耕畜連携とは?仕組みやメリットについて解説!!

新型コロナウイルスやウクライナ情勢により、物価の価格高騰に歯止めがかからない状態になっています。
農家にももちろん影響することで飼料や肥料の価格高騰により、儲けが少なくなっている農家や廃業になってしまう農家もいます。
物価高騰への対策として注目を集めているのが「耕畜連携」です。
この記事では耕畜連携について基礎知識からメリットなど詳しく解説していきます。
物価高騰に頭を抱えている農家の方はぜひ参考にしてみてください。

耕畜連携とは?

耕畜連携とは野菜やお米を作る「耕種農業」水田で飼料作物を作って「畜産農家」に供給し、牛や豚などから出た糞尿などから作った堆肥を肥料とし耕種農業に還元する仕組みを指します。
日本の畜産飼料の多くは輸入に頼っており、私たちが普段食べている国産肉に関しても多くが外国産の飼料を使って生産したものと言えます。また耕種農業でも作物を育てるための化学肥料などはほとんど輸入しています。

飼料を輸入に頼ると国際情勢等によって影響を受けやすく、近年でのコロナウイルス・ウクライナ情勢の影響での円安で農家が頭を抱える状態となっています。

こういった現状を打破するための対策の1つとして「耕畜連携」があります。
また耕畜連携として重要になってくるのが「水田」だと言われています。
ここからは水田が重要な理由について解説していきます。

耕畜連携で水田はなぜ重要なのか?

耕畜連携において水田は欠かせない存在になってきます。
日本ではお米を主食として食べる文化がありますが、お米を食べる日本人は減ってきています。
これは日本人の食生活の変化が原因とされています。

こうなると稲作農家は儲けが少なくなり生活の困窮などで必然的に稲作農家を営む人は減ってきます。その中で「減反政策」の一環として水田を飼料用作物を作ることになりました。
しかし水田で飼料用作物を生産するのはかなり難しいと言われています。

理由として水田では湿害と言われる水分過多による作物の生育に影響が出るほか、農業機械を使用した作業があまりできないからです。
一方で農林水産省では水田を維持する政策を推進しています。しかし水田で飼料用作物を生産するのは難しいとなっています。
そこで米の生産調整強化に伴い、稲を飼料用として活用することが始まりました。
日本では農業生産額でお米は2位につけているほどです。2位につけるくらいですからもちろん水田の数もそれだけ多いと言えます。
数が多いということはそれだけ稲を飼料用として使用できる量もあるということです。
こうした理由を踏まえて「水田」は「耕畜連携」に重要となっていると言われています。

またこうした水田が重要になってくるもう一つの理由として「稲WCS」との密接な関わりがあるとされています。
この「稲WCS」との関係について解説していきます。

稲WCSと耕畜連携との関係性について

WCSとは、ホール(Whole)・クロップ(Crop)・サイレージ(Silage)の頭文字をとったもので、穂だけではなく、茎や葉も収穫し、フィルムで密閉し発酵させた家畜の飼料のことです。

この稲WCSは発酵粗飼料稲とも呼ばれており、牧草に近い栄養価を持ち、乳牛などの嗜好性が良いとされています。
また比較的安価に確保でき安心・安全な国産飼料であり関心が高まっています。

なぜ稲WCSが耕畜連携に良いとされるのか?

稲WCSは基本的な栽培技術が主食用稲と同じであり稲作を行う際の機械をそのまま使用できることがメリットとして挙げられます。
国でも経営所得安定対策の戦略作物として推進されており、「水田の有効活用」「飼料自給率の向上」のために耕畜連携に良いとされています。

稲WCSの作り方

品質の良い稲WCSを作るポイントは、主に3つあるとされています。

①収穫時の稲体の水分含量が50%〜60%
②泥や雑草の混入をしない
③高密度の梱包と密閉を行う

この3つのポイントに合わせて収穫調整と運搬作業の良否で品質が決定します。
刈り取った稲をラップで巻く理由として嫌気状態になり乳酸菌が増殖することで飼料の品質を向上させる効果があります。

耕畜連携のメリットについて

耕畜連携には価格高騰対策以外にも様々なメリットがあります。

食料自給率向上に繋がる

日本での食料自給率は世界と比較するとかなり低い位置にいます。
国内で消費している食料のほとんどが輸入品となっているからです。
しかし「耕畜連携」では食料自給率を向上させるメリットがあります。耕畜連携はそもそも肥料や飼料を輸入に頼らず国内で補うことです。
例えば、私たちが食べているトウモロコシというのはほとんどが輸入品とされています。またトウモロコシは牛や鶏などの飼料用としても輸入されています。
ですからこのトウモロコシを国内で補うとなればそれだけで食料自給率は向上するというわけです。

SDGsへの取り組みとなる

耕畜連携はSDGsへの取り組みとしても注目されています。
先ほど例に出した耕畜連携では畜産農家から出た糞尿などを堆肥として扱うとお話ししました。
日本は耕種農業で化学肥料を輸入し、使用する農家も少なくありません。
化学肥料というのは土壌の地力を弱め、環境に負荷をかけるため使用において多くの使用は禁止されています。
耕畜連携を行うことで化学肥料の使用が減るわけですから「SDGs」への取り組みになってきます。
こうした理由により耕畜連携に取り組む事は大きなメリットと言えます。

地域の活性化につながる

耕畜連携では地域の活性化にもつながるとされています。
元々輸入に頼っていた肥料や飼料を地域内で循環させることで輸入コストを抑えることができ、地域の配送業者を使用することで農業以外の業種への貢献にもなります。
また元々輸入した飼料や肥料を使用して作っていた作物などを糞尿から作った堆肥などを使用することで作物への輸入コストを上乗せした価格を除くことができます。
消費者にも安全で品質の良い安価な農産物を提供することができるので地域活性化の良いサイクルとなってきます。

耕畜連携の事例を紹介

耕畜連携の事例について紹介します。
紹介するのは「種子島」で行われている「でん粉かす」を使用した飼料の利用です。
種子島に所在するでん粉製造事業者である永松産業は1年で約1450トンのでん粉カスが発生します。
永松産業ではでん粉かすの処理にかなりコストがかかる為、うまく利用できないかと考えて飼料用として使用できないかと考えました。
永松産業では使われなくなった倉庫を譲り受け、そこにでん粉庫を保管しました。倉庫に保管することで風雨を防ぎ、でん粉カスを希望する農家が必要な時に必要なだけ取りに来ることが可能であり、永松産業でもでん粉カスを処理する手間を軽減することに成功しました。

耕畜連携の目的を理解する

でん粉カスというのは全ての地域で生産できるわけではありません。またでん粉カスに限らず地域によって飼料に使うモノは異なりますが「耕畜連携」では低コストが求められます。
国内でいくら製造ができるといっても飼料にお金をかけては意味がありません。
種子島での事例を紹介しましたがその地域で普通なら廃棄になるものを上手く飼料に活用することが耕畜連携の目的であり本質であると言えます。

まとめ

今回は耕畜連携について解説しました。
農業では常に安心・安全で環境によく低コストな農業が求められています。
耕畜連携の取り組みがより日本で増えることで、食料自給率向上や環境問題など間接的に様々な問題への解決の糸口となります。

肥料や飼料を輸入している農家の方もぜひ耕畜連携に取り組んでみてはいかがでしょうか?

また「みんなで農家さん」では農業の様々な情報を掲載しています。
物価高騰対策は耕畜連携だけではありません。異なる対策方法も見つかるかもしれません。ぜひご覧ください。
https://minnadenoukasan.life/

最後まで閲覧いただきありがとうございました。

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