カレーやスープ、サラダ、炒め物、お菓子など、どんな料理にも活用できる「ニンジン」。
緑黄色野菜の代表といわれるほど栄養価も高いニンジンは、甘味が強く食感もいいため、年間を通して人気があり、常備している家庭も多い野菜です。
魅力の多いニンジンを自分で育てたい!と家庭菜園に挑戦したい方も多いのではないのでしょうか。
実は、ニンジンは比較的栽培しやすく、初心者にもおすすめの野菜です。
とはいえ、ダイコンなどの他の根菜類よりも栽培期間が長く、タネを播いた後に発芽する確率も低いため、失敗する可能性も十分にあるので、注意が必要です。
この記事では、緑黄色代表ともいえる「ニンジン」の育て方を紹介しています。
育てやすい品種や上手に育てるコツについても知ることができるので、初心者でも美味しいニンジンを栽培・収穫することができますよ。
「初心者だけどニンジンを育ててみたい。」
「ニンジン栽培で失敗してしまったので成功するコツが知りたい。」
「人気の高いニンジンを上手に育てて、いつか収益化してみたい。」
という方は、ぜひ参考にしてください。
ニンジンは緑黄色野菜の代表
ニンジンは、セリ科ニンジン属の根菜類です。
その形から、ダイコンの仲間というイメージが強いですが、実際はパセリやセロリに近く、香りが強いこともセリ科の特徴といえます。
緑黄色野菜といえば「ニンジン」というイメージが強いほど、栄養価が非常に高く、β-カロテン、カルシウム、食物繊維などが豊富に含まれています。
特にβ-カロテンの多さは緑黄色野菜の中でも一番と言っていいほどで、英語の「キャロット」はカロテンから由来しています。
ニンジンは、細長い東洋種と太くて短い西洋種に大きく2つに分けられます。
東洋系ニンジンは中央アジアが原産で、甘みが強くて臭みが少ない品種です。
金時ニンジンが代表的な品種で、お正月に縁起食として食べられます。
一方、西洋ニンジンはトルコが原産で、日本には19世紀はじめに来ました。
戦後の日本で急速に普及し、ニンジンといえば東洋種だったのが逆転し、現代では西洋種のほうが一般的になっています。
煮込み料理や炒め物などはもちろん、サラダなどの生食でもおいしくいただけるニンジンは、一年中需要が高く、常備している家庭も多い人気の野菜です。
ニンジン栽培の難易度とは
栽培難易度:★★★☆☆(やや簡単)
ニンジンは同じ根菜類のダイコンと比べると栽培期間が3〜4か月と長いものの、栽培時期や水分量に気を付けることで、初心者でもおいしいニンジンを収穫することが可能です。
ニンジンは発芽率が低い野菜であり、発芽できないことで挫折する人も多いです。
そのため、発芽に必要な水分や日光などに注意する必要があります。
しかし、ニンジンは寒さにも暑さにも耐えられる強い野菜です。
きちんと発芽させることができれば、あとは間引きや追肥などの一般的な手入れのみであり、それほど難しくはありません。
また、ニンジンは春まきと夏まきができますが、夏以降から育てるニンジンは春に比べると害虫被害が少なく簡単なので、初心者の方は夏まきが簡単でおすすめです。
ニンジン栽培の3つのコツとは
ニンジン栽培は初心者にはやや難しい面も存在します。
しかし、ポイントを押さえながら栽培することでおいしいニンジンを収穫することができますよ。
ここでは、成功に導くニンジン栽培のコツを3つ紹介します。
発芽するための環境を整える
ニンジンは発芽がしにくい野菜の代表です。
発芽するまでの日数が長く、種子も水となじみにくい形をしています。
発芽することができればニンジン作りの半分は成功といわれるほど、発芽するまでは特に注意して育てる必要があります。
最も大切なポイントは、水分を切らしてしまうと種が死んでしまうため、水分が持続できるようにこまめにかん水をすることです。
朝と晩の2回は水をあげるようにしましょう。
発芽の三要素は水、温度、空気ですが、ニンジンは「光」も関係します。
そのため、15~20℃位の適温では8から10日で発芽しますが、日照時間の短い冬場は3週間近くかかる時もあります。
種に光が当たった方が発芽率が上がりますが、乾燥するのは良くないため、タネ播きの際には種が見えるくらいの土をかけ、しっかりと押してあげることが大切です。
後半は乾燥気味に育てて発色不良を防ぐ
ニンジン栽培では発色不良の問題がおきやすいです。
発色不良の原因としては、水分量が適切ではないことが考えられます。
ニンジン栽培において、発芽率を上げるために前半はやや水分が多い状態である必要がありますが、後半はやや乾燥状態で育てることが重要です。
後半の土壌の水分が多すぎると、カロテンが生成されず発色が悪くなります。
また、水分が多いと十分な養分が吸収できず、ストレスを受けることによって発色不良になることもあります。
ニンジンの根が地上部にはみ出していると、緑色や紫色に変色してしまうことがあります。
根元部分の変色の原因は外気や日光に直接触れることによるものであるため、中耕の際に、ニンジンの根元に土寄せをして、土をかぶせておきましょう。
夏まきをしてトウ立ちを避ける
「トウ立ち」とは花芽が分化することをいいます。
トウ立ちによって栄養が花に集中するようになり、可食部分である根が育たなくなりるため、避ける必要があります。
ニンジンは本葉3~5枚で10℃以下の低温にあうと花芽ができ、春になるとトウ立ちします。
そのため、低温気になるまえに生長が完了する夏まきであればトウ立ちするリスクはありません。
逆に、春まきはトウ立ちしやすいため、対策が必要です。
春まきの早まきは避ける、低温期にトンネルをする、トウ立ちしにくい品種を選ぶなどをしてトウ立ちを防ぎましょう。
初心者におすすめのニンジンの品種3選
ニンジンの品種には、早生種、中生種、晩生種が存在します。
ここでは、初心者におすすめの夏まきに最適な品種を3つ紹介します。
早生種:向陽二号
参照:Amazon.co.jp: タキイ種苗 ニンジン 向陽二号 ペレット種子 約200粒 : DIY・工具・ガーデン
向陽二号は春まき、夏まき兼用の品種です。
栽培日数は80~120日程度。
トウ立ちしにくく、暑さに強く、土質を選ばず幅広い作型に適しているため、初心者でも作りやすい品種だといえます。
形や色つやもよく、根長18cm、根重200g程度にまで育つため、市場価値も高いことが期待できます。
中生種:スーパー黒田五寸EX
参照:一代交配 スーパー黒田五寸EX コート種子 | 市川種苗店【公式オンラインショップ】 (i-seed.jp)
黒田五寸EXは夏まき専用の品です。
種まき時期は、一般的な暖地で6月より9月上旬頃が適期です。
最適期は7月〜8月、栽培日数は120日程度。
暑さに強く、クロハガレ・黒斑病などの病気にも強い特性を持ちます。
色が赤く、形もよく、味も食感も良いため、プロにも家庭菜園にも最適です。
晩生種:新黒田五寸
参照:新黒田五寸 ニンジン 品種カタログ | タキイの野菜【タキイ種苗】 (takii.co.jp)
新黒田五寸は夏まきと春まき兼用の品種です。
中間・暖地は7~8月まき、冷涼地は6~7月まきが最適で、栽培日数は90~120日程度。
暑さと病気に強い上に肉付きがよく、初心者にもおすすめです。
鮮紅色で、つやもよく、甘味が強くおいしいニンジンです。
春まきや夏まきの早まきでトウ立ちする危険があるため、本葉4~5枚までに最終間引きを終え、初期生育を順調に進めるようにしましょう。
ニンジンの栽培時期
ニンジンは、春まきと夏まきの年に2回栽培することができます。
それぞれの栽培時期は以下の通りです。
【春まき】
タネ播き:3月下旬〜5月上旬
収穫:6月下旬〜8月中旬頃
栽培期間:90〜120日
【夏まき】
タネ播き:6月下旬〜7月中旬
収穫:9月下旬〜2月頃
栽培期間:90〜140日
寒冷地や暖地では、種まきや収穫のタイミングが少しずれるので、購入したニンジンの種袋をよく確認して、適期に播くとよいでしょう。
また、ニンジンは連作障害が発生します。
同じ場所で毎年ニンジンを栽培すると、土壌のバランスが崩れて病害虫の被害にあいやすくなるため注意が必要です。
一度ニンジンを栽培した場所は1年ほどあけるようにしましょう。
タネまき準備
【土づくり】
1㎡に対して以下の分量の肥料をしっかりと混ぜます。
- 完熟堆肥:1~2kg
- 苦土石灰:200g
- 化成配合肥料:100g
ニンジンは酸性土壌を嫌うので石灰を200g/㎡施して中和します。
生育後半は肥料分を多く必要としますが、前半はチッソの分量が多すぎると、根割れの原因になるので注意が必要です。
また、未熟な堆肥も又根の原因になるため、しっかりと完熟した堆肥を使うようにしましょう。
リン酸はチッソやカリよりも多めの方がいいため、チッソ10:リン酸15:カリ10程度の化成配合肥料がおすすめです。
【ウネ作り】
ウネ幅70㎝、条間20㎝のウネを作ります。
スジ播きをするため、タネ播き用の溝を作っておきます。
タネ播き
タネを播く前には十分かん水するか降雨を待ち、タネを播く溝の下にしっかりと水分がある状態でタネを播きましょう。
また、ニンジンは発芽率が低いため、タネはスジにやや多めに撒きます。
タネに光が当たるように、土はタネが見えるくらいに薄めにかけて、手や鍬でよく押さえましょう。
ニンジンは発芽までにかかる日数が長いため、乾燥しないように注意が必要です。
発芽まではこまめにかん水し、乾燥防止のためにモミガラやワラで覆うのも効果的です。
手入れ
【間引き】
発芽後に混みあっているところを数回に分けて間引きます。
間引きをする回数は、基本的には本葉3枚のときと6枚のときの2回です。
最終的には株間が8~12㎝になるように間引きましょう。
間引きのときは、残す株を痛めないようにあらかじめ水やりして土を湿らせてから間引くと作業がしやすくなります。
また、この際に雑草も必ず抜き取っておきます。
間引いたニンジンはかき揚げなどにして食べることが可能ですよ。
【追肥・土寄せ】
本葉6枚の間引きのときに一緒に行ないましょう。
条間もしくは通路にある土に肥料を混ぜながらニンジンの首部分に土を寄せます。
1㎡あたり25~30g程度の化学配合肥料を施します。
タネを播いてから50〜60日(本葉6〜7枚)で根の下への伸長が止まり、次は横の肥大に移ります。
これ以降はやや乾燥気味の方が色がよくなります。
追肥や中耕などは避けるようにしましょう。
収穫
タネ播きから80〜140日で収穫となります。
太いものから間引くように収穫します。
夏まきのものはしばらく畑に植えたままでも問題はありませんが、春まきのものはトウが立ったりスが入ったりするので、葉が黄色くなる前に収穫しましょう。
ニンジンの病害虫とその対策方法
ニンジンは地中で育つ野菜であるため、比較的病害虫に強い野菜です。
しかし、畑の水はけが悪い、夏の高温期で土壌が乾燥する、連作障害などが原因で病気が発生することもあります。
主に発生する病気は、うどんこ病、枯れ葉病、黒葉枯病、黒斑病です。
葉が黄色や茶褐色、黒褐色に偏食したり、葉に白いカビの様なものが生えたり、葉が枯れる、葉が縮まる、株の成長が悪いなどの症状が合った場合は、病気の可能性があるため適切に対処しましょう。
対策としては、水持ちが良く水はけのいい畑で栽培することです。
また、雨が続く時期は雨除けをして多湿にならないようにしましょう。
連作すると土壌の環境が悪化するため、ニンジンと同じせり科の野菜は続けて栽培しないように注意が必要です。
もしも病気が発生した際には殺菌剤を散布しましょう。
害虫はキアゲハやネキリムシ、キンウワバの幼虫がつきやすいため、注意が必要です。
対策としては、防虫ネットやマリーゴールドやひまわりなどの害虫が苦手な植物を近くに植える方法(コンパニオンプランツ)があげられます。
もし、害虫を発見した場合は、捕殺するか殺虫剤を散布して駆除しましょう。
ニンジンの魅力と楽しみ方とは
食べない日はないほど私たちと深く関わっている「ニンジン」。
毎日の食生活を豊かにしてくれる、無くてはならない存在です。
ここでは、ニンジンの魅力について深掘りして紹介します。
β‐カロテンの含有量がトップクラス
ニンジンは他の緑黄色野菜と比較しても栄養価が高い野菜です。
ビタミンC、ビタミンK、食物繊維、ミネラルなどの多くの栄養素が含まれておりますが、その中でもニンジンに含まれるβ-カロテンの含有量はトップクラスで、ほうれん草やカボチャの2倍以上もの量になります。
β-カロテンはカロテノイドと呼ばれる天然色素成分の一種です。
β-カロテンは体内でビタミンAに変換されて作用します。
ビタミンAは皮膚や喉の粘膜を正常に保つ働きがあるため、免疫力を上げる効果が期待できます。
さらに、β-カロテンは体内で増えすぎた活性酸素を除去・抑制するため、健康維持や老化予防に役立つといわれています。
長期保存が可能
ニンジンは長期保存が可能です。
適切に保存すれば常温で1週間、冷蔵で2週間、冷凍で1か月程度はおいしく食べることが可能なため、栽培して大量に収穫した際も安心です。
保存方法としては、洗わずに土付きのままにし、ニンジンの葉を切り落とします。
葉がついたままにしていると、栄養が葉に奪われて味が落ちてしまうためです。
その後、新聞紙やキッチンペーパーで一本ずつ包み、常温保存の場合はそのまま立てて保存しましょう。
冷蔵保存の場合は同じように新聞紙などで一本ずつ包んでから乾燥しないようにビニール袋に入れ、立てて保存します。
冷凍保存をする場合は、イチョウ切りや千切りなど、必要な形にカットしてからジップロックにいれて冷凍します。
乱切りなどの大きめに切る場合は、冷凍する前に固めにゆでておくと、料理の際に時短になります。
解凍する際には常温よりも冷凍庫に入れるなど、低温え少しずつ解凍すると風味や食感が落ちずに楽しむことができますよ。
料理のバラエティが豊富
ニンジンはカレーやシチューなどの煮込み系はもちろん、きんぴらやかき揚げ、漬物、サラダなど、料理のバラエティが非常に豊富です。
さらに、甘味が強くきれいな色の野菜であるため、ジュースだけでなく、ケーキやゼリーなどのお菓子にも活用することができます。
ニンジンにはビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンCなどの、熱に弱い栄養素が多く含まれています。
また、水に溶け出す性質があるカリウムも含まれているので、ニンジンの持つ栄養を余すことなく摂取するには生で食べるのがおすすめです。
また、ニンジンに豊富に含まれているβ-カロテンは、油に溶けやすい性質を持ちます。
加熱するときは油と一緒に炒めたり、揚げ物にしたりすると、体への吸収率が高くなりますよ。
まとめ
緑黄色野菜の代表である「ニンジン」の栽培方法のコツとその魅力について紹介しました。
ニンジンは発芽ができれば半分成功といわれるほど発芽が難しい野菜です。
しかし、水分量や日光などの栽培環境を整えてあげることで発芽率を上げることが可能です。
発芽が成功すれば、基本的な手入れのみで上手に育てることが可能であるため、初心者でも育てやすい野菜だといえます。
ニンジンを育ててみたい!という方は、まずは病害虫被害やトウ立ちがしにくい「夏まき」で栽培することがおすすめです。
はじめて家庭菜園に挑戦するという方も経験者の方も、今回紹介した内容を参考にニンジン栽培にぜひチャレンジしてみてください。
また、ニンジンは栄養価が高く、さまざまな料理に使われるため、1年を通して需要の高い野菜です。
栽培に慣れたら自分で販売し、収入を得ることもできます。
「みんなで農家さん」では、農業に関するコラムを日々更新しています。
家庭菜園についてさらに詳しく知ることができるだけではなく、もっと大きな規模でやってみたいという方や、収入につなげてみたいという方にとって、必要な情報を知ることができます。
興味のある方は、ぜひこちらからチェックしてみてくださいね。
参考文献:
市川啓一郎著「タネ屋がこっそり教える 野菜作りの極意」一般社団法人 農山漁村文化協会発行,2021年
林重孝著「有機農家に教わる もっとおいし野菜のつくり方」社団法人 家の光協会発行,2011年
参考サイト:
ニンジン(人参)を自分で栽培したい! ニンジンの基本的な栽培方法や注意点など | GardenStory (ガーデンストーリー)
にんじんをおいしく長期間保存するには?冷凍・常温・冷蔵での保存方法のコツ|農業・ガーデニング・園芸・家庭菜園マガジン[AGRI PICK]
にんじんを生で食べるメリットは?管理栄養士が選ぶおすすめレシピ4選付き – macaroni (macaro-ni.jp)
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