寒冷紗とは?~目的別活用法とメリット~

虫や寒さなど、農作業を行ううえで対策を行うべきことは多岐にわたります。対策を怠ったために、作物が大きな被害を受けてしまったという経験をされた方も少なくないでしょう。そんな対策方法の一つとして、寒冷紗があります。

本記事では、寒冷紗について目的別活用法とメリットをお伝えします。また似たような素材である防虫ネットや、不織布との違いを明確にします。

寒冷紗の特徴を掴んで、ご自身の農作業に合ったタイプを選ぶようにしましょう。

寒冷紗とは?

寒冷紗とは、Wikipediaによると下記のように説明されています。

寒冷紗は、荒く平織に織り込んだ布である。織り糸には主に麻や綿などが用いられる。

農業分野では、耐候性や耐薬品性などの性能向上のため、合成繊維ビニロン糸、テトロン糸や高強力ポリエステル糸などを使用している。

下記の分野で利用されている。

農業分野 – 農作物を覆い、寒さ避けや日よけとして用いる。
縫製分野 – 衣服の襟や袖口の形状を保つために芯地として用いられる。
建築分野 – 漆喰を施工する際、下地補強などに用いられる。
製本分野 – 製本を行う際、本の表紙や背を補強するために用いられる。
食品分野 – 出汁をとる際やチーズを作る際、漉し布として用いられる。
美術分野 – 銅版画の印刷の際、版面の余分なインクを拭き取るために用いられる[3]。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%92%E5%86%B7%E7%B4%97

必ずしも、農業分野でのみ使用されているものではありません。
農業用の寒冷紗は、ポリエステル製の糸や強度のある合成繊維が使用されます。
特徴は網目状になっている点です。

寒冷紗にはどんな種類があるの?

寒冷紗には大きく分けて3つのタイプがあります。それぞれに特徴があり、利用場面に応じて使い分ける必要があります。ここでは、白いタイプ、黒いタイプ、銀テープ入りの白いタイプの3つについて、まとめます。

白いタイプ

白いタイプの寒冷紗は、日光を遮る割合の遮光率は20%となっており、日よけ効果は低めです。一方で、日よけをそこまで必要としない作物であれば、一年を通して、虫よけ、風よけなど多目的に活用できるため、使い勝手のよい寒冷紗です。

多目的に使える分、不織布や、防虫ネットと比べると、保温効果や防虫効果が落ちるため使い分けが肝心です。

全般的には、冬場に利用されることが多く、保温と霜対策で用いられることが多いです。

黒いタイプ

黒いタイプの寒冷紗は、遮光率が50%となっており、白いタイプの寒冷紗よりも日よけ効果が高くなっています。したがって、日光の強さを和らげたい夏場の利用に向いています。日よけ、熱対策、乾燥対策を施したい場合に利用します。

白いタイプよりも水の蒸発を防いでくれますが、湿度が高くなるので、蒸れないように気を付ける必要があります。根腐れや日照不足には注意しましょう。

銀テープ入りの白いタイプ

白いタイプの寒冷紗に銀色のテープが付いたタイプです。銀色のテープが太陽光を反射し、害虫を近寄りにくくする効果があります。白いタイプの寒冷紗に、害虫対策を強化したタイプです。

寒冷紗を使う目的とメリット

寒冷紗を使う目的として、虫よけ、日よけ、寒さ対策、雨よけ、風よけの5つについてまとめます。また、それぞれについて、寒冷紗を利用するメリットを説明します。

虫よけ

寒冷紗をかけることで、外部からの害虫の侵入を防ぐことができます。例えば、卵を多く産み付けるような蛾などがその対象で、寒冷紗の網目を潜り抜けて作物にたどり着くことを防ぎます。銀入りのタイプの寒冷紗を用いると、その効果はさらに期待できます。

寒冷紗に隙間があると、そこから虫が入ってくるので、設置方法には注意が必要です。

日よけ

種を撒いた直後や、夏の日差しの強い時期に作物に日を当てたくない場合に、寒冷紗が日よけとなって和らげてくれます。白いタイプで20%、黒いタイプで50%の日光を遮るので、環境と作物の種類に合わせて使い分けるようにしましょう。

また日が当たり、温度が上昇すると水分が蒸発して、乾燥してしまう場合があります。寒冷紗をかければ、水分蒸発を抑え、乾燥を防ぐことが出来ます。

寒さ対策

冬の寒い時期には、地表付近の気温が0度以下となり、地表付近の空気が冷やされて霜が降りることがあります。寒冷紗をかけると、この気温低下を和らげることができ、霜が降りることを防いでくれます。ビニルハウス程でありませんが、寒冷紗でも寒さ対策が可能です。

風よけ

適度な風通しは、空気の入れ替えなど作物にとって、大事な条件となります。一方で、強すぎる風となると、茎が折れてしまったり作物に損傷が出てしまいます。また、冬の乾燥した風は水分を奪ってしまいます。寒冷紗をかけると、風を和らげることが出来るので、作物の損傷や、冬の乾燥を防いでくれます。

寒冷紗の使い方

上記で述べたように、寒冷紗を利用するメリットは多岐にわたります。ですが正しく使えなければ、そのメリットも半減し、せっかく育てた作物が台無しになってしまいます。

ここからは、寒冷紗の使い方を露地の場合と、プランターの場合に分けて説明します。張るときは、トンネル用の支柱とクリップが必要が合わせて必要になるので、準備しておきましょう。

露地での使い方

まず、トンネル用の支柱を30cm~50cm間隔で土壌にアーチ状になるように差し込んでいきます。この際、風で飛んでいかないようにしっかりと固定します。また、作物が成長した際の高さを想定して、トンネル用の支柱の高さを決めます。

隙間ができないように、寒冷紗をカットして支柱の上に被せていきます。この際、少し余裕のある長さでカットした方が、隙間なく設置しやすいです。

被せた寒冷紗をピンと張った状態で、クリップで止めていきます。余った部分があれば、下で余らせて石などの重しで固定します。

プランターでの使い方

プランターで使用する場合は、露地の場合と同様に、トンネル用の支柱を適度な本数立てて、プランターごと寒冷紗で包みます。ピンと張った状態でクリップで止めれば完成です。

こちらも風で飛んでいかないように、しっかりと固定することを忘れないようにしましょう。

寒冷紗を使う時の注意点

ここまで読んでいただき、寒冷紗を使う目的やメリット、そして使い方を理解いただけたかと思います。虫よけ、日よけ、寒さ対策、風よけなど、早速使ってみたいと思う気持ちになった方もいらっしゃるでしょう。ただ、寒冷紗も万能ではありません。

ここでは、寒冷紗を使ううえで、ご注意いただきたいことをまとめます。

かけっぱなしにしない

一つ目の注意点としては、かけっぱなしにしないということです。適度に風を通す寒冷紗ですが、湿度の高い時期にかけっぱなしにしていると、湿気がこもってしまい病原菌やカビが発生してしまうことがあります。

また、虫よけ効果があるため害虫対策ができますが、一方で、益虫を防いでしまうというデメリットがあります。受粉が必要な作物であれば、益虫を防いでいては実がなりません。

このように、かけっぱなしにしていると発生するデメリットがあるため、季節や利用状況に合わせて寒冷紗を外すなどの処置を行うようにしましょう。

過度な期待をしない

様々な効果が期待できる寒冷紗ですが、過度な期待はしない方がいいでしょう。後述しますが、似たような使い方をする防虫ネットや、不織布と比べると、効果は落ちます。作物や農場の環境によっては、寒冷紗ではない別の物を利用した方がいいでしょう。

寒冷紗を万能だと過信していると、痛い目に合ってしまうかもしれないので注意が必要です。

防虫ネット・不織布との違いは?

多用途で使える寒冷紗ですが、似たような使い方をするものとして、防虫ネットと不織布があります。それぞれについて、寒冷紗との違いをまとめます。違いを理解して、適切なものを選べるようにしておきましょう。

防虫ネットとの違い

寒冷紗と防虫ネットの一番の違いは、網目の大きさです。防虫ネットは網目が細かく、目合い0.4㎜とかなり細かいものもあります。害虫の大きさが小さい場合は、寒冷紗では防ぎきれないため、防虫ネットを用いることになるでしょう。

ただし、網目が細かい分、通気性が悪いです。その為、温度が上がりやすく、作物の成長に影響を及ぼす場合がある為、注意が必要です。防ぎたい害虫に合わせて、適切な編み目サイズの防虫ネットを使用するようにしましょう。

不織布との違い

寒冷紗が糸を編み込んで作られているのに対し、不織布は網目がありません。繊維を絡めて、布状になったものです。寒冷紗と比べると、保温効果、寒さ対策に効果を発揮します。トンネル支柱を使って設置することも可能ですが、土壌に直接べた掛けされることが多いです。

一方で、寒冷紗と比べると通気性、透光性に劣るため、水やりをしたり日光を当てたい場合には、外す必要があるため、手間がかかります。

寒冷紗と防虫ネットと不織布の使い分け

寒冷紗と防虫ネットと不織布の違いを述べてきましたが、それぞれ得意分野が異なるのだと理解いただけたのではないでしょうか。どれか一つを使うというのではなく、季節に合わせて使い分けをすることを提案します。

例えば、夏は害虫が多くなる季節なので防虫ネットを用い、冬は寒さ対策に重点を置くために不織布を使う。春と秋には、万能的に使える寒冷紗を用いるというような形です。

予算の都合などで、どれか一つだけ使うということであれば、寒冷紗にしましょう。

まとめ

ここまで、農作業の効率アップの強い味方である寒冷紗についてまとめてきました。目的別活用法とメリットを抑えて、ご自身が育てている作物に合わせて、適切な寒冷紗をお選びください。

また、これから就農を考えているという方には、事前情報として寒冷紗、防虫ネット、不織布の違いも抑えて頂けたのではないでしょうか。さらには、本サイト「みんなで農家さん」のサービス利用もご検討ください。農業未経験の方でも安心して始められる仕組みを提供しております。

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