現役農家さんは普段安全に配慮しながら農業をしていますでしょうか?
農作業をしていると様々な作業を行うので常に危険が付き纏っています。
例えば稲作農業をしている方はトラクターなどの重機を扱います。果樹農家の方は脚立などを使用して高い場所で作業を行うケースもあります。
また農林水産省のデータによれば産業別において死亡事故が圧倒的に多いのは「農業」となっています。
なぜここまで農業の事故が多いのか?未然に防ぐことはできないのか?
この記事では事故の発生件数・事故の事例・対策について解説していきます。
この記事を読んで労働環境を再度見直してみてはいかがでしょうか?
農作業での事故の発生件数について
農林水産省が発表した実際に2022年(令和4年)に起きた農作業中の事故件数について紹介します。
【令和4年1月〜11月に起きた事故件数】
事故件数 | |
1月 | 9件(うち4件死亡事故) |
2月 | 13件(うち5件死亡事故) |
3月 | 23件(うち9件死亡事故) |
4月 | 33件(うち9件死亡事故) |
5月 | 47件(うち19件死亡事故) |
6月 | 40件(うち16件死亡事故) |
7月 | 29件(うち13件死亡事故) |
8月 | 35件(うち18件死亡事故) |
9月 | 36件(うち13件死亡事故) |
10月 | 40件(うち19件死亡事故) |
11月 | 11件(うち4件死亡事故) |
令和4年1月〜11月までの事故件数は316件、そのうち死亡事故は129件となっています。
農業による事故は年々減少していますが今でも100件以上の死亡事故があります。
なぜここまで事故が多いのか?
農業において事故が多い作業や原因について解説します。
農作業において死亡事故が多い作業とは?
農作業において圧倒的に死亡事故が多いのは「機械作業での事故」と言われています。
事故原因としては機械を使用する上での「機械の転倒」や「機械の挟まり・巻き込まれ事故」が挙げられます。
また次に農作業で多いのは「高所作業中の転落」「熱中症」「圃場からの転落」が挙げられます。
様々な事故が多い農業ですが、機械作業での事故は7割を超えていると言われています。実際にどんな事故が発生しているのか事例を紹介します。
【トラクターによる事故】
トラクターによる事故は多く特に「修理点検中」「機械の取り替え作業中」に起こります。
その原因として「ブレーキの連結ロックをかけていない」が多く挙げられます。片側だけブレーキがかかっており、それが原因で転倒してしまうといった事故も発生しています。
【草刈機による事故】
草刈り機による事故は使用場所の環境によって生じる事故が多いです。
傾斜面などで草刈機を使用して不安定な姿勢で長時間行うことでバランスを崩し傾斜面から転落するなどが実際に報告されています。
また事例は少ないですが草刈機の歯に草が詰まり、草を取ろうとした際に歯が動き出したなどの例もあります。
【高所作業中の転落】
高所作業中の転落事故はかなり多い事故です。
脚立から転落をして頭を打ったりし死亡する事故もあります。またその際に1人で作業を行なっており、
長時間気づいてもらえず気づいた時には手遅れという死亡事故も実際にあります。
農作業事故が発生する要因とは?
農作業中に発生する事故の原因として「これが原因」といったことはなく様々な要因が組み合わさって事故が発生します。
ここでは何が要因で事故が発生するのか紹介します。
気候・天候など環境要因
気候や天候、環境によって発生する事故が挙げられます。例えば先ほど草刈機の事例を紹介しましたが傾斜面で草刈機を使用している際の落下事故は前日に雨などが降っていれば地盤が緩んで滑りやすくなっている可能性もあります。濃霧で視界が悪い状況でも仕事を行わなければならない日もあります。
環境においても日本というのは平坦な農地が少ないと言われています。耕作地の約6割が傾斜地と言われており、安定した姿勢を保って農作業をする場所は少ないと言えます。
こうした天候・気候や環境は事故の要因と言えるでしょう。
老朽化した機械での要因
農業で使用する機械というのは常に安全で高品質な機械が発売されています。しかし高価なモノが多く長い期間、同じ機械を使用しているという農家さんも多くいます。
手入れをしていても機械というのは常に老朽化しており、トラクターによる転倒は機械の不具合で起こるケースもあります。
機械を変えたくてもお金がなく変えることができず、こうした機械の老朽化は事故発生要因の1つと言えます。
高齢による要因
農業従事者の高齢化が要因で起こる事故は多くあります。
高齢化になると、「体力低下」「判断力の低下」「反応の低下」「注意散漫」など様々な症状が出てきます。
長年同じ作業をしていると、年齢を重ねてもできるという油断により事故が起きてしまいます。
高齢化による事故はどうしても未然に防ぐことが難しく農業における課題とも言えます。
農作業における事故の対策とは?
事故の原因や事例について紹介しましたが毎年発生している事故というのは類似しています。
毎年同じような事故が発生しているということは未然に防ぐ対策というのもあります。
未然に防ぐために大切なことは「ヒューマンエラー」にしないことです。
ヒューマンエラーで片付けてしまうと再発防止にはなりません。まずは当事者だけのミスで起きた事故という認識ではなく「機械による事故の原因」「作業環境による事故の原因」「安全第一ではない経営の原因」など見直す必要があります。
また事故の原因は主に3つに分類されており、
- ハード的対策
- ソフト的対策
- システム的対策
この3つが未然に事故を防ぐ対策と言われています。1つずつ詳しく解説していきます。
ハード的対策
ハード的対策とは農業機械の安全装備を指します。
現代の農業は技術の進歩により、機械抜きでは農作業を行うことができなくなっています。
しかし実際には農業機械での事故が多く起きています。
農業機械での事故を防ぐために安全装備が必要であり、農林水産省や農業機械等が協力して統一された農業機械安全装備の取り決めがあります。
現在国内では95%以上が定められた安全装備を施していますが一部では安全装備が施されていないモノもあります。
また農業従事者の方は「安全装備が施してある機械を選ぶ」「点検を頻繁に行う」「体型等に合った機械を選ぶ」など対策が行えます。
ソフト的対策
ソフト的対策とは農作業安全のための指針を指します。
農林水産省が農業者が安全に作業を遂行するためのガイドラインとして「農作業安全のための指針」を定めています。詳しくはhttps://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_kikaika/anzen/attach/pdf/index-51.pdf">こちらをご覧ください。
これは事故防止を狙うモノですが、加えて女性農業者の増加の伴い女性や高齢者への配慮も必要な項目に挙げられています。また事故防止のための最低限のガイドラインに過ぎませんので、より高度な安全作業に取り組むことを推奨されています。
システム的対策
機械の安全装備や人の作業への取り組みが安全であっても作業環境に不備があったり経営に安全意識が欠如すると農家全体での安全性は向上しません。
例えば安全装備が万全であり、作業者の意識が高くても危険箇所が改修されていなかったり安全のために必要な投資を怠ると安全の割合は低くなります。
組織として安全対策を意識することで、環境整備や作業方法を改善したりすることで事故を防ぐ有効な手段になります。
まとめ
この記事では農作業における事故発生の概要や対策について解説しました。
農作業のみならず仕事において事故というのはどれだけ配慮していても起こるモノです。
しかし過去に起きた事故を見返し未然に防ぐ対策を行うことはできます。
常に安全に配慮することはもちろん、1人で作業を行わず複数人で行うことで「熱中症」などは防ぐことができます。
1人1人の意識を高めることが何より未然に事故を防ぐ対策です。
また「みんなで農家さん」というサイトでは農業に関する情報が幅広く掲載されています。
事故を防ぐためのヒントが見つかるかもしれませんので、ぜひご覧ください。
https://minnadenoukasan.life/
最後まで閲覧いただきありがとうございました。
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