養液栽培とは?栽培方法・メリット・デメリットを詳しく解説

作物を育てていると「生育が悪い」「病害にかかっている」など様々な問題は農家さんであれば1度は経験したことがあるのではないでしょうか?
解決方法は様々ですが、作物を育てるために最も重要なのは基盤となる「土壌」です。

土壌の栄養が足りないと作物にどれだけ水や栄養を与えても立派な成長は難しいと言えます。
しかし土壌の状態を常に確認するには手間やお金が必要です。
そこで今回紹介するのが土を使わずに作物を育てることができる「養液栽培」です。

この記事では養液栽培の方法・メリット・デメリットについて解説します。
記事を読んでぜひ検討してみてはいかがでしょうか?

養液栽培とは?

作物を育てる際に普通は土を使用した土壌栽培が一般的です。
養液栽培は主にトマトなどの栽培に使われる栽培方法で、肥料を水に溶かした培養液を使用して作物を育てる方法です。
そして養液栽培には3種類の方式があり、

  • 培養液の中や表面で育てる水耕栽培
  • 土の代わりとなる培地に作物を植える固形培地耕栽培
  • 根を中心に培養液を噴霧する噴霧栽培

それぞれどういった特徴があるのか紹介していきます。

水耕栽培とは?

水耕栽培は植物の根の部分を肥料が入った水(養液)に浸し、水・養分・酸素を根から吸収させる栽培方法です。
無農薬野菜を大量に生産している植物工場は水耕栽培方式が一般的です。

固形培地耕栽培とは?

固形培地耕栽培は栽培ヘッドやガターと呼ばれる長尺の設備を畝方向に設置し、その上に培地を置き点滴潅水を行う栽培方式です。
主に果菜類の栽培を中心に利用されています。

墳霧栽培とは?

噴霧栽培とは言葉の通り、根に直接養液を噴霧する方法です。
噴霧栽培は養分を霧状にすることで液肥の量を低減し、併せて液肥を循環させることで大幅な節液ができます。

通常の水耕栽培と比べても水や肥料の使用量を低減できるため低コスト環境負荷をかけずに高品質な作物が作れるとして注目を集めています。

上記、3つの方法は養液栽培の種類になりますので生育する作物などで方式を変える必要があります。

では養液栽培にはどのようなメリット・デメリットがあるのか紹介します。

養液栽培のメリット・デメリットについて

3つのメリット

1.作物の収穫期間の短縮

養液栽培では肥料を水に溶かした培養液を直接根から吸収させる方法です。
必要な水分と養分だけが常に与えられているため、効率よく作物の生育をすることができます。

また屋内での栽培が一般的であり、自然環境に左右されないことや害虫や害獣に作物を荒らされるといった心配もありません。
こうした理由により、作物の栽培から収穫までを無駄なくすることができます。

2.異物混入の危険性

近年では特に異物混入などの情報がメディアで取り上げられる機会が多くなり、収穫した作物を出荷して市場やレストランで提供され害虫などがついていると農家としての信用を失うこともあります。

養液栽培は先程も説明しましたが屋内での栽培ですので、害虫がつく可能性はかなり低くなります。
異物混入のリスクがなくなると農家としての信用を得るだけでなく、高品質の作物を提供することにも繋がります。

3.連作障害が起こらない

連作障害とは同じ土壌に同じ作物を植え続けると土壌の中にある栄養などが枯渇し、土壌の病気・害虫の発生で作物の生育に影響が出てしまうことです。
養液栽培は土壌を使わないので、連作障害といったリスクをなくすことができます。

また害虫を駆除するための薬を使用しなくても良いので無農薬野菜を栽培することもできます。

2つのデメリット

1.導入コストの増加

養液栽培を導入するには施設や設備に大きなコストがかかります。
また本来であれば、土から栄養を吸収する植物ですが人工的な肥料でまかなうので、肥料コストも負担する必要があります。
こうしたコストを回収するにはより多くの作物を効率よく収穫し、品質の向上や収益の確保も必要になってきます。

栽培技術や販路が確保できていない場合には経営継続にも問題が出る可能性もあるので注意が必要です。

2.空間利用効率の問題

養液栽培ではベンチにより、作物の位置が高くなります。
そうした場合、軒の低い場所で栽培を行うと作物が上に伸びるモノを扱うと軒の高さをあげる必要があるケースもあります。
初めから軒の高い施設を作る場合は大きな問題にはなりませんが、途中から上げるということになると建設コストの増加にも繋がります。

養液栽培に必要なコストは?

養液栽培に必要な設備や費用を紹介します。
定植ベースの栽培ヘッド
・培地
・培養液タンク
・給液ポンプ
・給排水管などの培養液循環システム
・センサーやタイマー


システムを導入する際は個別に少しづつ購入していくより、セットで購入することをオススメします。
実際に養液栽培を始める場合はハウス全体の建設費や給排気設備費、電気工事費と配管工事費などもかかります。
もし費用を抑えたい方などは既にあるハウスの利用などができないか?検討してみましょう。
また費用について例を挙げると、北海道での養液栽培では全体的な設置コストはハウス面積650㎡の場合、1㎡当たり15000円程度、ハウス面積が325㎡の場合は1㎡当たり20000円程度と言われています。
大規模に「養液栽培」を行えばコスト削減に繋がりますが、大規模化しすぎると収穫などに時間がかかってしまうなどありますのでよく検討しましょう。

養液栽培で実際に育てることのできる野菜と育て方

養液栽培では育てることのできる野菜とできない野菜が存在します。
例えば根菜類(じゃがいも・大根など)は土の中で実が育つ作物ですので養液栽培には向いていないものになります。
他にも、稲や麦も基本的は難しいです。

養液栽培に向いている野菜は主に葉野菜(ルッコラ、レタス、ハーブ)がおすすめです。

養液栽培はあくまでも根に栄養を与えて成長ができる作物であり、実が地中にできるものは難しいということを覚えておきましょう。

では実際に養液栽培の育て方を紹介します。

養液栽培を使用した育て方

養液栽培では「水」「酸素」「光」「肥料」「二酸化炭素」「環境温度」の6つのバランスを適切に保つ必要がああります。

もちろん肥料を水に溶かした培養液の栄養量も調節する必要があります。

基本的に環境温度は15℃〜25℃で保つのが理想的であり、環境温度の激しい変化は避けるようにしましょう。
そして植物にとって1番大切なのは「光」です。
養液栽培は主に屋内で育ていますので太陽の光は活用できません。

オススメはLEDライトを使用することです。
LEDライトは白熱電球よりも植物にダメージ与えることなく、効率よく光合成を促すことができます。また養液栽培は導入コスト・継続コストに大きな費用がかかりますのでLEDを使用することで、わずかではありますが費用の削減にも繋がります。

養液栽培での2つの注意点

最後に養液栽培を行う上での2つの注意点について紹介します。

高温性水媒伝染病害への対策

高温性水媒伝染病害とは、施設内の気温の上昇やタンクなどの管理を怠ると発生する病原菌であり、根腐れなどの症状を引き起こす病害です。
養液栽培は前提として、土耕栽培と比較すると害虫や害獣のリスクは低くなりますが0になるわけではありません。
対策としては常に栽培環境を一定に保つことや培養液や病原菌が混入しないようにタンクの洗浄・消毒など対策を行う必要があります。また培養液の温度は25℃以下に設定し、作物の変化を感じ病害にかかってそうであれば金属銀剤を投入するなど防除を行う必要があります。

コストの管理を徹底する

養液栽培は土耕栽培に比べるとコストが大きくかかります。
環境にも優しく高品質な作物を作ることができ、作業負担を大きく減らすことも可能です。

一方で規模や作物の売り上げなどを観察するコスト管理が重要になってきます。
導入して経営状況を圧迫しないことや導入した際のメリットなどを考えて検討しましょう。
養液栽培のメリットを活かせない、育てている農作物が養液栽培に向いていないと経営が成り立たない可能性もあります。

まとめ

養液栽培は近年取り組む農家が増えている栽培方法の1つです。
その理由として、高品質・環境負荷の低減・作業効率の向上など様々な理由が挙げられます。

また養液栽培は現代の社会に対するニーズ(SDGsなど)に大きく貢献することのできる栽培方法とも言えます。
導入コストはかかりますが、農家の経営状況などを考えて検討してみてはいかがでしょうか?

また「みんなで農家さん」では養液栽培以外にも様々な栽培方法を掲載しています。
自分の農家で養液栽培は難しいと思う方でも、自分に合った栽培方法が見つかるかもしれません。
ぜひご覧ください。
https://minnadenoukasan.life/

最後までご覧いただきありがとうございました!

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