この記事を拝読していただいている多くの人は、少しでも農業に興味がある方だと思います。なかには農家に本気でなりたいと思っている方もいるのではないでしょうか。
しかし「農家として働きたくても農作物を栽培するための農地がないよ」といった理由で農家の夢を諦めてしまっている人も多いのではないかと思います。
現在の日本は、農家の高齢化と担い手不足により農家の数が毎年減り続けている現状です。農家の数が減っているということは、確実に誰も使っていない空いている農地も増えています。
空いている農地も増えているはずなのに、なぜ農地を借りることが新規就農者の最初の関門なのでしょうか。今回は農地を借りるための手続きの方法についてまとめていきたいと思います。
深刻化する日本農業の現状
少子高齢化による担い手不足
現在、日本の農業が抱える最大の問題として少子高齢化社会が進み、若い世代が減少し高齢の方が上昇しているという背景から農家の減少、若者の農業離れが深刻な問題になっています。
上記のグラフは2001年から2020年までの農家の数を表したグラフになっています。見ていただくと分かる通り農家が年々減少している現状です。
もちろん毎年、5万人以上の人が新たに新規就農者として農業を始めていますが、それ以上に農家を辞めて行く人が始める人を上回っている現状です。
単位:千人
平成29年 | 30年 | 令和元年 | 2年 | |
新規就農者 | 60.2 | 55.8 | 55.9 | 53.7 |
【一部引用】
・農業労働力に関する統計:農林水産省 (maff.go.jp)
このまま農家が減り続けていくと、普段私たちが利用しているスーパーなどから日本の農産物が消えてしまうなんてこともあるかもしれません。
今回、注目したいのが農家が減っている現状があるなかで、農業を辞めていった人たちが使っていた農地はどうなったのかということです。
その問題を読み解くヒントが次に説明する耕作放棄地の問題です。
増え続ける耕作放棄地・荒廃農地
耕作放棄地は「1年以上作物が栽培されていない土地」のことを指し、荒廃農地は「荒廃しそのままでは作物の栽培が不可能」と判断された農地のことを言います。
結論として、農家数の減少とともに、誰にも使われないまま放置されている農地が増えている現状にあります。
では、なぜ耕作放棄地が荒廃農地が増え続けているのに、農地を借りる又は買うことは簡単にできないのでしょうか。
ここからは、農地の借り方について具体的な方法を解説していきたいと思います。
なぜ?農地は「買う」ではなく「借りる」なのか
農地の借りる方法を説明する前に、なぜ農地は「買う」ではなく「借りる」なのかと気になった人もいると思うので簡単に説明していきます。
もちろん農地を借りるという選択ではなく、農地を買うという方法を取ることもできます。しかし、おすすめしない理由として、以下の理由があります。
理由①:価格
【農地を買う】
田んぼ:10a(1000㎡)約125万円 / 畑:10aあたり約92万円
【農地を借りる】
田んぼ:10a(1000㎡)年間9000円~ / 畑:10aあたり年間5000円
農地を買うか借りるかでは、価格が全然違うことが一目瞭然で分かると思います。費用の比較から考えることとして、いきなり農地を購入してしまうのではなく、最初は借りるという選択を取ることが良いのではないかと思います。
理由②:購入した農地を転用できない可能性がある
例えば、農地を買って農業を始めましたが栽培が上手くいかず農業を続けることを諦めようとしている農家がいるとしましょう。さらに、この農家さんは購入した農地に家を建てるといった農業以外の用途で使用したいと考えました。
しかし多くの場合、購入した農地を農業以外の用途で使う(転用する)ことはできないことが多いです。そのため、農地を購入したら向き不向きに関わらず、農業を続けていかなければいけない可能性が高まります。
購入が出来るのであれば、売却もできると考えるかもしれませんが「農地は現在農業を専業にする人にしか売れない」という決まりもあるため売却も中々難しい状況です。
その理由としては、農地は食料を生産できる国にとって貴重な土地として考えられていることにあります。購入した農地を売却しようと考えたとしても…
・専業の農業従事者である
・取得後50ha以上(地域により異なる)の農地を保有している
・所有農地のすべてを耕作している
・農業のための人材・機械を所有している。
上記の条件を満たしている者でなければ売却ができないルールとなっているため購入後、仮に農業が自分に合わないと感じてしまい売却を考えていても、簡単に売却することができないというのも農地の購入をおすすめしない理由になってきます。
ここまで、農地を購入するより借りる方が良い理由として農地の購入にはどのようなデメリットがあるのかを簡単に説明していきました。もちろん農地を購入することのメリットもあるので、農家として働くための農地を確保するために何をするべきで、何がデメリットなのかをきっちり調べたうえで決断するようにしていただければいいと思います。
この記事では主に農地を借りるために何をするのかをまとめていきたいので、ここからは本題の「農地を借りるためにやるべきこと【3選】」ということで、農地の借り方をまとめていきたいと思います。
【一部引用】
農地を買う・借りるにはどうすればいいの?個人・法人別の取得条件とは?|マイナビ農業 (mynavi.jp)
農地売買の2つの方法は?必要な手続きや流れ、費用についても解説 | 不動産査定【マイナビニュース】 (mynavi.jp)
農地を借りるためにやるべきこと
農家になるために、特別な学歴や国家資格は必要ありません。農家になりたいという思いがあれば誰にでも農家になることができます。
ただ、農林水産省により農家とは「経営耕地面積が10アール以上(テニスコート約5面分)の農業を営む世帯または農産物販売金額が年間15万円以上ある世帯」と定義されているので、定められた条件を満たすことが農家になるためには必要です。
農家の定義でもあるように農家として経営していくためには農地を確保することが必要です。そして農家出身でなくてもやる気がある人であれば農地を買う・借りることができます。
しかし、農地を買う・借りるためには「農地法」と呼ばれる法律で定められた条件を満たす必要があります。なのでここからは、農地の借り方に着目して農地の借り方をまとめていきます。
農地取得は、農業委員会が窓口
農地を取得するためには、農地に関する法律(農地法)に基づき、市町村農業委員会の許可を受けることが必要になってきます。
農地資格や農地確保の手続き場所となる農業委員会とは、農地法に基づく売買・貸借の許可、農地転用案件への意見具申、遊休農地の調査・指導などを中心に農地に関する事務を執行する行政委員会として市町村の役場に設置されています。
農家資格の取得
まず農地を借りる前に、農業を始めたいと考えている市町村に農家として登録してもらうために農家資格というものを取得する必要があります。
「農地法」第3条にも「農地を買ったり借りたりする場合には市町村農業委員会の許可が必要」という決まりがあります。市町村農業員会に「認定申請書」や「営農計画書」などを提出し、「農地基本台帳」に登録されることで、農家として認められ「農地資格」を得ることができます。
もちろん、農地資格を取得し農家として登録されたからと言って簡単に農地を取得できるわけではありません。農地を借りるとなると、そもそもその農地は別の農家さんが代々大切に受け継いできた農地であるため「初めて農業に携わる人に、代々大切に受け継いできた農地を任せるのは不安だ」という思いから中々、信頼関係の築けていない人に大規模な農地を貸すことができないという現状があります。
なので農地を借りるためには、借り受ける農地の所有者・農業委員会職員と信頼関係を築くことが大切になってきます。
最後は信頼関係を築けるかどうか
「農家として農業に携わりたいから農地を借りたい」と言っても、農業をどこまで本気でやりたいと思っているのか分からない相手に「はいどうぞ」とすぐに農地を貸すことはできません。
農地法では農地を貸すための具体的な基準は定めていないので、許可を与えるかどうかは農業委員会の役目となっています。
農業委員会は農地を有効活用しない人に許可を与えることを防ぐために、農家として働くためにあたってどのように農業を進めていくのか計画書の作成を求め、農地を貸すか審査します。
そのため、農地を取得するためには農業を積極的に学んでいく姿勢や農家として働いていくための熱意を伝えていくことが必要になります。
農業を学ぶための手段としては、以下のような方法があります。
・農業大学校に通う
・農業法人等が運営しているインターンシップに参加
上記のような方法があるので上手く活用して農業の知識を身に付けて「農家として働きたいんだ」という熱意を伝えてみてはいかがでしょうか。
農地を取得する際に守らなくてはいけない!4つの条件
農地資格を取得し、農業委員会から農地を借りることができたとして、農地を使用する際に農地法に基づき守らなくてはいけない条件が4つあるので紹介していきます。
1.農地のすべてを効率的に利用すること
2.必要な農作業に常時従事すること
3.一定の面積を経営すること
4.周辺の農地利用に支障がないこと
この4つの条件を満たすことで農家として農地を利用することが可能になります。ここまで農地を借りるためにやるべきこととして手順をまとめてきました。
簡単な手続きなようで、信頼を築いていくといった人間関係まで考えていかなければ農地を借りることができないといったところに難しさを感じた人もいるのではないでしょうか。
農地を借りるのは難しそうだな、できなそうだから農家として働くのは諦めようと考えてしまった方々、ちょっと待ってください。農地がなくても農家として働く方法もあります。
最後に農地がなくても農家として働く方法を簡単に紹介していきます
農地がなくても農家になれる!?
農家になる方法には大きく分けて3つの方法があることを知っていますか?方法次第では農地を借りなくても農家になることは可能です。農地がなくても農家として働くとは、どういうことなのか解説していきます。
農家の種類
【方法】 | 【農地の要否】 |
---|---|
①親や親戚の農業を継ぐ(新規自営農業就農者) | 必要 |
②新たに経営を始める(新規参入者) | 必要 |
③雇用されて農業で働く(雇用就農) | 不必要 |
上記の3つが農家として働くための3つの方法です。①と②の方法で就農を始める場合は農地が必要になりますが、③雇用されて農業で働く(雇用就農)方法であれば、自分の農地を確保しなくても農家として農業に携わることができます。農地がない、農地を確保する当てがないという場合まずは、一般企業のように農業法人に雇用してもらい農家として農業を始める選択を取ることができます。
雇用就農とは
雇用就農とは、農産物を生産している企業に就職し、従業員として働く方法です。雇用就農であれば、企業が所有する農地を使用しながら農業に携わることができるため、自分で農地を所有しなくても農家として働くことが可能です。
農家として働くための1つの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。
最後に
ここまで、日本農業の現状から農地の借り方・農地を借りない就農スタイルまで紹介してきましたが、農地をどのようにして借りればいいのかイメージを掴むことができましたでしょうか。
意外と簡単だなと感じた人もいれば、難しそうだなと感じた人もいると思います。ここで言えることとすれば、農地を取得することがゴールではないということです。
農地を借りられたとしても、栽培技術が劣っていたり、学ぶ姿勢・農業への熱意がなければ成功することはできません。何事もそうだと思いますが、学び続けるということが1番大切なことであると思います。
農家としての働き方・より良い農作物の栽培方法など、自分1人で学びを深めていくことは中々難しいと思うので農業大学校やインターンシップなどを活用して農業の学びを深めていく活動も大切です。
新規就農方法や栽培技術などを学ぶ手段の1つとして「一般社団法人:みんなで農家さん」では、新規就農者に向けた「農業実践教育」や「農業支援」を行っています。
「一般社団法人:みんなで農家さん」の実施する新規就農者向けのカリキュラムでは「就農のプロセス」・「一般的な農地確保の方法」なども学べるカリキュラムとなっていますので、こうしたサービスを利用してみることも学ぶ手段の1つではないかと思います。
一般社団法人・みんなで農家さん:https://minnadenoukasan.life
この記事をきっかけに農家になるために、たくさん学び実践して農家として成功する人が1人でも増えていくことを願って、この記事を終わらせていただきます。最後まで読んでいただきありがとうございます。
【参考】
農業を行うのに必要な資格、あると便利な資格 | 農業メディア│Think and Grow ricci (kaku-ichi.co.jp)
農業を始めたい!でも農地ってどうやって借りるの? | 農家・農業求人サイト【あぐりナビ】 (agri-navi.com)
農地を買う・借りるにはどうすればいいの?個人・法人別の取得条件とは?|マイナビ農業 (mynavi.jp)
農地売買の2つの方法は?必要な手続きや流れ、費用についても解説 | 不動産査定【マイナビニュース】 (mynavi.jp)
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