将来農家になりたいと考えている皆さん、今農家の数が減少傾向にあるということを知っていますか。
農林水産省の調査によると約10年前全国に250万人以上いた農家が近年では約160万人と大幅な減少傾向にあることが分かりました。
こうした農家の大幅な減少の原因には様々な背景が考えられますが、最大の原因として少子高齢化社会に伴う、農家の平均年齢の上昇と若い世代の農家が中々増えないということが原因にあります。
この記事では、実際現在の農家の平均年齢はどうなっているのか、世代別に分けてみると年齢の分布はどうなっているのかをまとめ、さらに若い世代の就農状況についてもまとめていき、農家年齢の現状と若い世代の農家の状況を解説していければと思います。
農家の平均年齢について
冒頭で、農家の数が毎年減り続けている現状であることを説明しました。農業を仕事にしている人の数について調べてみると以下のデータがでてきたので、まとめていきたいと思います。
【2010年】
農業就業人口:260.6万人
【2019年】
農業就業人口:168.1万人
日本の農業人口はどう推移している?農業現場へ与える影響とは
2010年と2019年を比較してみると大幅な農家の減少を読み取ることができると思います。
農業が減り続けている背景として、真っ先に農家の高齢化と若い世代の農家が増えてこないことが考えられると冒頭で説明しました。実際にこの背景を決定づける根拠として農家の平均年齢を知ることが大切になってきます。
【農家の平均年齢(2022年最新版)】
平成27年:67.1歳
平成28年:66.8歳
平成29年:66.6歳
平成30年:66.6歳
平成31年:66.8歳
令和2年:67.8歳
令和3年:67.9歳
農林水産省/農業労働力に関する統計
この上記の数字を見て、何を感じるでしょうか。おそらくびっくりするほど平均年齢が高いなと感じる人が多いのではないでしょうか。
平均が60歳後半であるということは70歳・80歳の農家も数多くいるということです。私自身、農業が盛んな地域を訪れることがよくありますが、若い世代の農家さんがとても少ないなと感じることがあります。
余談はさておき、改めて今の日本の農業は60歳以上の方々の力で成り立っているということを認識することができたでしょうか。
ここからは、農家を行っている年代をさらに詳しく見ていくために、農家を年代別に分けて、どの世代の農家が多いのかを明らかにしていきたいと思います。
農家年齢の分布について(2020年)
【基幹的農業従事者(普段、仕事で農業に従事している農家)】
75歳以上 | 約38万人 |
70歳~74歳 | 約21万 |
65歳~69歳 | 約39万人 |
60歳~64歳 | 約17万人 |
50歳~59歳 | 約14万人 |
40歳~49歳 | 約8万人 |
39歳以下 | 約7万人 |
現在、どの年代の人たちが農業を行っているのかを調べてみると、65歳~69歳の農家さんが最も多く、続いて年齢がさらに上がり75歳以上の人が農業に携わっているということが分かったと思います。
農業を仕事にしている人の約7割が65歳以上であるという現状です。さらに49歳以下の農家は約15万人とかなり少ない現状であるということが分かります。
ここまで、分かるとなぜ年々農家の数が減り続けているのかが分かってくるのではないでしょうか。農家の高齢化が進んでいるだけではなく、若い世代の農業離れが進んでいるということも農家数が減り続けている原因の1つと言えるでしょう。
この結果から、今後さらに農家の数は減少し続け、平均年齢も上がっていくでしょう。農家が減り続けると将来、スーパーから国産野菜や果物が減ってしまう!なんてことも可能性としてはでてくるかもしれません。
要するに農業を担う若い世代の農家を増やしていくことが、本当に重要なことであるということです。
そうなると、実際に若い世代の農家の就農状況はどうなっているのか気になるところです。
ここからは、将来の農業を担う若い世代の農家事情についてまとめていきたいと思います。
若者の就農状況について
若者の就農状況について解説していく前に、農林水産省の調査で新たに農業を始める人(新規就農者)を調査したデータを紹介したいと思います。
【新規就農者数の推移】
平成22年:約5万5千人
平成23年:約5万8千人
平成24年:約5万6千人
平成25年:約5万1千人
平成26年:約5万8千人
平成27年:約6万5千人
平成28年:約6万人
・
・
・
令和2年:約5万4千人
このデータを見ると意外にも新規就農者の数はあまり減っていないということが分かるのではないでしょうか。
では、なぜ農家の数は毎年減り続けるのでしょうか。その答えは新規就農者の中で49歳以下の農家は、どのくらいいるのかというデータを見てみると理解することができます。
【新規就農者数(49歳以下)】
平成22年:約5万5千人(49歳以下:約1万8千人)
平成23年:約5万8千人(約1万9千人)
平成24年:約5万6千人(約1万9千人)
平成25年:約5万1千人(約1万8千人)
平成26年:約5万8千人(約2万2千人)
平成27年:約6万5千人(約2万3千人)
平成28年:約6万人(約2万2千人)
・
・
・
令和2年:約5万4千人(約1万8千人)
【一部引用】
49歳以下の農家を若手農家と定義するのであれば、半数以上の新規就農者が50歳以上の新規就農者であると言えます。
結論を言うと新規就農者の数はあまり減少していなくても、農業を新たに始める多くの人が、定年後(65歳を過ぎてから)農業を始めるというケースが多いというのが新規就農者が一定数いても農家の数が増えて来ない仕組みになっています。
ここまでをまとめると
・農業人口は2019年の時点で約168万人で減少傾向
・農家の平均年齢も2021年の時点で67.9歳と高齢化が進んでいる状況
・農業を営んでいる人の約7割が65歳以上の人々である。
・新規就農者の半数以上が50歳以上
それでも、年間約2万人の若い農家が誕生しているということも事実です。そして今の時代、AIを取り入れた農業やこれまで人の力で行っていた農作業をロボットや自動操縦機能がついた機械が行うようになるなど、農業業界にも様々な変化が起きています。
さらに、就農を支援する補助金の充実・農業を行う企業の増加など、高額な初期費用を心配して農家になることを諦めてしまっている若い世代にも働きやすく就農しやすい環境が整いつつあることも確かです。
だからこそ、今後農業を行う若い世代が増えていく可能性は大いにあるのではないかと思います。なので、ここからは若者の就農状況について農林水産省のデータを基にまとめていきたいと思います。
【49歳以下の新規就農者の状況(平成28年)】
新規就農者:約6万人
49歳以下:約2万2千人
【49歳以下:2万2千人の分布】
・新規参入者(新たに経営を始める):約3千人
・新規雇用就農者(雇用されて農業を始める):約8千人
・新規自営農業就農者(親や親戚の農業を継ぐ):約1万1千人
【一部引用】
上記のデータを見ると、多くの49歳以下の新規就農者は親や親戚の農業を継ぐ、新規自営農業就農が多いことが分かると思います。親や親戚の後継ぎとして農家になる方法が1番農家として働きやすい方法であると言えます。
しかし、親や親戚が農家でないと農業を受け継ぐことができないため、新規自営農業就農者で若い世代の農家を増やすことは難しいのではないかと思います。
ここで注目したいのが、2番目に多い、雇用されて農業を始める新規雇用就農者です。近年では大手企業を始め、多くの企業が農業に参入してきています。
雇用就農は、一般企業への就職と同じように就職試験を突破すれば就職することができるので、農地の準備や初期費用の確保が必要なく農業に携わることができるため、最も就農しやすい方法といえます。
農業を始めたいけど始め方が分からない、農業を行うための費用がないという理由で農家になることを諦めてしまっている若い世代の人がいるのであれば、農業法人や農業事業を行っている企業で就職するという方法を選択してみてはいかがでしょうか。
最後に
ここまで、「農家の年齢」に着目して農家の平均年齢や農家年齢の分布をまとめていき、さらに「若者の就農」という点に着目して若者の就農状況、今おすすめの就農方法などの情報をまとめてきました。
現在の農家の状況について、知ることはできましたでしょうか。農家の年齢が上がり、農家の数が減り続けているということは、農地など農業を行う環境は余っているということです。
そして、農地だけでなく補助金や就農支援、農業を学ぶ環境なども充実しているため、親や親戚が農業を営んでいなくとも、農家になりたいという思いがあるのであれば農家として働くことは可能な時代です。
農業に興味があっても農家になる方法が分からない、農業はお金がかかりそうだから今の自分には手を出せないという理由で農家になることを諦めてはいけないと思います。
農家の平均年齢が上がっている、農家の数が年々減り続けている現状をこの記事を通して知り、これからの農業を担う若い世代の農家が1人でも多く増えていって欲しいと思います。
【参考】
コメント