【耕さない】不耕起栽培のメリット・デメリット

不耕起栽培(ふこうきさいばい)という栽培方法をご存知ですか?田畑を耕さずに作物を栽培する方法のことを言います。耕す行程が減るため、省力化を図ることができるのです。
「耕さなくてもいいの?今までの苦労は一体?」と思われる方も多いでしょう。
しかしまだまだ日本では馴染みの薄い方法です。
不耕起栽培について解説していきます。

1.不耕起栽培とはなにか?

少年漫画の名作「ドラゴンボール」で、悟空が覚醒して超サイヤ人になります。胸熱なシーンですが…超サイヤ人の誕生秘話をご存知ですか?
「親友のクリリンを爆発させたから…」というのは作中でのお話。実は、鳥山明さんの漫画の作業の省力化が理由だったのです。

悟空の黒髪をベタで塗るのが相当な手間だったらしく…過酷な週刊連載を乗り越えるために金髪にしてしまえば白黒で描くため「黒く塗る必要がなくなる」というのが理由だったのです。

農業も同様、過酷な作業が多い仕事です。少しでも省力化ができればありがたいですね。
不耕起栽培とは「農地を耕さずに作物を栽培する」方法。田畑を耕し整地する工程を省略することができます。

つまり省力化につながる栽培方法といえます。

さらに、作物を刈った後の株や“わら”などを廃棄せず、そのまま田畑の表面に残して利用するという地球にやさしい栽培方法にも繋がります。

作業時間の短縮することが可能になるので、省エネルギーな栽培方法として注目されているのです。

不耕起栽培の起源と言われているのは、以下の二つの主張です。
1943年、アメリカのエドワード・フォークナーの「有機物を表土に混ぜ込むだけで肥沃な土壌は維持できる」という主張。
持続可能な農業を研究していたウェス・ジャクソンによる「耕起を基礎とした農業は持続可能性が証明されていない」という指摘などから生まれたと言われています。

これらの説が元となって、不耕起栽培が生まれたと言われています。


2.メリットとデメリット

2-1.不耕起栽培のメリット
①土壌環境の改善
不耕起栽培の特徴として、刈り取った後の株やわらをそのまま土壌表面に残すことができるという点があります。

これらの有機物は、土壌に棲む生物達の餌となります。
ミミズや微生物などの土壌生物によって分解され、彼らの排泄物や生成物によって土の団粒化が進行するのです。これによって、作物の生育しやすい豊かな土壌環境へ変化していきます。

さらに、人為的に土壌の養分調整をする必要がなくなります。

・作物の生育が良好→養分の無機化が促進
・作物の生育が不良→余分な養分を土壌生物が利用

「作物に必要な養分の調整を土壌が行ってくれる」という手間要らずな土壌環境になります。

この状態にするのにどうしても時間はかか養分過多による病害被害を抑えることはできます。

②植物が強化される
耕された農地の方が、植物にとっては根を伸ばしやすい環境といえます。
しかし耕されていない土を根が突き破ることによって、根や茎は太く、強い作物になるのです。

作物そのものがたくましくなるというのは、不耕起栽培のメリットと言えるでしょう。
さらに、刈り取った株をそのままにするため、土の中に根が残りますが、それにより保水性が向上するのです。
養分が土壌から流出する可能性が減るため、作物にとって最適な土壌環境を保つことが可能になります。

③農作業の省力化
現代では、耕運機などの農機具により、畑を耕すのが楽になってきました。
ですが、それでも広い農地を耕すには多くの時間を使います。

さらに、農機具本体にかかる費用や、燃料費などの維持費など…。
それなりのコストが必要になります。

不耕起栽培はその名の通り、畑を耕す作業を省略するのです。
そのため、農作業の労力を省力化することができます。
つまり、コストも抑えることが可能になります。

2-2.不耕起栽培のデメリット
①病気拡大の可能性
耕さないことによって、病気が拡大してしまう…という可能性もあります。
植物に感染する病気の中には、空気を嫌う「嫌気性菌」が原因のものもあります。
嫌気性菌は、畑を耕し空気に触れさせることで退治することができます。
しかし、不耕起栽培の場合には、彼らが空気に触れる機会がほとんどないのです。

もちろん逆の例もあるため、一概に言うことはできませんが、病気の種類によっては、不耕起栽培が原因で被害が拡大するという可能性もあるのです。

②育成に不具合が出る可能性
不耕起栽培は、畑を耕さないため、土を混ぜません。
これによって、植物の栄養分が土の表面に集中してしまうことにもなります。

畑を耕せば、地中に栄養分をすき込むことができます。
土の奥へと根が伸びていくことになります。
ただし、土表面に栄養が偏っていた場合は、植物の根が土の表面に伸びてしまいうまく育たないこともあります。


3.不耕起栽培のポイント

不耕起栽培をスタートする際に、知っておきたいポイントについて解説しましょう。

不耕起栽培は慣行農業でも取り入れることが可能です。
しかし、有機栽培であれ慣行農業であれ、「耕さない」だけで成立するものではないことには注意をしておきましょう。

土地の環境や土壌や気象の条件など、好条件を得ることができなければ、難易度が増してしまいます。

さらに、慣行農業の耕うん栽培よりはどうしても収量が少なくなることはあります。
慣行農業との違いをあらかじめ理解しておいた方が良いでしょう。

これに加えて、元々地力が低い畑を不耕起栽培できる畑にするには数年必要になることもあります。

『不耕起栽培のすすめ』によれば、不耕起栽培の特徴は「地力を維持する」効果であり、地力を高める働きは弱い、と記載があります。

つまり、地力が低い圃場で不耕起栽培を続けても、農作物の生育は良くならないのです。
不耕起栽培に取り組むためには、不耕起栽培に適した土を作るという事前準備は必須となります。

地力が低い圃場には堆肥や緑肥作物を鋤き込み、地力向上をしましょう。
3〜5年かけて地力を向上させ、不耕起栽培に転換してからも、数年間は地力向上のための土づくりを継続しましょう。

有機物を地表面に多めに敷いたり、緑肥作物の種をうね間にまくなどなど…。
土壌をアップデートする方法には、油かすを使う方法などもあります。
詳しくはこちらの記事もご覧ください。
【畑をアップデート】有機質肥料「油かす」の秘密

また、「全ての農作物において不耕起栽培が良い」というわけではないのです。

土壌は常に変化するものです。
そのため、農地の状態や栽培作物によって最適な栽培方法は異なります。

不耕起栽培のメリットとして「土壌環境が改善される」と挙げました。
しかし、土壌環境が整うまでに膨大な時間が必要となるのです。

安定した収量を早く収穫したい場合には、従来の栽培方法のほうが安定した収入の確保にはつながるのではないでしょうか。

「不耕起栽培で育てた、たくましい農作物を消費者に提供する」という強い信念があるのなら、不耕起栽培は、一つの有効な方法になるでしょう。


4.日本ではまだまだこれから…

4-1. 好条件を整備することが大切
『不耕起栽培のすすめ』では、“慣行農業の耕うん栽培よりはどうしても収量が少なくなる”と記載されています。
しかし、収量は栽培する作物や土壌、気象条件次第と言えるでしょう。

農研機構の成果情報「東北農業研究センター2007年の成果情報」には『トウモロコシは不耕起栽培でも耕起栽培と同等の収量性が得られる』という発表があります。

引用しますと…

黒ボク土圃場で不耕起栽培されたトウモロコシの初期生育、耐倒伏性、雌穂重割合、乾物収量は耕起栽培のそれらと同等であり、4年程度の継続であれば収量性に顕著な低下はみられない。また、不耕起栽培時の雑草は除草剤により効果的に防除できる。

とのことです。

黒ボク土圃場で不耕起栽培されたサイレージ用トウモロコシ。
いろんな条件下(多様な品種や作期、肥料を施す栽培管理等)において、その乾物収量や雌穂重割合が耕起栽培と同等のレベルだったとのことです。

本文中には“本成果はすべて排水良好な圃場で得られたものである”ともありました。
好条件が得られないと難易度が難しくなる不耕起栽培。
この成果は“黒ボク土圃場”であることや排水良好な圃場であったことが関係しているのではないかとも考えられます。

不耕起栽培のための好条件を整えるための事前準備。これには、どうしても時間がかかってしまいます。
しかし、好条件が揃えば、収量の影響が出にくい不耕起栽培をすることも可能かもしれません
環境保全型農業に関心が高い方は、根気強く挑戦してみる価値はあるでしょう。


4-2.日本での現状
不耕起栽培の現状について解説しましょう。日本においては、少々厳しいと言えるでしょう。
アメリカでは成功例も報告されている不耕起栽培。
しかし、日本では環境として導入は難しいのです。

日本にはアメリカのような広い農地がほとんどないことが理由です。
他の農地と隣り合っていることが多く、万が一、自分の農地で問題が起きた時、隣り合っている農地へも被害が拡大する可能性が高いからです。

さらに、不耕起栽培の成功例がアメリカにあると書きましたが…日本とアメリカではそもそも気候や農業環境が違うという事情があります。

日本での成功例、不耕起栽培の実践的なノウハウが少ないこと。
これらも、不耕起栽培が少ない要因と言えます。

参考文献
涌井義郎『土がよくなりおいしく育つ 不耕起栽培のすすめ』(2015年、一般社団法人家の光協会)
農研機構 「東北農業研究センター2007年の成果情報」


5.まとめ

今回は、「不耕起栽培」についての解説でした。
畑を耕すという手間を省くことのできる画期的な栽培方法ではありますが、メリットとデメリットがあることを理解しましょう。

日本ではまだまだ普及は難しそうでしが、好条件の土地や気候が揃っているのであれば、挑戦してみる価値はあるでしょう。農作物の付加価値、持続可能な農業にもつながります。

農業は奥が深い世界ですね!これからも刺激的な情報をお送りします。

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