とんかつの脇に添えてあるシャキシャキの千切りキャベツやトロトロに煮たロールキャベツなど、キャベツは調理方法によって様々な楽しみ方ができる優秀な野菜です。
さらに、ビタミンCや食物繊維などの栄養が豊富で、健康にも良い野菜として、広く親しまれています。
キャベツの生産量は第2位であり、よく食べている野菜第1位に選ばれたこともあります。
キャベツは1年を通して需要が高く、私たちの食生活に無くてはならない野菜だといえるでしょう。
このように人気の高いキャベツを、家庭菜園で自ら育ててみたいという方も多いのではないでしょうか。
キャベツは栽培期間が4か月程度と他の野菜よりも長いものの、初心者でも比較的簡単に栽培することができます。
しかし、初めてキャベツを栽培する場合、どのように育てればよいか分からないこともあるでしょう。
この記事では、初心者の方でも簡単にキャベツを栽培するための方法について、詳しく解説しています。
栽培に必要な準備や注意点、そして収穫までの流れを紹介し、キャベツ栽培初心者の方でも成功できるようにサポートします。
さらに、育てやすい品種や上手に育てるコツについても知ることができるので、栽培経験のある方がより成功させるための役にも立てるはずです。
「初心者だけどキャベツを育ててみたい。」
「キャベツ栽培で失敗してしまったので成功するコツが知りたい。」
「人気の高いキャベツを上手に育てて、いつか収益化してみたい。」
という方は、ぜひ参考にしてください。
キャベツは「よく食べている野菜第1位」
キャベツは、アブラナ科アブラナ属の、多年草の野菜で、大根、はくさい、かぶ、菜の花などと同じ仲間です。
原産地はヨーロッパ南西部の地中海沿岸と言われており、日本には江戸時代ごろにオランダ人によって持ち込まれました。
明治時代になると、日本でも西洋料理が広まるようになり、キャベツは洋食の材料として注目されるようになりました。
特に、キャベツを使ったサラダやコールスローサラダが、日本で人気のある洋食の一つとなりました。
現在では、キャベツは日本の主要な野菜の一つとなり、全国各地で栽培され、一年中食べることができます。
また、キャベツの人気は高く、タキイ種苗が毎年行なっている野菜に関する調査の、「よく食べている野菜(2018年)」第1位にキャベツが選ばれ、その後もずっと2位をキープしています。
さらに、「価格高騰でも購入する野菜:第2位」、「購入量が増えた野菜:第2位」、「好きな野菜:第4位」と、キャベツは常にランキング上位にいる人気の野菜です。
キャベツ栽培の難易度とは
栽培難易度:★★★☆☆(やや簡単)
キャベツの栽培の難易度は、それほど高くありません。
一般的にキャベツは比較的丈夫で、多くの気候条件や土壌に適応することができます。
種まきの時期と害虫対策をしっかり意識しておけば、初心者でも栽培可能な野菜です。
ただし、キャベツの栽培期間は110~140日と野菜の中でも長めです。
長期間の手入れが必要な点と、天候による影響を受けやすい点には注意が必要です。
また、キャベツは寒さには強い一方、暑さには弱い特徴があります。
苗の成長期が真夏にならないよう、秋まきでキャベツを育てるのがおすすめです。
キャベツ栽培の4つのコツとは
キャベツ栽培は初心者にはやや難しい面も存在します。
しかし、ポイントを押さえながら栽培することで、丸くておいしいキャベツを収穫することができますよ。
ここでは、成功に導くキャベツ栽培のコツを4つ紹介します。
秋まき栽培から挑戦する
キャベツ栽培には、大きく分けて春まき、夏まき、秋まきの3つが存在します。
この中で、最も栽培が簡単で初心者におすすめなのは「秋まき」です。
キャベツ栽培では、「トウ立ち」しないことが成功するポイントです。
トウ立ちとは花芽が分化し、開花することをいいます。
トウ立ちすると、栄養が葉にいかなくなり、生長不良の原因になります。
キャベツは苗が1ヶ月ほど低温にあたると花芽ができてトウ立ちのスイッチが入ります。
そして、高温・長日になると、結球せずにトウ立ちしてしまいます。
また、キャベツの栽培適温は15~20℃で、冷涼な環境を好みます。
そのため、暖かい時期に育苗する春まきや夏まきよりも、「秋まき」がトウ立ちしにくく、適温で栽培することができます。
さらに、涼しい時期に栽培することで病害虫の被害も少なくすみます。
防虫ネットで害虫を予防する
キャベツなどのアブラナ科の野菜は、アブラムシ、アオムシ、ヨトウムシ、コナガなどの害虫の被害が多く発生します。
アブラムシは葉の裏側や茎に寄生して汁を吸い、それ以外の3種類の害虫は葉をかじって穴をあけます。
被害にあうと生育が遅れ、放置すると葉脈以外の葉がボロボロになることもあります。
対策として防虫ネットをトンネル掛がするのが効果的なので、必ず植え付け直後にかけましょう。
収穫が遅れると裂球する
収穫適期に収穫しないと、球の内部の葉が成長して結球が進みすぎてしまい、球が割れて(裂球)しまいます。
裂球したキャベツは食べられますが、味は悪くなります。
収穫適期は、一番外側の葉がそり始める、球の上部を手で触ったときに堅く締まっている、などで確認することが可能です。
追肥と土寄せで大きな球を作る
キャベツ栽培において、追肥と土寄せは非常に重要です。
キャベツは栽培期間が長い野菜なため、元肥だけでは栄養が足りず、追肥によって補う必要があります。
また、土寄せによって株元に土を盛り上げることで、キャベツを支える効果だけでなく、乾燥予防や水はけを良くする効果もあります。
追肥と土寄せによって栽培環境を整えてあげることで、大きくしっかりとしたキャベツを作ることができます。
初心者におすすめのキャベツの品種3選
キャベツの品種には、栽培期間が短い早生種や、栽培期間が長い晩生種などが存在します。
初心者におすすめなのは「極早生種」や「早生種」といった栽培期間が短い品種です。
ここでは、初心者でも育てやすい秋まき栽培に適した極早生種を3つ紹介します。
味春
出典:味春 キャベツ | 品種カタログ | タキイの野菜【タキイ種苗】 (takii.co.jp)
生育旺盛で肥大しやすくトウ立ちにしにくい特徴があります。
極早生種なため栽培期間が短く、裂球のタイミングも遅いので初心者向けの品種です。
栽培しやすいだけではなく、色が鮮やかでジューシーでやわらかく、生食でもおいしいキャベツが収穫できますよ。
YR春空
出典:Amazon.co.jp: タキイ種苗 キャベツ YR春空 : DIY・工具・ガーデン
生長が早くトウ立ちしにくく、病気にも強い極早生種です。
小さめのサイズなので均一に栽培しやすく、整った形の色ツヤの良いキャベツが育ちます。
作りやすいだけでなく、やわらかい葉質で甘みがあるのが特徴的です。
春波
出典:春波 キャベツ | 品種カタログ | タキイの野菜【タキイ種苗】 (takii.co.jp)
生育は旺盛でトウ立ちしにくく、球太りもよく作りやすい極早生種です。
寒さにも強く、裂球しにくいため、収穫時期が幅広いことも特徴となっています。
水分量が多いのでみずみずしく、味も良いので市場評価も高く人気のキャベツです。
キャベツの栽培時期
出典:キャベツの栽培方法・育て方のコツ | やまむファーム (ymmfarm.com)
キャベツの栽培は主に「春まき」、「夏まき」、「秋まき」の3つに分けられます。
地域や品種によって多少異なりますが、中間地で栽培する場合の栽培時期について紹介します。
春まき
種まき時期:2 月下旬~3 月中旬
植えつけ時期:3 月中旬~4 月中旬
収穫時期:6 月上旬~7 月中旬
春にまいて梅雨や夏に収穫する春まき栽培は、他の時期に比べると少々難易度が上がり ます。
種まき後の育苗は保温しながら育てる必要があります。
夏まき
種まき時期:7 月中旬
植えつけ時期:8 月中旬~9 月上旬
収穫時期:11 月中旬~12 月中旬
夏まき冬どりの夏まき栽培は、植えつけから 45日程度で収穫と栽培期間が短めです。
真夏の日光で苗が枯れてしまうので、寒冷紗を被せて日差し対策をする必要があります。
秋まき
種まき時期:10 月初旬~11 月下旬
植えつけ時期:11 月中旬
収穫時期:4月下旬~5 月中旬
春に収穫する秋まき栽培は、トウ立ちしにくく害虫の発生が比較的少なく、管理がしやすいことから初心者の方におすすめです。
育苗
【タネ播き】
キャベツのタネ播き方法には育苗箱に播く「箱まき」とポットに播く「ポットまき」が存在します。
大きな規模で行なう場合は箱まきがおすすめですが、簡単で初心者向けなのはポットまきです。
7~9㎝のポット鉢に培土(野菜用の培土など)を入れ、直径3cmで深さ1cmの穴を作り、3~4粒を離してまきます。
5mm程度の厚さになるように均一に土をかけ、たっぷりと水やりをします。
夏まきでは直射日光に当たらないように、ポットの上を寒冷紗あるいはよしずで覆いましょう。
逆に、春まきでは寒くなりすぎないように加温・保温して育苗する必要があります。
【間引き】
タネ播き後、3~4日で発芽します。
発芽したら子葉展開の頃から本葉が見え始める間に2本立ちに間引きをし、本葉2枚になるごろに1本まきにします。
間引く苗は
①生育が以上に遅いもの
②葉の形が明らかに他と違うもの、色が異なるもの
③色が濃すぎるもの、生長が早すぎるもの
これらの特徴があるものを選びましょう。
【水やり】
丈夫な苗には十分な光と水やりが重要です。
水やりは基本的に朝行ない、夕方には乾くようにします。
また、湿度を上げないように地面に直接置かないようにしましょう。
【育苗期間】
育苗期間は夏まきが35日(本葉は5~6枚)、秋・春まきは40~45日(本葉7~8枚)が目安です。
植え付け準備
【土づくり】
植え付けの2週間以上前に苦土石灰を施し全層混和し、1週間前に堆肥と元肥を施して再度耕します。
・1㎡あたりの肥料の量:
堆肥 1~2kg
苦土石灰 100~150g
元肥 100g
【ウネ立て】
ウネ幅60㎝でウネ立てをします。
植え付け
苗の定植適期は夏まきは本葉5~6枚、秋・春まきは本葉7~8枚ごろです。
株間40㎝で植え付けをするため、事前に穴をあけ、穴に水をあげておきます。
根元を持って苗を逆さにし、ポットから抜いたあと、根鉢が崩れないように崩れないように穴に入れ、植え付け、最後に再びかん水します。
手入れ
【防虫】
植え付け直後、ウネにトンネル支柱をさして、防虫ネットをかけ、すそを土に埋めます。
【追肥と土寄せ】
植え付けの2週間後から2週間に1回、化成肥料30g/㎡を追肥します。
追肥後、株間やウネの肩に施した肥料の上にクワなどで土寄せをします。
葉を傷めないように、葉の下から株元に土を盛るようにしましょう。
収穫
夏~秋まきであれば定植後2~2.5ヵ月が収穫の目安です。
一番外側の葉がそり始めて、球の上部が堅く締まっていたら収穫しましょう。
外の葉を1~2枚つけて、結球部分の株元を切り取って収穫します。
キャベツの病害虫とその対策方法
キャベツは栽培期間が長い分、病害虫被害にあわないよう注意が必要です。
せっかく大切に育てたキャベツがむだにならないよう、原因を理解した上で対策を行ないましょう。
ここでは、キャベツの病害虫と対策方法について紹介します。
【病気】
キャベツがかかりやすい病気は、べと病、菌核病、萎凋病、バーティシリウム萎凋病、軟腐病、根こぶ病などです。
キャベツの病気は生長が進んでから発症することがほとんどで、発症した苗は他のキャベツにうつらないようにただちに処分する必要があります。
そのため、病気にかからないように予防することが何よりも大切です。
対策としては水はけのいい環境で栽培することです。
水はけのいい土壌を選び、ウネをきちんと立てるようにしましょう。
また、泥はねが病気の原因になる可能性があります。
雨や水やりで泥が葉にあたらないように、マルチやワラなどで覆って防ぎましょう。
【害虫】
キャベツはアブラナ科の野菜で、モンシロチョウやコナガが葉の裏に卵を産み付けます。
これらの卵が孵化するとアオムシなどの食欲旺盛な幼虫によって穴だらけにされてしまい、生長が抑制されてしまったり、枯れてしまいます。
対策としては、元気な苗を選んで定植することと、肥料の量を適切に調整すること、防虫ネットやコンパニオンプランツで防虫することがあげられます。
虫が寄る原因として、キャベツに含まれる辛味成分(イソチオシアネート)があります。
イソチオシアネートは虫が苦手な成分のひとつですが、元気がないキャベツや太りすぎたキャベツには多く含まれず、産卵されてしまうことがあります。
よって、「健康で元気な苗」を「適切な量の肥料」で育てることが、キャベツを順調に育てるだけではなく防虫対策にもつながります。
また、防虫ネットも虫の被害にあわないためには必要不可欠です。
トンネルのネットがキャベツの葉にあたっていると虫が刺して産卵するため、定期的に観察することも必要になります。
さらに、防虫対策として「コンパニオンプランツ」という方法もあります。
モンシロチョウやコナガは、キク科などの香りを嫌う性質があり、キャベツのそばに別の野菜を混植することでこれらの虫が来るのを防ぐことが可能です。
たとえば、キク科のレタスはキャベツと栽培方法が似ているため、同時に育てることで防虫対策にも多目栽培にもなり、一石二鳥ともいえます。
他にもマメ科のソラマメやセリ科のニンジンもコンパニオンプランツとして活用することができますよ。
キャベツの魅力と楽しみ方とは
「キャベツ」は、私たちの食生活を豊かにしてくれる無くてはならない存在です。
ここでは、キャベツの魅力について深掘りして紹介します。
栄養価が高い
キャベツにはビタミンCや食物繊維、カリウム、カルシウムなどが含まれており、栄養価が高く健康に良い野菜です。
ここでは、キャベツの栄養価とその効果について紹介します。
・ビタミンC
キャベツにはビタミンCが豊富に含まれており、100g中に約41mgのビタミンCが含まれています。
ビタミンCは、免疫力を高めたり、美肌効果があるとされています。
・ビタミンK
キャベツにはビタミンKが豊富に含まれており、100g中に約78μgのビタミンKが含まれています。
ビタミンKは、骨の健康を保つために欠かせない栄養素であり、骨粗鬆症予防にも効果があるとされています。
・食物繊維
キャベツには食物繊維が豊富に含まれており、100g中に約2gの食物繊維が含まれています。
食物繊維は、便通を良くする効果があるほか、コレステロールを下げる効果もあります。
・カルシウム
キャベツにはカルシウムが豊富に含まれており、100g中に約47mgのカルシウムが含まれています。
カルシウムは、骨の健康に欠かせない栄養素であり、牛乳に含まれるカルシウムと同等以上に含まれています。
以上のように、キャベツには多くの栄養素が含まれております。
また、100g中に21kcalとカロリーが低く、ダイエットにも適した野菜としても知られています。
参照:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
料理のバリエーションが豊富
キャベツは多彩な料理に利用できます。
サラダ、スープ、煮物、鍋料理、漬物など、料理の種類に限りがありません。
特に、キャベツのもつ栄養素をむだなく摂取するには、生食がおすすめです。
揚げ物に千切りにして添えたり、コールスローなどのサラダにするのが一般的ですが、生春巻きの具材としても使われることがあります。
キャベツにはビタミンCやビタミンUなどの水溶性の栄養が豊富に含まれており、生で食べることでこれらの栄養をそのまま取り入れることができます。
また、キャベツは茹でる、炒める、煮る、蒸すといった調理方法との相性もよく、お好み焼きや回鍋肉、ロールキャベツなどにしておいしく食べることができます。
火を通すことでキャベツのかさが減り、消化も良くなるため、たっぷり食べたいときや体調が優れないときは加熱して食べるのがおすすめです。
このように、キャベツには多くの魅力があります。
栄養価が高いだけではなく調理方法によって食感や味わいが変わるため、飽きることなく楽しむことができますよ。
ぜひ自分でキャベツを収穫した際には様々な方法で味わってみてください。
まとめ
私たちの食生活に欠かせない人気の野菜「キャベツ」の栽培方法のコツとその魅力について紹介しました。
キャベツは栽培期間が長いものの、丈夫で適応能力が高いため、初心者でも育てやすい野菜です。
まずは初心者におすすめの「早生種」を「秋まき栽培」で栽培するのがおすすめです。
はじめて家庭菜園に挑戦するという方も経験者の方も、今回紹介した内容を参考にキャベツ栽培にぜひチャレンジしてみてください。
参考文献:
市川啓一郎著「タネ屋がこっそり教える 野菜作りの極意」一般社団法人 農山漁村文化協会発行,2021年
福田直子編集,猪狩暢子発行,藤田智監修「藤田智の新・野菜づくり大全」NHK出版発行,2019年
参考サイト:
コメント