農業をしていく上で、害虫や病気などの問題は厄介な面があります。
安易に片付けようと農薬などに頼ると、
便利な反面、デメリットもたくさんあります。
さらに、近年では環境保護の観点からも、
農薬を控えたい農家さんも少なくないでしょう。
農薬以外にも畑の持つ抵抗力をアップデートできる方法はあります。
知っておくことで、農薬を控えた農業も実現できます。
今回は、その一つである米ぬかを中心に、
畑をアップデートする方法を解説してまいります。
目次
1.ビックリ?米ぬかの効果
2.米ぬかの効果 三選
2-1.米ぬかで病気減少
2-2.米ぬかで雑草対策
2-3.米ぬかで害虫対策
3.散布する時のポイント
4.まだまだある!畑に有効な素材
4-1.米のとぎ汁
4-2.重曹
4-3.牛乳
4-4.食酢
5.まとめ
1.ビックリ?米ぬかの効果
農業生産は、大自然と向き合い、大地から恵をいただくお仕事です。
環境問題とは切っても切れない関係にあるのです。
気候変動による天候不順など、環境問題が農業生産に悪影響を及ぼすこともあります。
しかし、農業生産側も効率や生産性を追求しすぎてしまい、
安易な農薬や肥料の使用、不適切な水・土壌管理によって、
環境に負荷を与えてしまうことも少なくありません。
国連の掲げるSDGsにおいても、「持続可能な農業」が目標として設定されています。
国際的に、環境負荷に配慮した環境保全型農業、持続可能な農業が注目されています。
環境保全型農業の実現のためには、
化学合成された肥料・農薬の使用減少や、堆肥の施用などが推奨されています。
そんな中で、日本人に馴染み深い米ぬかが注目されてます。
2.米ぬかの効果 三選
「そもそも米ぬかってなんのことだっけ?」
そう思われる人もおられるでしょう。
玄米の表面を削り精米するとできるのが「米ぬか」です。
米ぬかには、なんと玄米に含まれる栄養素9割以上が含まれています。
店頭で精米してもらったならば、米ぬかも是非持って帰りましょう。
もちろん、コメの栄養素の9割が入っているものなので、
様々な用途に利用することができます。
今回は、農業において便利な使い方を三つ解説しましょう。
2-1.米ぬかで病気減少
まずは「病気の防除」という効果が期待できます。
これは、米ぬかを圃場や作物などに散布することにより、
農業生産に有用な微生物が増加、それにより病原菌と拮抗したり、抗菌物質を放出。
このことが病原菌の抑制につながるのでは?と考えられています。
米ぬか散布の方法は、カンタンです。
圃場の通路や作物などに米ぬかをふる。これだけでOKです。
有用な微生物の増加が目的なので、少量でも大丈夫なのです。
灰色かび病や菌核病に頭を抱えていたキュウリ農家の例です。
1番目になったキュウリの収穫後、
通路に米ぬかを3kg/1aの量で散布して、2週間後にもう一度散布したところ…。
病気を抑制することができたそうです。
さらに、米ぬかと環境浄化微生物資材「えひめAI」を土壌に散布し、
その後マルチを張り太陽熱処理をすることにより、
相乗効果により、病気と雑草を抑制することもできるのです。
2-2.米ぬかで雑草対策
有機栽培において、大切なのが雑草対策。
雑草対策においても米ぬかは活躍してくれます。
中央農業総合研究センターの研究報告によれば、
「土壌表面への米ぬか散布がイヌビエ等の水田雑草の発芽を抑制すること」が
報告されています。
ただし、この試験で機械による除草のみを行った区画を設定していなかったため、
この抑草効果が「米ぬかのみの効果」なのかは、明らかではないのです。
米ぬか分解時に生成される有機酸による雑草の発芽、抑制への影響が解析中なのです。
米ぬか散布による雑草抑制するシステムも未解明な部分が多いのです。
しかし、米ぬか処理量に応じて雑草の残草量は減少していることから
「米ぬか散布が抑草に貢献していた可能性は高い」とされています。
さらに、農業協同組合新聞の記事によれば、
水田に米ぬかを散布した場合、土壌表面で還元作用が起こり、
酸素が欠乏することで雑草の発芽が抑制されるのではないだろうか…。
という考察もされています。
2-3.米ぬかで害虫対策
米ぬか散布で、増加するカビの一部が、害虫にも効果を示す例があります。
埼玉県の狭山茶の産地の例です。
茶樹に米ぬかを撒いたことで害虫・クワシロカイガラムシにカビが生え、
死滅させることができたとの報告があります。
ナスやネギなどの害虫・アザミウマにも有効と言われています。
3.散布する時のポイント
病気対策、雑草対策、害虫対策…。
農業の様々な現場で役立ってくれる米ぬか。
とても便利ですが、使用する量には要注意。
米ぬかはコメの9割以上の栄養を含んでいるほどに、栄養豊富です。
そのことが裏目に出る場合もあるのです。
過剰な量を散布してしまうと、
カビや過剰に増えたり、ナメクジなどが増えたりする可能性があるのです。
また微生物は米ぬかを分解する過程で土壌中の窒素を使います。
米ぬかの散布量が多いと分解に必要な窒素量も増加してしまうのです。
すると、土壌が窒素飢餓の状態となります。
その結果、作物に窒素が行き渡らなくなってしまいます。
使用する際は一度にたくさん散布はしないようにしましょう。
様子を確認しながら、少量ずつ散布していくこと。これが大切です。
4.まだまだある!畑に有効な素材
米ぬかの有効性について解説しましたが、
米ぬか以外にも農業に役立つ素材があります。
お手軽に手に入る物が多いので、うまく活用しましょう。
今回はその一部を解説します。
4-1.米のとぎ汁
米のとぎ汁も農業に活用できます。
有用な微生物のエサになる成分を含んでいるためです。
土壌改良や病原菌に対する静菌力をアップさせるものとして活用できます。
米のとぎ汁はいわば、米ぬかが薄く溶けた水。
米ぬかには炭水化物や油分、タンパク質、ビタミンやミネラルなどが豊富です。
これらの有機物は、土壌の微生物にとって大好物のエサなのです。
ただし、これらの有機物を利用するのは有用微生物のみとは言えません。
病原菌が増殖してしまう可能性も考えられます。
さらに、土壌中に過不足なく窒素があれば問題ないかもしれませんが、
微生物が有機物を分解する際、植物の生長に欠かせない窒素が利用されます。
土壌中の窒素が減少してしまい、植物が育ちにくくなる可能性もあります。
米のとぎ汁を活用するのであれば、
過剰に与えないような工夫をしましょう。
与える回数を毎日ではなく3日に一回にしてみるとか、
発酵させて有用微生物の数を増加させてから活用するなども良いでしょう。
米のとぎ汁の活用例ですが、米のとぎ汁で作る乳酸菌エキスがあります。
〈米のとぎ汁で作る乳酸菌エキス〉
①米をといだ時の最初のとぎ汁を消毒したビンに投入する
②和紙で蓋をして日の当たらないところに置く
③4日程度で沈殿物が生じる
④チーズのような匂いがする
⑤一週間から10日で3層に分かれる
⑥薄黄色の真ん中の部分が乳酸菌エキス
引用元:農山漁村文化協会編『自然農薬のつくり方と使い方―植物エキス・木酢エキス・発酵エキス』(2009年7月、農山漁村文化協会)
米のとぎ汁発酵液(乳酸菌)の作り方はこの他にもたくさんあります。
上記の方法では米のとぎ汁で発酵させます。
他にも、糖分を加える方法もあるのです。
またEM菌(Effective Microorganisms/有用な微生物群)と米のとぎ汁、
糖蜜、水を加えて活性液を作るなどの方法もあります。
米のとぎ汁発酵液に関する研究論文についてもご紹介しておきましょう。
米のとぎ汁と牛乳を発酵させて作った米のとぎ汁発酵液が、
トマトかいよう病菌の増殖抑制に与える影響について書かれています。
考察によれば、トマトかいよう病菌の増殖の抑制は、
・米のとぎ汁発酵液に含まれる乳酸菌
(本研究内でLactobacillus fermentumが単離された)の生成物
・ペプチド性の抗菌物質(バクテリオシン)の一種
これらによる影響の可能性が高いと書かれています。
ただし、これらは試験管内など人工的に構成された条件下で得られた結果。
実際の圃場や施設園芸で同様に防除できるかどうかの解明はこれからでしょう。
米のとぎ汁発酵液に含まれる乳酸菌によって、
トマトかいよう病菌の増殖抑制に効果がある…と考えられています。
他の研究結果より、米のとぎ汁発酵液でネギ白絹病の防除に効果があるとの報告もあります。
引用元:中田達矢「米のとぎ汁発酵液の特性とトマトかいよう病菌(Clavibacter michiganensis subsp.michiganensis)の増殖抑制活性に関する研究 」(2018年3月、京都学園大学)
4-2.重曹
お掃除にもよく活用されている重曹。
実は農業においても活躍します。
重カビによって引き起こされるうどんこ病に効果があるという報告があります。
しかし、使用する際にはいくつか要注意なポイントも。
炭酸水素ナトリウムにはキュウリうどんこ病やカンキツ緑かび病など、
数種の植物病害を抑制する効果があります。
しかし、植物体上で結晶化してしまうと、
葉焼け(葉が茶色くなったり色が抜けて白くなる生理障害)の原因になります。
ニガウリにおいては防除効果はあるものの、
炭酸水素ナトリウム水溶剤を散布した後、
葉が壊死するといった薬害が発生してしまった…という報告もあります。
重曹を使用する際は、水で800倍に希釈しましょう。
散布後、重曹が結晶化して葉が白くなってしまった場合には、
葉焼けが起きないように水で洗い流しましょう。
さらに、人間への毒性はありませんが、
目に入ると結膜炎を起こす場合があります。
散布する際はメガネやゴーグルをつけることをオススメします。
4-3.牛乳
牛乳はアブラムシの殺虫効果が期待できます。
原液か少しだけ水で薄めた牛乳をアブラムシにスプレーしましょう。
牛乳は乾くと固まり、アブラムシの気門(呼吸器)を塞ぎます。
これにより、アブラムシが窒息死します。
葉に張り付いて死んだアブラムシを水で洗い流しましょう。
牛乳スプレーを散布する際は、天候に注意。
必ずよく晴れた日の午前中に行うことにしましょう。
曇りの日に散布すると、乾きにくいので無効になります。
さらに、乾かずに残った牛乳が腐ったりカビが生えたりします。
牛乳スプレーのアブラムシ対策で牛乳スプレーにはデメリットもあります。
牛乳の臭いによる問題。
「生臭い」「牛乳の臭いがなかなか取れない」という声も多いのです。
さらには、「カビなどの原因になる」という声も。
また牛乳が乾燥すると、手などでこすらないと取れないなどの声も挙がっています。
牛乳の臭いが気になる場合は、片栗粉による代用も可能です。
水で溶かした片栗粉を散布しましょう。
こちらも乾いて固まるとアブラムシの気門を塞ぎます。
片栗粉で代用する場合も、天候には要注意。
散布するのはよく晴れた日の午前中というのが鉄則です。
4-4.食酢
食酢も農業のサポートになる素材です。
期待できる効果は窒素過多の解消、うどんこ病などの病気予防。
根から吸収された窒素は葉で有機酸と合体し、アミノ酸になります。
有機酸が不足すると、窒素が余り、植物は窒素過剰に陥ります。
また窒素のやりすぎや天候不順などでも窒素過剰が発生します。
そんな時、食酢を葉面散布すると、
酢に含まれる酢酸や有機酸が植物の窒素消化をサポートしてくれます。
さらに、うどんこ病への効果についてです。
食酢はうどんこ病、べと病、キュウリ斑点細菌病などに対する防除例が報告されています。
イネばか苗病菌、イネいもち病菌などにも抗菌活性を示しているのです。
引用元:円谷悦造・川村吉也「最近の非食品分野への食酢利用」(1994年、日本醸造協会誌/89 巻8 号)
しかし、別の研究では、
「主たる防除資材と位置づけて連用するのは実用的でないと考えられる」
という意見もあります。
引用元:伊藤大雄、上原子毅、二ツ森祐里、泉荘「食酢および酸性水を利用したリンゴ有機栽培における病害発生状況」(2012年、北日本病害虫研究会報/2012 巻63 号)
上記実験は、殺菌効果のある代替防除資材として、
食酢または酸性水を年間14回散布する形でリンゴの有機栽培を2年間実施。
各種病害の発病程度や果実収量、品質への影響を調査したもの。
食酢のみを散布した区域では、毎年褐斑病やすす斑病などの病気が多発したとあります。
リンゴに発生する病害への食酢の防除効果に関する過去の研究から、
「うどんこ病や褐斑病に対する一定の防除効果」は確認されています。
…しかし、病気によっては効果が認められないという報告もあるわけですね。
食酢に限ったお話ではありませんが、
「絶対的な効果」を求めるのは避けた方が良いでしょう。
米ぬかも、米のとぎ汁、重曹、牛乳…その他の素材などにおいても、
あくまで補完的なものとして捉えて適度の使用をしていきましょう。
5.まとめ
今回は、「米ぬかを活用した畑の改良」についてでした。
米ぬかの他にも畑に役立つ素材はたくさんあります。
農薬使用のデメリットや、環境保護の観点からも、
農薬を控えていくことは大切なことです。
役立つ素材も活用しつつ、持続可能な農業を実現していきましょう。
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