近年の畜産農業の情勢をしっているでしょうか。
普段生活している中ではあまり目にする機会がないため知らない人も多いのではないでしょうか。
実は最近の畜産農家は非常に経営が危ない状況の農家が多くなってきています。
その原因として輸入飼料の高騰が原因で。
なぜ輸入している飼料が高騰すると畜産農家の経営が圧迫されて経営が難しくなるのでしょうか。
それは国内の多くの畜産農家が海外の飼料つまり輸入に頼っているからです。
もちろん国内でも飼料の生産はされています。
しかし、家畜を飼育するための量に対して国内の飼料だけでは不足しているため必然的に輸入に頼るしかないのです。
そこで今回の記事では畜産農家の現状を知って頂くために経営圧迫の原因となってる輸入飼料の高騰の原因と国内の情勢について紹介していきます。
特に飼料を大量に消費している酪農関係、つまり牛の飼育をしている畜産農家は特に経営が圧迫されがちな状況ですので畜産の中でも牛に着目していきたいと思います。
この記事を通して世界の情勢の影響がどれほど国内でも影響しているのかと国内の畜産農家の現状を少しでも知っていただければと思います。
国内畜産の重要性
私たちが生きていくための3本柱は『衣・食・住』です。
農業はこの3本柱の食に該当しています。
そのため、日本国内での産業としての重要性は非常に高い位置にあります。
『国としても欠かせない産業の一つである。』とさえ言っているほどです。
また、国内も農業での産出額は8兆9,370億円。
うち畜産は3兆2,372億円となっており、産出額の約36%を占めています。
金額を見てもわかるように何兆円の金額もの産出額を農業では生み出しています。
また、畜産ではその中での約三分の一を占めており畜産農家の経営が圧迫され経営ができなくなればそれだけ産出額も比例して落ち込む恐れがあります。
日本は国内での食料自給率が他の先進国と比較しても約35%とかなり低い国であるとも世界的に言われています。
そのため、農林水産省は国内の食料自給率を2030年を目標に45%まで引き上げることを目標しています。
これは農業業界としての目標ではありますが、現在の情勢で後1〜2年もすれば経営が
困難になり畜産農家の多くが廃業すると言われているほどの危機に直面しています。
経営危機は本当?
廃業の危機だとか畜産農家の経営が圧迫されているとか、なんで?と疑問に思われるかと思います。
まず、経営の危機というのは本当のことです。
人が生きていくための3本柱の一つで需要がなくなることがないのになぜなの?とさらに疑問が出てきているのではないでしょうか。
簡潔にいうと家畜を育てるためのコストが高くなり、販売している値段はそこまで上がっていないためです。
つまり、費用に対して利益が出せていない状況が続いているためです。
食が私たちの生活に欠かせないのは間違いないですが、生産して私たち消費者に届くまでに必ずコストがかかっています。
慈善事業ではないので農家も利益をあげて行かなければ生産をすることはもちろんできません。
そのため、需要がなくなることがなくても別の費用が高くなれば必然的に経営はできなくなります。
今回のこのコストが高くなったと言っている原因の一つは輸入飼料の高騰が原因です。
国内の畜産農家の多くは輸入による飼料を使用していました。
それが現在は世界の情勢の影響で値段が高騰して費用がこれまでの約2倍にまで上がっています。
単純にコストが2倍上がっていますが、生産して販売しているものが2倍に上がっているわけではありません。
結果として農家は利益を出すことができずに損失が膨らんでいる状態なのです。
世界の情勢が影響
畜産農家の飼料に対してのコストが約2倍になっている。
ではそもそもなぜこのような事態になっているのでしょうか。
これは近年各メディアでも取り上げられているウクライナとロシアの戦争による影響です。
他国の戦争が影響しているの?と疑問に思いますよね。
日本で生活していると戦争などは外のことであまり実感がないのでなんで戦争による影響が輸入に関係して日本に影響を及ぼしているのかよくわからないかと思います。
今回の戦争でなぜ輸入飼料の値段が高騰したのかはウクライナの輸出が大きく関わっています。
家畜を育てるための飼料の原料は、とうもろこしや小麦などの穀物が主成分です。
ウクライナは戦争が起きる前の2021年は小麦で世界5位、トウモロコシで世界3位の輸出量を誇っていました。
そのため、世界の多くがウクライナから輸入をしている国が数多くあります。
しかし、戦争が起きたことによって輸出がされなくなりました。
輸出の多くを支えていた国から輸入ができなくなれば他の国から輸入をするしかありません。
しかし、世界的な輸出を行っていた分を他国が全てを補えるわけもなく需要に対して供給ができなくなりました。
結果として値段が高騰して、為替も円安になっていることから飼料の値段が爆あがりして畜産農家のコストが跳ね上がった。
近年の飼料の高騰には背景として世界情勢が非常に深く関わって実はいるのです。
酪農農家の苦悩
ここまでは飼料の高騰による影響から経営が圧迫されている点を紹介してきました。
しかし、畜産の中で酪農農家の苦悩はこれだけには収まっていません。
他にどんなことが起きているのしょうか。
これまでの酪農農家の経緯から近年の現状についてもう少し詳しく紹介していきます。
特に今回紹介したいのは2つの内容です。
1、バター不足から『畜産クラスター』
2、暴落した牛の価値
この2つについては是非とも知っていただきたいと思います。
生産増加から減少しなくてはいけない?
1、バター不足から『畜産クラスター』と言われただけではどんなことがあったのか分かりませんよね。
覚えている人もいるかもしれませんが2014年ごろにバターが不足した事態があります。
この時このバター不足に対して生乳の生産を高めるために国は補助金などの政策をとって大規模な生産増加を促しました。
こうしたテコ入れによって生乳の生産は2014から2021年にかけて31万トンも増加することができました。
酪農農家もこの時大きな投資を行い事業の規模を大幅に拡大しました。
しかし、みなさんご存知の新型コロナの影響によって学校給食がなくなったり、観光客が減少したことで生乳の需要が激減しました。
生乳は長期保存ができないため生産量に対して消費がされなくなり廃棄するしかなくなりました。
この時打開策として脱脂粉乳などに加工を行い長期保温ができるようにしました。
しかし、脱脂粉乳も需要がそこまで増加したわけではないため在庫量が多くなり生産の抑制をしなくてはいけない状態になりました。
ここでそもそも生乳の生産を減少すればと思うかと思いますが、生乳は牛から毎日搾取しなければ牛が乳房炎などになるため搾乳を止めるわけにもいきません。
また、簡単に牛を処分することもできないため生乳事態をいきなり減少することは不可能なのです。
結果として、酪農農家では畜産クラスターでは生産を増やせと増やしたが情勢が悪くなったために次は抑制して削減しろと10年もしない間に無理難題を押し付けられるようような形になってしまっているのです。
牛の価値とは。。。
次に2、暴落した牛の価値についてです。
生乳を抑制するために国は牛の数を減少するしかないと助成金を出す形で牛の早期削減を政策として打ち出しました。
助成金の金額は早期に淘汰すれば1頭当たり15万円です。
牛を飼育するための費用を考えたら15万程度では採算はとてもあいません。
何も補助がないよりはましですが、農家の負担に対しては少ないと言えます。
また、牛の取引の値段も過去では見ないほどに大暴落しています。
元々生乳のために飼育していた子牛の取引価格は約14万程度でした。
しかし、その後飼料の高騰や生乳の抑制などにより各農家の経営が圧迫されたことにより数ヶ月後には5000円まで取引価格が暴落しました。
最低取引価格としては1000円と過去の取引価格から見てもありえないくらいの値段まで落ちています。
牛の値段もここまで暴落したことによって酪農農家としての収入はここでも激減する形になりました。
約14万程度で取引されていたものが5000円や1000円にまで暴落する。
早期の牛の処分を推奨される畜産農家にとっては飼料の高騰だけではなくこのようなところまで影響が出ています。
このような状況では一体どこで利益を出せばいいのか。
わかりません。
生乳の値段交渉も難しい
最後にそれならば生乳などの価格をあげるしかないと思うと思います。
もちろん私たち消費者からすれば値上げは嬉しくはありませんがこのような状況では仕方ないのではとも言えます。
しかし、生乳の値上げも簡単にすることができません。
それは『一元集荷体制』という仕組みによるためです。
この仕組みは生乳を指定団体が一括して集荷して指定団体と乳業メーカーの交渉によって値段が決まる仕組みです。
そのため、酪農農家は価格交渉に基本的には参加することができないのと交渉も年に1回のため簡単には行かないのです。
この仕組みは安定した収益を取れる代わりに情勢などの変化には対応がすぐにはできない欠点があります。
今回のような情勢の変化が著しい中でもこの仕組みのため値上げすることが簡単ではないのです。
まとめ
現在の畜産農家の情勢はかなり厳しい状況です。
このままでは、ほとんどの農家が廃業してしまうのではないでしょうか。
この記事では紹介してきた飼料の高騰や畜産クラスターから生乳の抑制、牛の価格の暴落どれも経営にダメージを与えるのには十分すぎる内容です。
情勢の影響なのだから仕方がないと言えばそうかもしれませんが、農業としてはこれから生産性を向上して食料自給率をあげていく必要などを考えれば今回のことで多くの農家を失うわけにはいきません。
少しでも早めの対策として国も農家に救いの手を伸ばして欲しいところです。
最後まで読んで下さり畜産農家の現状が悲惨なことは伝わったろ思います。
今後も世界の情勢と国内の農業の情勢に少しでも興味を持っていただければと思います。
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