子もありませんね。

除草剤をしようする際には、種類にも気を付けて使いましょう。


3.除草剤の効果とは?

疑問


3-1.除草剤の効果を発揮するには?
除草剤が効果を発揮するために大切なこと。
それは、有効成分が作用させたい部位に到達する必要があるということです。

ですが、注意したいポイントがあります。
植物の構造によって有効成分の到達が阻まれたり、
植物体内の代謝系で分解されたりして、
効果を発揮できないこともあり得るということです。

除草剤を、まいても十分に効果を発揮してくれないのであれば、
意味がありませんよね。

そのため除草剤によっては、しっかり効果が発揮できるよう、
植物の特性に対応した工夫がなされているものもあります。

例を挙げると、葉から吸収される「茎葉処理剤」の場合。
植物表面を覆うクチクラ層は、外側は親油性(水との親和性がない)、
内側は親水性の物質で構成されているのです。

親水性の化合物を用いた薬剤を用いた場合であれば、
クチクラ層の高いバリア機能によって、表面張力が働いてしまいます。

薬液が葉の表面に広がらない、表皮細胞までの浸透が妨げられるなど…。
これでは、十分な効果を発揮することができません。

そこで「茎葉処理剤」には展着剤などの補助剤が活用されています。
補助剤の活用により、薬剤を葉に密着させることができます。
つまり、吸収可能な状態を保持することができます。

葉面散布の場合は、このクチクラ層の特徴を理解することで、
より効果的に薬剤の効果を発揮することができます。

例えば、健全に育った成葉のクチクラ層は最も発達しています。
しかし、若い葉は未発達なのです。

つまり、雑草の発生初期に散布するとより高い効果が期待できます。

「土壌茎葉処理剤(または茎葉土壌処理剤)」は生育期の根から吸収されます。
根は葉と違い、クチクラ層がないため、薬剤が浸透しやすいのです。

「土壌処理剤」は種子や、出芽前〜出芽期にある土壌中の幼植物の表皮から吸収されます。

「土壌処理剤」は水とともに受動的に吸収されますが、
発芽しようとしていない休眠中の種子は給水を行わないため、
水も薬剤成分も吸収されません。


3-2.どのように効果が発揮されるのか?
阻害剤の効果とはどのようなものなのでしょうか?
代表的な効果をまとめましたので参考にしてください。

概要特徴
光合成を阻害する光合成を妨げ、雑草の成長を阻害一年生雑草の土壌処理剤が多い効果が現れるのは遅い
細胞分裂を阻害する細胞分裂やそれにかかわるタンパク質の合成を阻害一年生雑草の土壌処理剤が多い長期間効果が持続する
ホルモンバランスを乱す細胞分裂や伸長促進作用がある植物ホルモン「オーキシン」に類比した化学物質を用いて、ホルモンバランスを乱す広葉雑草の茎葉処理剤が多いゆっくり〜中程度に効果が現れる成長が乱れたり、奇形果が生じたりする
栄養代謝阻害細胞伸長や発芽促進作用がある植物ホルモン「ジベレリン」や分裂組織の代謝を阻害土壌処理・茎葉処理両方に効果あり効果が現れるのは遅い
アミノ酸の合成を阻害する植物の成長に必要なアミノ酸の生合成を阻害広葉雑草によく用いられる土壌処理・茎葉処理両方に効果あり少ない量で効くが、効果が現れるのは遅い


4.その他の雑草対策

農業をする女性

除草剤は雑草対策として便利な道具です。
しかし、過剰な使用による弊害なども生まれています。
除草剤も農薬の一種と言えますので、使い方には注意が必要です。
農薬に関してはこちらの記事も併せてご覧ください。
【農薬】有機栽培でもOK?農薬の正しい知識

他の雑草対策も併用していきましょう。

近年の雑草対策は、生えてきた雑草を根こそぎ取り除くのではなく、
雑草が生えにくい環境に整備していくことに重きをおいています。


4-1.雑草対策の定番!
雑草が生えてくる理由とはなんでしょうか。

〈雑草が生える主な理由〉

  • 水分が豊富である
  • 土壌のpHが低い
  • 土壌に残留した窒素成分が多い
  • 土壌中の微生物が少ない

などが代表的な理由として考えられます。
雑草対策と聞いて、まずイメージするのは、
「草むしり」や「除草剤」などではないでしょうか。

草むしりは、雑草の繁殖を防止するためにも大切な作業です。
雑草に花が咲けば、種ができ…新しい雑草が生えてしまうのです。

雑草を引っこ抜いてしまえば、繁殖を防止することができます。
(しかし、後述しますが近年では根から引っこ抜くのではなく、
根を残して刈り取ることが推奨されています)。

「生えてしまったものを排除する」こと以上に、
大切なのが「雑草の生えにくい環境に整備する」ことと言えます。


4-2.除草シートを活用しよう
除草シートという、雑草対策に便利な道具があります。
植物が生長するのに必要な「太陽光」を遮断。
これによって、雑草を自然に生えなくするシートです。

使い方はとっても簡単です。
雑草が生えてほしくないところにシートを敷くだけ。
コストもシート代くらいで済むのが嬉しいですね。

除草剤は便利ですが、デメリットとしては、
人や土への影響が懸念される点があリます。

安全性が高く手間がかからないのも魅力のひとつです。


4-3.雑草は刈ることが推奨

雑草を駆除する際には、根から引っこ抜くのが定番と思われる人も多いでしょう。

ですが、根には「養分・水分を吸う」役割の他にも、
「土をやわらかくする」という役割があります。

根をぐんぐん張ることで、土を掘り進め、土をやわらかくしているのです。

雑草を根から抜くと、根がなくなったことで土が締まります。
その固くなった土でも育つことのできる雑草が生え、
それを繰り返すうちに草むしりが大変な作業になる…
という悪循環が発生するとも言われているのです。

さらに、根が光合成によって出す糖分。
これは、土の中の微生物のエサとなります。

植物が枯れれば、根自体が微生物のエサとなり、分解され、土の栄養になります。
土の中に残っていた根が分解されると、そこだけ空洞のようになるのです。
これが、土がフカフカになる要因にもなります。


雑草の根は、フカフカな土という物理的条件と、
土壌中の生物多様性を整えるという
生物的条件をもった農作物を育てやすい土に整えてくれるのです。

また土の状態が変われば、
その状態の土を好む微生物や雑草が増殖していきます。

フカフカな土を好む雑草は背も低く、
根の張りが浅いものが多いとも言われています。


4-4.雑草の新たな使い道?

農家にとっては、厄介者である雑草。
実は、新たなビジネスの可能性も見出されているのです。

雑草の中には薬草や家畜のエサ、儀式などに用いられているものもあります。

一般社団法人・一志パラサポート協会の事例です。
ハウスイチジク栽培の厄介者と化していた雑草のスギナ。

これが、「漢方」として使われていることに着目しました。
スギナを乾燥させ、玄米と混合したお茶に加工。
これを「スギナ玄米茶」として商品化し、販売しています。

何事も工夫次第でビジネスチャンスになると言えますね。
他にも可能性が見出せるかもしれませんね!


5.まとめ

今回は「除草剤による雑草対策」を中心に解説しました。
除草剤は確かに便利な道具ですが、基本的な知識を持ち、
正しい使い方をすることが大切です。

元気な農作物を栽培するためにも、雑草の対策は万全に行いましょうね。

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