高温障害とは?農作物への悪影響と求められる対策を徹底解説

あなたは「高温障害」を知っていますか?

農業に携わっている人は知っている方も多いかもしれませんが、農作物に与える影響を充分に理解している人は少ないかもしれません。

高温障害は農作物に悪影響を与え、しっかり対策をしないと大きな損害を被る可能性もあります。

そこで今回の記事では、高温障害の概要や農作物に与える影響、対策方法などを解説していきます。

農作物の高温障害とは?

気温が高くなると、農作物の生育に悪影響を及ぼすことがあります。この現象を「高温障害」と呼びます。高温障害は、特に夏場に多く発生しますが、地球温暖化によって猛暑日が増加しているため、農作物の生産に悪影響を及ぼす機会が増えています。

気温の高さによって農作物の生育に悪影響が及ぶこと

農作物にとって最適な気温は、種類によって異なります。しかし、多くの農作物にとっては15℃から30℃程度が最適な温度帯であり、この範囲を超えると農作物の生育に悪影響を及ぼすことがあります。特に、40℃以上の高温に長時間さらされると、葉や茎、果実などの部位が枯れたり、萎れたり、発育が阻害されたりすることがあります。これは、農作物が光合成や呼吸などの生理活動を正常に行うことができなくなるためです。

また、高温によって発生する乾燥や水不足も、農作物にとって大きなストレスとなります。乾燥すると、農作物の根に十分な水分が供給されず、生育が阻害されることがあります。一方、水不足の場合、農作物は水を取り入れることができず、発育不良や収量の低下を招くことがあります。

地球温暖化によって猛暑日は毎年増加している

現在、地球温暖化が進んでおり、猛暑日が年々増加しています。猛暑日とは、気温が35℃以上になる日のことを指します。これによって、農作物は高温障害にさらされる機会が増え、生育や収量に悪影響を及ぼす可能性が高くなっています。

さらに、高温障害による農業被害は、食料生産にも大きな影響を与えることが懸念されます。猛暑日が増加すれば、農作物の生産に支障をきたすことで、食糧価格が上昇する可能性があります。また、農業を営む人々の生計にも大きな影響を及ぼすことがあります。

さらに、高温障害は、農作物の品質や栄養価にも悪影響を与えることがあります。例えば、トマトは高温に弱く、40℃以上の気温にさらされると、糖度が低下し、味が落ちることがあります。また、高温にさらされた野菜は、栄養素の一部が分解されることがあり、栄養価が低下することがあります。

このように、高温障害は、農作物の生育や収量、品質、栄養価に悪影響を及ぼすだけでなく、食糧価格の上昇や農業生産者の生計にも大きな影響を与えることが懸念されます。

高温障害になりやすい農作物

高温障害は、すべての農作物に影響を与える可能性がありますが、一部の農作物は特に高温障害に弱い傾向があります。以下では、高温障害になりやすい代表的な農作物について紹介します。

稲は、水田で栽培される主要な穀物作物の一つであり、世界の食糧生産において重要な役割を担っています。しかし、稲は高温に弱く、40℃を超える気温下で育てると、光合成速度が低下して収量が減少することがあります。また、高温下で育つ稲は、食味が劣ることがあります。これは、高温下でアミロペクチンが増加し、米粒の硬さが増すことによるものです。

葉茎菜類

葉茎菜類は、野菜の中でも主要な作物の一つであり、世界中で栽培されています。例を挙げると、キャベツ、ブロッコリー、ホウレンソウ等です。しかし、葉茎菜類は高温に弱く、35℃を超える気温下で栽培すると、葉が黄化したり、葉っぱの形が変わったりすることがあります。また、高温下で収穫された葉茎菜類は、苦味が強くなることがあります。

根菜類

根菜類は、野菜の中でも多くの種類があり、世界中で栽培されています。例を挙げると、サトイモ、ダイコン等です。しかし、根菜類も高温に弱く、35℃を超える気温下で栽培すると、根が太くなりすぎたり、根の形が変わったりすることがあります。また、高温下で栽培された根菜類は、硬くなることがあり、食感が悪くなることがあります。

果菜類

果菜類は、野菜の中でも人気が高く、多くの種類が世界中で栽培されています。例を挙げると、キュウリ、トマト、ナス等です。しかし、果菜類も高温に弱く、35℃を超える気温下で栽培すると、果実の形が変わったり、色が変色したりすることがあります。また、果菜類は高温下で収穫されると、品質が低下することがあります。例えば、高温下で収穫されたトマトは、風味が悪くなり、品質が低下することが報告されています。

高温障害が引き起こす農作物への影響

様々な農作物に影響を与える高温障害ですが、ここからは高温障害が引き起こす農作物への影響を解説します。

水分ストレス

高温障害が引き起こす農作物への影響の1つは、水分ストレスです。高温下では、植物の蒸散作用が活発になります。蒸散作用は、植物が根から吸い上げた水分を気孔から放出することで、水分を蒸発させる作用です。高温下では、この蒸散作用が強まり、植物から水分が奪われやすくなります。そのため、植物は水分不足になり、枯れてしまうことがあります。

光合成の抑制

高温下では、光合成が抑制されるため、農作物の生育に悪影響を及ぼします。光合成は、植物が光エネルギーを利用して二酸化炭素と水を反応させ、炭水化物や酸素を生成する作用です。高温下では、植物の光合成酵素が変性し、光合成が不十分になります。そのため、植物は栄養不足になり、生育が停滞します。

呼吸の増加

高温下では、植物の呼吸が増加します。呼吸は、植物が栄養を分解してエネルギーを生産する作用で、生命活動に必要なエネルギー源となります。高温下では、植物の呼吸が増加し、栄養が消費される速度が加速します。そのため、植物は栄養不足になり、生育が低下します。

代謝の異常

高温下では、植物の代謝が異常をきたすことがあります。代謝とは、植物が栄養を合成する過程で起こる化学反応のことで、植物の生命活動に必要な栄養素を合成する作用です。高温下では、代謝の一部の過程が異常をきたし、代謝産物が蓄積することがあります。これにより、植物の生育が阻害されることがあります。

葉緑体の損傷

高温下では、葉緑体が損傷を受けることがあります。葉緑体は、光合成に必要な色素を含んでいるため、損傷が生じると光合成の効率が低下します。また、葉緑体の損傷によって、葉の色が変化することがあります。

高温障害への対策

高温障害による農作物への影響を軽減するためには、適切な対策が必要です。以下では、高温障害への対策について詳しく説明します。

灌漑を行う

高温の条件下では、作物の水分利用効率が低下し、水分ストレスを引き起こすことがあります。そのため、適切な灌漑が必要です。また、土壌中の水分が蒸発することで、周囲の温度を下げる効果も期待できます。ただし、過剰な水やりは根腐れや病害の原因になるため、適宜管理が必要です。

遮熱・遮光資材で直射日光を防ぐ

直射日光による農作物への影響を軽減するために、遮熱・遮光資材を利用することがあります。遮熱資材は、直射日光による熱を反射して作物を冷却する効果があります。一方、遮光資材は、直射日光を遮って作物に届く光を調整することで、光合成に必要な光量を確保することができます。

土壌の改良

土壌は、根にとって水分や養分を供給する場所であり、植物の生育に欠かせない要素です。高温による水分ストレスに対しては、土壌の保水力を高めることが有効です。保水力の向上には、土壌改良剤を用いることが一般的です。有機質肥料や赤玉土などを添加することで、土壌の保水力を高め、根の乾燥を防ぐことができます。

また、土壌のpH値も影響を与えるため、適正な範囲内に保つことが重要です。稲などの水田作物では、アルカリ性の土壌を好むため、石灰を添加することでpH値を調整することが必要です。

肥料を使用する

高温による光合成の抑制は、植物が生産する栄養分の量を減少させるため、適切な肥料を使用することが重要です。窒素やカリウム、リンなどの栄養素をバランスよく与えることで、植物のストレス耐性を向上させることができます。ただし、過剰な肥料の使用は、植物に悪影響を与えることもあるため、適正な量を守ることが必要です。

ハウス栽培なら冷房装置の導入をする

ハウス栽培では、直射日光を遮ることができますが、室内の温度が上昇すると、植物にとっては高温障害が発生する恐れがあります。そのため、冷房装置を導入することが必要です。冷房装置は、室内の温度や湿度を調整することで、植物のストレスを軽減することができます。ただし、冷房によって乾燥が進むことがあるため、加湿器を併用することも考慮しましょう。

今後の課題と展望

高温障害の対策は農作物にとって必須であることが分かりました。今後の高温障害はどのような課題があるのでしょうか?

地球温暖化と高温障害の関係

地球温暖化は、温室効果ガスの増加によって引き起こされる現象であり、高温障害を引き起こす主な要因でもあります。気象庁の発表によると、日本の平均気温は、近年急激に上昇しています。このような状況下で、農作物の高温障害がより一層深刻化することが予想されます。

今後も地球温暖化は進むため、農作物の高温障害を防ぐためには、環境保護に対する取り組みが必要です。温暖化ガスの削減に向けた取り組みが進むことによって、高温障害の発生を防止することができます。

高温障害対策の重要性

農業は、国民の食料自給率を維持する上で非常に重要な役割を担っています。しかし、高温障害によって農作物の生育が悪化することで、収穫量が減少し、食料不足が生じる可能性があります。

このような状況を受けて、高温障害への対策が喫緊の課題となっています。農家や研究機関においては、高温障害に強い品種の開発や、適切な灌漑方法の確立などが進められています。また、政府も、農業の現場での高温障害対策を支援する政策を積極的に推進しています。

まとめ


高温障害は農作物生産にとって深刻な問題です。気温が上がり、猛暑日が増加することによって、農作物に悪影響が及びます。特に、稲や葉茎菜類、果菜類などは高温障害に弱く、収穫量の減少や品質の低下が起こることがあります。また、高温障害によって農作物の生長が阻害されることにより、食糧生産に悪影響が及ぶことが懸念されています。

高温障害を避けるためには、灌漑や遮熱・遮光資材の使用、土壌の改良、肥料の適切な使用などが挙げられます。特に、水分の供給を確保することが重要であり、灌漑の適切な管理が求められます。また、ハウス栽培などで冷房装置の導入が可能な場合は、熱中症などの健康被害も防ぐことができます。

今後の課題としては、地球温暖化による高温障害の発生頻度や強度の増加が懸念されています。高温障害対策の重要性が高まる中、環境問題の解決が急務となっています。農作物生産においては、高温障害対策がなされることで、持続可能な食糧生産が実現されるとともに、農業の安定的な発展につながることが期待されています。

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