農業では「農薬」や「化学肥料」など環境や人体に悪影響を及ぼす可能性のあるモノを取り扱います。使い方や使用量に関しては定められているものの、中にはこの法律に従わない方がいるのも確かです。
そんな中でも農薬についての使用方法や使用量が決められている「農薬取締法」をご存知でしょうか?
この記事では農薬取締法についての解説、また法律を無視した際の事例についても紹介します。
農薬取締法とは?
農薬取締法は1984年に制定された法律であり、戦後間もないころは農薬の規制というのはありませんでした。
大きな要因として食料の大量生産を急いでいたからです。しかしその反面、農薬による健康被害が後を経ちませんでした。
そこで「農薬の品質」「農薬の使用規制」など安全な農作物を安定的に供給して国民の健康被害や生活環境を保全することが制定の目的でした。
その後、「環境への負荷」「国民の人体に及ぼす影響」などの調査や研究を重ね、何度も改訂されました。
現在の農薬取締法の一部を紹介します。
・公定規格の設定による農薬の品質保持と向上
・病害虫の防除用農薬の適正管理
・農薬の登録制度による製造・販売者への規制と農薬使用者への規制
・販売者への届け出義務と販売の規制
・検査の実施
などが定められています。
「製造・販売・輸入者の規制」については取り扱う農薬には農林水産大臣による登録を必要とし、未登録の場合や法律に従った表示がない場合は「製造・販売・輸入」が禁止されています。
また「農薬使用者への規制」では登録農薬及び特定農薬以外の使用を禁止しています。
農薬として登録ができるものは「品質が保証されており、薬効と安全性が確保されているものだけ」になります。
ここでは全ての規則に関しては紹介しませんので、こちらをご覧ください。
農林水産省:https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_kaisei/attach/pdf/index-21.pdf">農薬取締法(最終改正:令和2年12月1日)
農薬取締法の歴史について
現代でも農薬や化学肥料の使用については研究が繰り返されており改正がされています。
農薬の問題は常に社会問題にも発達しており、国民の健康に対する意識の高まりなどを受け、農薬取締法はかなりの改正が行われています。
ではどのように改正されていたのか年代別に解説していきます。
1963年の改正
初めに農薬取締法が改正されたのは1963年でした。
この時に問題になったのは、水産動植物の被害の懸念・防止から水産動植物に有害な農薬の取り扱いに関する法律が制定されました。
戦後に化学農薬を使用していた際はとても効果があり、かなり需要が高まりました。
しかし台風や豪雨などの自然災害で散布した農薬が川や海に流れ漁業に大きな被害が出たことが問題になりました。
そのため、水産動植物に被害の出る農薬が登録できなくなりました。
1971年の改正
1971年は人畜被害防止の観点から「残留農薬の整備強化」「登録制度の強化」が行われました。
1971年の日本では大気汚染や水質汚染などが社会問題になっており、それまで使用した農薬には有機水銀などの有害物質が残留しており残留農薬の問題が大きく取り上げられました。
そのため、作物や土壌に残留する可能性のある農薬は人畜に被害を及ぼすとして農薬の登録ができなくなりました。
2002年の改正
2002年は農薬使用者全ての方に無登録農薬の使用規制や使用基準の順守義務化などの内容が改正されました。
無登録農薬の販売や使用が明らかになったことで国民の信頼が失われていき、国民への健康に不安を与える大きな問題となりました。
そのため農薬の使用者には使用基準を厳しく設け、無登録農薬は販売・製造・輸入の全てが禁止されました。
2018年の改正
農業従事者の方にはまだ記憶に新しいかと思いますが、2018年に大きく農薬取締法は改正されました。
主に改正されたのは大きく3つであり、
・再評価制度の導入
・登録審査の見直し
・ジェネリック農薬の登録審査の簡潔化
より安全な農薬を使用する目的で評価制度が導入され、無登録の農薬を審査する際の審査の基準の変更、そしてジェネリック農薬の登録は農薬原体の成分・安全性が同じであれば試験データを一部免除できるという改正です。
こうした改正は「国民の健康への安全の保証・環境負荷への軽減」など様々な目的のために繰り返されています。
農薬の分類について
農薬は、
・有効成分
・用途
・形状
などの違いによって分類することができます。
主な分類方法について解説します。
化学農薬と生物農薬
有効成分によって農薬は2種類に分類することができます。
化学農薬は科学的に合成された物質や天然物等を有効成分とする農業用の薬剤であり、生物農薬は天敵昆虫や微生物などを用いた農薬です。
生物農薬は化学農薬と比較すると安全で環境に優しいとされており研究が進んでいます。
用途の違いによる分類
農薬は使用目的によっても分類されます。
例えば病害虫の防除に用いるものであれば「殺虫剤」「殺菌剤」「除草剤」などがこれに分類されます。
これらの使用目的としては病害虫の被害を防ぐためが一般的ですが、農薬には「誘引剤」と呼ばれる害虫を誘き出す農薬も存在します。
「誘引剤」などは使用目的を誤ると大きな事故になりますので注意が必要です。
そして中には成長調整に用いる農薬も存在します。
「発根促進剤」や「着果促進剤」などの「植物成長調整剤」はこちらに分類されます。
他にも剤型による分類や、薄めて使うものなど様々ありますが、「農薬の分類」について覚えておくと農薬取締法も見やすくなります。
「農薬取締法」違反時の罰則規定について
農薬取締法は規則を破ると当然罰則があります。
違反には「最大3年以下の懲役、若しくは100万円以下の罰金(製造・販売・輸入者が法人の場合は1億円)」が課せられます。
農薬取締法の違反について解説していきます。
使用方法を厳守しない
農薬は登録時に定められたものがあり「使用回数」「使用量」「使用時期」「使用総回数」を厳守しないと罰則の対象になります。
例えば、使用している農薬の使用量を超える量を使用した場合は違反です。
規定の量よりも少なく使用することは良いですが、その場合害虫駆除などの効果が薄れてしまう可能性があるので注意が必要です。
また農地では誰も確認していないから大丈夫などとと持っていても、出荷時に農薬の検査がありますので必ず守りましょう。
適用表に記載されていない作物や雑草への使用
農薬には使用できる作物は決められています。
適用していない作物や雑草への使用は違反行為に当たり、罰せられます。
農薬に記載されているラベルをしっかり確認した上で使用しましょう。
農薬使用の現状と取り組みについて
ここまで農薬取締法について様々な概要を説明しました。
最後に日本の農薬使用の現状とこれからの取り組みについて解説します。
農薬使用の現状
日本では農薬取締法の改正などで農薬に関する様々な規制がされてきています。
もちろん、より国民の健康被害や環境問題を懸念してのことです。
では世界と比べて日本の農薬使用はどうなのでしょう?
日本は世界に比べると農薬の使用量は多いと言われています。
これは日本の気候に問題があるからです。
日本では世界の国と比較すると寒すぎず暑すぎない適度な環境です。
つまり害虫などが比較的すみやすい環境と言えます。
日本では2006年に農薬を使用しないで作物を栽培した場合、大きく作物の収穫が減収すると言われています。
つまり日本で農薬は作物を安定的に生産するために必要不可欠なものと言えます。
日本ではこれからも農薬の規制や使用基準を考えていき、農薬をうまく使用していく必要があるのです。
これからの取り組みについて
世界では「SDGs」など人や環境に優しい持続可能な取り組みが推奨されています。
日本でも「無農薬野菜」や「減農薬野菜」などが大きく取り上げられる時代になってきました。
温暖な気候の日本では全ての作物を農薬を使用せず栽培するというのは厳しいのが現状です。
農薬を使用する際は決められた使用方法を守って、農薬の使用を減らしていく姿勢が大切になってきます。
まとめ
この記事では農薬取締法について解説しました。
農薬はとても便利なものですが、使い方によっては有害な物質になります。
1人1人が農薬をなるべく使用しないという意識を持つことで、安心・安全な農作物を提供できるようになります。
可能であれば「無農薬野菜」などの栽培を検討してみるのもいいかもしれません。
また「みんなで農家さん」では農業に関する情報を掲載しています。
また無農薬野菜や減農薬の栽培に関する情報も掲載していますのでぜひご覧ください。
https://minnadenoukasan.life/
最後までご覧いただきありがとうございました。
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