農業では野菜や肉など私たちの生活でも大切な食に関する物を生産する業界です。
それぞれの物を生産するのに色々な手間暇をかけてより良い作物や肉を作り私たちに届けてくれています。
しかし、この生産する工程の中でどうしても問題になってしまうのが悪臭問題やその原因となる物の処理についてです。
例えば畜産業でいえば家畜から出る糞尿、飼料のにおい、家畜特有の動物のにおいなどです。
これらは毎年悪臭の苦情としてかなりの数が報告されています。
これは農村地域の近くが住宅地となり農家の近隣の変化や農業に新規参入した人たちの適切な管理がされていないことによる問題があったりするため中々苦情の件数が減少していないのが現状です。
しかし、農業では悪臭に対する制限や管理方法が定められていたりといくつもの対策はもちろん行われています。
その中で今回着目して取り上げていきたいのが糞尿の処理方法です。
糞尿など排泄物なども適切な処理をすれば再生利用可能なエネルギーとして変えられる技術などがあり農業からでる物が全て無駄なく再利用できる物があります。
それがバイオガスエネルギーの利用です。
この記事では畜産の排泄物などの現状からその対策として再生利用するバイオガスエネルギーについてを紹介していきます。
農業は私たちの生活に欠かせないだけではなく国としてもなくすことができない産業の一つとして位置付けされています。
少しでも農業での取組について興味をもって頂ければと思いますのでぜひ最後まで一読下さい。
悪臭の原因排泄物の量
人もそうですが家畜も動物のため排泄物が必ずでてきます。
その中で牛、豚、鶏などによって排泄物の量ももちろん大きくかわってきます。
そこでまずはどれくらいの量が畜産業の家畜ではでているのかについて紹介していきます。
家畜排泄物(牛・豚・鶏のふん尿)発生量は、年間約8,300万トン程度です。
排泄物の内訳は下記のようになります、
乳用牛 約2357万トン
肉用牛 約2442万トン
豚 約2238万トン
採卵鶏 約745万トン
ブロイラー 約514万トン
データからみると牛と豚の排泄量が多いことがわかります。
日本では牛による生産と豚肉などの生産が高いため排泄物もそれに比例している形になっています。
もう少しジャンル別に家畜排泄物量発生量をみていきます。
搾乳牛 ふん:45.5 尿:13.4 (kg/頭・日)
肉用種(2歳以上) ふん:20.0 尿:6.7 (kg/頭・日)
肥育豚 ふん:2.1 尿:3.8 (kg/頭・日)
採卵鶏(成鶏) ふん:0.136 尿: (kg/羽・日)
となっています。
牛、豚、鶏などそれぞれの日あたりの排泄物の量はやはり差が大きいことがわかると思います。
ですが日あたりの量と合計した排泄物の量を見ると牛と豚はそれほど差がないことも分かります。
これは飼育されている数の違いによる物です。
また、このデータから見て頂きたいのは糞尿だけでこれだけの数量が排出されているという点です。
これだけのものが適切に処理されていなければ悪臭としての苦情に繋がるのは容易に想像がつくと思います。
家畜排泄物法の概要
家畜の排泄物の量がとんでもない量であることは分かって頂けたと思います。
しかし、そこで家畜の排泄物を適切に処理するといってもどんな決まりがあるのか分からなければ処理のしようもありません。
この処理の方法などが分かるように家畜排泄物法というものがあります。
家畜排泄物法では下記のように目的が設定されています。
畜産業を営む者による家畜排せつ物の管理に関し必要な基準を定めるとともに、家畜排せつ物の処理の高度化を図るための施設の整備を計画的に促進する措置を講ずることにより、家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進を図り、もって畜産業の健全な発展に資する。
参考、引用元:農林水産省生産局畜産部畜産企画課 畜産環境・経営安定対策室https://www.env.go.jp/council/09water/y0917-03/mat03.pdf
つまり目的として排泄物の処理のための施設の整備を計画的に進めること、適切な処理管理の促進を図っていくことということです。
ここで適切な処理管理と再生利用エネルギーとして糞尿から発生するメタンに注目して行われているのがバイオガスエネルギーです。
バイオガスエネルギーとは
引用元:https://www.renewable-ei.org/pdfdownload/activities/column_REapplicaion22_201910.pdf
そもそもバイオガスエネルギーって何?となると思いますのでバイオガスエネルギーについて説明をしていきます。
バイオガスエネルギーとは食品廃棄物や汚泥や家畜糞尿等の湿分の高い原料をメタン発酵により、バイオガス(ガス組成:メタンガス約60%、二酸化炭素約40%)を発生させて、そのバイオガスを燃料に使用している発電させたエネルギーのことです。
ここで注意して頂きたいのがバイオガスとバイオマスの違いです。
バイオガスとバイオマスは似ているようで内容が違うため混同しないようにして下さい。
バイオガスとバイオマスの違い
ここで違いがわかるように簡単に説明していきます。
バイオマスとは生物由来の資源のことを指しています。
具体的にはおが屑や端材、間伐材、稲やサトウキビの搾りかすなどがバイオマスになります。
バイオガスはそのまま燃焼させることができない物をさしています。
具体的には農業残渣や家畜の排せつ物、糖やでんぷん、サトウキビ、パーム油などの搾りかすなどです。
もう少しわかりやすく説明するとバイオガスは微生物の力によってメタン発酵させ発生するガスのことです。
つまりバイオガスとバイオマスではそもそもの発電方法に違いがあることを知って頂ければと思います。
バイオガスエネルギーのメリット
バイオガスエネルギーの利用でどのようなメリットがあるのでしょうか。
まず畜産業としては2つのメリットがあります。
1.家畜の糞尿処理の大幅な軽減
2.廃棄物処理による悪臭の軽減
畜産業ではどうしてもにおいが発生して悪臭となり苦情が発生しやすいです。
その原因の多くが糞尿によるものですがこのバイオガスエネルギーを利用すると上記の2つを軽減することができるため非常に有効な物になります。
また、エネルギーとしてのメリットもあります。
1.化石燃料に替わる再生可能なエネルギー
2.Co2削減にも貢献
糞尿などは畜産業が行われている限りなくなることがありません。
そのため、安定的に産出して供給することができます。
また、有機物資源のエネルギーであるため化石燃料と違いCo2排出量に換算されないという点があります。
このようにバイオガスエネルギーは畜産業にも環境にもメリットとして非常に高い効果があります。
プラントの種類
バイオガスエネルギーを作成していくためにはプラントが必要になります。
プラントには大きく分けて3つに分けられています。
1.個人型
個人型は個々の農家向けの処理施設として畜舎に隣接して設置するタイプになります。
個人による物のため施設の運転管理や糞尿の搬入消火液の散布などを全て行わなければいけません。
2.共同型
建設費や維持管理作業、経費の分担が可能なため個人型の導入が厳しいひとにとってはメリットのあるタイプになります。
しかし、共同型の場合自分だけではなく相手との関係もあるため離農したさいのリスクや経営者の年齢によっては後継者がいるのかなどの問題点もあります。
3.集中型
多数の農家が参加する処理施設のタイプです。
農家からの産廃だけではなく地域一体となり家庭の生ごみなどの有機物を受け入れることもでき一番多く利用されている施設のタイプになります。
このように3つのタイプに大まかに分けられていますが、それぞれにメリットやデメリットが存在します。
畜産農家では自身の経営規模を考慮して施設を利用する必要がありますが利用するだけのメリットは十分にあります。
取組の事例
国内でも取組をしている事例はいくつかありますが、さらに普及を促すために海外のデンマークを参考に紹介致します。
バイオガスエネルギーの施設はプラントにとってもコストが発生しています。
そこで施設を集中型で設置した場合にマイナスになるようでは意味がありません。
デンマークではこの問題を解決するために農家とプラントにとってよりよい状態となるように下記の3つを導入しています。
1.糞尿の質の良さでボーナスを発生
2.質の悪い物には逆に支払を請求
3.家畜の糞尿は有価物であるため窒素のロス分は支払いによって補填させる
1.と2.の内容については家畜の糞尿であるからといって何でもいいわけではありません。
そのため状態ができるだけいい物であればバイオガスエネルギーの生産がより有効になると定められています。
また、畜産農家の意識づけにも有効となり提供される糞尿の質が向上したという結果にも繋がっています。
バイオガスエネルギー施設を普及するためにはこのうように農家とプラントがしっかりとプラスになるようにしていかなければ普及に繋げることができません。
まとめ
畜産農家は欠かせない産業の一つですが、廃棄物などの処理が非常に大変な産業の一つでもあります。
今回紹介してきたバイオガスエネルギーは畜産農家における問題である処理と悪臭問題を軽減することができる一つの技術です。
また、バイオガスエネルギーは化石燃料の替わりになり安定した供給が望めるエネルギーになります。
現在Co2問題など地球温暖化の問題でCo2削減なども求められています。
こういった環境問題の解決にも繋げることができる点ではメリットが非常にあります。
しかし、プラント設置については個人で行うにはコストがかかることや共同タイプや集中型タイプでは複数にで行うためのデメリットもあります。
畜産農家では家畜の糞尿処理問題が今後も発生してくる課題ではありますが、こういった技術から少しでも農家の普段が減少することとバイオガスエネルギーなどの技術がより身近になるように少しでも知って頂ければと思います。
参考元:農林水産省https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kankyo/taisaku/pdf/2020_sympo_asai.pdf
コメント