北海道は日本一の農業地帯であり「ゆり根」「わさびだいこん」「にんじん」「やまのいも」「アスパラガス」「とうもろこし」「ブロッコリー」「かぼちゃ」「じゃがいも」「大根」「玉ねぎ」など数々の作物で生産量1位を記録しています。
しかし、ほかの地域と同様に課題を抱えている農家さんも多いようです。
そこで今回は、北海道の農業の特徴や課題を補助金を利用して解決する方法をご紹介します。
北海道農業の地域で異なる特色
北海道の面積は83,423k㎡、日本の国土の約 2割を占めています。都道府県の中では最も広 く、国内で一番面積が小さい四国地方の香川県(約1,877km2)の約44個分、ヨーロッパにあるオーストリア1国の面積に匹敵します。また温暖多湿な日本の他の地域と異なり、冬は寒さが厳しく、夏は冷涼で湿度が低くさわやかな気候で、梅雨や台風の影響をほとんど受けないのが大きな特徴です。
そのため、病害虫の発生が少なく、低農薬栽培も積極的に取り組まれています。
さらに同じ道内でも地域によって農業の種類が大きく違ってきます。これには北海道という土地が、太平洋、日本海、オホーツク海と異なる3つの海に囲まれた特殊な場所であることから気象や立地条件が異なり、それぞれの地域において特徴ある農業が開拓されています。
道央地域
石狩・空知・上川・留萌・胆振・日高地方
北海道の中央部から日本海に注ぐ 石狩川水系に沿った上川盆地や石狩平野では、豊富な水資源と比較 的温暖な夏季の気候を利用して、稲作の中核地帯が形成されています。 また、札幌近郊・空知南部・上川で は道外移出向けを中心とした野菜 の生産が盛んなほか、日高の軽種 馬、上川・胆振の肉用牛など、地域 の特色を生かした農業が展開され ています。
道東(酪農)・道北地域
釧路・根室・宗谷地方
根釧、宗谷を中心とするこの地域 は、広大な丘陵と湿原を含む平 坦地が大半を占めていますが、泥 炭地などの特殊土壌が多く、気候が冷涼であることから草地が中心となっており、EU諸国の水 準に匹敵する大規模な酪農が展開されています。
道南地域
後志・渡島・檜山地方
渡島半島と羊蹄山麓などからなるこの地域は、平坦部が少ないため経営規模は小さいですが、道内では最も温暖な気候に恵まれ、集約的な農業が行われています。
米が各地で生産されているほか、函館近郊では施設野菜団地が形成されており、後志の羊蹄山麓が畑作地帯、後志北部が果樹地帯として発展しています。
道東(畑作)地域
十勝・オホーツク地方
十勝平野、オホーツクを中心とするこの地域は、広大な農地を生かした大規模な機械化畑作経営が行われており、豆類、てんさい、ばれいしょ、麦類を中心としたわが国の代表的な畑作地帯となっています。また、北見を中心とするたまねぎは、わが国最大の産地として道外に大量に出荷されています。
課題・対策
人手不足による一戸当たりの負担問題
北海道は日本における食料の安定供給に大きく貢献している一方で、道内の農家では高齢化が進み、人手不足が加速し農家一戸当たりの経営耕地面積が約11倍と拡大しているという深刻な問題を抱えています。
北海道という、日本の暮らしを支える食糧の宝庫を次世代へと引き継ぎ、守っていくために何ができるでしょうか。
対策①スマート農業
- 超省力・大規模生産を実現
トラクター等の農業機械の自動走行の実現により、規模限界を打破
- 作物の能力を最大限に発揮
センシング技術や過去のデータを活用したきめ細やかな栽培(精密農業)により、
従来にない多収・高品質生産を実現
- きつい作業、危険な作業から解放
収穫物の積み下ろし等重労働をアシストスーツにより軽労化、負担の大きな畦畔
等の除草作業を自動化
- 誰もが取り組みやすい農業を実現
農機の運転アシスト装置、栽培ノウハウのデータ化等により、経験の少ない労働
力でも対処可能な環境を実現
- 消費者・実需者に安心と信頼を提供
生産情報のクラウドシステムによる提供等により、産地と消費者・実需者を直結
対策②内閣府 SIP におけるスマート農業
気象データ、研究成果、ドローンや衛星により取得した生育情報、水温、水深等の水管理情報、ロボットトラクターやスマート田植機などから得られた時空間情報をサイバー空間に集積し、このビッグデータを解析して農家にアドバイス等を提供する研究開発を行っている。これにより経験と勘に依存する農業を緩和し、新規就農者が参入しやすくなる効果
対策③衛星画像による広域診断情報生成と WebGIS 情報利用システムの開発
衛星リモートセンシングを使って、米のたんぱく質含有率の作成や収穫適期を示した
り、小麦の伸長クロロフィル量を推定して追肥に利用するシステム
WebGIS を利用することで携帯、スマホ、PC を使ってどこからでもアクセスが可能だが、衛星画像は、雲などに遮られて撮影したい時にできない場合があり、その解決方法として最近 UAV4(ドローン)が注目されている
対策④水田の水管理を自動化する給水・排水システムの開発
水田に行かなくてもスマホやタブレットで水管理ができるシステム。
このシステムを導入すると、水稲で最も多くの労働時間(約 30%)を占める水管理労力を約 95%削減できる。さらに生育モデルや気象データと連携して水管理を行うことが出来る。※北海道では岩見沢や士別で実証試験を実施している。
対策⑤スマート田植機、スマート追肥機、収量コンバインの開発
スマート田植機は、GNSS6による位置情報とともに作土深と土壌肥沃度を測定して
蓄積し、これに基づいて可変施肥ができる。また、スマート追肥機により生育量を見な
がら追肥し、収量コンバインで収量を把握する。これにより施肥量が 20%減少しても整
粒歩合を 15%増加させ、倒伏軽減により作業能率を向上させることを目指している。
スマート田植機と収量コンバインは市販化されており、家族経営で 30 ヘクタール規模
の農家を対象としている
対策⑥ロボット農機の開発
国は「未来投資戦略 2017」において、「2018 年までの農機の有人監視下での無人システムの市販化、遠隔監視による無人自動走行システムの実現等に向けて、農林水産分野におけ
る AI や IoT、ビッグデータ、ロボット技術について、研究開発と現場での実証を推進す
る。」としている。
ロボット農機は 24 時間作業可能で、労働生産性が向上し、作業データの自動収集・
管理による営農サイクル(PDCA)を実現できる効果もある
スマート農業の導入事例
○士幌町農業協同組合○
北海道士幌町の農業協同組合が取り組んでいるスマート農業です
- GNSS自動走行のトラクターと、貯蔵庫の見える化を導入
(GNSSは全世界測位システムで、GPS同等)
- 貯蔵庫自動管理システムです。
スマート農業は、「見える化」と呼ばれますが、自動管理システムを導入することで、リアルタイムの管理を可能にしました。
スマホやタブレットを利用し、品質の低下を防ぐだけではなく、管理担当者の育成も簡単になっています。
地域別補助金
○中富良野町○
事業内容
補助対象
- GPSガイダンス自動操舵システムの導入
- 農業用ドローンの導入
補助対象経費
- GPSガイダンス装置に連動する自動操舵部分の導入に係る経費※トラクター等に係る経費は除く
- 農業用ドローンの導入
補助対象者
町内に在住する農業者、農地所有適格法人等並びに町長が特に認めるもの
補助率
対象事業費合計の25%(1農業者50万円以内を限度)
例)
GPSガイダンス1,000,000円+ドローン1,000,000円=2,000,000円
2,000,000円の25%=500,000円
お問い合わせ
電話番号:0167-44-2106
○旭川市○
農産物の販路開拓を応援
事業実施主体
- 農業者
- 農地所有適格法人
- 農業者を複数含み構成された団体(構成員が3名以上かつ過半数が農業者
- 市内を管轄する農業協同組合
(補足)
・上記の1、2にあっては、旭川市内に住所を有すること。
・旭川市内において施設等を整備する事業であること。
・上記の3にあっては、代表者の定めがあり、規約等が整備されていること。ま た、代表者が旭川市内に住所を有すること。
※令和5年2月28日までに事業が完了する事業
補助対象事業
旭川産農畜産物等の主に市外への販路開拓・販路拡大のために実施する次の事業
1.展示会、物産展、商談会等に参加する事業(オンライン形態を含む)
2.イベント等を開催する事業
補助率及び補助額
補助率は2分の1以内とし、上限は次のとおりとする。
・農業者(個人、法人)は上限10万円以内
・団体及び農業協同組合は上限20万円以内
ただし、事業の実施に当たっては、定められた予算の範囲内とする。また、補助金の算出にあたり、千円未満の端数が生じた場合は、これを切り捨てるものとす
応募期間:令和4年4月20日(水曜日)から令和4年12月16日(金曜日)まで。
※執行可能な予算がなくなった時点で募集を終了します。
お問い合わせ先
電話番号: 0166-25-7438
○上砂川町○
燃料・物価高騰による事業者支援事業
支援金の給付額
- 飲食業、小売業、製造業、運輸業、各種サービス業、建設業、鉱業、医療福祉業、不動産業、農林業の場合は、1事業所につき100,000円。
- フリーランス等の店舗・事務所スペースを構えず、自宅の居住スペースと同一の場所を事業所とする個人事業主は業種によらず、一律50,000円。
申請期間
令和4年7月1日から令和5年3月31日まで
注意:上記の期間において1事業所につき1回の申請とします。
※令和4年7月1日現在、営業休止中の事業所は対象外となります。
お問い合わせ先
電話番号:0125-62-2223
○全国対象○
令和4年度強い農業づくり総合支援交付金(生産事業モデル支援タイプ)
例:トラクター導入
対象経費
農業用機械、施設
補助上限額
300万円(補助率3/10以内)
応募資格
協働事業計画に位置付けられた拠点事業者
※審査中も含む
公募の期間
令和4年9月13日(火曜日)から令和4年10月7日(金曜日)午後5時まで
問合せ先
北海道農政事務所 生産経営産業部生産支援課
電話番号:011-330-8807
月曜日から金曜日まで(祝日を除く。)の午前10時~午後5時(正午から午後1時までを除く)
補助事業参加者の公募情報
補助金の目的とは?
補助金は、国や自治体の政策目標(目指す姿)に合わせて、さまざまな分野で募集されており、事業者の取り組みをサポートするために資金の一部を給付するというものです。
そのため返済義務はありません。
それぞれの補助金の「目的・趣旨」を確認し、自分の事業とマッチする補助金を見つけて活用しましょう。
また補助の有無や金額は「事前の審査」と「事後の検査」によって決まります。
原則、補助金は後払い(精算払い)なので、事業の実施後に必要書類を提出して検査を受けた後、受け取ることができます。
補助金受給までの5つのステップ
①知る
補助金は、国の政策ごとに、さまざまな分野で募集されています。まずは自分の事業とマッチする補助金を探しましょう。
②申請する
申請したい補助金を見つけたら、公募要領・申請書を確認のうえ、申請書として必要書類一式を事務局に提出します。補助金によって提出方法が異なり、電子申請か書面による郵送があります。詳細は事務局のページや公募要領をご確認ください。
③採択される
採択事業者が決定され、結果が事務局から通知されます。
採択後は補助金を受け取るための手続き(「交付申請」)が必要となります。その内容が認められたら「交付決定(補助事業の開始)」となります。
④事業の実施
交付決定された内容で事業をスタートします。事業内容を変更せざるを得ない場合は、事前に所定の手続きが必要となります。補助金の対象となる経費については、領収書や証拠書類をすべて保管してください。
⑤補助金の交付
実施した事業の内容や経費を報告します。正しく実施されたことが確認されると、補助金額が確定し、補助金を受け取ることができます。
まとめ
担い手不足や農家の高齢化といった農業が抱える課題については、北海道も例外ではありません。
スマート農業は、人材不足もある程度は解決し、作業効率と収益も向上するでしょう。その為、大規模化・法人化が進んでいる北海道とスマート農業は相性がよく、スマート農業による課題解決の先陣を切っているように思えます。
各自治体・大学・農機メーカーなどと生産者が連携して、スマート農業の実用化に取り組んでおり、その実証結果は都府県の農家にとっても参考になるのではないでしょうか。
しかし、スマート農業の導入には、高額な費用がかかります。
全て自己資金であれば難しいですが、国や各地域の自治体が補助金を用意しています。
補助金を利用し、少しでも農家さんの問題解決が解決できる内容となれば幸いです。
コメント