始めに
今回この記事では、農家として栽培した農作物を販売するまでの「販売ルート」についてまとめていきます。この記事を読んでいただいている人の中には、これから農家を目指している人だけでなく、農家として実際に働き始めた人もいるかもしれません。
農家として生活していくためには、美味しい農作物を栽培することはもちろん大切ですが、大切に育てた農作物を売上に代えて収入を増やしていくことも大切です。となると、販売ルートの選定はとても重要な作業になってくるのではないかと思います。
栽培した農作物を販売する基本的な方法として、「卸売り」と「小売り」があります。よく聞く言葉だけど、いまいちよく違いが分からないと感じている人も、なかにはいるかもしれません。今回は、「卸売り」と「小売り」とは、どのような販売方法なのかをまとめながら、「卸売り」と「小売り」の違いについてまとめていきます。
そして記事の後半では「卸売り」と「小売り」の他には、どのような販売ルートがあるのかについても、まとめていければと思いますので是非、最後まで読んでいってください。
「卸売り」とは
「卸(おろし)売り」とは「生産者や輸入業者から商品を仕入れてこれを小売商人に売り渡すこと」、あるいは「商品流通の課程で製造・収穫と小売りの中間に位置する経済・販売活動を行う業種のこと」を言います。
言葉だけではイメージが湧きにくいと思うので、農業場面での「卸売り」業者について具体例を見ていくと、「農業協同組合(農協・JA)」や卸売市場と聞けば、イメージしやすいのではないのでしょうか。
「生産者や輸入業者から商品を仕入れてこれを小売商人に売り渡すこと」という「卸売り」の説明に農家と農業協同組合(農協・JA)、卸売市場を当てはめてみると、「生産者(農家)や輸入業者から商品を仕入れて(農協・JA)・(青果物卸売市場)これを小売り商人(スーパーなど)に売り渡すこと」と当てはめることができます。
ここまで「卸売り」について説明してきましが、「卸売り」についてイメージは湧きましたでしょうか?ここからは、「小売り」について見ていきましょう。
「小売り」とは
「小売り」とは「卸売商などから仕入れた品物を一般消費者に分け売りすること」、ないしは「生産者や卸売業者から購入・仕入れた商品を最終消費者に販売すること」を言います。
「小売り」に関しては「卸売り」よりもイメージが湧きやすいかもしれません。「生産者や卸売業者から購入・仕入れた商品を最終消費者に販売すること」という説明から、私たちが普段、食料品などを購入している「スーパー」や「道の駅」、「コンビニ」などが「小売り」に含まれます。
「卸売り」と「小売り」の違い
ここまで、説明してきた「卸売り」と「小売り」の違いについて、農業での場面を具体例としてまとめていくと…
【卸売り】
生産者(農家) ↓ 農業協同組合(農協・JA) 【卸売り】 ↓ 小売業者(スーパーなど) ※「卸売り」は生産者(農家)と小売業者(スーパーや道の駅)の間に入り取引を円滑に進める 【具体例】:農協は農家から野菜を購入し、小売業者(スーパー・道の駅など)に運ぶ役割がある |
【小売り】
生産者(農家) ↓ 農業協同組合(農協・JA ) ↓ 小売業者(スーパー・道の駅・コンビニ) 【小売り】 ※「小売り」は一般消費者(私たち)に商品を販売する役割 |
農業場面で、「卸売り」と「小売り」はどこに分類されるのか、違いが分かるように簡単にまとめてみました。「卸と小売」の違いについてイメージがつきましたでしょうか?
また、これから農家を目指している人には、栽培した農作物をどのように出荷して売上にしていくのかという1つのイメージができたのではないでしょうか。このように、農家として栽培した農作物を販売するルートの1つとして「農業協同組合(農協・JA)」に加入して組合員として、農作物を出荷するという方法があります。
この他にも栽培した農作物を販売するルートはたくさんあります。ここからは、農作物の「販売ルート」についてどのような方法があるのかを見ていきましょう。
農作物の販売ルート(売り方)【5選】
ここからは、農家として働くようになった時に栽培した農作物をどのようにして販売していくのかについて紹介していきます。
上記の「卸売り」と「小売り」についての説明で、生産者(農家)と小売業者(スーパーなど)の間を繋ぐ「農業協同組合(農協・JA)」に農作物を出荷する方法を紹介しましたが、その他にどのような「販売ルート」があるのかみていきましょう。
仲卸業者(農協・市場)
まず、最初に紹介するのが、「仲卸業者」です。「卸売り」についてでも紹介しましたが、農協や青果物卸売市場に出荷する方法です。販売ルートの中では最も一般的で多くの農家さんが仲卸業者(農協・市場)に出荷しています。
では、農協や市場といった「仲卸業者」を販売ルートにすることでどのようなメリットがあるのか。反対にデメリットはあるのかについてみていきます。
【メリット】 ・農協や市場は規模が大きいので安心感がある ・農作物の返品がない ・売り先を見つけなくて済むため栽培に集中できる ・量を出荷できる |
「仲卸業者」を販売ルートにすることのメリットとしては上記のようなメリットがあります。農協の組合員になり農協に出荷することで、売り先を決めなくてもいいため栽培(生産)に集中でき、栽培技術の向上・収穫量の増加にも期待できるというところが最大のメリットではないかと私は思います。
しかしメリットだけでなく、もちろんデメリットもあります。ここからは「仲卸業者」を販売ルートにすることのデメリットについてみていきます。
【デメリット】 ・農協への手数料がかかるため、卸値が安い ・規格が厳しい |
デメリットは上記の通りです。農協へ出荷することで、売り先は農協が探してくれますが、その分の手数料を取られてしまうため、卸値が安くなってしまうというデメリットがあります。
また、「規格が厳しい」というのは農協は、農家さんが出荷で持ってくる農作物を検査し、栽培した農作物のできをチェックします。大きさや農作物のできによって「LL」・「L」・「M」といったランク付けをされてしまうため、多くの売上を上げるには「量と質」が大切になっていきます。
ここまでが、1つ目の販売ルートの「仲卸業者」です。農協の組合員になって出荷する方法が1番基本的な方法ではありますが、その他にも様々な方法で自分の栽培した農作物を販売することができます。
小売り(スーパー・道の駅など)
ここから紹介していく販売ルートは、農協といった「仲卸業者」を通さずに直接お店に販売するルート「直販」です。主に「スーパー」や「道の駅」に直接販売するといった方法を「小売り」といいます。
前項の「仲卸業者」の説明では、農協や市場への出荷へのデメリットとして仲介手数料がかかる分、卸値が安くなるということを紹介しましたが、その時の相場によって価格が変動しやすいということも点もあります。こういった点を踏まえて小売りのメリット・デメリットについて見ていきましょう。
【メリット】 ・仲卸業者よりも高値で売れる ・地元の人に販売でき、食べてもらえる |
【デメリット】 ・手間がかかる(袋詰め、ラベル張り、陳列など自分でやる作業が増える) ・比較されやすい(他で栽培された農作物と) ・売れ残る可能性も |
一見、高値で売れると聞くといいように聞こえますが、「小売り」は自分で販売先を探し、袋詰め・ラベル張り・陳列などの作業も自分たちで行う場合があるため、手間は「仲卸業者」へ出荷するよりもかかります。
しかし、栽培だけでなく、販売するまでを自分の力でやりたい・面白そうと思えれば、「小売り」のほうがやりがいは大きいのではないかと思います。
「小売り」で販売する方法は、スーパーや道の駅といったお店だけでなく様々な場所がありますので、ここからは「小売り」場面で他にはどのような場所に販売できるのかということを紹介していきます。
飲食店や旅館などの事業者
スーパーや道の駅に販売する以外の方法として、まず紹介するのは「飲食店」・「旅館」などに販売する方法です。飲食店には、ファミリーレストラン(ファミレス)や個人経営のレストラン、居酒屋など様々なお店がありますが、こうした飲食店や旅館に栽培した農作物を販売することで、安定した出荷が見込め一定の収入を得ることができます。
しかし、農作物の栽培をしながら、販売先の営業もしなくてはいけないため負担が大きいことがデメリットと言えるでしょう。
【メリット】 ・出荷量の安定 ・一定の安定した収入が期待できる |
【デメリット】 ・飲食店や旅館に自分自身で営業をしなくてはならない ・栽培以外の負担が増える |
飲食店や旅館に販売するルートについてまとめると、上記のようなメリットとデメリットがあることがわかったかと思います。正直、自分自身で営業できるか不安と感じた人も多いのではないでしょうか。そんな人におすすめしたいのが、次に紹介する「ネット販売」です。
ネット販売
次に紹介する「ネット販売」は、その名の通り、インターネットを活用して栽培した農作物を販売する方法です。「ネット販売」と言ってもフリマ(フリーマーケット)アプリや産直サイトの活用、大手ECサイト(Amazonや楽天など)を活用した方法など様々な方法がありますが、全ての販売方法に共通している点としては、比較的良い値で販売できる、全国各地に販売することができることが共通点としてあります。
近年ではコロナの影響もあり、ネット販売を取り入れている農家さんも増えてきています。しかし、インターネットに関する知識がないと少しハードルが高いかもしれません。
ここまで、様々な小売りの販売ルートについて見てきましたが、営業もインターネットの操作も難しそうと感じた人も多いかと思います。最後に紹介する販売ルートは、営業もインターネットも必要ないシンプルな販売ルートを紹介していきます。
【メリット】 ・良い値で販売できる ・全国各地に販売できる ・宣伝効果も期待できる |
【デメリット】 ・インターネットの知識がないとハードルが高い |
無人販売・移動販売
【無人販売】
仕組みもシンプルで、ほぼ自動で収入を得られると注目されているのが「無人販売」です。無人販売を行う場所を決めて、栽培した農作物を値段を決めて並べて置くことで、ほぼ自動的に収入を得ることができます。さらに、新鮮な農作物を栽培している地域で地元の人たちに食べてもらえることもメリットと言えるのではないでしょうか。
もちろんメリットだけでなく、必ずしも売上がでるとは限らないことや農作物やお金が盗まれるといったリスクもあるため、防犯対策も必要になってきます。
【メリット】 ・農作物を置いておくだけで自動的に収入を得られる ・新鮮な農作物が地元の人に届く |
【デメリット】 ・必ずしも売上がでるとは限らない ・農作物・お金が盗まれる可能性も |
【移動販売】
最後に紹介する販売ルートとして近年注目されているのが、「移動販売」です。その名の通り車に栽培した農作物を陳列し、人が集まる場所や近くに買い物をする場所がないところまで行き、移動しながら販売する方法です。消費者が求めている場所、人がたくさん集まる場所で販売できるといったメリットがあります。
デメリットとしては、無人販売は商品を並べて置いておくだけでしたが、「移動販売」は移動や接客が必要になってくるため、ある程度の時間が必要になってくるというところではないでしょうか。
【メリット】 ・人が集まる場所を選んで販売できる ・消費者が求めている場所で販売できる(近くにスーパーやコンビニがない場所など) |
【デメリット】 ・移動や接客をする時間が必要 |
最後に
この記事では、農家として農作物を販売するための方法として大きく分けると「卸売り」と「小売り」があるということを最初に説明し、「卸売り」と「小売り」の違いについて具体例を交えながら紹介していきました。
さらに、「小売り」について詳しく見ていくと様々な「販売ルート」があるということが分かったと思います。栽培した農作物を余すことなく売り切るために、そしてより多くの人に食べてもらうためにこの記事を参考にしていただけたらと思います。
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