輸入による影響【畜産飼料】の高騰はなぜ

畜産において家畜の存在は欠かせません。

日本では和食が中心だった頃から今は海外からの影響を受けて様々な食文化が入ってきたため国内での食は大きく変化してきました。

この変化に伴って主食が米から肉と変化し米の消費量は減少して肉の消費量が増加したりと食の変化によって農業に関わる生産と消費も変化してきました。

普段私たちが生活している中で食料が不足していて食べたいと思った物が食べられないといったことになったことはないと思います。

これは日本での生産だけではなく海外からの輸入によって需要を満たせているからです。

ここで考えて頂きたいのが畜産物だけではなく、そこに関わる費用についてです。

畜産では必ず家畜が存在します。

そして、家畜を育てるためには飼料が必要になり、また消費者に届くまでに色々なコストがかかっています。

今回の記事では現在値段が高騰している飼料について着目して畜産業の現状を知って頂くとともに輸入のリスクについて紹介していきます。

私たちの生活に欠かせない食を支えている農業について少しでも興味を持って頂ければと思います。

畜産に必要な飼料

畜産の飼料は大きく分けて2種類になります。

・粗飼料

粗飼料の種類としては、生草やサイレージ(牧草を発酵させたもの)、乾草、わら類等があります。

粗飼料の特徴として濃厚飼料に比べて栄養価は低くなります。しかし、繊維含量が高いため重量あたりの容積は濃厚飼料よりも大きいことが特徴としてあります。

・濃厚飼料

濃厚飼料の原料として穀類やマメ類、イモ類、ヌカ類、粕類、油脂類、食物性油脂類、酵母類、動物性飼料などがあります。

濃厚飼料の特徴として穀物を主とした飼料です。

そして栄養価が高く、長期保存が可能なため輸送などの取扱いが可能です。

そのため粗飼料では難しいですが農業飼料を多量に与えることで短時間での肥育、産乳・産卵までの成長を促すことができます。

もう少しわかりやすく違いをいうと粗飼料はセンイ質が多く、反対に濃厚飼料は少ない。

炭水化物・タンパク質は、粗飼料より濃厚飼料に多く含まれているという違いを知っているとわかりやすいと思います。

日本で飼料として輸入が多くされているとうもろこしは濃厚飼料に分類されます。

参考:http://www.jafma.or.jp/more/industry.php

家畜に必要な飼料の量

家畜を飼育するのに飼料は欠かせません。

そこで牛、豚、鳥を育てるのにどれくらいの飼料が必要になるのかについて紹介していきます。

牛肉1kgを生産するのに必要な飼料は約11kgになります。

※飼料としての穀物はとうもろこし換算

豚肉1kgでは約6kg、鶏肉1kgで約4kgが必要になります。

つまりそれぞれの牛、豚、鶏を生産するためには飼料だけでも大量に必要になることが分ります。

単純に10kgの牛肉を育てるためには110kgの飼料が必要になります。

スーパーなどで売っている牛肉が500gとかで考えればいかに飼料の量が多いのかイメージしやすいかと思います。

現状国内だけでは飼料が足りていない状況になります。

理由としては肉の消費量が増加したためです。飼料はもちろんですが国内の肉の生産も国内の消費量に対してそもそも追いついていない状況です。

そこで日本は輸入によって肉も家畜を育てるための資料も輸入に頼っている状況になります。

ここで疑問に思う人もいるかと思いますが、それなら国内での家畜の生産をあげればいいのでは?

飼料についても国内の生産を上げれば輸入に頼る必要はないのでは?と思うかと思います。

結論でいうと国土的な問題と農業業界の衰退が家畜の生産と飼料の生産をあげていくのが現実的に厳しいというのが現実です。

参考元:農林水産省https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/ohanasi01/01-04.html

生産向上が難しい理由

家畜の生産と飼料の生産が向上が難しい理由についてここからは説明していきます。

結論としては現状はすぐには向上させるのが厳しいのが結論になります。

それではなぜ厳しいのでしょうか。

まず一つ目に国土面積問題です。

日本の国土面積は3780万haです。

そのうちの割合として7割弱が森林、残りが住宅、農地、工業用地となっています。

農地面積としては437万haと1割程度しかありません。

現在の食生活を安定して農業で供給していくためには飼料などの栽培のために959万ha程度の国内の農地面積の2倍程度が必要になります。

この時点で現状足りていないことが分かると思います。

単純に森林部を農地にするだけでは農地としては使用することができないのでコストと手間が非常にかかります。

そのため国土的な問題からもすぐには飼料の生産を向上させていくのは厳しいのです。

次に農業業界の衰退についてです。

ニュースなどでも目にすることが多いため多くの人が農業が生産のための人手不足や担い手不足について知っているかと思います。

現状としては新規参入しやすくするために農地法の改正や農林水産省としても新規で人を増やすために補助金や助成金などを支援しています。

徐々に人が増えてきてはいますがこちらも時間がかかることには変わりありません。

また、5年以内に離農する人は約3割と定着して農業を継続することができていません。

このことからも農業業界の働き方についても考えていく必要があり農業業界が衰退している。

つまり、生産者がいない肉の生産ができないというスパイラルになっています。

国内の肉の生産を増やしていくためにはこの二つの課題をクリアすることはもちろんのことですが、飼料を安定的に生産し続ける事も大切です。

現状では輸入によって全て補えてる状況ですが国産飼料の増産や食品廃棄物等を利活用するエコフィードや飼料用米の利用拡大などにも取り組んでいく必要があります。

輸入飼料の高騰

次に輸入によるリスクについてです。

私達の身の回りにある物の多くは輸入品であることが多くあります。

ここまで紹介してきたように畜産も輸入に多くを頼っています。

特に近年では飼料の値段が高騰しているため畜産経営を圧迫している状況です。

それでは何が原因で高騰するようになってしまったのでしょうか。

一つの大きな理由としてウクライナ戦争による影響です。

戦争によって情勢が不安定になり穀物価格の上昇によって材料として使われている飼料も必然的に価格が高騰するといったのが原因になります。

畜産農家ではこの価格の高騰によって多くの農家の経営が圧迫されています。

家畜を育てるためには飼料が大量に必要であることはここまでで説明してきたので値段が高騰すると非常に大変なことがお分かり頂けると思います。

そこで農林水産省ではこの高騰からの経営圧迫による離農に繋がらないように緊急対策として補塡金を交付しています。

緊急対策としては2つの対策になります。

1.配合飼料価格高騰緊急特別対策

配合飼料価格の高止まりによる生産者の実負担額増加を抑制するため、配合飼料価格安定制度による補塡金とは別に、令和4年度第3四半期に、生産コスト削減等に取り組む生産者に対して補塡金を交付し、実質的な飼料コストを第2四半期と同程度の水準とします。

・補塡単価:配合飼料6,750円/トン

・交付タイミング:来年2月に価格安定制度による第3四半期の支払いとは別に、緊急対策の補塡金を交付予定

2.国産粗飼料利用拡大緊急酪農対策

生産コストの削減や国産粗飼料の利用拡大に取り組む酪農経営に対し、本年4月から乳価改訂が行われる11月の前月までの間のコスト上昇分の一部を補塡するものとし、都府県と北海道で購入粗飼料等の種類が異なること等を踏まえた補塡金(経産牛1頭当たりに換算)を交付します。

・補塡単価:都府県10,000円/頭北海道7,200円/頭

・交付タイミング:事業実施主体に対し、速やかに交付申請手続きが行われた農協等を通じ、生産者には11月以降、順次交付予定

参考、引用元:農林水産省「飼料価格高騰緊急対策について(令和4年9月)https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kikaku/lin/l_zigyo/shiryo.html

このように輸入による割合が大きいため農林水産省としても対策をしなければいけない状況となっています。

輸入によるリスク

輸入はメリットがある反面デメリットとしてのリスクがあることを認識しておかなければいけません。

輸入は確かに安く仕入れることができますが、

今回のように戦争など自国とは関係ないこと捉えている人も多いと思いますが、情勢が変動すれば色々な物に影響してきます。

特に食に関する物は輸入に頼っている面が日本は大きいため、高騰すればそれだけ国内での影響は計り知れません。

こういったリスクを減らしていくためには国内での生産性を向上させることは必要不可欠になります。

今後国内での消費に対する供給を安定していくためにも輸入に対するリスクを忘れてはいけません。

まとめ

畜産は私達の生活には欠かせない物になります。

食の変化によって年々傾向が変わってきているのもありますが畜産の国内での生産がますます大事になってきています。

日本は基本的に現在は国内の消費量に対して生産が追いついていないのが現状です。

そのため輸入に多くを頼っています。

この輸入には畜産物だけではなく家畜を育てるための飼料も含まれています。

しかし、いつまでも輸入に頼っているわけにもいかないのが現状です。

輸入は海外の情勢によって大きく左右され影響をうけます。

近年のウクライナ戦争による飼料の高騰などがいい例です。

農林水産省では今回の高騰に対して緊急対策として支援金を交付したりしています。

今後日本では畜産の生産を向上させていく目標を農林水産省は設定しています。

輸入に依存しすぎないように国内の生産性を高めていくのは今後の大きな課題となっているのです。

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