EU共通農業政策の現状と課題を解説!今後の展望とは?

世界では国や地域によって独自の農業政策を行っています。
もちろん日本でも農業政策は行っており「経営所得安定対策」や「水田フル活用と米政策の見直し」など様々な政策が行われています。

政策には国単体で行っている政策もあれば、国と国が共通して行っている政策もあり、その中の1つとして「EU共通農業政策」があります。
そこで本記事では「EU共通農業政策」の現状や課題、この政策が目指す目標について詳しく解説していきます。

EU共通農業政策とは?

EU共通農業政策は、EU加盟国の農業を支援するために共通の政策枠組みを設けたものです。
この政策は1957年にEUの前身である欧州経済共同体(EEC)のローマ条約で発足しました。
EU共通農業政策はEUの最も古い政策の一つであり、EU内の農業生産や農村地域の発展を支援することで、EU市民に安定的で安全な食料を供給することを目的としています。

EU共通農業政策の主な目的

EU共通農業政策は農業分野における「経済的」「環境的」「社会的な課題」に対応するため、欧州連合(EU)で導入された政策です。
主な目的はEUの農業部門を促進し、持続可能な農業生産性と収益性を確保することです。

詳しい主な目的について3つ紹介します。

食糧安全保障の確保

EU共通農業政策は生産者が適切な収益を得ながら、安定的に高品質な食糧を供給することを目的としています。
農業生産の安定性を維持することで市場における食料品の供給が確保されます。
また、国内市場だけでなく輸出市場においてもEUの農産物の競争力を高め、食糧安全保障を確保するために輸出援助金制度も導入されています。

農村地域の発展と雇用創出

EU共通農業政策は、農村地域の発展と雇用の創出も重要な目的の一つです。
これには地域社会の発展、農村地域の環境保護、農業の多様性の促進などが含まれます。
また、農業関連産業の発展を通じた雇用の創出も図られています。

環境保全

EU共通農業政策は、農業による環境への悪影響を軽減するための対策を重視しています。
具体的には、土地利用、水資源管理、生物多様性の保護などが挙げられます。
このため農業生産においては、環境に配慮した農業手法を取り入れることが求められます。
また、環境保全に積極的に取り組む農家に対しては、資金面での支援が行われます。

現在のEU共通農業政策の課題とは?

EU共通農業政策には大きな課題もあります。
この章では現在EU共通農業政策で課題になっていることを紹介します。

環境保護と農業の両立

EU共通農業政策は、農業生産性の向上を目的としていた過去の政策と比べ、より環境保護を重視する方向性を持っています。
しかし、現状ではまだ環境保護と農業生産性の両立が課題となっています。
例えば、EUは農地の多面的機能維持に向けた支援策を導入していますが、その効果が不十分な地域もあります。

農業生産者の所得不足

EU共通農業政策によって農業生産性は向上していますが、農業生産者の所得は不足しています。
これは日本の農家とも同じ状況だと言えます。特に、小規模農業者は市場競争力が弱く、生産コストが高いことが課題となっています。
また、EUは直接支払い制度を導入しているため、農業生産者は収入をEU予算に依存する傾向があります。

地域間格差の是正

EU共通農業政策による農業支援は、地域間格差の是正を目的としています。
しかし、現状では地域間格差は依然として存在しており、より裕福な地域や大規模農業者がより多くの支援を受けている傾向があります。
また、地域間格差が是正されないと、農村部の衰退や都市化などの問題が発生する可能性があります。

健全な食料市場の形成

EU共通農業政策は、市場の安定と農産物価格の維持を目標としています。
しかし、現状ではEU内の農産物市場は価格変動が激しく、市場の不透明性も課題となっています。
また、EUは世界各国と自由貿易協定を締結するなど国際市場との競争が激化しています。
そのため、より健全な食料市場の形成が必要とされています。

日本でも同じような課題があり、それに向けた政策をとっています。
ではこうした課題に向けてEU共通農業政策ではどのような改革が行われてきたのでしょうか?
主な改革について解説します。

EU共通農業政策の主な改革について

EU共通農業政策は過去数十年間にわたって多くの批判を受けてきました。
そのため現在も改革の動きが進んでいます。
ここからは、改革に向けた主な動きを以下に詳しく解説します。

まず、EUは2013年に「EU共通農業政策2020」という改革プランを策定しました。
このプランでは、農業の持続可能性、競争力、環境保護、地域開発に重点が置かれ効率的で革新的な農業生産を促すことが目的とされています。
具体的には、直接支払いの削減、環境や気候変動に対応した新たな支払いの導入、生産者団体や生産者グループに対する支援の強化、若い農業者に向けた支援策の導入などが含まれています。

さらに、EUは2018年6月、農業に関する予算を現行の1,000億ユーロから2027年までの10年間で9%削減することを提案しました。
この削減により、農業分野の改革を推進するための予算が削減されることになります。

また、2020年には「農業政策に関する戦略ビジョン2030」が発表されました。このビジョンでは、環境保護や気候変動対策、地域開発などを重視するとともに、安全で健康的な食料の供給を確保することが目的とされています。
具体的には、持続可能な農業生産、土地利用の最適化、環境に配慮した農業生産、地域開発に向けた支援などが盛り込まれています。

これらの改革には、EU加盟国や農業関係者、市民社会団体などから様々な意見が寄せられています。改革を支持する声もあれば、改革の方向性や削減額に対して懸念を示す声もあります。

しかし、EUは持続可能で競争力のある農業生産を促すため、現在進んでいる改革プランや戦略ビジョン2030を着実に進めることが求められています。

EU共通農業政策の今後の展望

EU共通農業政策は長年にわたりEUの農業を支えてきましたが、現在も改革の必要性が課題として取り上げられています。今後の展望についてはどのような未来を想像しているのでしょうか?

まず、環境保護への重視が増していくことが予想されます。
現在のEU共通農業政策は、生産性向上を目的としてきましたが、環境保護や気候変動対策が急務となっている現状ではこれらの課題に対応するために農業政策も変化していく必要があります。
例えば、有機農業やバイオダイバーシティの促進、農薬や化学肥料の使用削減などが求められています。

また、EU共通農業政策においては、若手農業者の支援も重要な課題とされています。
現在、EUの農業従事者は高齢化が進んでおり、若手の後継者不足が深刻な問題となっています。
このため、若手農業者を支援し、農業の継続性を確保することが必要です。

さらに、現在のEU共通農業政策は、農家に対して生産性に応じた補助金を支給しているため、大規模な農業生産者が優遇される傾向があります。これに対して、小規模農家や環境保全型農業の支援を行うことが求められています。
例えば、小規模農家に対する直接支援の拡充や、農業を通じた地域活性化の取り組みなどが挙げられます。

以上のように、EU共通農業政策は、環境保護や若手農業者支援、小規模農家の支援など、様々な課題に直面しています。今後はこれらの課題に対応するために、農業政策の改革が必要とされ、それに伴って農業が持続可能であることを確保するための取り組みが進むことが期待されます。

まとめ

本記事ではEU共通農業政策について、「概要」「課題」「展望」について解説しました。
こうした政策は衰退している農業界を少しづつですが活性化へと繋がっています。

また日本でも農業で大きな課題を抱えており、これらに対して政策を設けるべきなのかもしれません。
今後の日本の農業改革にも注目が集まります。

また「みんなで農家さん」では農業に関する様々な情報を掲載しております。
農業に関する政策についても何かヒントが見つかるかもしれません、ぜひご覧ください。
https://minnadenoukasan.life/

最後までご覧いただきありがとうございました。

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