アメリカの農産物、安さの理由は?日本の農業の特徴・改善点を踏まえながら解説

2021年時点で「農産物・食料品」において輸出額ランキング1位を誇るアメリカ。
「世界の食糧庫」や「農業大国」と言われる国であり、日本と比較しても農業に様々な違いがあります。
その中でも大きく違いが出ているのが「農産物の物価」についてです。
この記事ではアメリカの農業の特徴や日本の農業との比較を行い、アメリカの農産物がなぜ安いのか?について解説していきます。

アメリカ農業の特徴

アメリカの農業というのは広大な土地を少人数で管理し、大型の農業機械や化学肥料などを使用して土地の自然条件に適した作物を大量に生産を行うのが特徴です。
農家1人あたりの耕作地の面積は日本のおよそ100倍です。アメリカは日本と比較して国土が広く農地もそれだけ多くあります。
しかしアメリカでも日本と同じように農業の担い手不足や高齢化に直面しています。
ではなぜこのような大量生産が可能なのか?

アメリカは常に「適地適作」「大農法」を大きく重視しているからです。
適地適作は一定の作物を適した地域で集中的に栽培すること。
日本と比較すると国土は圧倒的広く、様々な気候があります。その気候の特徴に適した農産物を集中的に生産することで大幅に効率をあげています。

大農法は農業の経営規模を大きくして大型機器を使って効率的に営農することを意味します。
例えばアメリカは大規模経営者が増えていますが、個人経営農家でも大規模な農業経営が行われています。
実際にある農業を営む家族では家族経営で東京ドーム約348個分の広さの農地で作物を収穫している家族もいます。
こういった農業を可能にしているのが大型機械による作業の効率化です。
アメリカではこうした大きな農業の特徴があり、農産物において世界の輸出額1位へとなっています。

アメリカ農産物はなぜ安いのか?

アメリカの農業の特徴について解説し、なんとなくアメリカの農産物が安い理由についてわかる方もいるかと思います。ここからはアメリカ農産物の安さの理由について深く解説していきます。

アメリカの農産物の安さの理由は主に2つあります。
それは「人件費の削減」と「徹底的な作業の効率化」です。
1つずつ詳しく解説していきます。

人件費の削減

人件費の削減とは「少数の農家による大規模化」です。
アメリカでは陸地の17%が農地となっています。それに対して現在ではアメリカの人口の1%しか農業従事者はいないのです。
1農場あたりで計算すると農家の数は約1.5人とされています。
つまり大きな農地に対して少ない人手で高い生産性を実現することにより人件費の大幅カットを可能にしています。人件費がかからないということは生産した農産物に人件費の値段を上乗せせず輸出できる為、農産物が安く出荷できるのです。

徹底的な作業の効率化

人件費の削減の解説で1農場あたり1.5人と解説しました。それを可能にしているのが徹底的な作業の効率化、いわゆる大型機械での生産です。
常に最新のテクノロジーを活かし、進化を続けています。
日本ではスマート農業が普及していますが、アメリカでは「アグテック」と言われる先端技術を活かした農業への投資で急速な進化を続けています。
中でも精密農業と言われる精密なGPS情報を活用した大型農業やドローンの自動操縦などの技術の発展はなくてはならないもので、少ない人員で大規模な生産を実現するために欠かせないものとなっています。

また成分の安定した化学肥料や農薬を広範囲に一斉散布できるようになり、大幅な労力や作業時間のカットもできるようになりました。大型農業やドローンを使用し農薬を散布することで均一な品質の大型生産が可能となっています。

紹介した2点はアメリカの農産物が安い理由の特に大きなポイントと言えます。
もちろんアメリカならではの国土・農地を持っているからこそできることで国土も農地面積も劣る日本ではここまでの大量生産を行い、輸出額を大きく上げることはできません。

農産物が高いことは問題なのか?

ここまでアメリカ農業の特徴・農産物の安さの理由について紹介しました。
確かにどんなモノでも安いに越したことはありませんが、農産物が高いことでどんな問題があるのか?について紹介します。

食料自給率の低下

日本は世界と比較すると農産物は高いと言われています。
その理由として、農地面積に対する資本の投資の多さが原因だと言われています。
これが農産物が高い理由です。

農産物が高い理由で起きる問題は国内における「食料自給率の低下」です。

食料自給率とは「国内で消費される食料のうち、どの程度が国内産で賄われているか」を表すモノです。
日本の食料自給率が低い原因は「日本の農産物の生産コストが高い」からです。

例えば日本の稲作農家の平均作付面積は1ヘクタールと狭く効率よく機械化できないが、アメリカでは平均114ヘクタールの大規模農業で徹底的な機械化がされています。
なので日本では米1トンの生産費が約20万円と言われていますが、アメリカでは約2万円で済むと言われています。こうした生産費は農産物の価格に直結し、日本では国内でお米を買うより海外で輸入したほうが良いということになり、食料自給率の低下に繋がります。

この食料自給率は日本で特に懸念されている問題であり、農産物の生産費・価格を安くしなければあがらないと言う問題になっています。

では具体的に日本の農業の改善点について解説します。

アメリカと比較した日本の農業の改善点

日本とアメリカの農業の方法は全く異なるといってもいいでしょう。

先ほどもアメリカの農業の特徴について説明しましたが日本は国土面積・農地面積ともにアメリカには劣ります。国土や農地面積に関しては変えることのできない差でありその面積にあった農業方法をする必要があります。
日本は一定面積の耕地に比較的多くの人手と化学肥料を使用した集約農業です。

日本では国土も狭いため大規模な大量生産はできません。
つまり日本ではアメリカのような農業をすることは不可能なのです。

日本の農業の1番の問題点は面積に対する資本の多さ、またそれに伴う農産物のコストの高さです。
国土面積の狭さ・人口・農業従事者の人数全て関わるので一概にアメリカと比較して優劣はつけれませんが、日本は日本の農業は投資する資本を減らすことなどを行わなければ基本的に「農産物の価格」を安くすることはできないのです。

では日本の農業はどの国を参考にするべきなのか?
具体的な事例を紹介します。

日本にとって参考になる他国の農業は?

日本の農業をアメリカの農業方式に変えるのは得策ではありません。
ではどの国を参考にするべきなのか?答えは「オランダ」です。

オランダは日本の九州ほどの面積しか国土がないにも関わらず、アメリカに次ぐ輸出国で知られています。
なぜ日本より国土も人口も少ないオランダはアメリカに次ぐ輸出ができるのか?
それはオランダの農業の特徴にあります。

オランダ農業の特徴は「特定の品目に集中していること」です。
オランダでは主に「パプリカ」「トマト」など少数の農産物に集中しており、これによって世界でも有数の輸出国となっています。
オランダは陸続きになっており、日本と違って気候も1年を通してよく雨が降り全体的に冬が長いので全てを真似することはできません。
しかし農業においての効率化など参考になる部分はあります。

こうした取り組みはオランダでなくとも、他国の真似できる部分を取り入れ改善することで食料自給率の上昇にも繋がり、アメリカのような農産物の安さへと繋がっていきます。

まとめ

この記事では「アメリカの農産物の安さの理由」をメインに日本の農産物の高さの理由や改善点について解説しました。
農産物が安ければ良いと訳ではありません。農産物の高さは日本が抱えている問題(食料自給率の低下)などに直結してきます。
農産物が安い国や輸出が多い国をお手本に真似できる技術などは取り入れていく必要があるかもしれません。

また「みんなで農家さん」では他国や異国の農業での例を紹介している記事もあります。農家さんの中には取り入れることができる方法も見つかるかもしれません。
ぜひご覧ください。
https://minnadenoukasan.life/

最後まで閲覧いただきありがとうございました。

報告する

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。