【害虫を利用!】イエバエ高速培養技術で肥料づくり!

農家のみならず、多くの人にとって迷惑な存在である「ハエ」…。
はっきり言って害虫ですよね。

しかしそんなハエも活かし方次第では、
農業に役立ってくれる益虫にもなり得る…
そんな可能性があるのです。

害虫の代表格とも言えるイエバエを活用した肥料づくりが注目されています。
敵になりがちな存在が味方になってくれれば、ありがたい存在にもなりますよね。

ぜひ、ご一読ください。


目次
1.厄介な害虫ハエの意外な活躍?
2.害虫を味方につけろ!「イエバエ高速培養技術」
3.イエバエを活用した肥料づくり

3-1.イエバエを利用して肥料を作ろう
3-2.「化学は危険、有機は安全」という神話
4.マダイも40%巨大化!イエバエを飼料に!
5.世界が注目!イエバエの有効活用「ムスカ」
5-1.ハエが世界を救う?
5-2.イエバエを活用!ムスカの強み!
5-3.ムスカのイエバエの優位性
6.農業と害虫
7.まとめ



1.厄介な害虫ハエの意外な活躍?

厄介な害虫ハエ


「やられた!!ガッカリ…。」

目の前には、ボロボロになってしまった農作物。
これでは売り物になりっこない…廃棄しかないか?

そんな悩ましい問題を引き起こしがちなのが害虫という存在です。
農家にとっては非常に厄介な存在の害虫。

害虫対策は農業にとっては欠かせないですよね。
ネットなどで物理的に防除したり、
農薬散布などで化学的防除をしたり…。

あらかじめ、害虫対策を練っている人も多いでしょう。
それでも「完全に虫のいない」状態で栽培する…
というのは現実的ではないでしょう。

厄介な害虫の代表的な存在とも言えるイエバエ。
ですが、そんなイエバエを利用して、
第一次産業に有益な存在にできる技術が日本で展開されています。

害虫になりがちなイエバエを活かせる方法かもしれません。
解説します。



2.害虫を味方につけろ!「イエバエ高速培養技術」

害虫であるイエバエを農業に活かす技術。
それは、「イエバエ高速培養技術」という方法です。

イエバエの幼虫を利用して、
家畜糞尿を用いた肥料づくりの完成速度を大きくします。

さらに、幼虫そのものを飼料として利用することで、
家畜や養殖魚の飼料代替品にすることもできます。

どちらも農業において重要な要素ですよね。
害虫が逆にサポートしてくれるのならありがたいお話です。

3.イエバエを活用した肥料づくり

堆肥作り

3-1.イエバエを利用して肥料を作ろう
まず幼虫を利用した肥料づくりについての解説です。
有機質肥料をつくるためには家畜糞尿の活用がされています。

日本全国で発生する家畜糞尿の量。
それは、1年間で約8100万トンにも上るのです。
畜産経営においては、この家畜糞尿の適切に処理が求められています。

水質汚濁や悪臭などの環境面での対策を行うことが、
地球温暖化防止にもつながります。
その一方で、家畜排せつ物は、非常に利用価値の高い貴重なバイオマスでもあります。

有効活用できる方法の一つとして、堆肥化があります。
家畜のふん尿などを発酵させて、田畑などの肥料として還元。

これにより、土壌の有機物や肥料成分が増加します。
その結果、微生物が増加。土を豊かにしてくれます。

このような土の田畑で作られた作物は収量、品質ともにアップします。

さらに、地域の実情に応じ、家畜糞尿を発酵させて、
発電や熱利用する高度利用施設が整備されてきているのです。
メタン発酵施設が最も多くなっています。

家畜排せつ物を再生可能エネルギーとして利用することにより、
温室効果ガス削減への貢献が可能となり、
地球環境にやさしいエネルギーの普及につながることが期待されています。

…しかし、有機質肥料の問題点として、
完熟するまでに時間がかかること、
未熟な肥料を土壌に与えると窒素過多になり、
野菜の品質に影響することなどが挙げられていたのです。

そこで、イエバエの活用が注目されているのです。
有機質肥料をつくるために用意した家畜糞尿。

これを、イエバエによって消化・分解させる方法です。

消化・分解の際に発生するメタンや一酸化窒素、アンモニアといった窒素分を、
イエバエの幼虫が吸収してくれるのです。

このおかげで、余分な窒素分を消化・分解された
「使える状態の程窒素有機質肥料」が1週間ほどで完成します!

そのうえこの肥料づくりは屋内で行われるため、
発酵ガスや汚臭の放出も抑えられ、近隣への配慮もできます。

時間短縮もできますし、
未熟な肥料を与えることによる窒素過多…
という問題も解決されるのです。


3-2.「化学は危険、有機は安全」という神話
窒素過多は生育障害の原因とも言われています。
農作物の栽培において悪影響が及んでしまうのです。

しかし、植物にとって窒素は生命維持に重要な成分です。
窒素が不足していると、生育の基盤とも言える養分ですから、
途端に元気がなくなってしまいます。

しかし、これが過剰にある場合にも、野菜の生育にとって良くないのです。

我々、人間に例えてお話しすると…
「窒素が過剰」であれば「肥満」や「高血圧」を引き起こす原因になるのです。

化学肥料であれば、その肥料に含まれる窒素量が記載されています。
その部分は、土壌への施肥量が把握しやすいというメリットがあります。

その一方、有機質肥料・堆肥となると、その窒素量は簡単に確認できないのです。

「化学は危険、有機は安全」という神話を過信するのは禁物です。
その神話を信じ込んで、有機肥料を施してしまうと、
窒素過多の土壌が完成するということになります。

また、化学肥料だって必要量以上加えれば、農作物の生育不良が発生します。

どちらを使うにしても、
適正な時期に適正量加えることが重要ということが鉄則です。

イエバエを利用した程窒素肥料は、
収量増加や生産促進などの効果が実証されたという報告もあります。

土壌をフカフカにする作用や抗菌作用もあります。
土壌環境の改善が期待されています。



4.マダイも40%巨大化!イエバエを飼料に!

イエバエそのものを活用した、畜産や養殖業へのサポートも注目されています。

イエバエ自体を飼料とし、養殖業で利用する餌と混ぜる方法です。
これにより、今まで餌として与えていた魚粉の使用量を減少させることができます。

さらに、愛媛大学との共同研究によれば、
養殖のマダイの体の色や大きさにも大きな違いが見られたとの報告があります。

飼料の代替品として役立つだけでなく、
人にとって益のある体色・サイズの変化が期待できる…。
これは嬉しい報告ですね。

日本は人口減少が進行しています。
高齢化社会がますます顕著になっていくことが危惧されています。

しかし、世界を見ると人口は増加傾向にあります。
イエバエ肥料の活用によって農作物の収量・品質のアップ。
イエバエ飼料の活用で畜産や養殖業をサポートすることができたなら…。

人口増加に伴う食糧危機解消にもつながっていきます。



5.世界が注目!イエバエの有効活用「ムスカ」

 

5-1.ハエが世界を救う?
さて、イエバエの有効活用について解説しました。
多くの人にとって害虫であるイエバエ。

それが、長年の問題であった世界の食糧危機と有機廃棄物問題を、
同時に解決する新たな技術になろうとしているのです。

この技術を実用化している企業があります。
福岡市に本社を置く企業ムスカ。

世界から注目を集めている企業です。
前述した通り、有機質肥料をつくるためには家畜糞尿の活用がされています。

日本では食品廃棄物だけでも年間2,800万tも出ています。
食品リサイクル法の下で肥料や飼料への活用が進められているのです。

しかし、現状処理や堆肥肥料の需要が追いついておらず、
日本国内の倉庫には処理待ちの食品廃棄物が溢れかえっているのです。

ハエの幼虫は、そのような有機廃棄物を食料にして成長します。
さらには、ハエも昆虫なので、摂食後には排泄物を排出します。

まず、ハエの幼虫は栄養価が高いのです。

国連の中で食糧問題を扱う食糧農業機関(FAO)も、
2013年に家畜の飼料に昆虫の活用を推奨しているほどです。

近年、昆虫の栄養素としての可能性は注目されているのです。

これまでタンパク性飼料では魚粉が活用されてきました。

しかし、近年魚粉は需給が逼迫、世界的に価格が高騰しているのです。
さらに、魚粉の原料となる魚は増産が難しいのです。

その一方、昆虫は栽培により大量生産が簡単なのです。
そんな背景から、昆虫飼料の期待が年々高くなっているのです。

さらに、ハエの幼虫が排出する排泄物も栄養価が高いのです。
ヒトや家畜の糞は、これまで農業肥料として活用されてきました。

ハエの幼虫が出す排泄物も同様に農業肥料に適しているのです。
今後世界の人口が増加する中、食糧生産性アップは不可欠です。

ハエが生み出す天然の農業肥料。
これは食糧生産を増加の貢献に役立つと言われています。


5-2.イエバエを活用!ムスカの強み!
さて、イエバエの農業への活用で注目されている企業。
「ムスカ」の強みとはなんでしょうか?

それは、優れたイエバエの品種を開発したことにあるのです。

「有機廃棄物の摂食」と「栄養価の高い幼虫と排泄物を生み出す」
両方の特徴を兼ね揃えた優れたイエバエの品種を、
45年間かけて1,100世代の選別交配によって開発したのです。

つまり、ムスカの商品の「イエバエ」。これは、ただのイエバエではないのです。

有機廃棄物処理と食糧生産性増加のための機能を大きくアップされた品種なのです。
イエバエの研究は、45年前に旧ソ連の研究所でスタート。

その後、旧ソ連の特許技術を日本技術商社アビオスが取得しました。
今回、アビオスのイエバエ事業が2016年に分社化されたのが「ムスカ」なのです。


5-3.ムスカのイエバエの優位性
ムスカのイエバエの優位性を解説しましょう。
有機廃棄物は、土に混ぜ微生物による堆肥化するというのが一般的な処理方法。

ですが、堆肥化の過程では、メタンガスや亜酸化窒素等の温室効果ガスが発生します。
悪臭や酸性雨の原因となるアンモニア生成されます。

堆肥化させた有機廃棄物を農地に過剰散布すると、
地下水汚染や悪臭の発生にもつながります。

さらに、堆肥化には通常2ヶ月から3ヶ月という時間がかかります。
つまり、非常に効率が悪いのです。

その一方、ムスカのイエバエの幼虫は、有機廃棄物を摂食、分解してしまうまでの期間。
わずか一週間です。

一つ目の特長として、圧倒的なスピードで完成するということが挙げられます。

摂食は管理のもと工場内で実施されます。
そのため、大気汚染物質や温室効果ガスの回収も可能になります。

さらに、有機廃棄物が含有する窒素分は、イエバエ幼虫が吸収します。
排泄物は低窒素有機肥料となります。

そのため農地に散布しても、地下水汚染のリスクを低くできるのです。

二つ目の特長として、幼虫と排泄物の性能の高さ。
ムスカのイエバエ幼虫を用いた家畜飼料は、
通常の餌に混ぜると40%の増体効果が認められました。

さらに、家畜にとっても餌の魅力が高いのです。
通常の餌に混ぜるだけで5%の誘引効果(餌摂取効果)を得ることができました。

さらに、この家畜飼料を摂取したマダイは、
エドワジエラ病に対する耐性がアップ。
病気に対する抵抗力もアップしました。

同様に排泄物を用いた農業肥料も大きな効果が認められました。
一年以上の発酵期間をかけた完熟堆肥よりも、
収穫量を15%もアップさせる効果が認められました。

栽培植物に対し抗菌作用をもたらすことということも認められました。

近年、化学肥料に対する懸念が欧米を中心に高まってきています。
その懸念が、天然肥料のイエバエ幼虫排泄物はむしろ追い風になると言えるでしょう。

ムスカは、この「スーパーイエバエ」を高速培養する技術を確立。

当然世界には、ムスカの競合も存在しています。
現在、オランダ、南アフリカ、カナダの企業が昆虫を用いた同様の取組を進行しています。

しかし、同社によると、ムスカのイエバエは、
「有機廃棄物であれば何でも分解できる」ことや、
「幼虫も排泄する排泄物も飼料や肥料にできる」という
「無駄なところがない」ことが大きな特長と言えます。

これゆえ、海外からも注目されているのです。

ムスカは2016年に設立。まだまだ若い企業ですが、
中核技術となるイエバエは45年という長い歴史を経て開発されたのです。

害虫であるイエバエを活用した世界を救うかもしれない新技術。
ムスカのこれからに期待しましょう!

ムスカ公式ページ


6.農業と害虫

農業をする女性

今後も害虫と呼ばれる虫を活用した技術が登場する可能性はあります。

しかし、農業においてはそれでもまだまだ害虫は厄介な存在なのです。
農家にとっての害虫との向き合い方を再考しましょう。

虫は必ずどこかに存在しています。
これは害虫も益虫も関係な井お話しです。

ただ、単純に農薬などを利用してやみくもに虫を駆除しても、
根本的な解決にはつながりません。

害虫を畑に寄せ付けない様に万全の対策を準備して畑を守りましょう。
害虫対策については、こちらの記事もご覧ください。
(【畑を守れ】農薬を控えた害虫対策三選リンク)


7.まとめ

まとめ

今回は「イエバエ高速培養技術」についてでした。
多くの人にとって害虫であるイエバエ。
しかし、活用の次第によっては農家の味方になってくれそうです。

「ムスカ」の活躍にも期待したいところですね。

当サイト「みんなで農家さん」では、
農業が好きな方、農家を志す人、農業従事者の方へ、
便利な最新情報やコラム、体験談などをボリューム満点でお届けします。

「害虫対策」以外にも「お金の裏技」「農業裏話」「スマート農業」などなど。
さらに、日本の農業人口を増やすために「新規就農者へのサポート」も展開しています!


国産バナナFCを通じて、新規就農をサポートします。
一人でスタートするには何かと不安も多い農業。

頼れるサポートがあれば、安心してスタートできますよね。
あなたの挑戦を応援しています!
報告する

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。