農業をする上で、厄介な存在の一つが鳥獣害。
せっかく育てた農作物や、田畑が荒らされてしまうと、たまったものではありません。
害を与えてくる鳥獣にはさまざまな種類がありますが、
今回解説するのはヌートリアです。
ヌートリアは、日本に生息するネズミの仲間のうち最も大型のげっ歯類。
実は外見は動物園でも人気のげっ歯類「カピバラ」に似ています。
一部の層からは「かわいい」「愛くるしい」とも言われているのですが…。
かわいい外見とは裏腹に、侵略的外来種として扱われているのです。
なんと『世界の侵略的外来種ワースト100』と『日本の侵略的外来種ワースト100』!!
この両方に選ばれているのです。
農作物に大きな被害を与えることでも、悪名を轟かせています。
毎年大きな被害が出ているのです。
農作物以外でも、例えば電源ケーブルをかじって断線、穴を掘って堤防を破壊…。
数多くの被害を与えてくる厄介者です。
ヌートリアの生態を知り、万全の対策を練り被害防止をしましょう!
目次
1.カピパラそっくり?ヌートリアとは?
1-1.ヌートリアの歴史と生態
1-2.カピパラとそっくり?
2.脅威の繁殖力!農家への被害!
2-1.脅威!まさにネズミ算式の繁殖!
2-2.ヌートリアのターゲット!
3.ヌートリア被害対策!
3-1.①被害状況の確認
3-2.②防止柵を張り、侵入防止
3-3.③箱わなを使って捕獲
3-4.ヌートリアに天敵はいるのか?
4.捕獲するときは要注意!
5.まとめ
1.カピパラそっくり?ヌートリアとは?
1-1.ヌートリアの歴史と生態
ヌートリアは南米原産の大型げっ歯類。
体長50~70cm程度の大きさで、30~40cm程の尻尾を保有。
体重は4.5~7kgで、毛皮は茶褐色。
その茶褐色の毛皮に需要があったため外国から持ち込まれたのです。
かつては西日本を中心に飼育されていました。
太平洋戦争や朝鮮戦争が終わると毛皮の需要がなくなりました。
その後に放置された個体が野生化して繁殖してしまったのです。
岐阜県・愛知県・京都府・大阪府・兵庫県・三重県・鳥取県・島根県・岡山県・広島県。
…これらの地区で定着が確認されており、
今後本州の西側に生息域が拡大するのではという懸念があります。
なお、関東や福岡県の一部でも目撃された記録はあります。
しかし、定着しているといった情報はありません。
弱点が寒さなのもあり、冬に氷が張るような地域では定着しないのです。
ヌートリアは泳ぎが得意な半水性。
マコモやホテイアオイといった水生植物が主食です。2枚貝を食べることもあります。
農作物では水稲を最もターゲットにしてきます。
通常はつがいで行動しています。流れの弱い水辺の土手を掘って巣を作ります。
明け方と夕方にアクティブに動き、日中は巣穴でグゥグゥと寝ていることが多いです。
特定の繁殖期がありません。1年中いつでも繁殖を行います。
年に2~3回の出産を行い、1回で平均5~6匹の子供を生みます。
子供は3日で親と同じようなエサを食べ始め、なんと半年ほどで繁殖可能になります。
凄まじい繁殖力に加えて、日本では特に天敵がいないのです。
これらの理由で、個体数が年々増加しているわけです。
野生での寿命は5年から8年程度。飼育下では10年程生きた例があります。
1-2.カピパラとそっくり?
ヌートリアはカピバラに似て愛くるしい大型ネズミ。
オレンジ色の前歯が特徴です。
ヌートリアとカピバラを見分けるポイントは「尻尾」と「体長」。
ヌートリアには尻尾がありますが、カピバラには尻尾がありません。
また、カピバラは120センチ前後の体長。
それに対して、ヌートリアは40~60センチ前後と比較的小柄なのです。
その一方で、性格はのんびり屋のカピバラとは真逆です。
ヌートリアは凶暴で噛む力も強いとされているのです。
2.脅威の繁殖力!農家への被害!
2-1.脅威!まさにネズミ算式の繁殖!
ヌートリアによる農作物への被害は甚大です。
その被害額は全国で1億円にものぼるとも言われています。
ヌートリアは草食動物で、主に水辺の農作物や地下茎などを好んで食べます。
稲やカボチャ、白菜、大根、ニンジンなど、国内の多くの農作物に被害が及んでいます。
さらに、土手や堤防などに穴を掘って巣穴を作ったり、
水面上に植物を集めて浮巣にしたりするため、
貴重な水草の食害による生態系への影響やが懸念されているのです。
田んぼや河川などが荒らされる被害、
電源ケーブルなどを噛んで断線させるなどのインフラ被害も発生しているようです。
ヌートリアの被害報告が増加している要因として考えられるのが、高い繁殖力。
ヌートリアは年に2~3回繁殖するのです。一度につき5匹程度の子を産んでしまいます。
大型ネズミなだけあって、ネズミ算式に増加しているのです。
2-2.ヌートリアのターゲット!
ヌートリアは水辺に生息しているため、
水辺に植えられた農作物が被害のターゲットになります。
水稲の被害が非常に多いのです。
特に、若い苗であれば柔らかくて食べやすいため被害に遭いやすくなります。
その他にもニンジン・サツマイモ・キャベツ等の野菜類も食害のターゲットです。
ヌートリアによる農作物への食害は年々、深刻さが増してきているのです。
平成20年度の被害額は全国でなんと1億2千万円以上にまでのぼってしまいました。
特に被害が多いのは近畿地方。
兵庫県では平成20年度に、全国被害額のなんと半分弱にあたる約5千万円の被害。
被害の報告がされていないか、発覚自体されていない被害もあると思われます。
実際の被害額はさらに多いのではないかと予想されています。
直接的な食害以外にも、ヌートリアによる被害は数多くあるため、要注意。
ヌートリアは畦道(あぜみち)に穴を掘ることがあります。
それによって畦道が破壊されたり、穴から農業用水が漏れたりして
農作物に被害が出ることがあるのです。
3.ヌートリア被害対策!
脅威の繁殖力と凶暴な性格により被害がどんどん拡大していくヌートリア。
被害防止のためにはどのような対策があるのでしょうか。
〈ヌートリアの被害防止対策〉
①被害状況の確認
②防止柵を張り、侵入防止
③箱わなを使って捕獲
それぞれ解説していきましょう。
3-1.①被害状況の確認
「戦いに勝つにはまず敵を知ることから」と言います。
まずは、被害が「ヌートリアの仕業」かどうかを見分ける必要があります。
水辺から遠くない農地で農作への被害が出始めたら、ヌートリアの痕跡を探しましょう。
水かきのある足跡、巣穴、水辺の植物がかじられてバラバラになって浮いている様子。
これらを発見したらヌートリアによる被害の可能性が高いということになります。
以下の対策を仕掛けて被害防止しましょう。
3-2.②防止柵を張り、侵入防止
ヌートリアの侵入を阻む柵やネットの設置を推進する対策。
もっとも、適切に設置しないと、効果は薄いです。
ヌートリアの性質上、柵の下の土を掘ったり、ネットを食い破ったり…。
その結果、農地に侵入を許してしまいます。
設置もヌートリアの侵入防止に有効な仕掛けにしましょう。
田畑の周りに、柵の高さを60センチメートル以上に設定。
柵板のつなぎ目を完全に密閉することが重要です。
高さが90センチ以上あるものであれば、さらに安心です。
要注意点としては、1カ所でも脆弱な場所が発見されれば、ヌートリアは学習してしまいます。
その部分に集中して侵入をしてきます。
柵の下にはネットを敷いて、下からの侵入も防止するなどの工夫も大切です。
3-3.③箱わなを使って捕獲
根本的な解決策としては、捕獲を進めることも効果的です。
農作物を扱う農家自身が箱罠を設置し、ヌートリアの捕獲を狙います。
農家等が積極的に捕獲を行うように、箱庭のレンタルをしてくれる自治体もあります。
ちなみに、岐阜県岐阜市の場合、平成20年度の捕獲頭数264頭中163頭が、
個人で捕獲されています。
ヌートリアを捕獲には、頻繁に行き来する移動経路を探り出し、箱罠を使用します。
棲家となる水辺に木材などで足場を作り、箱罠を設置するのも有効です。
ただし、ヌートリアは国から特定外来生物に指定されているのです。
手続きや許可なく捕獲・飼育・運搬することは原則として法律で禁止されています。
こうした法律上の制約もあって繁殖に駆除が追いつかないのです。
いまだに生息数が増加し続けているヌートリア。
日本の農作物と生態系を守るためにも、
自治体とタッグを組んで綿密な計画と、早急かつ適切な対策が必要とされます。
猟友会による捕獲も期待されるところです。地元の猟友会がヌートリアを捕獲します。
主に罠を設置してヌートリアの捕獲していくのです。
被害が確認されたら、まずは自治体に問い合わせてみましょう。
農家と自治体がタッグを組んで相乗効果を生む事が大切です。
3-4.ヌートリアに天敵はいるのか?
前述もしましたが、国内にはヌートリアの天敵がいないのです。
カピパラに似たかわいい外見から、餌付けしてしまう人までいるのです。
このことからもますます日本の環境に適応して、驚異的に繁殖範囲を拡大してしまいます。
日本では、駆除方法に天敵を用いることができないのです…。
そのため、対策には防止柵や箱わなを使いましょう。
4.捕獲するときは要注意!
ヌートリアの対策の一つとしては、捕獲があります。
しかし、捕獲する際には注意が必要です。
ヌートリアはレプトスピラ症などの伝染病を媒介する可能性があるのです。
捕獲した際には、咬まれたリ引っかかれたリしないように要注意。
手袋をつけての作業や、こまめに捕獲機材の消毒なども必須です。
元々は、ヌートリアは人間が毛皮をとるために、わざわざ南米から日本に持ち込まれた動物。
人間側の都合で連れてこられたのです。
ですが、毛皮が不要となってしまい、野生化。さらには、駆除の対象になったのです。
これは、人間のエゴが生んだ問題とも言えます。
ヌートリアからすれば、極めて理不尽なお話でしょう。
ですが農家の方にとっては、ヌートリアの被害は深刻な問題なのです。
被害防止のためにも、対策を取るしかないのです。
ヌートリアが爆発的増加して駆除の対象になったこと。
残念ながら、人間の身勝手なエゴが生み出した問題です。
真摯に向き合い、このような問題が二度と起こらないようにすること。
我々人類の大切な課題です。
5.まとめ
今回は「ヌートリアの被害対策」についてでした。
元々は人間の都合で連れてこられて、害獣になってしまった悲しきヌートリア。
同情はしますが、農家が被害を被って良いわけがありません。
万全の対策を練って、被害防止をしていきましょう。
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