始めに
今回の「農業ニュース」では、「土づくり」に着目した記事を書き進めていきます。「心土破砕」という一見、四字熟語のような言葉ですが農業場面において、とても重要な役割を果たしています。
今回は「心土破砕」とは何か、農業での「土づくり」においてどのような役割を果たしているのかなどをまとめていきたいと思います。と、その前に…
一般社団法人「みんなで農家さん」では、今回書き進めていくような「農業に関するニュース記事」や「栽培方法に関する記事」、「これからの(未来の)農業技術に関する記事」など様々な記事を読むことができます。
また、実際に農家として国産バナナを栽培する事業を関東を中心におこなう事業も行っています。この記事を最後まで読み終えた後、「みんなで農家さん」のサイトを確認してみてはいかがでしょうか?
では、本題に戻りましょう。ここからはタイトルにもあるように【農業ニュース】より栽培に適した土づくり!「心土破砕」についてまとめていきたいと思います。
心土破砕とは?
心土破砕(しんどはさい)とは、農地に一定の間隔で上の写真にある、なたのような作業機を使い、60㎝程度の深さまで亀裂が入るように切り込みを入れ、水が通る道をつけていくものです。この工程を施すことによって、より水はけのよい排水性と保水性に優れた農地を作ることができます。
ではここからは、この「心土破砕」はどのような場面で必要とされるのかについてみていきたいと思います。
心土破砕を必要とする場面
心土破砕を必要とする場面としては、主に2つの場面で推奨されています。1つ目が「水田転換畑の湿害対策」、2つ目が「ゲリラ豪雨など、頻発する異常気象への対策」です。
水田転換畑の湿害対策
水田は、もともと排水性(水はけ、通気性)が低いことを利用して米作り(稲作)を可能とした農地です。稲作だけを行う場合「心土破砕(しんどはさい)」の作業は必要ありません。
しかし、水田から果樹や野菜類の栽培に切り替える、または麦や大豆などを輪作する場合には、排水性(水はけ、通気性)の低さが収穫量の低下や作物の品質低下につながってしまいます。
※輪作(同じ耕地に違った種類の作物を一定の順序に栽培すること)
水田から用途を変えた農地は「心土破砕」を実施することで排水性(水はけ、通気性)がよくなり栽培環境を整えることができます。
ゲリラ豪雨など、頻発する異常気象への対策
ここ最近では、地球温暖化の問題が顕著に表れるようになり、夏場の高温、局地的な豪雨、台風といった異常気象が毎年のようにニュースになる時代になってきています。
農業場面においても、記録的大雨といった自然災害での影響が多発している状況です。そのなかで「心土破砕」などの排水対策を行って排水性(水はけ、通気性)を高めておくことで、局地的な豪雨などにあっても作物への被害が甚大になるリスクを低減することができます。
ではここからは「心土破砕」がなぜ、水田から用途を変えた農地やゲリラ豪雨といった自然災害に有効なのか、心土破砕の特徴をまとめていきたいと思います。
心土破砕の特徴
心土破砕(しんどはさい)とは、農地に一定の間隔でなたのような作業機を使い、60㎝程度の深さまで亀裂が入るように切り込みを入れ、水が通る道をつけていくものです。この工程を施すことによって、より水はけのよい排水性と保水性に優れた農地を作ることができます。という説明を始めにさせてもらいました。
実はこの「60㎝程度の切り込み」が非常に重要な役割を果たしています。近年の農業では、農作業にトラクターといった機械を用いることが主流になり作業効率の向上と作業時間の削減が実現しています。
しかし、機械による作業を繰り返していると、地表から30㎝程度は柔らかくて栽培に適した状態を保つことができますが、その下に硬い土の層が形成され、排水性(水はけ、通気性)と保水性(水もち)が下がってしまうことがあります。
「心土破砕」で60㎝程の切り込みを行うことで根腐れを防ぐ、根の伸長を促進する効果が期待でき結果、収穫量の増量・収益の増加に繋がります。
ここまで「心土破砕とは?」・「心土破砕の必要場面」・「心土破砕の特徴」についてまとめていきました。ここからは実際に農業場面でどのように「心土破砕」は行われているのか「心土破砕のやり方」について見ていきたいと思います。
心土破砕のやり方
心土破砕(しんどはさい)では、農地に一定の間隔で「なたのような作業機」を使い、60㎝程度の深さまで亀裂が入るように切り込みを入れ、水が通る道をつけていくものという説明をこの記事の中で何度かしました。
心土破砕で使用する「なたのような作業機」にも専用の機械があり「サブソイラ」と言われる「心土破砕」専用の機械を使います。
サブソイラとは?
サブソイラとは、上の画像のような機械です。これをトラクターに取り付けることで機能を発揮します。
上の画像の土に刺さっている部分がトラクターが動き出すと引きずるようにして動き出すことで、ここまで何度も説明してきた「60㎝程度の深さまで亀裂が入るように切り込みを入れ、水が通る道をつけていく」というところに繋がっていきます。
実際にどのようにサブソイラが動いているのかについてはYouTubeなどから動画視聴ができるので、イメージが掴みにくい方がいれば調べてみてください。
サブソイラの効果
ここからは、サブソイラを使用することによる効果について改めてまとめていきます。
これまでの説明のなかでも、土中にナイフ(サブソイラ)を入れて、土に切り込みを入れることで排水性(水はけ・通気性)がよくなり、病気の予防や根の促進に繋がるということを何度か紹介しましたが、改めて効果についてできるだけ分かりやすくまとめていきたいと思います。
硫化水素や有機酸を排除する
サブソイラを用いて「心土破砕」を取り入れることで、排水性(水はけ・通気性)が向上するということは何度も説明してきましたが、排水性がよくなることで農地にどんな変化が起こるのかというと…
サブソイラで「心土破砕」を行っていない場合、酸素のない状態で活動する微生物により、根の養分吸収を阻害する硫化水素や有機酸が生成されますが、排水性がよくなることで硫化水素や有機酸が排除されるので、根は健全に伸長し、根腐れや秋落ち(秋になって急に生育が衰え、収穫が減少する)防止などに効果があります。
土壌還元が進みづらい
酸素のない状態で活動する微生物の増加により硫化水素や有機酸が生成されてしまうということを紹介しましたが、土壌内で微生物が急激に増加することで、土壌内の酸素量が減ってしまう状態のことを土壌還元といいます。
心土破砕を行い排水性(水はけ、通気性)が高まることで湛水(水を溜める)後も酸素が土壌に供給されやすくなります。これにより土壌還元が進みにくくなります。
乾田(乾田化)が促進する
乾田とは、漢字の意味の通り田んぼが乾くことを表していて「乾田化」ともいいますが、乾田化のメリットとしては稲作として使用した田んぼが早く乾けば、稲作を行わない時期は小麦や野菜の栽培を行えるというメリットがあります。
サブソイラで排水性(水はけ、通気性)がよくなることで落水後に土壌が乾燥しやすくなります(乾田化)。
これにより、土壌が乾燥すれば排水性がさらに改善されるので年々、田んぼの状態がよくなるような好循環が期待できます。
湿害の原因を断つ
心土破砕を必要とする場面で「ゲリラ豪雨など、頻発する異常気象への対策」があるということを紹介しましたが、サブソイラで硬盤層を破砕する「心土破砕」により、ゲリラ豪雨など多雨が発生した場合、雨水が土壌に溜まりすぎないので、酸素不足で生じる湿害(土壌中の過剰水分に基づく土壌の空気不足に起因して作物が生育障害を起こす現象)を防ぐことができます。
https://www.sugano-net.co.jp/products/subsoiler/index.php
サブソイラの価格
ここまで紹介してきたサブソイラですが、気になるところは価格なのではないでしょうか。ここからは少しサブソイラの価格についてまとめていきます。
- 新品(50万~90万)
- 中古(20万~40万)
サブソイラの価格を見ていくと上記の価格が大体平均的と言えます。もしかしたら、少し高額かなと思うかもしれません。ここまでは「心土破砕」・「サブソイラ」の良い所(メリット)をまとめてきましたが、ここからはデメリットも少しもとめていければと思います。
サブソイラのデメリット
- 能率(一定の時間内にすることのできる仕事の割合)が悪い
- 価格が高い
- 低馬力のトラクターでは作業できない
最後に
今回の記事では「心土破砕」についてまとめてきました。何度も同じ説明を取り入れながら点と点が繋がるように紹介してきたつもりですが、「心土破砕」について知ることはできましたでしょうか。
この記事の後半では「心土破砕」で使われる「サブソイラ」という機械の説明や平均価格についてもまとめ、最後にデメリットについても簡単にまとめてきました。多くの人が価格の高さや、能率が悪いこと、トラクターによっては作業できないなどといったデメリットに目を向けてしまうかもしれません。
中々「心土破砕」という聞きなれない土づくりの方法を取り入れるのは不安もありますし、専用の機械を購入ことはリスクかもしれません。ただ、地球温暖化により、これからの時代は大きな自然災害がいつ起こってもおかしくない状況が続いています。少しでも自然災害から農作物・農地を守る対策として「心土破砕」を試してみるのもいいのかもしれません。
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