農業とは人間が生きていくうえで欠かせない”衣食住”のうちの一つである”食”を生み出し続けることですが大切だと認識しながらも現実は、農業の担い手の減少や高齢化の進行などによる「労働者不足」が深刻化しています。
日本の農業就業人口は、2000年389万1000人、2015年175万7000人、2022年122万6000人と22年間で266万5000人も減少傾向にあります。
このような現状から政府は現代に求められている農業スタイルは超省力・高生産な「スマート農業」だと述べており、農業の大規模化や企業参入を進めています。
※スマート農業とは、ロボットやAI(人工知能)・IoT(モノのインターネット)などの技術を活用した農業のこと
しかし世界的には「小さい農業」が見直しされ流行しています。
日本では「小規模農業は稼げない」「稼ぐためには規模を拡大する必要がある」などのイメージが多いのではないでしょうか。
そこで今回は小規模農家を検討中の方向けにメリット・デメリット、限られた農地での活用方法として多品目少量栽培、2条植えをご紹介します。
「小さい農業」が流行している
国際連合は、2017年の国連総会において、2019年~2028年を国連「家族農業の10年」として定め、加盟国及び関係機関等に対し、食料安全保障確保と貧困・飢餓撲滅に大きな役割を果たしている家族農業に係る施策の推進・知見の共有等を求めています。
国連食糧農業機関(FAO)によると世界の農家の約95%が家族農業であり、世界の食料生産の80%を担っているとも言われています。
しかし!!世界の飢餓人口は7.2〜8.1億人と推計される中で、貧困層の8割近くが農業者である現実。
私達が何気なく食し、捨てている裏では、今日食べる物もない中で働き続ける方がいます。
これらの流れから小規模・家族農家の価値が再評価され流行になりつつあります。
それはなぜでしょうか?
国連食糧農業機関(FAO)は小規模農家や女性農業者への支援が農民の生活を改善し、貧困を終わらせる鍵となっていると考えているようです。
小さな農業のメリット・デメリット
今まで「農業」に求められてきたのは”規格化×大量生産”でしたが、これからの時代は”個別化×共創”になります。
そのため3つのポイントを意識して取り組めば、小規模農業で稼げるようになります。
- 労働生産性を考える
- 生産コストを考える
- 販売元を複数もつ
3つのポイントをもとに小規模農家のメリットデメリットを紹介します。
メリット
- リスク分散ができる
- 少量多品種農業ができる
- 自然災害を受けても被害が最小限で抑えられる
- 流通網を分散できる
- 農作物本来の魅力を届ける事ができる
- 農作物の旬の時期に栽培ができる
- それぞれの品種に適した栽培方法ができる
- 新鮮な状態で消費者へ届けられる
- 高付加価値をつけやすい
- 個性を出しやすい
- オリジナル商品の開発・発売
- 取引先と直接交渉ができ、価格も自分たちで決められる(思い通りとは限りませんが大規模農業に比べると話は通りやすいようです)
デメリット
- 手作業時間の増加
- 畑の面積が小さいと機械は使いにくい
- 人の手を使う作業多くなる
- 収益性が低い
- オーガニックや自然栽培であれば規格外の農作物に市場価格が低いこともある
- 多品目少量栽培はそのぶん収穫や出荷準備の手間も増えるため農業所得と労働時間で収益性見た場合低くなることもある
小さな農業で稼ぐコツ3選
コツ1:限られたスペース活用
小さな農業の特徴と言えば小規模の農地ですが、限られたスペースで栽培するため工夫が必要になります。
1つめは多品目少量栽培
多品目少量栽培とは、様々な農作物を少量ずつ栽培する方法で「家庭菜園」に似ています。
2つめは2条植え
2列に一定の間隔で並木上に植え、ひとつのう畝を作ることであり「 並木植え」とも言われています。
※複条植えの一種
通常の2条植えは平行に植え付けますが「千鳥植え」という千鳥の足跡のように交互に1株ずつ植え付ける方法もあります。
多品目少量栽培や2条植えにもメリットデメリットがあります。
限られたスペースを活用するには株間と条間がポイントとなり、株間と条間が少ないほど多くの株を栽培する事ができますが農作物によっては生育が小さくなる可能性があります。
- メリット:一度にたくさん収穫できる
- デメリット:品種によっては小さく出来る
コツ2:目的と目標、手段を明確にする
これから農業を始めるにあたって「自分の理想とする農業形態」について【目的】【目標】【手段】を明確にすることで営農しやすくなります。
”農業で稼ぎたい”のか”農作業をしたい”のか【目的】を一番始めに明確にすることが大切です。
規模は農業経営をはじめる【目的】ではなく目標達成のための【手段】となります。
小さい農業の場合は「どれだけの売上・所得を目指すか」という数値化した【目標】を立てたら、その数値目標を実現するために「どのような品目・品種を育てるか」「使用する機械・資材はどうするか」「販路はどうするか」そして「農地はどのくらいの規模にするか」を考えていきます。
【目標】や【手段】は時には諦めて新しい道を考え・行動しますが【目的】は変わりません。
【目的】とは(1つ)
成し遂げようとすることがら、行為を目指すところ
【目標】とは(複数)
目的を達成するために設けた目当てのことである
【手段】とは(目標をさらに細かく複数)
目標を実現させるためにとる方法
コツ3:作付け計画をたてる
作付け計画とは、1年間に春〜夏にかけて収穫する野菜・秋〜冬にかけて収穫する野菜の計画をたてることです。
ここで気を付けるポイントが2つあります。
ポイント1:連作障害を考える
※連作障害とはナス科、ウリ科、アブラナ科など特定の作物を、同じ場所で長年栽培していると生育が悪くなったり、枯れてしまう現象
ポイント2:輪作を考えてる
連作障害の出やすい野菜と出にくい野菜があることや、別の作物を隣に植えることで病害虫予防や生育促進などの効果がある組み合わせもあります。
組み合わせや、順番に違う科の品種を栽培することを「輪作」といいます。
2条植え紹介
2条植えができる品種は数多くありますが、畑の広さにより畝間、畝幅、通路幅がかわってくるため栽培したい品種がありましたら覗いてみてください。
・大根
「大根十耕」(だいこんじっこう)という言葉があり、「大根、十回、耕す」という意味でよく耕した畑ほど立派なダイコンが育ちます。
【畑の準備】
耕土の深い、水はけの良い砂壌土が適します。
移植すると直根が切れて岐根(またわれ)の原因になるため、必ず「直まき」
2条植えの場合、畝幅90cm〜100cm、株間20cm〜30cm
・きゅうり
【一緒に植えると相性の良い作物】
長ネギ・ハツカダイコン(ラディッシュ)・ラッカセイ・トウモロコシ・エンバク・カモミール(ハーブ)・チャービル(ハーブ)
【一緒に植えると相性の悪い作物】
アブラナ科とナス科の作物・ホウレンソウ・インゲン
【畑の準備】
2条植えの場合、畝幅120cm~200cm
・トマト
同じ場所に連続して植えると連作障害が出やすいため、3年ほどナス科の作物(ナス・トマト・ジャガイモなど)を栽培していない場所を選びましょう。
過湿を嫌うので、水はけの良い畑に適しています。
【一緒に植えると相性の良い作物】
ニラ・ラッカセイ・バジル
【一緒に植えると相性の悪い作物】
ジャガイモ・フェンネル・トウモロコシ
【畑の準備】
2条植えの場合、畝幅150cm、株間35cm~40cm
・じゃがいも
同じ場所に連続して植えると連作障害が出やすいため、1年〜5年の輪作が必要であり、ナス科の作物(トマト・ナス・ピーマンなど)の前作や後作は避けましょう。
【一緒に植えると相性の良い作物】
インゲン・枝豆・マリーゴールド
【一緒に植えると相性の悪い作物】
カボチャ・ナス・トマト
【畑の準備】
2条植えの場合、畝幅110cm、株間30cm
・オクラ
過湿により生育不良になりやすいため水はけの良い砂壌土が適します。
センチュウに弱く、連作障害が出やすいため1年〜数年間は後作に良いタマネギ・そら豆などを植えると良いでしょう。
【一緒に植えると相性の良い作物】
ナス・枝豆・ペチュニア(ハーブ)・ニラ・マリーゴールド(ハーブ)・バジル
【一緒に植えると相性の悪い作物】
ニンジン・ゴボウ・トマト・ナス・ピーマン
【畑の準備】
2条の千鳥植えの場合、畝幅150cm、株間45cm、条間45cm
・そら豆
・枝豆
・白菜
・ごぼう
株間 | 条間 | 畝幅 | |
トマト | 35cm~40cm | 40cm | 150cm |
じゃがいも | 30cm | 110cm | |
大根 | 20cm~30cm | 35cm~40cm | 90cm~100cm |
そら豆 | 30cm~40cm | 35cm | |
枝豆 | 20cm | 30cm~40cm | 90cm |
オクラ | 45cm | 45cm | 150cm |
ごぼう | 10cm~20cm | 45cm | |
きゅうり | 60cm | 60cm | 120cm~200cm |
白菜 | 35cm~45cm | 130cm |
2条植えに大切な畝の立て方
2条植えをするためには畝の準備が必要です。
「畝(うね)」とは畑の土を細長く盛り上げた栽培床のことであり、畝をつくる際は畑の環境と栽培する農作物に合わせて、向き・厚み・幅を決めます。
スペースに限りがある2条植えの場合は千鳥植えが多いようです。
【畝の向き】
平地では東西方向に細長くつくるのが一般的
【畝の高さ】
水はけの良い土壌なら5~10cm「平畝」
水はけの悪い土壌なら20〜30cm「高畝」
【畝の幅】
2条植えで育てる場合、栽培する品種によって必要な畝幅が異なります。
畝幅は農作物の生長した茎や葉の範囲を考えて決める
通路は、20〜30cmの幅あると農作業しやすい
まとめ
世界や日本で「小さな農業」が見直され再流行しています。
小さな面積の畑での営農は初期費用や労力が大規模農業に比べてかかりませんが、限られたスペースを有効活用するには工夫が必要のようです。
今回は活用方法として多品目少量栽培と2条植えを紹介しましたが他の栽培方法や植え方もあります【手段】は複数あっても良いし、変更しても良いので試行錯誤しながら自分スタイルを見つけて頂ければ幸いです。
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