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ご存じですか?
実は昔に比べて野菜の栄養価が、下がっているというデータがあるのです。
せっかく栽培するのですから、
栄養価の高い野菜を育てたいですよね。
世の中に流通させるからには質の良い野菜を栽培したい!
というのは、農家なら共通の思いではないでしょうか。
そんな野菜の質を上げる効果的な策の一つとして、
「油かすの活用」があります。
ご存知の方も、今一度復習しておきましょう。
目次
1.野菜の栄養価が下がってる?
2.土壌改良には油かす!
2-1.栄養分をアップさせるのは?
2-2.油かすの特徴とは?
3.油かすを使う際の注意点
4.その他の有効な素材
4-1.米ぬか
4-2.米のとぎ汁
4-3.重曹
4-4.牛乳
5.まとめ
1.野菜の栄養価が下がってる?
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野菜の栄養価の低下…。
その原因には土壌の状態が関係しています。
効率ばかりを追い求めた収穫量を増やすことを目的とした農法や、
その結果できた高収量作物による土壌へのダメージ…などなど。
これらの要因が、栄養分低下につながっていると考えられてます。
作物に含まれる栄養分。
それは、作物と土壌中の微生物との関係や、
土壌から吸収される栄養分に起因しているのです。
ところが、収穫量を増加させるに伴い、
土壌からの栄養分は、それだけ多くの作物に分配されるのです。
つまり、1つ1つの作物に行き渡る栄養分が少なくなれば、
作物に含まれる栄養分が希釈されるということになるのです。
高収量作物もまた土壌を消耗させる原因となっているのです。
我々は日々の食事から必要な栄養素を摂取しています。
野菜や果物、穀物から栄養分の減少。
それは、我々の体内に必要な栄養分の減少にもつながってくるのです。
2.土壌改良には油かす!
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2-1.栄養分をアップさせるのは?
低下した野菜の栄養分をすぐにアップさせる…というのは難しいです。
しかし、栄養分の低下に大きく関連する土壌の改善。
作物の栄養分含有量を見る上でも非常に大切になります。
土壌の改善に期待されるのが、環境再生型農業です。
活用されている農業技術には、有機肥料や堆肥の活用、
被覆作物の活用、不耕起栽培、輪作や間作などがあります。
栄養価の比較において、以下の様な実験が行われました。
有機質肥料として菜種の油かすなどを活用した栽培したトマトと、
一般的な化成肥料を用いて栽培したトマトの栄養分を比較しました。
その結果、有機区のほうがビタミンC含有量が多いという結果が出たのです。
引用元:吉田企世子『作物生育条件と野菜の栄養成分・調 理性の関係』
(栄養学雑誌、1998年)
栄養素の高い野菜を栽培するための土壌改良の一つの手段として、
油かすの肥料が挙げられます。
2-2.油かすの特徴とは?
有機質由来の肥料として同じように活用される素材に「米ぬか」があります。
油かすは、米ぬかと比較すると窒素分が多く、リン酸が少なめなのが特徴です。
油かすの窒素含有率は5%前後と高く、リン酸やカリウムは1〜2%含まれます。
〈成分量(%)の目安〉
・窒素 5.3
・リン酸 2.0
・カリウム 1.0
・カルシウム 0.9
・マグネシウム 0.3
肥料成分の割合は原料(菜種や大豆など)によって若干異なります。
〈原料による肥料成分の割合〉
菜種油かすの場合 | ダイズ油かす | ラッカセイ油かす | 綿実油かす |
窒素 6.4% リン酸 5.4% カリウム 3.4% | 窒素 7% リン酸 1.5% カリウム 1.5% | 窒素 6.5% リン酸 1% カリウム 1% | 窒素 6% リン酸 2% カリウム 1% |
引用元:髙橋久光『有機質肥料の機能性』(東京農業大学リポジトリ、2016年)
上記の表のように、原料による肥料成分の割合の違いが見てとれます。
肥効は穏やかで、油かすの油脂含有量が高いほど、
土壌中での分解が遅くなるという傾向にあります。
上記4つの原料の中で最も肥効が速やかなのは、
窒素の無機化速度の速いラッカセイです。
3.油かすを使う際の注意点
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油かすを用いる場合には、いくつかの注意点があります。
水はけが悪い土壌での全層施用(畝全体に施す方法)や、
層状施用(畝の深い部分に層状に施す方法)を行った場合…。
土中が嫌気発酵に傾いてしまうのです。
このことから、野菜の根に悪影響を及ぼす可能性が高くなります。
空気の量が多い表層施用(表層に施す方法)がオススメです。
地温が低い時期は微生物の活性が悪くなるため、
窒素もリン酸も効果が薄くなります。
そのような時期には油かすなど有機質肥料を直接施すよりも、
ぼかし肥料(油かすなどの有機質肥料を主原料とし、
微生物による有機質の分解を施して製造した肥料)を利用するの方が有効です。
さらに、菜種油かすには発芽を抑制する有害物質が含まれています。
そのため、施肥は播種および移植の二週間前に行いましょう。
ダイズ油かすは、含まれる成分の特徴から多量の施肥を避ける様にしましょう。
ダイズ油かすに含まれる窒素はタンパク質。
アンモニア態窒素への分解は他の植物性油かすと比較すると早いです。
リン酸は有機態リン酸で含まれており、カリウムは水溶性のものが多いです。
このような特徴から施肥直後は、
アンモニアや有機酸の発生による生育阻害が生じる可能性があります。
生育阻害を生じさせないためにも、多量の施肥は避けていきましょう。
油かすはリン酸が少なめなのです。
リン酸やカリウムが不足しがちになるため、
他の資材で不足分を補助する必要があります。
リン酸は開花・結実の促進や根の伸長、
発芽や花芽のつきをよくする効果があります。
実を収穫する野菜などを栽培する場合には、
リン酸を多く含む資材と併せて利用しましょう。
リン酸を多く含む資材には、骨粉やグアノがあります。
・骨粉
屠殺場や缶詰工場から出る肉片、内臓、骨などを煮沸や蒸気処理により脂肪、蛋白質等を除き圧搾・乾燥・粉砕したもの
・グアノ
海鳥やコウモリの排泄物に由来する窒素やリン酸に富んだ肥料
これら素材の使用する量は、農作物によって比率は異なります。
例えば、イチゴの栽培の場合。
甘い実をつけるため、油かすと骨粉を1対1で混ぜてすき込む方法があります。
4.その他の有効な素材
![農業をする女性](https://minnadenoukasan.life/wp-content/uploads/2023/01/4078506_s-1-1.jpg)
油かすの有効性について解説しました。
その他にも土壌改良のために役立つ素材があります。
お手軽に手に入る物が多いので、うまく活用しましょう。
今回はその一部を解説します。
4-1.米ぬか
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玄米の表面を削り精米するとできるのが「米ぬか」です。
米ぬかには、なんと玄米に含まれる栄養素9割以上が含まれています。
畑に散布することにより、様々な効果を期待できます。
・病気減少
米ぬかを圃場や作物などに散布することにより、
農業生産に有用な微生物が増加、それにより病原菌と拮抗したり、抗菌物質を放出。
このことが病原菌の抑制につながるのでは?と考えられています。
・雑草対策
有機栽培において、大切なのが雑草対策。
雑草対策においても米ぬかは活躍してくれます。
中央農業総合研究センターの研究報告によれば、
「土壌表面への米ぬか散布がイヌビエ等の水田雑草の発芽抑制」が報告されています。
・米ぬかで害虫対策
米ぬか散布で、増加するカビの一部が、害虫にも効果を示す例があります。
埼玉県の狭山茶の産地の例です。
茶樹に米ぬかを撒いたことで害虫・クワシロカイガラムシにカビが生え、
死滅させることができたとの報告があります。
ナスやネギなどの害虫・アザミウマにも有効と言われています。
4-2.米のとぎ汁
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米のとぎ汁も農業に活用できます。
有用な微生物のエサになる成分を含んでいるためです。
土壌改良や病原菌に対する静菌力をアップさせるものとして活用できます。
米のとぎ汁はいわば、米ぬかが薄く溶けた水。
米ぬかには炭水化物や油分、タンパク質、ビタミンやミネラルなどが豊富です。
これらの有機物は、土壌の微生物にとって大好物のエサなのです。
ただし、これらの有機物を利用するのは有用微生物のみとは言えません。
病原菌が増殖してしまう可能性も考えられます。
さらに、土壌中に過不足なく窒素があれば問題ないかもしれませんが、
微生物が有機物を分解する際、植物の生長に欠かせない窒素が利用されます。
土壌中の窒素が減少してしまい、植物が育ちにくくなる可能性もあります。
米のとぎ汁を活用するのであれば、
過剰に与えないような工夫をしましょう。
与える回数を毎日ではなく3日に一回にしてみるとか、
発酵させて有用微生物の数を増加させてから活用するなども良いでしょう。
米のとぎ汁の活用例ですが、米のとぎ汁で作る乳酸菌エキスがあります。
〈米のとぎ汁で作る乳酸菌エキス〉
①米をといだ時の最初のとぎ汁を消毒したビンに投入する
②和紙で蓋をして日の当たらないところに置く
③4日程度で沈殿物が生じる
④チーズのような匂いがする
⑤一週間から10日で3層に分かれる
⑥薄黄色の真ん中の部分が乳酸菌エキス
引用元:農山漁村文化協会編『自然農薬のつくり方と使い方―植物エキス・木酢エキス・発酵エキス』(2009年7月、農山漁村文化協会)
米のとぎ汁発酵液(乳酸菌)の作り方は、この他にもたくさんあります。
上記の方法では米のとぎ汁で発酵させます。
他にも、糖分を加える方法もあるのです。
またEM菌(Effective Microorganisms/有用な微生物群)と米のとぎ汁、
糖蜜、水を加えて活性液を作るなどの方法もあります。
米のとぎ汁発酵液に関する研究論文についてもご紹介しておきましょう。
米のとぎ汁と牛乳を発酵させて作った米のとぎ汁発酵液が、
トマトかいよう病菌の増殖抑制に与える影響について書かれています。
考察によれば、トマトかいよう病菌の増殖の抑制は、
・米のとぎ汁発酵液に含まれる乳酸菌
(本研究内でLactobacillus fermentumが単離された)の生成物
・ペプチド性の抗菌物質(バクテリオシン)の一種
これらによる影響の可能性が高いと書かれています。
ただし、これらは試験管内など人工的に構成された条件下で得られた結果。
実際の圃場や施設園芸で同様に防除できるかどうかの解明はこれからでしょう。
米のとぎ汁発酵液に含まれる乳酸菌によって、
トマトかいよう病菌の増殖抑制に効果がある…と考えられています。
他の研究結果より、米のとぎ汁発酵液でネギ白絹病の防除に効果があるとの報告もあります。
引用元:中田達矢「米のとぎ汁発酵液の特性とトマトかいよう病菌(Clavibacter michiganensis subsp.michiganensis)の増殖抑制活性に関する研究 」(2018年3月、京都学園大学)
4-3.重曹
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お掃除にもよく活用されている重曹。
実は農業においても活躍します。
重カビによって引き起こされるうどんこ病に効果があるという報告があります。
しかし、使用する際にはいくつか要注意なポイントも。
炭酸水素ナトリウムにはキュウリうどんこ病やカンキツ緑かび病など、
数種の植物病害を抑制する効果があります。
しかし、植物体上で結晶化してしまうと、
葉焼け(葉が茶色くなったり色が抜けて白くなる生理障害)の原因になります。
ニガウリにおいては防除効果はあるものの、
炭酸水素ナトリウム水溶剤を散布した後、
葉が壊死するといった薬害が発生してしまった…という報告もあります。
重曹を使用する際は、水で800倍に希釈しましょう。
散布後、重曹が結晶化して葉が白くなってしまった場合には、
葉焼けが起きないように水で洗い流しましょう。
さらに、人間への毒性はありませんが、
目に入ると結膜炎を起こす場合があります。
散布する際はメガネやゴーグルをつけることをオススメします。
4-4.牛乳
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牛乳はアブラムシの殺虫効果が期待できます。
原液か少しだけ水で薄めた牛乳をアブラムシにスプレーしましょう。
牛乳は乾くと固まり、アブラムシの気門(呼吸器)を塞ぎます。
これにより、アブラムシが窒息死します。
葉に張り付いて死んだアブラムシを水で洗い流しましょう。
牛乳スプレーを散布する際は、天候に注意。
必ずよく晴れた日の午前中に行うことにしましょう。
曇りの日に散布すると、乾きにくいので無効になります。
さらに、乾かずに残った牛乳が腐ったりカビが生えたりします。
牛乳スプレーのアブラムシ対策で牛乳スプレーにはデメリットもあります。
牛乳の臭いによる問題。
「生臭い」「牛乳の臭いがなかなか取れない」という声も多いのです。
さらには、「カビなどの原因になる」という声も。
また牛乳が乾燥すると、手などでこすらないと取れないなどの声も挙がっています。
牛乳の臭いが気になる場合は、片栗粉による代用も可能です。
水で溶かした片栗粉を散布しましょう。
こちらも乾いて固まるとアブラムシの気門を塞ぎます。
片栗粉で代用する場合も、天候には要注意。
散布するのはよく晴れた日の午前中というのが鉄則です。
どの素材にも言えることですが、
「絶対的な効果」を求めるのは避けた方が良いでしょう。
あくまで補完的なものとして捉えて適度の使用をしていきましょう。
5.まとめ
![](https://minnadenoukasan.life/wp-content/uploads/2023/01/339AD090-8C2A-42FE-8C39-C1AE9FB26E57.jpeg)
今回は、「油かすの効果」についてでした。
野菜の栄養価をアップさせるためにも、
土壌の改良は欠かせません。
油かすの他にも、役立つ素材がたくさんあります。
上手に活用して、農作物の質をアップさせましょう。
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