「将来、農家を経営したい」と考えている方も多いのではないでしょうか?
農家を経営し、利益を出していく農業を目指すのであれば、経営知識を身につけておく必要があります。
農業経営能力を高めるためには資格をとっておいて損はありません。
そこで、まずとっておくべき資格として挙げられるのが「農業簿記検定」です。
本記事では、農業経営簿記について、概要、取得メリットなど詳しく解説していきます。
農業簿記検定とは?
農業簿記検定とは、農業専用の経営スキルを身につけるための資格であり、一般社団法人「全国農業経営コンサルタント協会」監修のもと、2014年から行われる資格です。
農家を経営するのであれば、農作物や作業の知識、技術はもちろん必要ですが経営のスキルも重要になってきます。
また、生産や販売により農業所得を得ているのであれば、必ず簿記をつける必要があります。
もちろん、簿記検定を取得している人を雇うのも1つの手段ではありますが、人件費などのお金をかかってくるため自身で取得することをお勧めします。
農業簿記検定はなぜ取得するべきなのか?
近年、法人化する農家も増え個人農家も規模にかかわらず一事業主として扱われるようになりました。
事業者として会計業務を行い、正確に収支を申告したうえで、適切な税務処理まで行う必要があるということです。
主にどのような場面で簿記が必要になるのでしょうか?
- 決算、確定申告
- 補助金や各種支援制度の申請
- 事業計画立案
例えば、決算や確定申告では1年分の収支報告書や申告書を作成しなければなりません。そのためには1年間にわたって正確に会計処理を継続する必要があります。
税金や事業の提出す書類は、基本的な知識だけでなく専門的な知識を必要とするため、農業簿記検定を持っておけばスムーズに行うことができます。
一般的な簿記との違い
農業簿記と一般的な簿記の違いは?と感じる方も多いのではないでしょうか?
経営に必要という観点では、変わりはありません。
しかし、農業簿記検定には商業簿記にない専用の科目があります。
決算・申告時に貸借対照表や損益計算書に記載されるため、農業簿記に基づいた正確な知識が必要となってきます。
【勘定科目が異なる】
農業簿記では、通常の簿記に使用しない勘定科目を使うことがあります。
例えば、生産資材の経費を「種苗費」「素畜費」「農薬衛生費」などの勘定科目で仕訳をすることができます。
他にも農業共済に加入している場合であれば「農業共済掛金」の勘定科目で掛金の仕訳が可能です。
【確定申告の書式が異なる】
法人に属してないのであれば、確定申告は必要になってきます。
確定申告の際に提出する決算書・収支内訳書は、農業簿記では専用の書式を用います。
また、農業以外の所得がある場合は、農業所得とは区分けして売上や経費をまとめる必要があります。
【棚卸しの方法が異なる】
飲食店など月末に在庫の整理などで棚卸しを行う店がほとんどです。
通常の簿記では「商品」などの勘定科目を使ってまとめて棚卸しを行いますが、農業簿記では在庫の種類によっては、「農産物」「仕掛品」「原材料」「貯蔵品」の4つの勘定科目に分けることが一般的です。
ここで、農業簿記が必要な科目をいくつか挙げます。
- 原材料
- 農産品
- 材料費
- 諸経費など
これらは一部分ですが、商業簿記だけの知識では仕訳できない科目が多いので、身につけておきましょう。
農業簿記検定を取得するメリットとは?
農家を経営するのであれば、ビジネス視点も必要になってきます。
また、事業が大きくなってくると人を雇うことや生産する作物を増やしたりすることでより複雑になってきます。
農業簿記検定を持っておけば、ビジネスの視点でも分析することが可能になってきます。
ここからは、メリットについて解説していきます。
農業経営の改善点がわかる
農業簿記の資格を取得できれば、数値を見て経営状態を常に確認することができます。
例えば、100万円の農機具を購入しようか検討しているときに、一般の方であれば、「効率が良くなるかな?」「この機械で身体が楽になるかも!」といった意見になりますが、
簿記検定を持っていれば、「何年かけて償却できるのか」「経費としてどれくらい落とせるのか」など経営視点での考えを持つことができます。
農業簿記を持っていない方で、農機具をどんどん新しくしていき1年の決算を確認すると「赤字だった」という方も中にはいます。
そういった事態もなくなり、経営状態が見えるようになり経営計画の立案や見直しが可能になります。
他の法人でも使用できる
農業簿記検定を取得していても、経営がうまくいかず倒産となる場合もあります。
しかし、簿記検定を持っていれば他の農家法人でも雇用の際には優遇されやすくなりますし、自身でもう一度経営を行う際にも農業簿記を持っておけば、新しく立て直すことも可能です。
また、取得した知識を他の農業団体や個人の農業経営に役立てれば、地域農業の活性化にもつながります。
農業簿記検定の概要
ここからは農業簿記検定に関する概要を解説します。
農業簿記検定は、3級〜1級までがあり、
・3級(財務会計)
・2級(財務会計・原価計算)
・1級(財務会計・原価計算・管理会計)
になります。
また、農業簿記検定の出題形式がマークシートの選択式になります。
また、3級〜1級までの合格ラインは総得点の70%を超えていれば合格となります。
受験する際の資格は不要で、学籍や国籍などの縛りもないため一般的には誰でも受講が可能になります。計算問題もあるため電卓を携行することは可能ですが、スマートフォンのように通信機能が搭載されている機器は使用できませんので注意しましょう。
合格率
合格率でどれくらいの難易度かわかるので気になる方も多いかと思います。
3級〜1級までのそれぞれの合格率を解説していきます。
【3級】
2019年の受験者数1802人で合格者数は1116人で、合格率は61.9%となっています。
そして、1番最新の2022年の受験者数は825人で、合格者数は520人、合格率は63%となっています。
【2級】
2019年の受験者数573人で合格者数は320人で、合格率は55.8%となっています。
そして、1番最新の2022年の受験者数は352人で、合格者数は187人、合格率は53.1%となっています。
【1級】
2019年の受験者数145人で合格者数は48人で、合格率は33.1%となっています。
そして、1番最新の2022年の受験者数は98人で、合格者数は24人、合格率は24.5%となっています。
合格率を見てわかる通り、1級はかなり難易度が高くなっています。
独学での勉強方法
独学での勉強方法は、農業簿記検定の監修者である「一般社団法人 全国農業経営コンサルタント協会」と「大原学園大原簿記学校」によるテキストと問題集の使用をお勧めします。
また、過去問もかなり有効であり、毎年過去問の類似や変化系が多く見られます。
本試験と同じ時間配分で問題集を解き、合格ラインとなる総得点の70%は最低でも取れるようにしましょう。
また、資料請求も行なっているので資料などにも目を通しておきましょう。
詳しくはこちらをご覧ください。
一般財団法人日本ビジネス技能検定協会
農業簿記検定と一緒に取るべき資格
最後に農業簿記検定と相性のいい検定について解説します。
絶対必要というわけではないので、取得できるのであれば取得しておきましょう。
税理士
税務のスペシャリストである税理士の資格試験では、「簿記論」と「財務諸表論」が必須科目となります。簿記検定を持てば、税理士試験でその知識を生かせることから、簿記検定試験にチャレンジする税理士志望者も珍しくありません。
ただし、税理士となるとかなり難易度は上がるため相当な勉強時間が必要になります。
ビジネス会計検定
ビジネス会計検定とは、企業の財務状況チェックに欠かせない財務諸表の分析能力を評価するための検定です。
経理、財務担当はもちろん、営業職や経営者にとってもスキルアップに役立つ資格として知られます。
求められるスキルや知識が簿記と重複する部分が多く、ステップアップとしてダブルライセンス取得をする方も少なくありません。
また、税理士よりも難易度は低いため先にビジネス会計検定を取得するのもいいでしょう。
まとめ
本記事では、農業簿記検定の概要、合格率、取得メリットなど解説しました。
農業簿記の資格を取得しておくことは、日々の会計業務や決算や確定申告に役立つだけではなく、経営を可視化しビジネスの視点で農業を捉えるベースにもなります。
これから農家を経営したいという方は、経営基盤の1つとして農業簿記の取得を検討してみてはいかがでしょうか?
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最後までご覧いただきありがとうございました。
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