私たちが普段食べている、日本食にかかせないもの、それはお米です。
主食であるお米がどうやって作られているか皆さんご存知でしょうか?
作業している姿を見たことがある、テレビでちらっと見たことがある、そんな人は多いかと思います。
しかし実際に田植えの手順や、使っている機械を知っている人は少ないのではないでしょうか。
そこで今回は、米農家として働いてみたいと思っている方向けに情報をお伝えしていきます。
米づくりの手順から、米づくりに必要な機械、そして田んぼの探し方まで記載していますので、興味のある方は最後までお付き合いください。
米づくりの手順
米づくりにかかせないのが、時間です。
種まきから出荷まで何ヶ月もの日数が必要となります。
その他にもやることはあるので、米づくりはほぼ1年かかると言っても過言ではありません。
①土作り
土作りとは、お米を植える前に田んぼを準備することです。
・田んぼを耕す「田起こし」
・水田の水が外に漏れないようにする「畦(あぜ)塗り」
・基肥という、稲に必要な栄養を土に加える「田すき」
・水を入れて田んぼを均一にし、土を柔らかくして苗の根が張りやすいようにする「代(しろ)かき」
稲刈りが終わったら、すぐに秋から冬にかけて稲わらをすき込む「秋耕」で下準備し、春に温かくなり始めたら、生えてきた雑草をすき込んで残渣を分解する「春耕」で田んぼを耕します。
畦塗りは泥土を塗るほか、畦畔シートを設置する方法でも構いません。
また、基肥と元肥は同じ意味で、水稲には「基肥」の字が、園芸作物には「元肥」の字が使われます。
水を入れるには、地域によって整備されたパイプラインを使ったり、農業用水路から引いたりする方法があります。
いずれも水を入れすぎず、田全体が軽く浸かる程度にしましょう。
水を張った後は、土を柔らかくならすために「代かき」を1〜2回行います。
②種・苗の準備
移植栽培では種を直接田んぼにまくのではなく、別の場所で種から苗まで育ててから田んぼに植えつけます。
まずは、良い種もみを選ぶ「塩水選」です。
うるち米の場合、比重を1.13に調整した塩水(水10Lに対し、約2.2kgの食塩)を作り、そこに種もみを入れて掻き回し、底に沈んだものを使います。
種もみには病原菌がついている可能性があるので、薬液やお湯に浸けて消毒しなくてはなりません。
消毒後は水洗いせず、そのまま水に浸けて十分に吸水させる(乾燥したもみの25%以上の水分含有量となるように)「浸種(しんしゅ)」を行い、種からわずかに幼芽と幼根が発生した状態にしておきます。
種の消毒と発芽が済んだら、稲が苗になるまで育てるための「苗代(なわしろ/なえしろ)」に発芽した種をまきます。
最初は苗代をトンネルなどで暗く密封しておき、出芽したら弱い光に2〜3日当てて「緑化」させ、トンネル内で徐々に自然環境にならす「硬化」まで、約1ヶ月程度が必要です。
③田植え
苗の根が絡み合って植え付けやすい状態になったら、田植え機で苗を植えていきます。
※もちろん手作業でも可能ですが、根気のいる作業になることや、腰を曲げた体制でずっと作業する必要性があるので、機械の方が楽ではあります。
このとき、土を落ち着かせるため、代かきから3日くらい経ってから行うのがポイントです。
苗の種類や品種特性、作業性によって植付密度は変わりますが、だいたい2〜3本を一つとし、1坪あたり50〜70株となるように植えていきます。
この田植え部分が農業体験などでよく行う場面かと思います。
④管理と除草
稲はまずどんどん「分げつ」で茎の数を増やしていき、幼穂ができる頃になると分げつの発生が止まり、伸び始めるという成長の仕方です。
分げつには実るものと実らないものがあるので、実るものを「有効分げつ」、実らないものを「無効分げつ」と呼んでいます。
この生育期には、雑草を除草したり、病害虫を防いだりする管理もしなくてはなりません。
除草の方法には、以下のような方法があります。
化学的防除→
除草剤によるものです。
最も一般的な方法になります。
生態的防除→
湛水状態にし、雑草が発生しにくくします。
生物的防除→
アイガモを放して雑草を食べさせたり、カブトエビの攪拌行動で雑草を浮かせたりします。
機械的防除→
手作業で抜いたり、除草機で表土を掻き回して雑草を浮かせたりします。
※病害虫防除のためには、抵抗性の強い品種を選んだり、消毒剤や忌避剤を使ったりするのが一般的です。
⑤追肥と水抜き
稲の生育状況に応じて、「分げつ肥」「つなぎ肥」「穂肥」「実肥」など、窒素・カリ・リン酸を適量、追肥として施していきます。
また、生育時期に応じて田んぼに水を入れたり引いたりし、深さを調整する水の管理も重要です。
【深水管理】
植え付け直後から活着するまで行います。
5〜7cm程度にし、水の保温効果で苗を保護します。
【浅水管理】
活着後から分げつ期に行います。
2〜4cm程度にし、地温を上げて分げつ発生を促します。
【中干し】
分げつの発生がピークになる頃、水抜きして土表面に亀裂が出るまで7〜10日くらい干します。
中干し後は、湛水と落水を数日ごとに繰り返す「間断かんがい」で水分の供給と酸素の供給を交互に行い、根をしっかり育てます。
穂が出て開花する頃になったら浅く水を張り、熟す頃には再び間断かんがいを行い、収穫の1〜2週間前を目安として水を抜いて完了です。
⑥収穫・乾燥
田んぼがしっかり乾いたら、コンバインで刈り取りと脱穀を行い、乾燥させます。
自然乾燥の場合は、鎌で刈り取ってはさがけしますが、刈り取りと結束を同時に行う「バインダー」を使う方法もあります。
※穂が黄金色に輝く頃が収穫の適期です。
大部分のもみが黄色になり、10〜15%のもみに緑色を残している程度が一番いい時期になります。
⑦調整
調整作業は、「もみすり」と「選別」に分けられます。
籾殻を取り除いて玄米にする「もみすり」をした後、整粒と屑米を「選別」して包装します。
(もみすりは「もみすり機」、選別は「粒選別機」などの機械があります。)
これら乾燥・調整作業は、ライスセンター(※1)やカントリーエレベーター(※2)という共同利用施設で行うこともできます。
※1:米穀の乾燥・調製ができる施設
※2:ライスセンターに貯蔵機能が加わった施設
!ワンポイント!
稲刈りしてから精米して食卓に並ぶまでの過程で、白米の他に「稲わら」「もみ殻」「米ぬか」が出ますが、これら全て有機質資材として畑に有効活用することができます。
米づくりに必要な機械や施設
次に米づくりに必要な機械をご紹介します。
●トラクター
専用の機械を取り付け、田起こしや代かき、荷物の搬送等に活用します。
●田植え機
専用の苗箱で育てた稲をセットし、田植えをします。
一度に4条から多いもので8条まで一度で植えることができます。
●播種機
苗箱に種を播き、土をかぶせる機械です。
●動力散布機
生育途中の肥料散布や農薬散布に活用します。
●草かり機
畦の草を刈る仕事をします。
●コンバイン
米を収穫する機械です。
籾だけを残し、茎は裁断して田んぼにもどします。
稲わらはやがて有機物に分解されます。
●カントリーエレベーター
収穫したもみを搬入し、乾燥と調製、貯蔵する施設です。
収穫後の農家の仕事と保管を代わって行います。
また、このほか個人で乾燥、調整をする農家は自宅倉庫に乾燥機、もみすり機、選別機を装備しています。
●ビニールハウス
苗を育てる施設です。
使用後は、野菜の栽培などに使います。
●トラック
もみや玄米、資材の搬送に使います。
これらの機械は必要ではありますが、必ずしも全て1人で揃えなければいけないものではありません。
機械の購入や修理などにかかる経費の増加は、農作業を受託(機械をもっていない農家のかわりに仕事をする)したり、共同で購入するなどして生産にかかる経費を抑える工夫をしています。
また、収穫後の作業である乾燥・調製作業を個々の農家が機械を購入するのではなくカントリーエレベーターやライスセンターの共同施設に委託することで経費を抑えたりしています。
これらを上手く利用して、無理のない米農家を営んでください。
農地バンク制度
米づくりをしたいけど、肝心な田んぼがない、という方はまず「農地バンク」で調べてみてください。
農地バンク制度とは、農地所有者の方に、耕作や管理が困難になった農地を登録していただき、その情報を農地の借受を希望する方に提供することで、貸借を支援する制度です。
これにより農地の遊休農地化の防止を図るとともに、新たに就農しようとする方への支援や都市住民の農への関わりを促進することを目的としています。
借りる方は、事前に借受希望者として登録が必要です。
貸付料や貸借期間等の条件について、貸したい方と個別に交渉を行ってください。
まとめ
意外と簡単かもと思った方もいれば、思っていたより面倒かもと思った方もいると思います。
でも実際にやってみるまでは、まだわかりません。
また、米農家は高齢化などの理由から年々減少してきています。
このままでは国内の自給率はどんどん下がるばかりです。
ですので、そんな現状を打破するために、これからの未来を先導する若者の力が必要となってきます。
ですので、少しでもやってみたい、興味がある、という方は、まず挑戦してみてください。
自分で作ったお米は普段購入するお米の何十倍も美味しく感じるはずですよ。
そして「みんなで農家さん」では、農業が好きな方、農家を志す人、農業従事者の方へ役立つ、最新情報やコラム、体験談などをこれからもお届けいたします。
あなたの気になる情報が、もしかしたらここにあるかもしれません。
こんな情報が欲しい、あんな情報が載っていないかな? と気になった方、まずは一度覗いてみてください。
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