2009年、農地法の改正により企業や法人が農業に新規参入する数が大きく増減しました。
企業や法人が参入することにより競争は激化しており、様々な取り組みが行われています。
新規参入してきた法人の1つに誰もが知っている大手コンビニエンスストアの「ローソン」があります。
この記事では大手コンビニチェーン「ローソン」が全国の農家と連携して運営する「ローソンファーム」について基礎知識・目的・取り組みなど解説していきます。
ローソンファームとは?
ローソンファームとは誰もが知っている大手コンビニチェーンの「株式会社ローソン」と全国の農家・卸業者との共同出資で運営している自社農園です。
またローソンファームは農地所有適格法人として展開されており、農業従事者の減少問題に先手を打つために若手の農家が経営者となって生産技術を高め持続可能な農業を目指しています。
ローソンファームの特徴について
ローソンファームは「中嶋農法」と呼ばれる土壌改良技術を取り入れており、理想的な土作りを通じて収量・品質の向上と環境への配慮を両立しているのが特徴です。
また農業の生産技術とローソンマーケティングのノウハウを融合させて、生産者の顔が見える安心・安全な農産物を供給することを経営戦略としています。
栽培品目は大根・にんじん・小松菜・キャベツなどの野菜類、桃やぶどうなどの果樹、また水稲など多くの品目を栽培しており2021年時点で全国に17ヶ所の農園を展開しています。
規格外野菜などを加工して活用するなど、6次産業化の推進にも取り組んでいます。
ローソンファームの取り組みについて
ローソンファームが行なっている農業の取り組みについて紹介していきます。
中嶋農法
中嶋農法とは「有機JAS」「特別栽培農産物」とは異なり、農林水産省が規格・認証する農産物ではなく株式会社生科研が認証・展開している「ミネラル農法」です。
具体的には「土壌診断に基づく健全な土づくりの技術」「作物の健全な生育を維持するための生育コントロール技術」を用いた農法です。
下記で具体的に説明しています。
▼土壌診断に基づく健全な土づくりの技術
①緻密な土壌分析
まずは緻密な土壌分析を行い、土の健康診断を行います。
②必要な土壌養分を把握
診断結果により作物に必要な多量要素から微量要素に至るまでの養分の過不足を把握しバランスを取るための処方箋を作成します。
③作物に理想的な堆肥
②で作成した処方箋に基づく堆肥を行うことによって作物は理想的な栄養吸収を行い健全に育つことができます。
▼作物の健全な生育を維持するための生育コントロール技術
植え付け後、作物は生育する環境の影響を受けます。正常な生育をすれば問題ありませんが、「気象条件」や「栄養条件」によって体内の栄養バランスが崩れ、徒長や花芽分化の遅れ、品質の低下などが発生します。
この低下を阻止するには常に生育状況を観察し、適切な生育コントロールをすることが重要です。この場合には葉面散布剤などを用いて栄養バランスを調整して正常な生育状態に戻し、品質と収量の向上を図ります。
フードロスの削減
ローソンが生鮮野菜の取り扱いを始めたのは「ローソンストア100」での販売であり、生鮮食品から日用品までのアイテムを100円均一で販売するのが「ローソンストア100」です。
ローソンでは「規格外の大きさ」「野菜の端の部分」「品質はいいのに廃棄されてしまうもの」を活用することを取り組みとしています。
具体的にはローソンで販売されているお弁当やお惣菜などに使用することでロスを徹底的に排除することです。
これはローソンのような惣菜やお弁当を作るコンビニだからこそできることであります。
またこれにより、生産者にとっては「配送コストの低減」「畑の歩留まり向上」、加工者は「鮮度が良い状態で加工することで歩留まり改善」、販売者は「流通時間の短縮による鮮度の良い商品を販売」、消費者は「フードマイレージの少ない新鮮な商品を購入できる」というメリットが生まれています。
農家と連携を行う
ローソンファームは「株式会社ローソン」が独自で農園をしているのではなく、あくまでもローソンが推奨する生産方法・生産管理に賛同した農家や農業法人との共同出資した会社です。
農園はローソンと協業することで、「出荷先の安定」「過剰生産リスクの分布」「規格外生産物のロス削減」のメリットがあり、ローソンは「品質の高い野菜の仕入れ数量の安定を見込める」というのがメリットです。
またローソンと農家が協業するのは、生産技術がある「農家」、流通と販売が得意な「ローソン」とそれぞれの長所を活かすことです。
こうした農家と連携を行う取り組みは、両者にメリットがありフードロス削減など環境にも大きく貢献する取り組みとなっています。
ローソンファームの目標(農業)とは?
ここまでローソンファームの取り組みについて解説しました。
ローソンファームは農業の産業化を念頭に、農産物の安定供給をはじめとする「持続的な農業」を目指しているということをわかって頂けたかと思います。
ではローソンファームが目指す目標とは何なのでしょうか?
ローソンファームの目指す農業を紹介していきます。
持続可能な農業
ローソンファームでは農家の高齢化や農業従事者の減少に伴う生産力低下を防ぐため、20代の方など若い農業経営者を核としており、「持続的な農業経営」を目指しています。
ローソンのマーケティング戦略は栽培方法は農家との共同で決められているものですが、栽培計画や農産物の品種などは各ファームに委ねられています。
法人化をすることでより多くの家族経営に依存する農業経営からの脱却も実現しています。
その結果、従業員に対する農業の技術継承も活発化し農業の産業化にも良い影響を与えます。
安心で安全な野菜づくり
消費者や取引先により安心・安全な農産物を提供するために農場管理に「5S」活動を取り入れています。
「5S」活動は「整理・整頓・清掃・清潔・習慣づけ」の実践で様々な一般企業の職場改善に取り入れられています。
近年では異物混入で問題になるケースも多いですが、「ローソンファーム茨城」では圃場などの不用物の除去や清掃の徹底を行い農産物への異物混入のリスクを極限まで低減しています。
また「ローソンファーム千葉」では収穫した農産物の鮮度低下を防ぐため、水質の検査を行なった地下水を使用して洗浄後、冷蔵庫で保管しています。
また農薬倉庫の管理など世界でも大きな課題として取り入れられている「人体・環境への配慮」につなげる取り組みも行っています。
安心した労働環境
ローソンファームでは農業の産業化を進めるため、仕事内容や待遇などの労働環境を明確化して従業員が安心して農作業に取り組める環境を構築しています。
就業規則・休暇制度・福利厚生・人事評価制度などを取り入れています。
また経営状況や栽培関連の情報共有の場として朝会や月例会議などの従業員育成や、農作業の手順や出荷規格をマニュアル化して農家の経験などを見える化し、誰でも同じ水準で農作業を進められる環境構築も行っています。
これらの工夫は従業員のモチベーション向上や農作業の技術獲得にも効果的であり、農業は季節によって作業の量や時間が変化するので、季節によって従業員の勤務時間や休憩時間なども変えられています。
安心した労働環境の整備は新規就農者の獲得と同時に、農業の高齢化、人材不足問題にも貢献します。
地域環境に配慮した農業
ローソンファームでは地域環境に配慮した農業も目標としています。
先程、説明した「中嶋農法」では事前に適正な堆肥を調査することで過剰な堆肥を使用した「環境汚染」やコストの削減にもなっています。
またローソンファームでは耕作放棄地を借り受けて農産物の生産拡大もしています。
耕作放棄地をそのままにしておくと雑草や病害虫が発生し、周辺の農地や住宅地にも被害を及ぼす可能性もあります。
農作放棄地を活用することで農産物の生産効率を高めることもでき、連作被害などの収量低下リスク低減にも繋がります。
まとめ
ローソンファームの取り組みについて解説しました。
農業に参入する企業や法人は多くなりましたが、農業から撤退する法人や企業も少なくありません。
その大きな理由として「農業への取り組み」にも問題があります。
農業に参入する上で差別化を意識しすぎると多くのかえって環境に悪影響になったり生産性の減少に繋がるリスクもあります。
他と違った取り組みを行いながら世界でも注目されている「SDGs」などにより貢献できる農業の選択をすることが大切です。
また「みんなで農家さん」ではローソンファームだけでなく様々な農家が行っている取り組みについても取り上げています。
参考になる経営方法なども掲載していますのでぜひご覧ください。
https://minnadenoukasan.life/
最後まで閲覧いただきありがとうございました。
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