【生産性・品質向上】植物ホルモンの植物成長調整剤

近年の傾向として健康意識が高まり、農産物においても品質の良い物が選ばれるようになってきました。

その中で有機栽培や、特別栽培など農薬の使用を減らしたい作物は特に健康に良い物として消費者から好まれています。

その反面農業では新規就農者の減少や少子高齢化の影響で農業業界が衰退傾向にあります。

しかし、農業では生産性向上が自給率向上のため必要となっており、高品質の確保と生産性向上を両立していかなければいけない状態になっています。

国も生産性向上のために色々な取り組みがされています。

農業では作物を育てるために植物成長調整剤の使用をしています。

植物に興味がある人ならばご存知かと思いますが、一般的にはあまり聞きなれない物だと思います。

この記事では健康意識が高まり作物でも高品質な物を選びたい人、これから農業で作物を育てるつもりの人に向けてこの植物成長調整剤のメリットとデメリットについて紹介していきます。

どんな物なのか使用する理由などについても触れていきますのでぜひ最後まで一読下さい。

植物成長調整剤

植物成長調整剤とはなんなのでしょうか。

農薬とは違うのかそんな疑問を持つと思います。

植物成長調整剤は農薬とは使用の目的が違いますが登録上は農薬の括りになっています。

植物成長調整剤は、農作物など有用植物の成長や発育をコントロールして品質を高め収穫量を上げたりします。

この成長調整剤のおかげで条件が悪い時でも収量を安定させ生産上の労力を省いたりすることができます。

植物成長調整剤は農薬の登録上の名前です。

別名で

PGR(Plant Growth Regulator)などとも呼ばれることがあります。

農薬登録されている生育調節剤の主な成分は植物ホルモンや、それに類似した活性をもつ有機化合物(生理活性物質)が主体です。

また特定の効果を示す無機物、天然抽出物あるいは発酵生成物などの複合物質も含まれます。

簡単にまとめると言葉の通り植物の成長を調整して植物の品質を高めるために使用する物になります。

農薬との違い

一般的な農薬では、殺虫剤や殺菌などに使用され基本的には害中よけとして使用されます。

植物成長調整剤は、農薬とは少し使用の目的が違い、あくまでも植物の成長を促す植物ホルモンを人工的に与えることで生育を促進・抑制し、作物の品質向上や収量増加などを目的としています。

勘違いしやすいのが活力剤や葉面散布剤とも植物成長調整剤は違うという点です。

活力剤や葉面散布剤はあくまでも肥料として足りない養分を補うための薬剤です。

そのため、成長を促したり、抑制する植物成長調整剤とは似ているようでも使用の目的が異なりますので注意が必要です。

植物成長調整剤の種類

農作物

植物成長調整剤は大きく分けて2つの種類があります。

1.成長を促すタイプ

2.成長を抑制するタイプ

この2種類が基本的な物になります。

作物の分け方としては大きく分けて3つに分けられます。

1.水稲用(米など)

2.果樹

3.園芸用

先程植物成長調整剤が大きく分けて2つとは言いましたが作物の中でもさらに分類されます。

果樹の物でも柑橘系用やバナナ用、ブドウ用などそれぞれの物に合わせた植物成長調整剤があります。

そのため、植物成長調整剤の2つの種類はそれぞれの作物に合わせて適した物に使用しなければ効果が期待できません。

植物ホルモン

植物にもさまざまなホルモンがあります。

植物成長調整剤ではこのホルモンの成分を利用して効果を出しています。

作用として

・根の伸長の促進

・草丈の伸長の抑制

・果実の肥大促進

・落果防止の抑制

など効果としては色々な物があります。

しかし、注意点として農薬の過剰投与は農薬取締法によって規制されているため注意が必要です。

残留農薬にて規定量を超えている場合出荷が停止になります。

そのため、市場に出ている物については規定量を超えていない物になるので使用量が適切であると判断しても問題はありません。

過剰に行なったからといって良いということではないことは覚えておきましょう。

植物ホルモンの種類

主な植物ホルモンの種類として下記のような物があります。

・オーキシン

・ジベレリン

・サイトカイニン

・アブシジン酸

・エチレン

このホルモンの成分によって効果がそれぞれ違いがあるためそれぞれについて少しだけ紹介致します。

オーキシン

オーキシンは植物の成長を促し光に向かって成長する作用があります。

そのため、果実の肥大、発根促進などの効果があります。

当初は合成オーキシンが化学除草剤として開発されていましたが、オーキシン系の除草剤を大量に散布したことにより生態系を破壊することになりました。

この中にはダイオキシンも含まれていたことによって生態系の被害は深刻になりました。

そのため、あまり良いイメージを持たれていないものでしたがバイオテクノロジーとしてはオーキシンは今ではなくてはならないもとになりました。

ジベレリン

ジベリオンには茎や根の伸長、発芽や開花の作用があります。

この作用によって通常低音処理をしなければ茎や根の身長、発芽が止まる植物に対して低音処理をしなくても成長を促進することができます。

サイトカイニン

サイトカイニンは細胞分裂を促進する特徴があり、葉の緑化や成長を促進し、各器官の老化を遅らせることができます。

アブシシン酸

アブシシン酸には成長抑制、気孔の開閉調節の作用があります。この作用によって気孔を強制的に閉じることで植物を乾燥のストレスから守ることができます。

別名としてストレスホルモンとも言われています。

エチレン

エチレンの作用として開花や着色・熟期促進など広範囲の効果を持ちます。

わかりやすいうと熟期促進では果実を柔らかくしたり、甘くしたりする時期を調整することができます。

特徴として植物自身以外にも周囲の植物にも影響を与えてしまうところが難点なところです。使用する場所を考えなければいけません。

そのほかの植物ホルモン

ブラシノステロイドやジャスモン酸、フロリゲンなどがあります。

ブラシノステロイドでは細胞分裂、植物体の伸長や種子発芽を促進する作用があり、ジャスモン酸では香り成分としての働き、果実の成熟や老化促進や病原体の感染や傷への対処といった作用があります。

フロリゲンでは花芽形成を誘導するため、花成ホルモンとも呼ばれています。

メリット・デメリット

ここまで紹介してきたように植物成長調整剤は色々な作用を持っています。

そのため、適切な使用と適正の合った植物に投与することでその効果は非常に高い物となります。

作物の品質の向上や収穫時期を調整することで生産量の向上がはかれます。

これは安定的な食料を供給することに繋がり、また農作物を最大限に高め良い状態の物を維持することができます。

現在日本で取組がされている生産性の向上と食料自給率の向上には植物成長調整剤は非常に有効な手段の一つといえます。

今後も新たな植物ホルモンの発見から植物成長調整剤の使用が可能になる可能性もまだまだあります。

上手く使用すれば、農業にとっては植物成長調整剤の発展は良いことでしかありません。

しかし、植物ホルモンは量の調整が非常に難しいのも現状です。

植物ホルモンは少量でも効果が期待できますが、少なすぎれば効果を発揮できません。

また、多めに投与すると農薬が残量して農薬取締法に引っかかる恐れもあり作用としても期待していた効果が得られないこともあるので使用時には注意が必要です。

それに、植物成長調整剤はいつ使用してもいいわけではありません。

植物成長調整剤のそれぞれに使用時期や使用方法が限られています。

これは農薬の登録の際に決まっているため、使用する際に必ず確認をするようにして下さい。

わかりやすいものでいえばエチレン等があげられます。

エチレンはエチレンガスとして聞いたことがある人も多いと思います。

エチレンは常温ではガスとして存在しています。

このエチレンは周囲に影響を及ぼしてしまうため成熟のためが必要以上に促進することで腐敗にも繋がりやすくなってしまいます。

フルーツなどを一緒にしておくと傷みやすいのはエチレンが多いものと反応しているからです。

このようにメリット、デメリットが起きやすい農薬ですので注意して下さい。

まとめ

植物成長調整剤は農産物にとって非常に有効な物であることがわかって頂けたと思います。

農薬の使用が身体全てに害を及ぼす物ではなく植物成長調整剤のようにホルモンによって成長を調整する農薬もあるので、一概にダメというわけではないことも分かって頂ければとおもいます。

日本は現在食糧自給率が先進国の中でも圧倒的に低いのが現状です。

他の先進国では100%を超えてる国もある中日本約25%程度しかありません。

輸入品が多い日本ですが、いつまでも輸入に頼っていくわけにもいきません。

近年で印象深い出来事としてウクライナとロシアの戦争をご存知かと思います。

この戦争によって各国ではそれぞれからの輸入が止まる事態がありました。

つまり、他国のことであってもそれが日本に与える影響もあるということです。

この記事で紹介した植物成長調整剤は農作物の生産性の向上に品質の確保、安定した供給に役立つ農薬です。

農業の自動化取組のスマート農業などもありますが日本の生産性向上と食糧自給率を上げていくためにもこういった物の使用はかかせません。

しかし、農薬として使用するためメリット、デメリットでも記載していますが適切な量の使用が必要です。

いくら生産性をあげても残留農薬で引っかかってしまうと出荷することもできなくなり大切に育ててきた農作物がダメになってしまいます。

そのため、初めて植物成長調整剤を使用する場合は病害虫防除所等関係機関の指導を必ず受けて適切に使用することが大切です。

参考、引用元:都道府県病害虫防除所(農林水産省)

品質の高い物を選びたいと考えている人やこれから農作物を栽培する人はこういった知識をもこれからどんどんつけていって頂ければと思います。



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