雨よけ栽培で【生産性に品質向上】梅雨を乗り越える対策

農家が農作物を栽培する中で大切なことはなんでしょうか。

色々な要素が考えられますが、まず第一に農作物の品質ではないでしょうか。

近年は生産性向上のため農業の自動化を目的としたスマート農業なども発展してきていますが、それに合わせて昔に比べて農作物の品質も向上してきています。

家庭栽培を除けば農業は何もボランティアで行っているわけではなく仕事として行っているはずです。

その中で、消費者が購入したいと思える物として品質が良い物、見た目が悪い物よりもいい物など消費者としての立場から考えるとより良い物に価値があり購入します。

この記事では、農作物を栽培する中で雨よけ栽培を行っている物について紹介したいと思います。

この雨よけ栽培は機械等の大掛かりな物を使用せずとも色々なメリットがある栽培方法です。

夏や秋の農業の繁忙期ともいえる時期に大切に育ててきた農作物をムダにしないようにも一つの対策として取り入れやすい物になっていますのでぜひ参考にして頂ければと思います。

特に農業をこれから始める新規就農者や一度雨によって失敗した農家にとっては有効な対策です。消費者としても一般販売されてる物の見分け方の一つになると思いますので最後まで一読して頂ければと思います。

雨よけ栽培とは

雨よけ栽培とは文字の通り雨が農作物にかからないようにして栽培することです。

具体的にはどんなことなの?と思うと思います。

一般的によく目にするのはビニールハウスです。

他にも土壌を覆うマルチングというやり方もあります。

これは、畑のうねをビニールシートやポリエチレンフィルム、ワラなどで覆うやり方です。

ここでなんで畑のうねにシートをなどをするのが雨よけになるのか気になるところだと思います。

雨よけ栽培では農作物に雨が当たらないようにすることだけではなく、雨による土壌の流失や飛散などの対策のことも雨よけの一つとして考えられているためです。

雨よけをするのは何故か

ここからはもう少し具体的に雨よけをすることがどんな対策に繋がっているのかについて触れていきます。

まず第一に農作物に雨が当たらないことで裂果と病気を防ぐことが出来るところです。

※裂果とは収穫前の果実にヒビのような亀裂がはいることです。

裂果の原因は基本的に果実の膨張が原因です。

果実が膨張するのは雨などで必要以上の水分を根から吸収してしまい結果果実が耐えられずヒビのような亀裂が入ってしまいます。

そのため、スーパーなどで訳あり商品と書いてあるものにはトマトならヘタの周りに亀裂が入っていることがあると思います。

これは水分が多くなってしまったための物だったりするわけです。

次に雨に当たりすぎると何故病気になるのかです。

雨は農作物だけではなく一般的な植物にとっても必要な物になります。

しかし、雨の中には大気中に含まれている病原菌も一緒に落ちてくることになります。

結果として耐性のない物に農作物が感染して病気をもつことになるためです。

他にも雨による過剰な水分によって土壌が高温多湿の環境になりやすくなります。

高音多湿状態になると細菌やカビが繁殖しやすく農作物に感染する恐れがあります。

また、水分が多いことで作物の根が呼吸をすることができず、酸素不足になるなど雨を直に当たることでこういった病気のリスクがあります。

第二に土壌の流出と跳ね返り、粘土化の防止です。

土壌の流出と言っても土壌が流れることだけが問題なのではありません。

農作物は土からというように土砂の中には色々な栄養素が含まれています。

カルシウムやマグネシウム、カリウムなどの栄養素は水に溶けやすく流出しやすい成分です。

土壌が流れるということはこれらの農作物に必要な栄養素までもが流出していっているということになります。

また、雨によって土が跳ね農作物に付着することがあります。

土には病原性のカビや細菌も多く含んでいます。

これが農作物に付着することで病気になることがあります。

最後に粘土化の影響です。

雨の影響で土が粘土化することがあります。

粘土化した土は硬くなりやすく水はけも十分に行うことができません。

そのため、農作物によっては根が水分過剰によって腐食しやすく呼吸もできなくなり思うように成長しなくなります。

このように雨よけを行わなければ様々な問題が起きる可能性があるため雨よけの対策は行う必要があります。

雨よけ栽培が有効な農作物

雨よけ栽培が活用されている農作物は下記のような農作物があります。

・トマト

・ほうれん草

果根類

・きゅうり

・ピーマン

・スイカ

・メロン

軟弱野菜

・ネギ

・春菊

果実類

・ブドウ

・さくらんぼ

これらなどの農作物に対して雨よけが有効とされており普及されつつあります。

特にトマトの普及率は非常に高く、雨よけ栽培によって収穫量が大幅に増え、品質も高い物が生産されるようになりました。

雨よけ栽培成功事例

雨よけ栽培の中でもトマトでの成功事例が多くあります。

トマト栽培のほとんどが雨よけ栽培とされるほど普及されており非常に高い効果がでています。

通常の露出栽培の際には多かった病害が減少したことに加えて裂果を大幅に減少させることに成功しています。

また、水分の調整が可能になったため非常に甘い高糖度のトマトの生産まで可能となりました。

高品質化したトマト

農林水産省ではいくつか中山間地域における優秀事例を紹介しています。

その中に雨よけ栽培によって成功さた事例がいくつか紹介されていますので、ここでは2つほどピックアップして紹介いたします。

参考、引用元:農林水産省(中山間地域における優秀事例)https://www.maff.go.jp/j/nousin/sekkei/attach/pdf/kousyueki-zirei-4.pdf

先程も紹介しましたが、雨よけ栽培としてトマトの普及率は非常に高いです。

その中で、高品質化に成功した事例として岐阜県高山市の事例があります。

岐阜県高山市は傾斜が急な山間部に位置し、不整形かつ狭小農地でした。

この土地柄によって交通の便も非常に悪く農業としては小さい規模でした。

これらを解消するべく岐阜県高山市では基盤整備を行い農業用水が確保された農地を造成しました。

農地確保後に農業としてトマトやほうれん草の生産規模を拡大しています。

ここでさらに取り組みとして2つのことを実施し高品質化のトマト栽培に成功しています。

1.地域に営農者組合を設置

2.雨よけハウスの設置

1.については品質の統一化のために行い、2.の取組によって野菜の傷み、果実の裂果防止などによって品質向上を実現させることに成功しました。

岐阜県高山市は基盤整備と営農者組合の設置、雨よけハウスによって経営規模の拡大、高収益作物の生産拡大によって販売額が約1.4倍に増加しました。

このように雨よけハウスと基盤整備のおかげで農業としては規模が小さかった土地でも規模を拡大、生産性に品質向上に繋がりました。

ミョウガのハウス団地生産

次に紹介するのはハウス団地生産でミョウガを栽培し成功した高知県須崎市です。

高知県須崎市では元々ハウス園芸が行われている地域ではありました。

しかし、区画形状が不均一で道路も狭く豪雨時には河川の増水による冠水被害が起きるような位置にあります。

こちらもまずは基盤の整備を行い、区画の整理に道路の拡幅、残土による嵩上げによって低湿地から優良な農業土地に変わりました。

また、新たな取組として3つのことを行っています。

1.生産者とJA、関係行政機関の連携体制の確立。

2.ハウスの団地化、大型化に合わせて市場にニーズに沿った高収益化作物としてミョウガを導入

3.ミョウガのレシピの紹介、試食会などでのPR

1.においては区画整理を行なったことで複数の事業が関わることができるようになったためです。

2.のハウス団地化と大型化によって施設園芸作物の生産量が向上しました。

それに付随する形で認定業者も増加する結果となっています。

また、ハウス栽培で新たに導入したミョウガがハウス栽培が成功し、今では全国のミョウガ出荷量の8割か高知県が占めており須崎市がその内の65%を占めるほどで明らかな成功がみてとれます。

3.の活動もミョウガ生産が上手くいく中で新たな販売経路として非常に上手く活用している取組の一つです。

高知県須崎市でもハウス栽培によって導入したミョウガが全国でもトップクラスを誇る名産品となっており、土地や環境に悩まされていても導入することで高知県須崎市のようになれる可能性がある栽培方法となっています。

まとめ

雨よけ栽培は農作物によっては非常に有効であることが分かって頂けたと思います。

雨よけによって

1.農作物の病害を防ぐ

2.果実の裂果を防ぐ

3.生産性の向上

4.品質向上

これだけのメリットがあります。

特に農業では夏から秋が1番の繁忙期を迎えますが、その前の梅雨の時期にどれだけ対策を行っているかで農作物の良し悪しが変わります。

特に裂果などは水分が過剰になってしまい割れてしまうものです。

雨よけ対策を行なっていれば十二分に被害を防ぐことができます。

農林水産省の優秀事例の中から紹介させて頂いたと2つの県でも雨よけ栽培としてハウス栽培を行っています。

どちらもハウス栽培によって生産性の向上と品質向上が実現できておりハウス栽培を行うメリットとしては実感できる内容ではないでしょうか。

また、何も規模が大きい物でなければいけないわけでもないためまずは簡易なシートなどで組み立てることから挑戦できるため費用も機械の導入ほど高額になることはありません。

これから農業に携わる人や一度梅雨の時期に失敗してしまった人は雨よけ栽培を手段として取り入れてみるのはいかがでしょうか。

参考、引用元:農林水産省(中山間地域における優秀事例)https://www.maff.go.jp/j/nousin/sekkei/attach/pdf/kousyueki-zirei-4.pdf



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