【エネルギーの救世主】バイオマス植物 ジャイアントミスカンサスとは!?【解説】

ジャイアントミスカンサス

「ジャイアントミスカンサス」
聞き慣れない言葉ですね。新種の恐竜につけられてもおかしくないような名前です。
しかし、「ジャイアント・ミスカンサス」は恐竜ではなく、植物の名前です。しかも、ただ普通の植物ではなく、バイオマスエネルギー化植物(Energy Plantとも)として日本で検証試験がされ始めたばかりのもの。
今回はバイオマスエネルギー化植物(Energy Plant)の「ジャイアント・ミスカンサス」について分かりやすく解説をまとめていきます。

ジャイアントミスカンサスとは?

現在私たちが利用しているエネルギーは、化石燃料である石油、石炭、天然ガスや、核燃料を使った原子力、再生可能エネルギーである太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中及びその他自然界に存在する熱、バイオマスに分けられます。

これらのうち、バイオマスに含まれるのがジャイアントミスカンサスという植物です。

ジャイアントミスカンサスは、名前こそ英語で表記されていますが、日本由来であるイネ科多年草のことで、オギとススキの雑種のことで、和名は「オギススキ」といいます。
雑種といっても人為的に交配させられたものではなく、自然のなかで交配されたものというのもポイント。
この巨大なオギススキはジャイアント・ミスカンサスという名称のほか、ジャイアント・ススキや単にミスカンサス(ススキ)等いろいろ呼ばれていて、英語圏では、Giant Miscanthus(巨大ススキ)、Miscanthus Gianteusとなります。
同じイネ科の多年草のエリアンサスは栽培に適した北限が東北南部ですが、ジャイアントミスカンサスは北海道でも栽培可能な植物。そのため、冷涼な地域でも栽培可能な再生可能エネルギー、バイオマスエネルギーの原料としての利用の他、家畜の飼料・敷料への活用、高い炭素吸収能力・炭素固定能力による土壌貯蓄、優秀なGHG(温室効果ガス)の削減効果などで注目されています。

このジャイアントミスカンサスはチップやペレットとしてしまえばバイオマスガス化原料として理想的と言われています。
しかし、発酵させてエタノールを作るほうのバイオマス原料としては、現状での技術力としてベストとは言えないのが現状のようです。

せっかくですのでエリアンサスについても少しだけふれておきましょう。

エリアンサスもジャイアントミスカンサスと同じくイネ科に属する多年草で、こちらもバイオマスエネルギーとして注目されています。
ジャイアントミスカンサスと違うのは交配したものではないこと、熱帯・亜熱帯地域に自生している植物のため、積雪のある地域では栽培に向きません。
そしてエリアンサスは同じ株から毎年収穫ができ、栽培の手間がかかりません。乾燥に強く、自然降水(雨水)だけで育ち、追肥無しでもおよそ二、三年は収穫量が増加するようです。

バイオマスエネルギーってなに?

バイオマスという言葉は「生物資源(bio)」の「量(mass)」を表すもので、「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石燃料を除いたもの」というように定義されています。
そしてバイオマスエネルギーとは、再生可能な、バイオマス資源を活用したエネルギーのことをいい、それに使われるバイオ燃料は、石油に代わって使われる、持続可能な次世代のエネルギーとして期待されています。
このバイオ燃料の原料には、糖・澱粉作物、油糧作物、木質(樹木)、草本などの資源作物や、下水汚泥、農林畜産残渣、建築廃材、食料残渣である廃棄物などが挙げられます。

バイオマスを使った燃料をバイオ燃料やバイオマス燃料といい、バイオエタノール(Bioethanol)、バイオディーゼル(Biodiesel)、バイオジェット燃料(Aviation Biofuel)、バイオガス(Biogas)の4分野が実用化に向けて研究されています。

バイオエタノール

バイオエタノールは、バイオマスを活用してつくるガソリンの代替品で、バイオエタノールの原料として使われているのは主に3種類あります。
➀サトウキビ、糖蜜、甜菜から作られる「糖質原料」、➁とうもろこし、麦、もろこし、じゃがいも、さつまいもから作られる「でんぶん質原料」、➂稲藁、籾殻、スイッチグラス、廃材木などから作られる「セルロース系原料」があります。

バイオディーゼル

バイオディーゼルは、バイオマス由来のディーゼルエンジン用燃料のことで、バイオディーゼル(Biodiesel Fuel)の頭文字からBDFと呼ばれることあります。
このバイオディーゼルの原料となるものは、植物油からは菜種油、パーム油、オリーブ油、ひまわり油、大豆油、コメ油、ヘンプ・オイル(大麻油)など、廃食用油(てんぷら油など)や魚油や豚脂、牛脂などの獣脂などの様々な油脂がバイオディーゼル燃料となります。
このなかでも地域別に欧州:菜種油、中国:オウレンボク等、北米及び中南米:大豆油、東南アジア:アブラヤシやココヤシ、ナンヨウアブラギリから得られる油が特に利用されています。
他にも料理油や工業用油などの廃油を利用する場合もあります。

バイオジェット燃料

バイオジェット燃料の原料はバイオディーゼルと同様、油成分のものを精製することで作られます。
原料としてはナンヨウアブラギリやアマナズナなどの植物、藻類、牛脂、そしてミドリムシがバイオジェット燃料の原料として利用され、軽油との混合割合も25%から50%と少なくない割合のバイオジェット燃料が実用されつつあります。

バイオガス

液体のバイオ燃料であるバイオエタノール、バイオディーゼル、バイオジェット燃料に対し、気体状で利用されるバイオ燃料がバイオガスです。
バイオガスは一般的に、生物の排泄物や有機質肥料、生分解性物質、汚泥、汚水、ゴミなどの廃棄物が原料となっていて、有機廃棄物を微生物(メタン菌など)を用いて、メタン発酵して製造されます。
車両の燃料源としての利用のほか、ガスを燃焼させた熱を利用した発電、温水プール、調理ガスなどで熱利用されることも。

このうちバイオマスエネルギーに使われる作物ですが、エネルギー作物として利用される作物は実はたくさんあります。

エネルギー作物の具体例としてナタネ、ヒマワリ、ムギ、サトウキビ、テンサイなどが挙げられています。
具体例としては成長率の早いユーカリやポプラ、アカシア類などの木を利用したバイオマス、サトウキビ、トウモロコシアブラナ、スイートソルガム、ケナフなどの草を利用したバイオマス、マコンブ、ジャイアントケルプなどの海藻を利用したバイオマス、他にも油を利用したバイオマスとしてナタネ、ヒマワリなどがあり、日本においては柳、ドロノキ、カンパ類、コジイ、竹、ササ等も利用もしくは候補となっています。

ジャイアントミスカンサスについての解説

ジャイアントミスカンサスはすでにご説明したように、バイオマスとして利用される巨大なオギススキのことで、冷涼な地域でも栽培可能というメリットがあります。
これは日本国内であればほぼ全国で栽培できるということでもあり、低温条件でも高いバイオマス生産が可能、肥料があまり必要としないなどの利点から、寒冷地のバイオマス資源作物として北海道でも実証実験がされています。
おもしろい結果として、土壌炭素貯留量が森林よりも高く、温室効果ガスを削減できる機能があること。バイオマス燃料以外の利点といえますね。
また、バイオマス燃料として利用するためには収穫する必要がありますが、晩秋から早春にかけておこないます。降雪地域では雪解け後に収穫する音になりますが、このジャイアントミスカンサスは雪が降り積もる冬季でも倒れない特性があることがわかりました。

他にもジャイアントミスカンサスは永年生植物というものであり、一度ジャイアントミスカンサスの草地ができてしまえば、一般的な農地では毎年行う必要のある耕起や播種・除草剤の散布などが不要となるため、手間暇をかけずに草地を管理することが可能でありかつ簡単に耕地へと戻せることから、利用率のないもしくは低い土地の管理植物として耕地の利用ができます。
また、産業への利用ができる化学物質の抽出や、パルプ製造の原料として利用するための試験を実施しています。さらに畜舎の床に敷く敷料や家畜糞堆肥製造の副資材として畜産での利用や、きのこの菌床として利用されるおがくずの一部代替としての利用も想定・検討されています。

ジャイアントミスカンサスの利用方法

ジャイアントミスカンサスの利用方法もすでに述べたように、バイオマス素材の熱分解ガス化、もしくは燃焼利用を目的としたバイオマス原料として利用されるのが現状での栽培・研究理由になります。
バイオマス原料以外であげるとしたら、森林の替わりに温室効果ガス削減のための栽培、家畜等への飼料目的、荒廃地や傾斜地、寒冷地、遊休地、耕作放棄地などへの利活用目的でしょうか。
ジャイアントミスカンサスは種子ができないため、増殖させるには根茎による方法を使います。種子できないということは、種子が飛散することによる在来植物の生育への悪影響がないことにもつながるため、増殖できないのはメリットですね。

まとめ

ジャイアントミスカンサス=オギススキということ、森林よりも温室効果ガスを削減できる効果が高いこと、そしてバイオマス原料として優秀な植物であるということがわかりました。
バイオマスエネルギーの活用やバイオマス原料を燃料にすることの効率化がより向上することができれば、農家の方であれば副収入としての栽培をするということも視野に入るかと思います。
また、さらに需要が高まるのであれば、海底菜園ができる広さの土地がある一般家庭でも副業として栽培することもできるのではないでしょうか。

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