【必見】四季の壁を超える?『フード・コンピュータ』とは

はじめに

『スマート農業』という言葉を聞いたことがあるでしょうか。 

農業界では農林水産省から各種団体、企業、もちろん農家にも一般的になってきた言葉ですが、その意味するところは広がっています。

ICTやAI、ドローン、スマートフォンアプリなども進化し、世界的にどんどん期待が膨らんでいっているのは周知の事実でしょう。

海外では、実際に最新技術を活用して農作業の省力化や生産性向上を図るスマート農業が広がっています。

そして、場所や時期を問わず、最適な環境で作物を栽培することができたらいいと思ったことはありませんか。

それを実現する手段として今注目を集めているのが、IT技術による屋内食糧生産システム『フード・コンピュータ』です。

これも『スマート農業』のひとつです。

今回は、スマート農業の定義や目的、そしてその事例の一つとしてロボットシステムとセンサー技術を駆使したフード・コンピュータについて解説していきます。

農業の仕組みを大改造?『スマート農業』とは

画像引用元: 「スマート農業」=「楽する農業」ではない – スマート農業360

産業機械やIT技術は、私たちの業務や暮らしを劇的に変えてきました。

電話は無線の携帯端末に、計算機はパソコンに、さらにパソコンからタブレット端末にと、技術の進歩によってなにもかもがガラリと変化してきてます。

農業においても、くわやすきによる手作業から、耕運機やトラクターといった機械へと力仕事は移行し、収穫した作物の運搬もクルマやコンベアーを使った自動化・省力化はどんどん進みました。

しかし、人間が判断しなければならない部分はまだまだ残されており、この部分をこれから『スマート農業』が担っていくと言われています。

『スマート〜』という先進技術を利用した取り組みはさまざまな分野で進められており、製品やソリューションも多く存在します。

スマートフォン、スマートウォッチ、スマートスピーカー、スマートホームという言葉が例に挙げられ、さらにこうしたデバイスを活用したスマートコミュニティという言葉さえも生まれています。

そのなかで農業は、特にこれまでITやICTといった技術とあまり縁がないと思われがちだった分野だけに導入が難しいというイメージがこびりついていました。

それがここ数年の間に一気に加速し、規模の大小を問わず、導入も急速に拡大しつつあります。

スマート農業は、農林水産省によると『ロボット技術、AI、IoTなど先端技術を活用し、超省力化や高品質生産等を可能にする新たな農業』と定義されています。

過去にはハイテク農業とも言われ、簡単に説明するなら『コンピューターやインターネットを取り入れた農業』と言い換えてもいいかもしれません。

スマート農業の導入によって、省力化や生産品質の向上などが見込まれ、農業の労働力不足や国内の食料自給率の改善などの課題解決に役立つと考えられています。

『スマート農業』の目的、そして注目される理由

「スマート農業」とはどんなものか? ICTを活用した … – SMART AGRI

日本の農業において、スマート農業を導入する目的、注目される理由として、考えられるものを5つ挙げて解説していきます。

農作業の効率化・負担(労力)軽減

一つ目は、農作業における効率・軽労化です。

日本の農業は、個々の農家の高齢化が進み、深刻な労働力不足に陥っています。

そんな日本の農業の現場の苦労を、ICTなどを活用して支援していくことが今、求められ始めています。

農地の様子を知るにも、あらかじめドローンやセンサーなどでチェックすれば、見回り回数を減らせるでしょう。

スマートフォンへの通知と組み合わせて、それまでよりも早く異常を知ることができるかもしれません。

また、自動運転農機や収穫ロボットなどによって重労働が減れば、体への負担も軽くなります。

これらは、農家の高齢化や労働力不足という課題に大いに役立つと考えられます。

農業技術のスムーズな継承

二つ目は、新規就農者への栽培技術力の継承です。

担い手や跡継ぎ、農業を継承する人材が不足し続け、これまで農業技術は家族の継承のなかで培われてきていることがほとんどです。

これをスマート農業のシステムなどによって、継続的に継承していけるようにすることに意義があります。

作業記録のデータ化やAI分析などによって、ベテラン農家の『経験と勘』も再現可能な技術として経験値の低い若手にも引き継がれやすくなると考えられます。

食料自給率向上への貢献

3つ目は、日本の食料自給率(生産量向上)対策としてのスマート農業です。

日本の食料自給率(カロリーベース)は2020年度で37%と、輸入が国内生産を大幅に上回っていて、輸入に依存している状況であり、適切なバランスが保っているとは言い切れないだろう。

また、輸入先国の環境や貿易関係によって輸入が難しくなれば、家庭の献立にも影響する可能性もあります。

実際に日本の食料自給率は改善が求められており、政府は2030年までにカロリーベースで現在の37%から45%に引き上げることを目標としています。

人材不足のなかで収量を上げて自給率を高めるためには、少ない人員で農産物を確実に育てるうえで、センサーやロボットによる自動化、植物工場といった仕組みが欠かせなくなります。

スマート農業により、広範囲の農作業を効率的に進めることも期待できます。

生産性を上げていくことで、食料自給率の向上にも貢献します。

環境保全(持続可能な環境づくり)の貢献

4つ目は、肥料や農薬、農業関係の資材による環境への悪影響を防ぐことです。

農業において化学肥料や農薬は必須と思われていますが、近年は地球環境保護の観点などから、欧州を中心に使用を制限する動きが加速し始めています。

土壌や生態系への影響の懸念からも、肥料や農薬などは適切に使うことが大事です。

スマート農業により、こうした化学肥料や農薬の使用量を削減したり、場合によっては一切使わずに栽培することも可能です。

一つの手として、AI分析を用いて農薬を必要な箇所にだけ使うスポット散布があります。

こういった方法で使用量を抑えることで、コスト削減にもつながります。

つまり、スマート農業の応用によって、生産性を維持しつつ、持続可能な環境づくりにも役立つ農業を実現することもできるというわけです。

農産物の品質向上

5つ目は、生産物の品質向上に貢献するということです。

品質を向上させるには、その農産物の最適な環境や状況を把握し、栽培する度に完ぺきに近い形で再現する必要があります。

こうした作業は長い年月をかけて先人たちが集めてきた知識、ノウハウなどにより実現してきたが、スマート農業によって栽培履歴を管理し、それらを気候や土壌の環境データと組み合わせることで、再現性を高めることが可能になりました。

つまり、いつでも最適な食味をもつ米や野菜を栽培することが可能になってきました。

また、栽培時のリスクを回避し、より良い農作物を作る方法が分かれば、生産性や品質も向上していきます。結果的に農家にとっては収益改善にもつながります。

そのためには多くのデータの蓄積と活用が重要になりますが、その一翼を担っているのが『農業データ連携基盤(WAGRI)』です。

WAGRI(ワグリ)とは気象や土壌、生育予測などのデータを民間企業や団体などが提供し、農機メーカーやICTベンダーなどが利用できるという公的なクラウドサービスです。

四季の壁を超える?『フードコンピュータ』とは

画像引用元: LEDで野菜を栽培する植物工場とは? 成長の仕組みと効率的な生産 …

一言で言い表すと、ロボットシステムとセンサー技術を活用した農業技術プラットフォームです。

具体的には、バジルやカボチャなど様々な作物が個々の栽培システムで計測された最適な生育環境データをネットワーク上で集めます。

そして、独自の機械学習アルゴリズムでデータ分析し、作物ごとに最適な生育環境を実現するプログラムである『クライメイト(気候)・レシピ』を作成します。

その後、そのクライメイト・レシピに基づき、温度や湿度、照度、pH(水素イオン指数)、DO(溶存酸素)などを最適に制御し、農作物の水、エネルギー、ミネラルの消費量を常時モニタリングする『スマート温室』のような栽培システムで作物を育てる仕組みとなっています。

ピンク色のLEDライトが光る栽培ルームでは、植物が吸収する水分やミネラルの量なども常時監視しています。

屋外の農場で生産するより少ない水で済み、短期間で収穫することも可能だそうです。

一方、クライメイト・レシピの構成要素を調整すれば、作物の風味や生産量を自分の好みに変えることができます。

この仕組みは、『パーソナル・フード・コンピュータ』と呼ばれるデスクトップPCくらいの大きさのものから植物工場のような大規模な栽培施設まで、様々な規模に適用できます。

そして、必要な栽培システムのハードウェアやソフトウェアのみに限らず、それぞれの作物に最適な生育環境をも、すべてオープンソースとして公開され、誰でも自由に利用したり、改変したりすることができます。

つまり、ユーザーは、このプログラムを『フードコンピュータ』のオンラインプラットフォームからダウンロードし、それぞれの栽培システムで実行するだけで、いつでも、どこでも、特定の作物を最適な環境で栽培できるということです。

フードコンピュータの目的、ビジョン

フード・コンピュータの狙いは、近年深刻さが増している地球温暖化や激甚化する自然災害の影響を受けない農業を広めることです。

このため、インターネット上でフード・コンピュータの設計をオープンソースとして公開しています。

さらに、クライメイト・レシピも掲載し、誰でもダウンロードできるようにしています。

また、IT技術による作物栽培のツールであるフード・コンピュータを世界中の人と共有するこの試みを『オープン・アグリカルチャー・イニシアチブ』と呼ばれています。

そして、栽培ルームは、コンパクトなデスクサイズからコンテナ規模までとさまざまで、幅広い対応が可能です。

そのため、家庭のキッチンの片隅や学校の教室、建物地下の空きスペースなど、フード・コンピュータを利用する人が自分のライフスタイルに合った規模や場所で野菜などを栽培することができます。

農業は地域の風土や天候の影響を大きく受けるイメージが強いと思われますが、この『フードコンピュータ』を利用することで、世界中のどこででも、おいしい野菜を安定的に収穫できるようになるでしょう。

近い将来、各家庭で、観葉植物の横には小さな栽培ルームがあるような光景が、当たり前になるかもしれません。

まとめ

画像引用元: スマート農業とは?導入事例と今後の課題

最新の農業を語るうえで外せない『スマート農業』と栽培の幅を広げる『フードコンピュータ』について、イメージはついたでしょうか?

様々な規模感で活用でき、農業への参入ハードルも下げる役割も果たせるので、フードコンピュータ』は今後、今以上にニーズや需要が増していく可能性は十分にあります。

現在農業に従事している方以外でも、学校であったり、家庭であったり、様々なシチュエーションで活用されるようになると、将来的に農業に対して持たれるイメージも変わりそうですね。

本記事をきっかけに、少しでも『フードコンピュータ』について理解していただき、なにかに役立てていただけたらと思います。

また、リンク先の「みんなで農家さん」では、今回のようなITやデジタルに関連する記事もあります。

その他にも農業を応援したい方、または就農を考えている方や農業従事者の方へ役立つ最新情報やコラム、体験談などを幅広い切り口でお届けしています。

きっと今、あなたが探している情報が見つかると思いますので、是非ご活用ください。

みんなで農家さん 国産バナナで農業を変えよう

最後までお読みいただき有難うございます。

参考サイト

フード・コンピュータとは? 仕組みとメリットは?温暖化や災害に …

最適な生育環境を「コピペ」して栽培できる農業技術「フード …

「スマート農業」とはどんなものか? ICTを活用した … – SMART AGRI

スマート農業とは? メリット・デメリットや導入例5つを紹介

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