始めに
今回紹介する、農業に関する情報は「果樹栽培」についてです。「果樹栽培」と聞くとバナナやみかん、りんごといったフルーツを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。そのほかにも様々なフルーツがありますが、ここで名前を出した「バナナ」「みかん」「りんご」は、実は日本で暮らす私たちが日々の生活で最も消費している(食べている)フルーツと言われています。
日本一売れている果物(令和2年)
1位 | バナナ | 1年間に1世帯が支出する金額:4,387円 |
2位 | りんご | 1年間に1世帯が支出する金額:4,107円 |
3位 | みかん | 1年間に1世帯が支出する金額:3,640円 |
この記事では、これから「果樹農家」を目指したい・興味があるといった方へ、果樹農家として栽培したフルーツは「どこに販売すればいいのか」「どのくらいの値段」が付くのかといったことを紹介していきたいと思います。
さらに今回は「どこに販売すればいいのか」といった販売方法のところで「卸売り」という販売の仕方に絞って詳しく説明していくので、是非最後まで読み進めていってもらえればと思います。
日本で栽培されているフルーツとは?
本題に入る前に、みなさんは普段多くのフルーツを目にして口にしているわけですが、日本で多く栽培されているフルーツには、どのようなものがあるのでしょうか。
この記事に始めに、日本で一番売れているフルーツについて紹介しましたが、栽培されているフルーツも売れているフルーツと同じなのでしょうか。気になるところだと思いますので、少し紹介したいと思います。
順位 | 品目 | 収穫量(トン) |
1位 | みかん | 746,700 |
2位 | りんご | 701,600 |
3位 | 日本梨 | 209,700 |
4位 | かき | 208,200 |
5位 | ぶどう | 172,700 |
上記で紹介しているランキングは令和元年度のフルーツの収穫量のランキングです。1位に「みかん」2位に「りんご」とあるようにバナナを除いて売れているフルーツが収穫量でも上位にいるということがわかるかと思います。
収穫量(トン)を見てみても1位・2位と3位では収穫量の差がかなりあるため日本の果樹農家は「りんご」・「みかん」を栽培している農家が多いということが分かるかと思います。
ここまでで、日本ではどのような果樹(フルーツ)が栽培されているのかがある程度分かったのではないでしょうか。ここからは、栽培したフルーツをどのようにして販売していくのかについて見ていきましょう。
農作物の販売方法について
農家として栽培した農作物を販売する方法はたくさんありますが、大きく分類すると「卸売り」と「小売り」の2つに分けることができます。まずは「卸売り」と「小売り」の違いについて見ていきましょう。
卸売り
「卸(おろし)売り」とは「生産者や輸入業者から商品を仕入れてこれを小売商人に売り渡すこと」、あるいは「商品流通の課程で製造・収穫と小売りの中間に位置する経済・販売活動を行う業種のこと」を言います。
言葉だけではイメージが湧きにくいと思うので、農業場面での「卸売り」業者について具体例を見ていくと、「農業協同組合(農協・JA)」や卸売市場と聞けば、イメージしやすいのではないのでしょうか。
今回の記事のタイトルは、果樹農家が栽培したフルーツは「どこへ?」・「いくらで?」売れるのか!【卸売り編】ということで、ここからは「卸売り」に着目して内容を進めていきます。なので、タイトルにもある「どこで?」の部分には「農業協同組合(農協・JA)」や「卸売市場」という言葉が入ります。
話を進めていく前に、代表的な販売方法のもう1つでもある「小売り」について少し見ていきたいと思います。
小売り
続いて「小売り」とは「卸売商などから仕入れた品物を一般消費者に分け売りすること」、ないしは「生産者や卸売業者から購入・仕入れた商品を最終消費者に販売すること」を言います。
「小売り」に関しては「卸売り」よりもイメージが湧きやすいかもしれません。「生産者や卸売業者から購入・仕入れた商品を最終消費者に販売すること」という説明から、私たちが普段、食料品などを購入している「スーパー」や「道の駅」、「コンビニ」などが「小売り」に含まれます。
「卸売り」・「小売り」の詳しい内容については ↓↓↓
栽培したフルーツを「卸売り」で販売する方法
ここからは、果樹農家が栽培したフルーツを「卸売り」で販売する方法について見ていきたいと思います。
「卸売り」については、前項で紹介しましたが、農家でいう「卸売り」は「農業協同組合(農協・JA)」や「卸売市場」に栽培した農作物を売ることを指します。では実際に、農業業同組合(農協・JA)や卸売市場に栽培したフルーツを販売するためには、どうすればいいのかについて見ていきましょう。
農業協同組合(農協・JA)に出荷する方法
現在、農家として農作物を栽培し、栽培した農作物を出荷するルートとして最も一般的なのが、農協に出荷する方法です。「農協」や「JA」といった略された言葉をよく耳にするかもしれませんが、正式名称は「農業協同組合」と呼ばれています。
農業協同組合の組合員になることで、農家として栽培した果樹(フルーツ)を農協に出荷することができます。
農業業同組合とは
そもそも農業協同組合とは何なのかと言うと…
農業協同組合(農協・JA)とは… 同じ目的をもった個人や事業者が集めり、お互いを助け合う組織です。農業に限らず医療・金融といった事業にも携わっています。 農業の面に絞ってみていくと、生産者(組合員)が育てた農畜産物を販売し、消費者(スーパーやコンビニなど)に届ける事業を主に行っています。 |
文章だけではイメージもしにくいと思うので、組合員になるまでの方法から農作物を農協に出荷するまでの時系列をまとめてみました。
農協に出荷するまでの時系列
①最寄りのJA支所に行き、組合員加入申込書を記入し、出資金(1,000円以上)の払込とともに提出することで手続きは終了 |
②JAが組合員加入の審査・承認手続きを行う |
③加入承諾書が加入申込者へ発行(郵送)される。 |
【農家として農作物(フルーツ)を栽培する】 |
④個々の農家さんが生産した農作物を近くのJAに集荷 |
⑤生産者(組合員)が育てた農畜産物をJAが販売し、消費者(スーパーやコンビニなど)に届ける!! |
ここまで農業協同組合の組合員になる方法から栽培した農作物を売るまでの流れを時系列でまとめてみましたが、イメージは湧きましたでしょうか。
農業協同組合(農協・JA)の組合員になることで、農作物の売り先を自分で探さなくてもいいといったメリットもありますが、近年では農業協同組合(農協・JA)に売り先を探してもらう分、JA側に手数料を支払わなくてはいけないため手取り分の利益が減るといったデメリットもあり農協離れが進んでいるのも事実です。
卸売市場に出荷する方法
続いて紹介する、代表的な「卸売り」での販売方法は、「卸売市場」に出荷するという方法です。まずは「卸売市場」とは、どのような場所なのかについて見ていきましょう。
卸売市場とは?
卸売市場とは… 全国から集まった青果物(野菜、果物)、水産物、肉、花を取引し、小売店(八百屋、スーパーなど)、外食事業者(レストランなど)、加工業者へ販売する拠点です。 その中で、野菜や果物をいった青果物を取り扱っている卸売市場を「青果市場」といいます。 |
上記の説明で卸売市場とは、どのような場所なのかを説明しましたが、「全国から集まった」という部分に「農家」や「農業協同組合」といった生産者が入ります。卸売市場の1日の流れについては以下の通りです。
卸売市場の1日の流れ
①出荷者(農協、個人農家)が卸売市場に出荷 |
②卸売市場に農作物が入荷、荷下ろし |
③売買取引【卸売業者が売り手となり買い手に販売(せり・相対取引)】 |
④販売・出荷 【販売先から注文を受けた農作物のパッキング、小分け、配送を行う】 |
卸売市場にも農林水産大臣(国)の認定を受けた「中央卸売市場」と都道府県知事の認定を受けた「地方卸売市場」の2種類がありますが、基本的な流れとしては同じです。
卸売市場に出荷している人の割合
【2020年度】中央卸売市場 青果の取引内訳
①農協系統 | 58.9% |
②産地出荷業者 | 11.0% |
③商社 | 10.6% |
④生産者個人(個人農家) | 6.3% |
⑤その他 | 13.2% |
上記で表示している表は、2020年度に中央卸売市場で取引をした人・会社の割合を表した表になっています。
表で分かるように、半数以上の取引が先程紹介した「農業業同組合(農協・JA)」で行われていることがわかると思います。そのほかにも農協以外の出荷業者や農業事業を行っている商社なども卸売市場で出荷しています。
また、割合は高くありませんが、個人農家が農業協同組合を経由せずに、直接「卸売市場」に出荷することも可能となっています。
ここまで、果樹農家が栽培したフルーツは「どこへ?」売れるのかについて見ていきましたが、ここからは「いくらで?」の部分に着目して収入面についての部分をみていきましょう。
果樹農家(卸売)の平均年収について
ここからは、「卸売り」を行っている果樹農家の年収に簡単に見ていきましょう。まずは、タイトルにもあるように出荷した果樹は「いくらで?」売れるのかについてまとめていきます。
卸売りで出荷した果樹は「いくらで?」売れるのか
農業協同組合でフルーツを出荷する場合、価格は市場価格と等級、階級によって決められているため、自分で価格を決めることはできません。
その時の国の市場によって価格が変わってしまうため、いくらで売れるかははその時になってみないと分かりません。
近年では、新型コロナウイルスによる飲食店の営業停止や時短営業などの政策により外食産業の動きが減ってしまい野菜などの農作物が売れないことなどが影響し価格が中々上がらない日々が続きました。
さらに、農協を経由して農作物を出荷すると手数料がかかってしまうため日本全体で農作物の動きが多くなければ、高収入も期待できません。
しかし、悪い話だけでもありません。出荷した作物の返品がないことやある程度一定の量を出荷できるなどメリットもたくさんあります。最大のメリットとしては、規模が大きい農協に出荷することへの「安心感」そして、栽培に集中できる「仕事環境」は魅力であるといえるでしょう。
果樹農家(卸売)の平均年収について
農林水産省「農業経営統計調査 令和元年営農類型別経営統計」によると、果樹農家の農業所得(農家が農作物を栽培して得た収入から、それに要した経費を差し引いた額)の平均は「181.9万円」となっています。畜産部門も合わせた全農作物の平均が「118.8万円」であるため、果樹栽培の農家は比較的年収を上げやすいと言えるのではないでしょうか。
最後に
ここまで、「果樹栽培」・「卸売り」・「販売方法」・「年収」をキーワードに農家が栽培したフルーツは「どこへ?」・「いくらで?」売れるのかについてまとめてきました。
今回は「卸売り」に着目して記事をまとめてきましたが、「卸売り」の他にも「小売り」で販売する方法もありますので、「卸売り」と「小売り」を比較したうえでどちらの方法で栽培した農作物を販売するのかについて考えてみるといいと思います。
また、記事の冒頭で日本で一番売れているフルーツでは「バナナ」が1位でしたが、日本で栽培されているフルーツでは「バナナ」はランキング外という結果でした。
多くの人が日本ではバナナは栽培できないというイメージがあるかと思いますが、本当に日本では「バナナ」は作れないのでしょうか。
「みんなで農家さん」では、「稼げる農家さん」をコンセプトに、新規就農へ興味を持ってくれる人を増やす取り組みを行っています。その取り組みの1つに国産バナナ栽培の事業を行っています。
日本ではバナナは栽培できないという考えを覆した、新時代の農業でバナナ栽培を行っていますので、興味がある方は是非一度、どんな栽培を行っているのか調べてみてはいかがでしょうか。
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