危険物乙4類とは!?農業の活用例とメリットを紹介します!

農業を営む上で危険物を取り扱う場面が多々あります。草刈り機で使用するガソリンや軽油は農業を行う上殆どの人が使用しています。これらは扱いを誤ると、火事につながり非常に危険です。

この危険性を理解し安全に扱うためにも、これらの扱いには国家資格が設けられています。国家資格と聞くと難しそうだなぁ、と思う人もいるかもしれません。ここでは、「危険物乙4類(乙4種とも)」の資格について紹介し、実際に農業でどのように活用されるのか解説していきたいと思います。

目次

1 危険物乙4類とは

2 農業の活用例とメリット

3 まとめ

1 危険物乙4類とは

危険物取扱者試験は消防法による、危険物を取り扱う場合に必要な資格となっています。試験は各都道府県で行われ、毎年約40万人が受験しています。この試験の中の一つに危険物乙4類があります。

免状の種類取り扱いのできる危険物
甲種全種類の危険物
乙種  第1類塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物、亜塩素酸塩類、臭素酸塩類、硝酸塩類、よう素酸塩類、過マンガン酸塩類、重クロム酸塩類などの酸化性固体
第2類硫化りん、赤りん、硫黄、鉄粉、金属粉、マグネシウム、引火性固体などの可燃性固体
第3類カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、黄りんなどの自然発火性物質及び禁水性物質
第4類ガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物油類などの引火性液体
第5類有機過酸化物、硝酸エステル類、ニトロ化合物、アゾ化合物、ヒドロキシルアミンなどの自己反応性物質
第6類過塩素酸、過酸化水素、硝酸、ハロゲン間化合物などの酸化性液体
丙種ガソリン、灯油、軽油、重油など

危険物乙4類は赤字で示した、ガソリンや灯油、軽油など普段日常生活で使用する引火性液体を扱うことができます。

また、免状の種別は甲種・乙種・丙種に分かれ、このうち甲種の受験は大学で化学の学科・科目を修めるか、乙種資格が必要になりますが、乙種と丙種は誰でも受験することが可能です。甲種は上記に示した危険物の種類を全て取り扱うことが可能となります。乙種については、それぞれの種類に応じた試験を受験して取り扱うことができます。

甲種、乙種、丙種の違いは、甲種は、すべての危険物について①取り扱い②定期点検③保安の監督業務④危険物保安監督者に選任される資格を持つことができる、以上の業務を行うことができます。一方で乙種の場合は、合格した類に限りこれらの業務を行うことができます。

危険物保安監督者とは、消防法で危険物施設を取り扱う際に危険物保安監督者を選任することが定められて、各消防署などに選任されたら遅滞なく申請をしなければなりません。

指定数量にかかわらず、常に危険物保安監督者を選任しなければならない施設は、製造所、屋外タンク貯蔵所、給油取扱所、移送取扱所となります。その他の細かい危険物保安監督者の選任については、https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/cmsfiles/contents/0000383/383578/52hoankantoku.pdfを参考にして下さい。

製造所等の所有者、管理者又は占有者が危険物保安監督者に行わせなければならない業務は、次のとおりです。

・危険物取扱作業場所での作業者に対して、貯蔵又は取扱いに関する技術上の基準、予防規程等に定める保安基準に適合するように必要な指示を与える。

・火災等災害発生時に作業者を指揮して応急措置を講ずること及び直ちに消防機関等へ連絡する。

・危険物施設保安員を置く製造所等にあっては、危険物施設保安員へ必要な指示をし、危険物施設保安員を置かない製造所等にあっては、次の業務を行う。

・構造、設備の技術上の基準に適合するよう維持するため、施設の定期及び臨時の点検の実施、記録及び保存をする。

・施設の異常を発見した場合の連絡及び適当な措置をする。

・火災の発生又はその危険が著しいときの応急措置をする。

・計測装置、制御装置、安全装置等の機能保持のための保安管理をする。

・その他施設の保安に関し必要な業務

・火災等の災害防止のため隣接製造所等その他関連する施設の関係者との連絡を保つ。

・前記のほか、危険物取扱作業の保安に関し必要な監督業務を行う。

たとえば乙種4類に合格した方は、灯油やガソリンだけを扱う施設ならば危険物保安監督者になれます。しかし鉄粉や金属粉も扱う施設の場合は、乙種4類だけでは危険物保安監督者になれません。

丙種の場合は、保安の監督業務ができず、危険物保安監督者にもなれません。また、乙種4類よりも、取り扱える危険物が限られてきます。(ガソリン、灯油、軽油、重油等)

危険物の乙4の試験は全国で開催されています。また乙種については受験の条件はなく誰でも受験することが可能です。そのため小学生でも受験することができます。

合格基準は60%となっています。問題のカテゴリーが大きく3つに分かれていて、危険物に関する法令、基礎的な物理学及び基礎的な化学、危険物の性質並びにその火災予防及び及び消化の方法となっています。これらそれぞれ60%以上の点数をとらなければ合格できません。仮に合計点が60%以上だったとしても、危険物に関する法令が60%未満であれば不合格となります。

合格率は近年上昇していて令和2年は4割程度でした。

2 農業の活用例とメリット

農業を営む上では、農機具などを使用するため、それらの基となる燃料を使用します。この燃料を取り扱う際に危険物の資格が必要となってきます。

みなさんは、セルフガソリンスタンドで誰でも給油している姿を見て危険物は誰でも取り扱うことができるのではないか、という疑問を持たれているかもしれません。実は、セルフガソリンスタンドでは、国家資格である危険物取扱者甲種または危険物取扱者乙種4類の保有が必須です。

ガソリンスタンドのスタッフは、これらの資格を保有しており、給油レーン含む店舗の敷地内をモニタリングしており、お客の給油操作を始め、レーン付近に火気はないか、禁じられている携行缶への給油はないかなどをチェックしています。そのため、資格を保有していない方でもセルフガソリンスタンドで給油することが可能となっています。

農業で危険物資格、特に危険物乙4類を保有していれば自身でガソリンや軽油、灯油を取り扱うことが可能となります。

活用例としては、乗用の草刈り機や肩掛けの草刈り機はガソリンや軽油が使われていることが多く、草刈は農業を行う上で必ずしなければならない作業なので危険物乙4類を保有していると活躍します。

また、トラクターや農薬散布機なども使われているかたはガソリンや軽油などを使用するため危険物乙4類の資格が役立ちます。トラクターや草刈り機などの燃種は、製造メーカーや型番によって異なるので、取扱説明書を読むかメーカーに問い合わせて適切な燃種を使用するようにしましょう。

次の活用例としては、ハウス栽培での危険物の使用が考えられます。例えば、ハウス内の温度管理を行うためにボイラー設備がある場合は、燃料が不可欠となるため危険物乙4類の資格が必要となります。

油の名称指定数量 少量危険物規制該当量(指定数量の5分の1以上指定数量未満) 
ガソリン 200L 40L 以上~指定数量未満 
灯 油1,000L200L 以上~指定数量未満
軽 油1,000L200L 以上~指定数量未満
重 油2,000L 400L 以上~指定数量未満

この表から分かるように灯油・軽油の指定数量は1000リットルで、これを超える量を貯蔵したいなどの場合には、農家でも危険物取扱者を置く必要が生じます。ハウス栽培で使用するボイラーは主に重油となるので、指定数量2000リットルでは危険物取扱者を置く必要が生じ、指定数量以上を取り扱う場合は、消防署などに申請を行い、消防法の規制に適合し、許可を受けなければなりません。

また、1000リットル未満でも事業所で200リットル以上の量を扱ったり貯蔵したりする場合は市町村の火災予防条例で規制されます。200リットル未満は届け出は必要ありませんが、破損のない容器を用いるなど、扱いには十分に注意する必要があります。

例えば、重油を1980L貯蔵する場合(少量危険物)、防油堤や標識等が必要となります。しかし、少量危険物未満(400リットル未満)の重油を貯蔵する場合、防油堤や標識等は不要です。

①タンクの周囲に、危険物の流出防止措置が必要です。 

②タンクに1メートル以上の空地が必要です。 

③見やすい位置に、標識等が必要です。

 ④少量危険物貯蔵取扱届出書の提出が必要です。 

これらのように危険物乙4類は、農業を営む上で必要とされている場面があります。甲種をもっていれば尚更ではありますが、乙種の免状保有で十分農業を行うことができます。

一方、ガソリンや灯油、軽油などは丙種でも扱うことはできます。ですが、丙種では立ち合い業務ができないため、危険物取扱者の免状を持っていない人に危険物を取り扱わせることができません。一方で、乙種危険物取扱者が立ち会うことができれば、危険物取扱者の免状を持っていない人でも危険物を扱えるため、作業時の汎用性も高くなります。

こうした理由から、農業者には危険物取扱者乙種第4類、いわゆる「乙4」と呼んでいる資格がおすすめされます。

3 まとめ

いかがでしたでしょうか。農業を営む上で危険物乙4類の免状を保有するメリットが分かっていただけたと思います。乙4の試験はそこまで難しくなくマークシート式となっているため、しっかり勉強すれば誰でも取得することができると思います。

農業を安全かつ健全な運営を行うためにも、危険物の特性や取り扱いをしっかり理解した上で危険物を取り扱い、危険物にまつわる事故がないよう正しい知識を活用して農業に従事していただけたらと思います。

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