【現代農業で注目されているアグリテックとは?!】日本での事例や課題と共に解説

現代農業で注目されている【アグリテック】。「聞いたことはあるけどなんのこと?」という方も多いのではないでしょうか?

これから農業の分野に挑戦しようと考えた時に、必ずワードとして出てくる【アグリテック】。従来の農業の課題を解決すべく、最新の技術を用いている分野の一つです。

そこで今回は【アグリテック】についてご紹介します。「これから農業の分野に挑戦したい」「現代の農業のことを勉強したい」など考えている方のお役に立てれば幸いです。

そもそもアグリテックとは?

アグリテックとは

アグリテックとは、農業(Agriculture)と技術(Technology)を組み合わせた造語です。

AIやドローン、ビックデータ、loTといった最新技術を駆使することによって、農業をIT化していこうとする技術や概念の総称を表しています。

現代の農業は、少子高齢化や後継ぎ不足などの影響により様々な問題を抱えています。一方で、まだまだ伸び代があるとされており、ビジネスチャンスの多い分野であることから、多くの企業がこのアグリテックという分野に参入し、日本の農業が抱える課題を解決しようと動いています。

アグリテックの市場規模

アグリテックの市場規模は、世界中で拡大しています。

日本のアグリテック市場も拡大中で、2021年から2030年までの9年間で、3倍の約2100億円の市場規模に達すると考えられています。

アグリテックが必要とされている背景

農業従事者の不足

現在、自営農業を主に行っているかつ、農業を主な仕事として従事している「基幹的農業従事者」は年々減少しています。

2000年時点では約240万人でしたが、2020年には約136万人と、20年間で約4割も減少してしまっています。また、そのうち約7割が65歳以上の高齢者で、このままではさらに減少していくことが予測されています。

さらに、農業人口が減っている原因として、離農者の多さが問題となっています、若い世代が「農業に挑戦してみたい・携わってみたい」と農業の世界に足を踏み入れたとしても、給与や勤務時間に対する不満等を理由に離農してしまっているのが、現状です。

この農業従事者の不足を補うためにも、アグリテックの活用は重要といえるでしょう。

食料自給率の低下

日本では、以前から食料自給率の低さが問題となっています。

令和2年度のカロリーベース(1人当たりの供給熱量)の総合食料自給率は37%、生産額ベースの総合食料自給率は67%という数字が発表されています。

これは、アメリカの132%、93%や、フランスの125%、83%など、世界の国々の食料自給率と比較すると、非常に低いです。

これはつまり、日本人が接種している食料の約6割以上を海外からの輸入に頼っていることを示します。

そこで政府は、2030年までに食料自給率を45%まで引き上げるという目標を掲げています。

農業従事者が減少する中でこの目標を達成するには、データなどを活用して不作を最小限にとどめる、ドローンやロボットの活用で大量生産を可能にしていくなど、より効率的な農業を行っていくこと(=アグリテック)が重要になってくるといえるでしょう。

技術やノウハウを可視化できていない

今までは、農業従事者が持っているノウハウはいわゆる口伝で、雇用者と被雇用者の間などで直接教えるのが一般的でした。

しかし口伝では、伝えられる内容に限界があったりニュアンスが違ったりと、ノウハウの継承の取りこぼしが発生してしまいがちです。

実は、この技術やノウハウの可視化や継承がうまくいっていない点が、離農者の増加に拍車をかけているといわれています。せっかく農業を学ぼうとしても、実際に必要な情報が集まるまでに膨大な時間がかかってしまう等の問題が発生しています。

扱う農産物やその土地の気候など、様々な情報を蓄積して、技術やノウハウを可視化できるアグリテックを活用することで、このような問題も解決できる可能性があるといえるでしょう。

アグリテックで注目されている分野

ドローン

アグリテックにおいて、代表的な実用例は【ドローン】です。

多くの人がイメージするのは農薬散布だと思いますが、現在では肥料の散布や種まきなどにも幅広く利用されています。

これまで肥料散布や農薬散布は無人ヘリコプターで行うのが一般的でしたが、効果で重量も重く、誰でも使用しやすいものではありませんでした。

対して農業用ドローンは、10〜20kgほどの重量で価格も1台100万円前後。操作もシンプルで扱いやすいため、労働負担の軽減に繋がっています。

ロボット

農作業は、種まき・植え付け・除草・収穫・搬送など、多岐に渡ります。

その作業内容にはロボットで補えるものも多く、単純作業にロボットを活用することで、大規模生産等も可能になり、作業の効率化や人員の最適な配置にも繋がっていきます。

loTとAI

走行時に土壌の状態が分析できる、収穫時に望ましい土壌の状態を判断できるトラクターや、農場の気温や湿度、雨量データを10分間隔で計測できるネットワーク機器等、農業用loTが普及してきています。

これらを活用することで、農業用の機器にセンサーやモニターを取り付けることで、簡単にデータ収集を行うことができます。

loT機器や農業用ドローンに取り付けられたカメラから収集したデータをAIが分析することで、適正な収穫時期を判断したり、収穫量の予測を立てることができてきています。

都市型農業

限られた土地や空間等、消費地のすぐ近くで行われるアグリテックな農業、“都市型農業”も注目されています。

実施例としては、

・垂直農法→使用されなくなった倉庫や高層ビルの屋上などを利用

・アクアポニックス→野菜と魚を同時に育てる

等があります。

都市型農業は、消費地の近くで生産することにより、輸送費のコスト削減が可能になり、かつビルや倉庫等、施設のエネルギーの再利用にも繋がっていきます。

アグリテックの課題

アグリテックの普及に関する課題は、【技術開発】【導入コスト】などが挙げられています。

【技術開発】においては、農機の完全自動走行、品目共通で利用できる収穫ロボット等、開発が待たれているものが多くあります。

【導入コスト】において、どんなに便利なものでも一般の農家の手が届かない価格になってしまっては意味がないため、開発コストを抑えて現実的な価格を設定することも必要になっています。

また、人件費と比較したときに、アグリテックの導入により利益が増えるかどうかも重要なポイントです。

アグリテックの日本での導入事例

ロボット草刈機を導入したりんご園

ロボット草刈機を導入したりんご園では、除草作業の無人化・省力化を実現することができています。

具体的には

・1年間の除草作業時間が20時間から1時間へと大幅削減

・夏の時期の炎天下の中や傾斜面での作業が不要となり、農業者の身体的負荷や人件費の削減

等が実現できています。

ロボットトラクターを導入した稲作農家

ロボットトラクターを導入した稲作農家では、自動運転システムにより、経験の浅い農業者でも熟練農業者と同等レベルの精度・速度の作業を実現することができています。

本来、播種作業はハンドル操作をしながら播種の深さや覆土の状況を確認する必要があり、熟練農業者でも難しい作業とされています。

ですが、自動運転システムによりハンドル操作が不要になったため、経験が浅い農業者の作業も可能になりました。

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)を導入した観光農園

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)を導入した観光農園では、売電収入を得ながら農業を経営するという新たな形が実現されました。

具体的には

・10aの農地で年間200万円の売電収入を得ることに成功

・パネル下ではブルーベリーを栽培しており、大粒で品質の良いものができている

・パネル下に日陰ができるため、炎天下の作業が楽になり、乾燥も防ぐことができている

さらに、周辺の農業者からも協力したいという声が上がり、未利用の農地の再生にも大きく貢献しています。

環境制御システムを導入したトマト農家

ビニールハウス内に環境制御システムを導入したトマト農家は、作業の省力化に成功し、農業経営の拡大を実現させました。

具体的には

・ハウス内の天窓・側窓・遮光カーテン・暖房機など、あらゆる設備を遠隔操作できるようになり、日々の作業時間を削減

・作業にゆとりができ、作付け面積UP(20a→50a)

この事例は環境制御システムなどの導入により、家族経営でも農業規模を拡大することができた優良事例です。

搾乳・エサ寄せロボットを導入した酪農家

搾乳・エサ寄せロボットを導入した酪農家は、重労働を無くすことに成功しています。

具体的には

・搾乳・エサ寄せなどの重労働から解放されたことで、繁殖管理などの他の作業時間UP

・乳牛のストレス低下により乳量の増加(10,069kg/頭→11,790kg/頭)

・労働時間削減(9.6時間/人→7.4時間/人)

分娩監視システム・牛舎内監視カメラを導入した酪農家

乳牛の分娩は、長期的な心理的負担や頻繁な見回りが必要となり、酪農家には大きな負担となっていました。

今回分娩監視システム・牛舎内監視カメラを導入した酪農家は、分娩に関する負担や労力の削減を実現しています。

具体的には

・分娩時期を予測して通報してくれるため、分娩準備や農作業のスケジュール調整が容易に

・監視カメラにより、離れたところからでも管理可能となり、見回りの労力削減

また、分娩の兆候も早期発見できるため、分娩事故減少にも繋がるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

日本の農業の人手不足は深刻な問題となっています。そのため、国をあげてアグリテック、いわゆる我が国では「スマート農業」と呼ばれる試みも進められています。

また、国内だけでなく世界でもアグリテック市場は拡大しており、将来性はますます高まっています。

それぞれの農家の用途にあったアグリテック製品・サービスを導入することができれば、農家の作業効率や収益が向上するだけでなく、他の農作業やプライベートの時間確保にも繋がっていくでしょう。

これから農業に挑戦する方は、アグリテックの導入も検討してみることをおすすめします。

「みんなで農家さん」では、現役農家さんだけではなく、これから農家を目指す新規就農の方々へ役立つ情報を幅広く紹介しています。

有益な情報ばかりですので良ければ他の記事もご覧ください。

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