下手すれば作物全滅も!?土中の窒素が不足する「窒素飢餓現象」とは?

作物を育てていく上で、肥料はとても重要な役割を果たしています。

しかし、与える肥料の量や種類を良く考えておかないと、植物の育成障害の一つと言われる「窒素飢餓現象」を引き起こしてしまう可能性があります。

この現象が起こると、植物の育成が抑制されてしまい大きく育ってくれません。

そればかりか、この状態を放置していると、作物が全滅しまうという最悪の事態にまで発展しかねません。

今回は、この「窒素飢餓現象」について取り上げていきましょう。

窒素飢餓現象とは

窒素飢餓現象とは、土壌中の窒素が不足している状態のことを指します。

窒素は、植物が成長する上で必要不可欠な栄養素であり、タンパク質、核酸、クロロフィルなどの重要な構成要素を形成するために必要な要素です。

窒素が不足すると、植物の成長や栄養摂取が妨げられ、根や葉の発育が不良となり、落葉や実の発育不良などの発育障害が起こります。

また、植物は窒素不足の状態で他の栄養素を吸収しやすくなるため、ミネラルバランスの崩れが生じる場合があります。

窒素不足が起こる主な原因としては、以下のようなものが挙げられます。

・土壌中の窒素の量が不足している場合
土壌中の窒素が十分でないと、植物は十分な窒素を吸収できず窒素不足に陥ります。
・土壌中の窒素の形態が植物にとって利用しにくい場合

窒素は、アンモニウムイオンや硝酸イオンの形態で存在しますが、これらの形態が植物にとって利用しにくい場合、窒素不足が起こります。
・土壌中の微生物の活動が低下している場合

土壌中の微生物が窒素を循環させることで、植物が窒素を吸収できるようになります。しかし、微生物の活動が低下すると、窒素不足が起こりやすくなります。
・土地利用の過程で、窒素が流出してしまった場合
農業生産や林業などにおいて窒素の過剰な施用が行われると、窒素が流出してし、土壌中の窒素が不足することがあります。

窒素が植物に与える影響

ではまず、窒素は植物にどのような影響を与えているのかを解説していきましょう。

窒素は、植物にとって重要な栄養素の一つです。

植物が窒素を吸収し利用することで、葉や茎、花、果実などの成長に必要なたんぱく質やアミノ酸、クロロフィルなどを合成することができます。

しかし、窒素が過剰に与えらてしまったり、逆に窒素不足に陥ったりすると深刻な問題に発展してしまいます。

窒素の供給過多

まず、窒素の過剰な供給が植物に与える影響について見ていきましょう。

窒素が過剰に与えられると、植物は茎や葉を過剰に伸ばすことがあります。

また、葉の緑色素濃度が増加し、茎や葉が太くなります。しかし、これらの変化は、実際には植物の生育に悪影響を与えることがあります。

たとえば、茎や葉が太くなると、根に十分な養分が供給されなくなるため、植物の根の発達が妨げられます。

また、葉や茎の成長が過剰に進むと、花や果実の発育が不十分になることがあります。

窒素不足(窒素飢餓現象)

次に、窒素不足による窒素飢餓現象が植物に与える影響について見ていきましょう。

窒素不足に陥ると、植物は成長が遅れ、根や茎、葉などの形態が変化します。

たとえば、葉の色が黄色や白っぽくなり、葉が小さくなったり茎が細くなったりすることがあります。

また、花や果実の発育が不十分になり、収量の減少や品質の低下などが起こることがあります。

さらに、窒素不足により、植物がストレスを受けるため、病気や害虫にかかりやすくなることもあります。

植物にとって窒素とは、多すぎても少なすぎてもダメなんですね。

窒素飢餓現象が起こる原因

次に、窒素飢餓現象が起こる原因について解説します。

農業をおこなうにあたって、肥料が重要であるということは誰もが知っている事実。

しかし、その肥料の与え方を誤ってしまうと、窒素飢餓現象を引き起こしてしまう可能性があるのです。

肥料には、大別して、新鮮有機物と呼ばれる腐熟していない新鮮な肥料と、堆厩肥(きゅうたいひ)と呼ばれる腐熟の進んだ肥料の二つがあります。

この中でも新鮮有機物は、堆厩肥に比べて炭素含有率が多いとされています。

ここで新鮮有機物を与えすぎてしまうと、炭素が大量に土中に供給されるため、それをエサとする微生物の活動が活発化します。

微生物が大量に活動を始めた結果、土中の窒素を奪ってしまい一時的に窒素が足りない状態に陥ってしまうのです。

では、新鮮有機物を避ければいいのかというそうとも限りません。

肥料は、腐熟が進むにつれて窒素無機化率(植物が吸収できる窒素の割合)が下がり、これはこれで与えすぎると窒素飢餓による障害が発生してしまう可能性があるのです。

これが、窒素飢餓現象が引き起こされる原因です。

窒素飢餓現象を避ける方策

このように、新鮮有機物を与えすぎたことにより引き起こされる窒素飢餓現象。

それらを回避するには、以下のような方法があります。

①適切な肥料の施用

窒素の適切な供給量は、土壌の種類や肥料の種類によって異なります。

一般的には、植物が必要とする窒素の量を計算し、その量に合わせて肥料を与えることが望ましいと言われています。

過剰な施肥や、肥料の不適切な管理は、地下水汚染や環境破壊などの問題を引き起こすため、注意が必要です。

適切な量の窒素肥料を施用することで、窒素不足を防ぐことができるのです。

農業生産においては、効率的な窒素の管理が重要な課題となっています。

②農作物の輪作

同一耕地に異なる種類の作物を交 代に繰り返し栽培することを輪作といいます。 

同じ土地で同じ作物を繰り返し栽培すると、窒素が枯渇してしまうことがあります。

そのため、輪作することで窒素を効率的に循環させることができます。

③有機物の添加

砂地や山間部では、特に窒素飢餓現象が起こりやすいと言われています。

これらの土壌は、窒素を保持しにくく栄養分が不足しやすいためです。

このように窒素不足が起こりやすい土壌では、窒素を含む有機肥料を使用することが有効です。

有機物を土壌に添加することで、窒素を含む栄養素を供給し、土壌中の微生物の活動を活性化させ、土壌の肥沃度を高めることができます。

④窒素固定菌の利用

窒素固定とは、空気中に多量に存在する安定な(不活性)窒素分子を、反応性の高い他の窒素化合物(アンモニア、硝酸塩、二酸化窒素など)に変換するプロセスのことを言います。

窒素固定菌は、空気中の窒素を土壌中でアンモニアに変換することができる菌のことです。

窒素を固定する植物や微生物を利用することで、窒素を効率的に循環させることができるようになるのです。

例えば、アズキやクローバーなどのレギュメン作物は窒素固定能力が高く、土壌中の窒素を固定することができます。

⑤土壌改良

土壌の物理的・化学的性質を改善することで、植物の根の成長を促進し、窒素の吸収効率を高めることができます。

たとえば、土壌の保水力を高めることで根から窒素を吸収しやすくさせたり、土壌のpHを調整することで窒素を効率的に吸収させたりすることができます。

以上のような方法を組み合わせることで、窒素不足を回避し、収量を増やすことができます。

さらに、農業における技術の進歩によって、窒素肥料の利用効率を高めるため微生物肥料や窒素固定能力の高い遺伝子を導入した作物など、新たな手法も開発されています。

また、農薬や肥料の使用によって環境に与える影響にも注意が必要です。

持続可能な農業を目指すために、地球環境と共存する農業の実践が求められています。

補足:土中における微生物の特性、種類、働き

ここでは、窒素飢餓現象と密接な関係にある土中の微生物について補足的に解説していきます。

土壌中には、微生物が数多く存在しており、窒素循環において重要な役割を担っています。

窒素飢餓現象を理解するためには、土中における微生物の特性、種類、働きを把握しておくととても有利です。

微生物特性種類働き
細菌細胞壁を持ち、栄養を取り込むための酵素を分泌する硝化菌、脱窒菌、リン酸菌、アジ化菌、固定菌など土壌中の有機物を分解する、窒素やリン酸の循環を促進する、窒素固定を行う
真菌細胞壁を持ち、繊維状の菌糸を伸ばす糸状菌、酵母菌、担子菌、接合菌、粘菌など土壌中の有機物を分解し、植物の栄養素の吸収を助ける、土壌中の有害物質を分解する
原生動物真核生物で、一次生産者としての役割を果たすことがあるアメーバ、プロトゾア、輪形動物、鞭毛虫など土壌中の有機物を分解する、微生物を食べることで栄養を吸収する
緑藻光合成を行い、植物のように栄養素を作り出すクロレラ、スピロギラ、ココロナスなど光合成によって、酸素を発生させる、窒素やリン酸を固定する

細菌

細菌は、土壌中で最も豊富な微生物の一つであり、硝化菌、脱窒菌、リン酸菌、アジ化菌、固定菌などがあります。

窒素固定菌は、空気中の窒素を植物が吸収できるアンモニウムイオンに変換することができ、硝化菌はアンモニウムイオンを硝酸塩イオンに変換し、脱窒菌は硝酸塩イオンを窒素ガスに還元することができます。

これらの微生物が土壌中で働くことによって、窒素循環が維持されます。

リン酸菌は、リン酸を有機形に変えることで、植物の栄養素の吸収を助けます。アジ化菌は、有機物を分解することでアンモニアを生成します。

固定菌は、窒素を分子形からアンモニアやアンモニウムイオンに変え、植物が利用できる形にすることで窒素固定を行います。

真菌

真菌は、土壌中で有機物の分解や、植物根部に寄生して栄養素を供給することで、植物の生長に重要な役割を果たします。

また、真菌は土壌中の有害物質を分解することで、土壌汚染の軽減にも貢献しています。

酵母菌は、発酵に重要な役割を果たすほか、植物の根部に共生して栄養素を供給する働きをしています。

担子菌は、土壌中の有機物の分解や、植物の根部に共生して栄養素を供給することで、植物の生長に貢献しています。

接合菌は、土壌中の有機物の分解や、植物の根部に共生して栄養素を供給することで、植物の生長に重要な役割を果たしています。

粘菌は、有機物を分解し栄養素を吸収することで、土壌の有機物の分解に貢献しています。

原生動物

原生動物は、微生物を食べることで土壌中の有機物を分解し、栄養素を吸収します。

また、原生動物は、植物の根部に共生して栄養素を供給しています。

輪形動物は、微生物を食べることで、土壌中の有機物を分解し、植物の根部に共生して栄養素を供給すしています。

鞭毛虫は、微生物を食べることで土壌中の有機物を分解するほか、植物の根部に共生して栄養素を供給しています。

緑藻

緑藻は、光合成を行って、酸素を発生させることで、土壌中の生物の生存に重要な役割を果たしています。

また、窒素やリン酸を固定することで、植物の栄養素の吸収を助けています。

これらの微生物は、土壌の有機物の分解や植物の栄養素の吸収を助けることで、健康的な農作物の生産に重要な役割を果たしています。

まとめ

以上、窒素飢餓現象について説明してきました。

農家になろうとしている人にとって、窒素飢餓現象に対する理解は非常に重要と言えます。

農業において、地球環境と共存しながら持続的な生産を実現するためには、地域の気候や土壌特性に応じた適切な農業技術の導入や、自然環境の保護・回復などが求められています。

これらの取り組みによって、窒素飢餓現象の問題を解決し、持続可能な農業生産につなげていきましょう。

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興味が湧きましたら、是非とも他の記事も読んでみてくださいね。

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