農家にとって、厄介な問題の一つが「農作物の病気」です。
せっかく丹精込めて栽培した農作物が、
病気になってしまいボロボロになれば…。
もちろん、売り物にすることができなくなります。
農作物を病気から守るための方法の一つとして、
「有用微生物」の活用があります。
有用微生物を味方につけることにより、
病害虫への対策にもつながります。
本記事では、「有用微生物」を増やして、
農作物が元気で栄養たっぷりに育つための方法を解説いたします。
是非ご一読ください。
目次
1.畑の医者!有用微生物の活躍!
2.有用微生物はそこらじゅうにいる!
3.葉っぱにいる有用微生物
4.まだまだある!有用微生物の増やし方!
4-1.堆肥による増やし方
4-2.木酢液でも増やせる!
5.畑の心強い味方!有用微生物のメリット
6.まとめ
1.畑の医者!有用微生物の活躍!
農作物に病害を与える虫や微生物。
農家にとっては厄介な存在ですが、彼らとて自然界に生きている生物。
完全に駆除してしまうことは現実的な方法とは言えません。
下手に強力な農薬などで駆除をしてしまえば、
農作物に益をもたらしてくれる益虫まで駆除してしまいかねないのです。
かといって、病害虫をそのまま放置してしまえば、
当然、農作物に悪影響が及ぶ可能性があるのも確かなのです。
病害虫が発生したとしても、
安易に、農薬や防除剤を利用して駆除する…
その前に、一旦立ち止まって対策を練り直す必要があります。
畑の状態や、病気との因果関係を掴むことも大切です。
病気の元となっているのは、どのような株なのか?
どのタイミングでタネをまくと発生しやすいのか?
肥料の量との関係はあるのか?
安易な害虫駆除を行うことよりも、大切なことがあります。
それは、農作物自体が病害虫に対する高い抵抗性を持っておくこと。
これにより、農作物自体も栄養価の高い食材として育つことができます。
それには、農作物に益を与えてくれる「有用微生物」との、
連携が不可欠になるのです。
2.有用微生物はそこらじゅうにいる!
人間の目では視認することはできませんが、微生物はどこにでもいるのです。
有用なものも有害なものもバランスよく存在しているのです。
農作物を育てる上で重要な役割を果たすのが土です。
健康な作物を栽培することのできる良い土の条件。
それは、「土壌中の生物多様性」を挙げることができます。
土壌生物には有機物を分解し、土の団粒化を促す微生物もいれば、
施された肥料を植物が吸収しやすいように分解してくれる微生物、
空気中の窒素を植物の根に供給する微生物などなど。
それこそ、役割は様々なのです。
もちろん、病害をもたらすものや生育阻害を行なう菌もいます。
ですが、生態系のバランスさえ取れていれば、
病害菌が異常増殖してしまい、悪影響が広がり病気が拡大…ということはありません。
さらに、土壌だけでなく、茎や葉にも微生物は存在しているのです。
有用な微生物であれば、葉から分泌される栄養分を糧に生育し、
病原菌の繁殖を抑制する微生物もいます。
3.葉っぱにいる有用微生物
葉にいる微生物の働きは、抗菌物質を放出して、病害菌を抑制することです。
物質を作り出すのみではなく、病原菌自体に寄生し、
病原菌を病気にして滅してくれる微生物もいます。
単純に葉の上で生存競争を繰り広げる微生物もいます。
葉にいる有用微生物は発酵食品でもおなじみの酵母や乳酸菌、
枯草菌(バチルス属など)が挙げられます。
我々人間にとっても、有用な微生物ばかりです。
「葉にいる有用微生物を増殖させて、病原菌から防除したい」
というのであれば米ぬかの活用がオススメです。
リン酸やマグネシウムなどのミネラル、ビタミンが豊富に含まれている米ぬか。
有用微生物にとって栄養たっぷり含まれた大好物なのです。
ちなみに、微生物の好む成分のため、
生ゴミ堆肥をつくる場合にも米ぬかの利用が推奨されているほどです。
増やす方法は難しくなく、散布するだけでOKです。
この際葉や土が湿っていることを要確認。
乾いている環境下より湿っている環境下の方が、微生物にとって最適な環境なのです。
曇りの日や夕方に撒くと良いでしょう。
葉にいる有用微生物は有機酸やアルカリ物質を分泌して、米ぬかを分解吸収します。
その際、瞬時に葉の上が強酸性、強アルカリ性と変化するのです。
これによって、病原菌にとっては好ましくない環境を作ることができます。
4.まだまだある!有用微生物の増やし方!
4-1.堆肥による増やし方
保水性や排水性を良くするため、土をふかふかにしてくれる堆肥。
これにも、土壌微生物を増やす効果があります。
堆肥の原料は植物が主原料のものと家畜ふんが主原料のものがあります。
いずれも堆肥に含まれる有機物が微生物のエサとなってくれるのです。
ちなみに、堆肥そのものにも微生物がついています。
このため、微生物の多様性をさらに促すことにもつながっていくのです。
生態バランスが取れれば、病害菌のみが異常繁殖防止もできます。
病害が起こる可能性を低くすることができます。
土壌微生物を増殖することのできる堆肥。
土づくりをする際は、土が適度に乾いている時に行いましょう。
畑が湿った状態で耕すと、後々土がカチコチに固まってしまいます。
だからといってカラカラに乾いている状態では土が粉々になってしまいます。
土が「適度に」乾いている状態を見極めましょう。
また作業は作付けの3週間前に行ないましょう。
作付けまでに時間をおく理由。
それは、土をふかふかにする堆肥を耕すと、土にすき間ができるのです。
しかし、その際一時的に土が乾いてしまいます。
時間がたてばなじむので乾燥の心配もありませんが、
時間をおいてじっくりなじませる…ということを意識しましょう。
4-2.木酢液でも増やせる!
木酢液とは、木炭を作る工程で出る水蒸気が冷えて液体になったものです。
木酢液の幅広い葉とに使われています。
古くは木材の防腐剤や媒染、忌避剤としても活用されました。
農業分野でも度々活用されています。
病虫害予防や農作物の増収に有効活用できます。
使い方を誤るとかえって生育環境を悪化させる可能性もあるのは注意です。
木酢液の90%は水分ですが、残りの10%に多様な有機成分が含まれています。
木酢液の原料となる樹木の種類や質、炭焼きの温度や天候などによって、
含まれる成分に差は生じます。
ですが、木酢液には有機酸類、フェノール類、カルボニル化合物、
アルコール類、中性成分、塩基性成分が含まれているのです。
最も多いのが有機酸類。
木酢液に含まれる有機物のうち約50%を占めます。
酢酸やプロピオン酸、酪酸などが挙げられます。
有機酸類は、作物に吸収されにくい栄養成分(ミネラルなど)を、
作物が吸収しやすい形に変えてくれる働きがあります。
また土壌中の微生物がアミノ酸を合成する際の材料にもなるのです。
木酢液の効果として、有用微生物を増殖する働きがあります。
有用微生物(根圏微生物や葉面微生物)は、
根や茎葉から分泌される光合成産物である糖やアミノ酸、
ビタミンなどを栄養分として増殖するのです。
そして病原菌の増殖を防止したり、植物が吸収しやすいように、
土壌中の栄養分を分解・合成する働きがあります。
一定濃度に薄めた木酢液は、この有用微生物の絶好のエサとなります。
有用微生物の増殖をサポートしてくれます。
注意したいのは、木酢液の濃度です。木酢液の原液は強酸性。
そのまま与えてしまうと、病原菌だけでなく有用微生物も死滅してしまうのです。
ですが、200倍〜400倍以上に希釈すると、
徐々に微生物の繁殖が始まるのです。
木酢液に含まれる成分は有用微生物のエサとなって、
優先的に増殖した有用微生物が抗菌物質を分泌してくれ、
病原菌を寄せ付けないことで、病気が発生率を低下させます。
病気予防のために木酢液を用いる際は、
500倍に薄めた木酢液を7〜10日に1回、定期的に散布。
この方法がオススメです。
5.畑の心強い味方!有用微生物のメリット
微生物を味方につけることで得られるメリットは数多くあります。
例を挙げると土壌中であれば、微生物が多くなることにより、
「土が活きている」状態になるのです。
微生物が豊富な土であれば、酸素も水も良く通します。
pHも最適と言われる5.0~6.0を保つことができるのです。
有機物を分解する能にも長けていますから、
農作物が根から栄養分を吸収しやすくなるでしょう。
微生物には吸収をサポートすることもできれば、
根に必要な栄養分を作り出すということもできるのです。
葉の上の微生物、特に米ぬかを活用して、病害虫を防除する際、
乳酸菌の繁殖によって、葉の上のpHが4.5以下の酸性となります。
酸性の環境下では病原菌は、活動することができないのです。
乳酸菌の出す乳酸によって微生物が淘汰されるというわけです。
さらに、乳酸菌の出す有機酸によって、
土に含まれるミネラルを植物が吸収しやすくなるというメリットもあります。
そして微生物による防除は「有用微生物に有効な成分を用意するだけで済む」ということも、
農業従事者にとって大きなメリットと言えるでしょう。
微生物同士は常に生存競争を繰り広げています。
私達はその中でも私達にとって有用な微生物が増えるようにサポートすればいい…。
ある程度の世話をすれば、ある意味では放置しておけば良いのです。
しかし、両方の微生物について理解がない場合は、
間違ったサポートにより病害虫を元気にさせてしまう場合もあり得ます。
「有用微生物」と「有害微生物」の生育環境の違いを理解しておきましょう。
6.まとめ
今回は「有用微生物の活用」についてでした。
農業にとって、実に厄介な病害虫による病気の被害。
農薬は便利ですが、安易に頼れば悪影響も出てきます。
有用微生物の力を活かして、農作物を病気から守りましょう。
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