農業を営んでいる方の中には、ドローンを活用して空撮や農薬散布をされているのではないでしょうか。農業用ドローンは一般のドローンと比べると決して安くはなく、中には200万円以上する高性能ドローンもあります。非常に高価なドローンであるため、なかなか購入には躊躇されるかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、農業用ドローンの利用促進のために、農林水産省が補助金制度を導入しています。今回は、農業用ドローンの補助金についてご紹介していきたいと思います。
担い手確保・経営強化支援事業
こちらの制度は、農産物の輸出に向けた取組など意欲的な取組 による農業経営の発展に向けた農業用機械・ 施設の導入等を支援します。
最初に農業を行うための事業実施地区について以下の条件を満たす必要があります。
① 適切な人・農地プランが作成されていること ※1
② 農地中間管理機構を活用して農地の集積・集約化を進めていること(又は活用す ることが確実であること)※2
※1適切な人・農地プランとは、以下のア~エのいずれかに該当しているものです。
ア 実質化された人・農地プランであること
イ 既に実質化されているとして市町村のホームページで公表されていること
ウ 実質化された人・農地プランとして取り扱うことのできる同種取り決めの地域 内であること
エ 実質化に向けた工程表が市町村のホームページで公表されている地域内である こと
※2農地中間管理機構とは、平成26年度に全都道府県に設置された「信頼できる 農地の中間的受け皿」です。農地中間管理機構はこのようなときに活用できます。
・ リタイアするので農地を貸したいとき
・ 利用権を交換して、分散した農地をまとめたいとき
・ 新規就農するので農地を借りたいとき
次に助成対象者については、いずれかの条件を満たすことが必要です。
① 適切な人・農地プランに位置づけられた中心経営体であって、かつ認定農業 者、 認定就農者又は一定の集落営農組織であること
② 農地中間管理機構から賃借権等の設定等を受けている者であること
③ 地域における継続的な農地利用を図る者として市町村が認める者であること※ ※ア 当該市町村の認定農業者の平均所得のおおむね8割以上の所得があること イ 中心経営体若しくは認定農業者であること、又は、事業実施後1年以内にい ずれかになるこ とが見込まれること
助成の対象となる事業については、農薬散布等無人航空機(ドローン)が対象となります。他にもありますが、ここではドローンに関する記事なので省略させていただきます。
成果目標については、必須目標と選択目標があります。
必須目標は、付加価値額の10%以上の拡大(付加価値額とは、収入総額から費用総額を控除した額に人件費を加算した額)となります。
選択目標は ①経営面積の拡大、②農産物の価値向上、③農業経営の複合化、 ④農業経営の法人化、⑤輸出の取組のどれか1つを選択します。
助成金の算定方法については以下の①~③により算定した額のうち一番低い額が助成金額となります。
① = 事業費 × ½
② = 融資額
③ = 事業費 - 融資額 - 地方公共団体等による助成額
助成金の配分上限額は、法人3,000万円、個人1,500 万円となります。農業用ドローンの場合、助成金が配分上限額に達することなく満額受け取れると考えられます。
スマート農業総合推進対策事業
この制度は、各地域の実情に応じたスマート農業技術体系が構築・実践さ れる よう、現在の技術レベルで最先端のロボット・AI・IoT等の技術の生産現場への 導入・実証、技術面・経営面の効果を明らかにする取組を実施します。
スマート農業の補助金が支給される目的は以下3つの理由からです。
①必要な経費の負担軽減
スマート農業を始めるためには、設備の整備費用など多くの経費がかかるため、これらの国や自治体で負担します。高額な設備を購入する必要があるケースなどがその対象となります。
②継続的な実施のサポート
スマート農業は事業として継続的に行う上でも多くの費用がかかるため、運営における金銭面でのサポートを行うという目的があります。
③サポート開発・試作品開発・生産プロセスの改善
スマート農業で生産効率を向上させるには、新たな設備やその試作品の開発、さらには生産プロセスの改善なども不可欠なため、これらの費用を負担する役割があります。
スマート農業は農林水産省主導のもと、全国的に推進されている新しい農業の形であり、補助金には農林水産省主管のスマート農業総合推進対策事業費補助金と各自治体主管のスマート農業総合推進対策事業費地方公共団体補助金があります。
助成対象者は、民間団体や協議会が対象となりますが、協議会のメンバーとして参加している農業者であれば、間接的に助成対象者となります。
スマート農業補助金の対象となる事業は内容は様々でありますが、農業用ドローンに関しては、ロボット技術安全性確保策検討事業の対象となります。農業用ドローンを使用した技術を農業へ導入する際に発生する経費は、補助金の支給対象となります。
また、スマート農業の補助金を受給する際の注意点があります。
1つ目が申請内容と異なる用途で使用することです。スマート農業の補助金はスマート農業の推進を目的として支給されており、申請書には詳細な使用目的を記載しなければなりません。仮に当初の申請内容とは異なる用途で補助金を使用すると、不正受給とみなされ、罰則の対象となってしまう可能性もあるため、申請して利用する際は注意しなければなりません。
2つ目が補助金の支給は継続的ではないことです。補助金の申請受付自体は毎年度行われいますが、期間が過ぎるとその年度分の支給は終了します。また、将来的に補助金の支給制度自体が終了することが予想されるため、補助金に頼った経営を永遠に続けることはできないことは認識しましょう。
スマート農業の補助金は、各事業ごとに細分化されているため、国又は自治体のHP等で確認しましょう。
農林水産省https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/2020_sma_yoko.html
みどりの食料システム戦略推進交付金
この制度は、日本の食料・農林水産業は、大規模自然災害・地球温暖化、生産者の減少等の生産基盤の脆弱化・地域コミュニティの衰退、新型コロナを契機とした生産・消費の変化などに将来にわたって食料の安定供給を維持し続けるために創設されました。
健康な食生活や持続的な生産・消費の活発化やESG投資市場の拡大に加え、諸外国でも環境や健康に関する戦略を策定するなどの動きが見られ、今後、このようなSDGsや環境を重視する国内外の動きが加速していくと予想されるため日本においても「みどりの食料システム戦略」を策定しました。
農業用ドローンが助成金の対象となる理由として、みどりの食料システム戦略の取り組みの1つとして、化学農薬・化学肥料の使用量が減ることによるものです。ドローンで農薬を散布すると、少ない量で均一に散布できるため、従来の農薬散布機に比べてエコロジーと言えます。
助成対象者としては、スマート農業総合推進対策事業と同様に、民間団体や協議会などの団体が助成対象となりますが、協議会のメンバーとして参加している農業者は間接的ではありますが助成対象者となります。
助成金が対象となる事業は、「グリーンな栽培体系への転換サポート」「SDGs対応型施設園芸確立」「有機農業産地づくり推進」「地域資源活用展開支援事業」など、複数分野に該当する事業が支援対象となります。
グリーンな栽培体系への転換サポートは化学農薬・化学肥料の使用量低減、有機農業面積の拡大、農業における温室 効果ガスの排出量削減を推進します。具体的には土壌診断に基づく施肥設計や有機質肥料の活用やドローンによる肥料のスポット散布、環境負荷低減に資するスマート農業機械等の導入が挙げられます。
SDGs対応型施設園芸確立は、SDGs対応に向けた検討会の開催や、省エネ機器設備・資材・自家消費用発電システム等の導入、新技術の実証、環境影響評価、マニュアル作成等の実施に対して支援します。
有機農業産地づくり推進は、有機農業の生産から消費まで一貫し、農業者のみならず事業者 や地域内外の住民を巻きこんだ取組を推進します。
地域資源活用展開支援事業は、、基本計画等の作成や再エネ協議会設置に向けた専門家による相談対応、様々な課題解決に向けた取組事例の情報収集、国産バイオマスを活用したバイオマスの利用や関連産業の把握等、脱炭素化の実現を目指す地域へ情報を行うため先進事例の調査や情報発信整備等を支援します。
助成金については、それぞれの事業ごとによって計算が異なるため支給額も異なります。詳しくは農林水産省が出しているみどりの食料システム戦略推進交付金実施要綱をご覧ください。https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/attach/pdf/index-106.pdf
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、農業用ドローンに関する補助金をご紹介しました。ドローンの活用は、無人型航空機に伴うAI技術や、最先端を駆使した利用、経済的にエコな活用方法などにより、補助金の範囲が広く多くの農家の人に活用できる制度となっています。そして、今回紹介しきれなかった他の制度も沢山あります。もっと詳しく知りたい方は、農林水産省か各自治体に問い合わせて下さい。
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