動力噴霧器とは?~活用方法とメリット~

農業に必須といえる作業の一つに噴霧があります。農薬などの薬剤や、除草剤を散布する作業を指し、液体を霧状にして効率良く散布します。噴霧器は、この作業を行う際に使用する器械です。
噴霧器には手動で動かす手動噴霧器と、電気やガソリンで動かす動力噴霧器があります。本記事では、動力噴霧器について取り上げ、活用方法とメリットについて解説します。
種類が多くあり、どれを選べばいいのかわからない方も少なくないでしょう。特徴を掴んで、ご自身の作業に合った動力噴霧器を選んでください。

動力噴霧器とは?

噴霧器は、液体を加圧してノズルから霧状にして分散させる器械です。液体の農薬や肥料を散布する際に便利な器械です。一般的には、噴霧するノズル部分と、液体を入れるタンク部分から構成されています。
液体を加圧するためには動力が必要です。この動力が、人力ではなく電動モーターやエンジンによる噴霧器を、動力噴霧器といいます。人力に比べて大きな力を扱えるため、大容量の薬剤や水を噴霧可能です。
動力噴霧器の種類は、動力別、持ち方/設置方法別、ノズルの種類別で多岐にわたります。農場の規模や、作物の種類など、ご自身の環境に合わせた動力噴霧器の選択が大切です。

動力噴霧器の種類

ここからは、動力噴霧器の種類に関して、動力別、持ち方/設置方法別、ノズルの種類別にまとめます。

動力別

電池式、充電式、電気式、エンジン式の4つについてまとめます。

電池式噴霧器

乾電池を動力源とする噴霧器です。手動式に比べると便利ですが、電力が弱いため噴霧量やパワーは、他の動力噴霧器と比べると劣ります。また、電池は消耗品であるため、在庫を持つ必要があるのと、使い終わった電池が廃棄物になる点は注意が必要です。

充電式噴霧器

充電可能なバッテリーを動力源とする噴霧器です。電池式に比べると、繰り返し充電が可能なため経済的です。家庭用コンセントから充電できるタイプもあり、利用しやすいです。バッテリーの残量を確認し、残量がなくなれば交換する手間は想定しておきましょう。

電気式噴霧器

コンセントにつないで電気を動力源とする噴霧器です。家庭用の100V電源でもパワーのある噴霧が可能です。コンセントをつないでいる限り使用可能なので、電池やバッテリーの残量を気にする必要がありません。消耗品がないのも魅力です。

エンジン式噴霧器

ここまで紹介した3つの動力噴霧器は、電気でモーターを動かすタイプでした。エンジン式噴霧器は、ガソリンや軽油を燃料としてエンジンを動かし噴霧する器械です。他種と比べて、高い動力が得られるため、広範囲で使えます。一方で、モーターに比べると音が大きいというデメリットがあります。

持ち方/設置方法別

次に、持ち方/設置方法別の噴霧器に関して、肩掛け式噴霧器、背負式噴霧器、タンク/キャリー式噴霧器、据置式噴霧器、ラジコン/ドローン式噴霧器噴霧器の5種類を説明します。

肩掛け式噴霧器

片側の肩にかけて使用する噴霧器です。重さが肩のみにかかるので、本体重量と薬剤分の重さの負担が大きくなります。持ち出しは楽ですが、自身の体力を鑑みて、本体重量や薬剤を入れるタンクの容量について注意が必要です。

背負式噴霧器

両肩に背負うので、肩掛け式に比べると重さに耐えられます。両手が空くので利便性もよく、長時間の作業が可能です。とはいえ、本体重量と薬剤の重量が重くなれば、身体への負担も増えるため、体力と相談して作業時間を決めましょう。

タンク/キャリー式噴霧器

キャスターがついているため、タンクと一緒に移動でき便利です。作業する方が背負う必要がないため、身体への負担少なく作業ができます。タンクと作業先との距離が遠くなるので、ホースだけを伸ばす必要があります。伸ばしたホースで、作物などを傷つけないよう注意が必要です。

据置式噴霧器

貯水タンクなどの大容量のタンクから、給水を行う噴霧器です。薬剤の残量を気にすることなく作業ができるので、長い時間連続して作業が可能です。一方で、タンクを一か所に固めるので、農場の規模や位置を考慮して、設置する場所の決定は慎重に行う必要があります。

ラジコン/ドローン式噴霧器

ラジコンやドローンを使い、遠隔操作で作業ができる噴霧器です。空中から噴霧するという特性上、安全性を考慮して、噴霧できる薬剤が限られます。農林水産省の公式サイトや業者のサイトで確認することをおすすめします。
参照:ドローンで使用可能な農薬|農林水産省

ノズルの種類別

ノズルとは、噴霧器から液体が噴霧される先端周辺を指します。ノズルの種類によって、液体の噴霧状態が変わるので、用途に合った選択が必要です。
ノズルの種類は多岐にわたるため、下記の情報を参考に、適切なノズルを選びましょう。

単頭ノズル

単頭ノズルとは、噴霧する口が1つのタイプです。一般に、ほとんどの噴霧器に付属しています。口が1つだけなので、狭い範囲の噴霧に向いています。液体の消費が少なくて済みますが、広範囲に噴霧したい場合には何度も動かす必要があるため、作業量が増えてしまいます。

多頭ノズル

多頭ノズルは、噴霧する口が2つ以上ついているタイプです。作物などに対して、均等に広範囲にわたって噴霧したい際に、効果を発揮します。一方で、複数の口から噴霧されるため、圧力が弱くなります。遠くまで飛ばしたい場合や、農機具の洗浄など、強い力が必要なときは不向きです。

鉄砲ノズル

鉄砲ノズルは、細く遠くまで噴霧できるタイプです。圧力を変えて、飛距離を変える事ができます。円錐噴射や直射が可能で、高い位置にある作物などへの噴霧に向いています。一方で、圧力が高くなるため、近くで使用すると、対象物を傷つける場合があるので注意が必要です。

飛散低減ノズル

飛散低減ノズルは、他のノズルと比べて粒子を大きく噴霧できるタイプです。粒子が大きい分、風の影響を受けにくくなり、少し離れた場所に噴霧する場合に向いています。一方で、粒子が大きい分、噴霧先でムラが出てしまう場合があるので、丁寧な作業が求められます。

カバー付き噴口ノズル

カバー付き噴口ノズルは、噴霧する口にカバーをつけて飛散を防止できるタイプです。付近に噴霧したくない作物などの対象物がある場合、噴霧箇所を限定する必要があります。カバー付き噴口ノズルを用いれば、周囲への飛散が制限されるため、限られた範囲にのみ薬剤を届けられます。

動力噴霧器の活用方法

ここからは、実際にどのように動力噴霧器を活用すればよいのか、その方法についてまとめます。

農薬の噴霧

動力噴霧器が最も活躍をするのが、農薬や除草剤を噴霧する時でしょう。水で希釈した薬剤を、タンクに積み必要な箇所に噴霧していきます。噴霧先の農場の大きさや作物の種類に合わせて、持ち方やノズルの形状を選択します。

小規模農園では、電動・エンジン式の背負式またはセット式、キャリー式がよく用いられ、大規模農園になるとエンジン式を中心に活用され、ラジコンやドローンを使った空中噴霧も利用されます。

肥料の噴霧

液体であれば噴霧できるので、液体肥料の噴霧も可能です。農薬や除草剤と比べると、噴霧する範囲は狭くてもよいかもしれません。

使用する量に合わせたタンクサイズを選ばれるとよいでしょう。小型のものは20リットル、大型のものは45リットルまであるので、参考にしてください。

芝生の管理

芝生の管理は非常に手間がかかります。芝に水や肥料を与える必要がありますし、落ち葉などのゴミを除去しないといけません。

背負い式の動力噴霧器を活用すれば、歩きながら芝の状態を確認し、水や肥料を噴霧していくことが可能です。また、ブロワーとして利用することができるので、落ち葉などのゴミを見つけた場合に、吹き飛ばすことが可能です。

水や肥料の噴霧や、ゴミの除去の両方に役立つ動力噴霧器です。

石灰の散布

動力噴霧器のタイプによっては、液体に限らず石灰のような粉末の散布が可能です。石灰は、酸性に傾きやすい畑の土壌を中和する際によく使われます。バケツに入れて散布するケースもありますが、動力噴霧器を使えば、効率よく散布することが可能です。

石灰を手で触れることも減るので、安全に作業を進められます。

農機具などの洗浄

手動式や、パワーの弱い電動モーターの噴霧器では、水圧が確保できないため、線上には向きませんが、高い水圧を確保できる噴霧器は、農機具などの洗浄にも活用できます。トラクターやコンバインなど、土で汚れる器具を洗浄するのは一苦労です。

動力噴霧器があれば、高い水圧で洗浄が可能なので、短時間で作業を終えられます。

動力噴霧器のメリット

動力噴霧器は、手動式に比べると大きなメリットがあります。

まず、パワーが強いため、より圧力の高い噴霧が可能になります。圧力が高いと、ノズルの口を増やしたり、噴霧の飛距離を伸ばしたり、力強い噴霧が可能となったり、作業効率をあげられます。

また、電気やガソリンをエネルギーとして動力を稼働させるので、連続運転が可能です。より広い範囲に噴霧を行う場合には、休み休みに作業をしていては効率が落ちてしまいます。動力噴霧器の連続運転で、作業効率をあげましょう。

そして、手動式のように手を動かし続けないといけないわけではないので、肉体への負担が少なくなります。農作業は肉体労働な側面が強いので、動力噴霧器を用いて、省力化を実現しましょう。

また動力別のメリットを下記のとおりまとめます。

電池式噴霧器のメリット

今回紹介した動力噴霧器の中で、比較的安価に購入できます。初期費用を抑えて、小規模で農業を始める場合には、低コストで導入可能な電池式がおすすめです。

充電式噴霧器のメリット

電池式の場合、電池の残量が無くなるたびに新しい電池を購入する必要があります。充電式の場合は、繰り返しバッテリーを充電して使えるので経済的です。ランニングコストは、電池式と比べると安くなります。

電気式噴霧器のメリット

電気式は、これまでの2方式と比べると電源直結で利用できるため、パワーが強いです。また、エンジン式と比べると音が静かなので、強いパワーと静音を兼ね備えたい場合は、電気式噴霧器がおすすめです。

エンジン式噴霧器のメリット

エンジン式噴霧器は、ガソリンや軽油を燃料として動作するため、コンセントが不要です。それでいてパワーが強いので、持ち運びしやすさとパワーを兼ね備えたい場合は、エンジン式噴霧器を選ばれるとよいでしょう。

まとめ

ここまで、農作業の強い味方である動力噴霧器に関して、活用方法やメリットについてお伝えしました。本記事を参考に、ご自身が関わる規模に合わせた動力噴霧器を選んでください。

また、これから農業を始めようと思い、どんな動力噴霧器がいいかをお考えであれば、本記事の内容と共に、本サイト「みんなで農家さん」のサービス利用もご検討ください。農業未経験の方でも安心して始められる仕組みを提供しております

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