始めに
今回の「農業ニュース」では「Z-GIS」と呼ばれるJA全農(全国農業協同組合連合会)が取り組んでいる営農管理システムについて紹介していきたいと思います。
この記事を読んでいる人の中には現在農業に従事している人、これから農家になろうと考えている人、農業に少し興味がある人など様々な人がいるのではないかと思います。少しでも農業に興味を持っているとあれば、これからの農業は「スマート農業」と呼ばれる農業が主流になってくるなど、凄まじいスピードで変化していっていることにお気づきかと思います。
今回紹介する全農・営農管理システム「Z-GIS」も近年変化し続けている農業のなかで生まれた「スマート農業」の1つであると言えます。では、「Z-GIS」とはいったいどのような取り組みなのかまとめていきたいと思います。
全農・営農管理システム「Z-GIS」とは?
「Z-GIS」とは、JA全農が開発した地図上の圃場の形に合わせて作成したポリゴン(圃場)とExcelで管理した圃場の情報を紐づけて管理するクラウド型の営農管理システムのことを言います。
これにより、これまで紙(白地図やノート)で管理していた圃場情報をデジタル化し、クラウドにデータを保管することによって、1つのファイルを複数人で管理することが可能となります。
圃場情報をデジタル地図化すると…
- 防除対象圃場を毎年白地図に手書きする手間がなくなる
- 昨年の対象防除を記載した地図を農家に配布できる
- 防除対象面積を自動計算できる など
【引用】
https://www.zennoh.or.jp/os/topics/2022/89643.html
ここまでの説明では、いまいちピンとこないと思います。ここからは少しずつ紐解きながら「Z-GIS」とは、どのようなシステムなのかを見ていきたいと思います。
JA・全農とは
まず、全農・営農管理システム「Z-GIS」の開発者である「JA」・「全農」とはどのような組織なのか見ていきたいと思います。
JA(農業協同組合)とは…
同じ目的をもった個人や事業者が集めり、お互いを助け合う組織です。農業に限らず医療・金融といった事業にも携わっていて、各都道府県・地域ごとにJA(農業協同組合)が存在しています。
農業の面に絞ってみていくと、生産者(組合員)が育てた農畜産物を販売し、消費者(スーパーやコンビニなど)に届ける事業を主に行っています。
全農の役割とは…
「全農」は前項で紹介したJA(農業協同組合)の1組織です。全農の役割としては…
- 生産者(農家)の営農とくらしを支援(例:自らの工場(農薬や肥料、飼料など)や配送ルート等を設備する)
- 安全・安心な農畜産物を消費者に安定的に供給する
- 大消費地に農畜産物の直販施設を設ける
- スーパーマーケット「Aコープ店舗」やガソリンスタンド(JA‐SS)などを全国で展開 など
【参考・一部引用】
https://www.zennoh.or.jp/about/role/index.html
ここまで、全農・営農管理システム「Z‐GIS」の生みの親である「JA・全農」について紹介していきました。ここからは「Z-GIS」の中身について深堀して見ていきたいと思います。
「Z-GIS」のメリット【4選】
「Z-GIS」とは、JA全農が開発した地図上の圃場の形に合わせて作成したポリゴン(圃場)とExcelで管理した圃場の情報を紐づけて管理するクラウド型の営農管理システムのこと。という紹介を前半でしていきましたが、もう少し「Z-GIS」のことが分かるように「Z-GIS」の特徴を4つに分けて紹介していきます。
管理項目別(作物別・収穫量別)に色分けできる
https://z-gis.net/99/features/index.html より
上の画像のように、どこの圃場でなにを栽培しているかを色分けすることで一目でどこで何を栽培しているのかを確認することができます。
また、「収穫量」で色分けすれば、収穫量が低い圃場や地域を特定することができるため、次回以降の栽培で追肥などの判断材料にすることもできます。
管理項目【作物、品種、植え付け日など】を地図上に文字で表示
先程は「栽培作物、収穫量別に色分けできる」という紹介をしてきましたが、色分けではなく、作物名・品種名・植え付け日などを文字で表示することも可能です。
https://z-gis.net/99/features/index.html より
複数の中から特定の圃場を抽出することができる
この機能を使うことで、どこに何を栽培しているか色分けした圃場(例:レタス(みどり)・キャベツ(きいろ)・白菜(あか)など)を色ごとに抽出(抜き出す)ことができます。
また、収穫量ごとに色分けすると、どこの圃場に収穫量が多いのか、また少ないのかを簡単に確認することができるため次回以降の栽培に活かすことができます。
1Kmメッシュ気象情報を確認できる
※「1㎞メッシュ」は緯度経度情報をもとに、1㎞四方で分割した地域メッシュ
全農・営農管理システム「Z- GIS」では、地図中心点の天気、気温、湿度、降水、風向、風速の情報を24時間予報・週間予報として確認することができます。
気象情報を確認できるこの機能は、農薬散布や草刈り時に利用することで最適な農薬散布、除草剤散布を行うことができます。
また、積算気温や積算降水量も確認することができます。こうした機能は収穫日を決定するための判断材料として利用することが可能です。
「Z-GIS」の活用事例
ここまで、全農・営農管理システム「Z-GIS」とは、どのようなシステムなのか活用するメリットは何かについて紹介していきました。ここでは実際の活用事例について少し紹介していきたいと思います。
事例①収量底上げをめざし詳細データを活用
JA広島北部(旧JA広島千代田・JAたかたが合併)は、標高約270m~400mに位置する山間地域です。圃場の大区画化が難しく、1圃場当たり20a~30aの小規模な耕地が広がっています。主要品目は水稲で、その他にも小麦、ミニトマト、キャベツ等が栽培されています。
このJA広島北部(旧JA広島千代田・JAたかたが合併)の地域は農業法人によって水稲の収穫量が大きく異なっていましたが、地域全体で「Z-GIS」を活用し、収穫量・栽培品種・栽培履歴・購入資材・生育状況等の詳細をまとめ、「Z-GIS」を通して共有した効果もあり収穫量が上がるようになりました。
地図のデジタル化で共同防除を効率化
JAかみつが(栃木県)は栃木県の西北部に位置し、北部には標高2000mを超える日光連山がそびえ、南部、東部には平坦地が広がる標高差の大きい地域です。
農業では、イチゴ・ニラ・トマトなどの施設園芸作物が特産として全国に知られており、水稲栽培も盛んに行われている地域となっています。
JAかみつがでは、いち早く「Z-GIS」に注目し、水稲の共同防除に導入しました。「Z-GIS」の特徴でもある地図のデジタル化により共同防除に必要な作業を効率化することに成功しました。
耕作放棄地を減らし、次世代に農地を残すために
JA本渡五和(ほんどいつわ)は熊本県天草の中心に位置しています。畜産、果樹栽培が盛んな地域ですが、土地の気候を生かした早場米の生産など水稲栽培も盛んに行われています。
JA本渡五和(ほんどいつわ)では、高齢化により耕作放棄地の増加を食い止めるために営農組織を設立するなど様々な取り組みがされています。その1つとして「Z-GIS」も取り入られています。一人でも多くの若者が農業に興味をもち、できるだけ農業を引き継ぎやすい環境を整備するためにも「Z-GIS」は大きな役割を果たしています。
「Z-GIS」の料金・申込方法について
利用料金(お試し版・有料版)
【お試し版】
- 31日間利用可能
- 共有クラウドストレージが利用可能
- 一度だけ登録することが可能
【有料版】
- 100圃場ごと月額220円課金(税込)
- クラウドストレージを100圃場ごとに1GBまで使用可能
- 登録2000圃場以上は、月額定額4400円(税込)
- 特別会員(公的機関、JAグループ以外の企業・団体)は月額定額5500円(税込)
- クラウドストレージを20GBまで使用可能
- ヘルプデスク(電話サポート)利用可能
申込方法
①オンライン申込
【詳しくはコチラ】
https://z-gis.net/99/application/index.php
②郵送・FAX申込み
【申込書ダウンロードはコチラ】
https://z-gis.net/99/documents/riyomoshikomi.pdf
改めてスマート農業とは?
ここまで全農・営農管理システム「Z-GIS」とは、どのようなシステムなのかについて出来るだけ細かく説明していきましたが、この記事の冒頭で、全農・営農管理システム「Z-GIS」も近年変化し続けている農業のなかで生まれた「スマート農業」の1つであると言えるということを説明しました。ここで少し「スマート農業」についてまとめていきたいと思います。
スマート農業とは、ロボット技術や情報通信技術(ICT)、AI(人工知能)を活用して、省力化・精密化や高品質生産を実現する等を推進している新たな農業のことです。
AIやロボットなどを活用したスマート農業技術は、生産現場における労力不足の解消や収量・品質向上による取得向上を図るための貴重な手段の1つとなっています。
とはいえ、AI(人工知能)、ロボット技術、情報通信技術(ICT)といっても農業場面でどのように活用されているのかイメージしにくい人もいるかもしれませんので、ここで少しスマート農業の導入事例について紹介していきます。
スマート農業の導入事例
- 農業用ドローンによる農薬散布
- 農作物収穫ロボット
- AIによる最適収穫時期の判別
- AIによる病害感染のリスクを予測
- AIによる自動運転を行うトラクター
- ICT(情報通信技術)による作業情報のデータ化 など
ここまでスマート農業について簡単にまとめてきましたが、今回メインテーマでまとめてきた「全農・営農管理システム・Z-GIS」は、上の導入事例で紹介したなかのマーカーで示したICT(情報通信技術)による作業情報のデータ化に分類されるのではないでしょうか。
最後に
ここまで【農業ニュース!】新たな時代の農業!営農管理システム「Z-GIS」のメリット【4選】というタイトルのもと、全農・管理システム「Z-GIS」についてまとめてきました。
パソコン1台で収穫量・栽培品種・栽培履歴・購入資材・生育状況等をまとめられるといった機能はこれまでの農業では想像つかない新しい時代の農業ではないかと思います。そして、これからの農業は、どんどん新しい技術が生まれていき、栽培しやすい環境が整っていくのではないかと思います。
現在農業を仕事にしている方も、今後農業を始めたいと考えている方も今後の農業業界の変化を知っておくことは必要なことだと思います。一般社団法人「みんなで農家さん」のサイトでは農業に関する記事が多数登載されています。記事を通じて、現代の農業・未来の農業についての記事や農作物の栽培方法の記事まで様々な記事が読めますので、是非活用していただき、農業についての知識を増やしていただければと思います。
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