伝統的な農業方法【焼畑農業】古き伝統はどんな方法

焼畑農業、野原焼き

焼畑農業を聞いたことあるでしょうか。

あまり見たことも聞いたこともないかも知れませんが海外ではよくされている方法になります。

日本でも少ないですが、焼畑農業を行っている地域があります。

焼畑農業は字の如く元々ある草木に火を入れて焼く作業になります。

珍しいやり方なので誤解されやすいですが決して自然を破壊しているわけではありません。

近年は地球温暖化の問題や近隣の問題などがあり森林法の規制もあり日本では基本的には行ってはいません。

しかし、焼畑農業は自然の力を最大限に生かした昔ながらの方法です。

この記事では農業の一つの工法として行われている焼畑農業についてどんな物なのか、メリットやデメリットについて紹介していきます。

農業に興味がある人にとって知識の一つとして知って頂ければと思います。

焼畑農業

焼畑農業を行う目的は主に2つあります。

1.草木を燃やして農地にするため

2.焼いた草木を肥料として自然本来の土で農業を行う

大きな目的はこの2つになります。

そもそも、なぜ草木を焼く必要があるのでしょうか。

焼畑がされるようになったのは縄文時代からとされています。

昔は機械などもなく人力で草木の伐採を行なっていました。

そのため、畑の土地を確保するために手っ取り早く開墾するために行われたのが始まりです。

当初は開墾が目的とされていましたが草木を焼いた後の灰には肥料としての利用することができることが分かりその後も焼畑農業として活用されてきた歴史があります。

現在でも行われているのは、この灰から得られる成分が肥料としてよいのと農薬などを使用しないため自然本来の土壌として農作物を育てることができることが一つの強みとして海外では現在も行われています。

しかし、火を使うことから利用することができる地域がそれほど多くはありません。

海外でもアマゾン川流域などの熱帯雨林地域やアフリカ、そして中国の一部など温順な低緯度の地域などで利用されている程度です。

また、農作物を数年栽培すると土がやせていってしまいます。

そのため、一般的な農業であれば農薬や肥料を使用して土に栄養を与えてその土地で何度も農作物を栽培します。

焼畑の場合使用した後はまた別の場所で同じように焼畑を行い数年して土地が回復した頃に戻ってくるといったサイクルで土地を利用します。

効果

先程も紹介しましたが、草木を焼いた後の灰は肥料として有効です。

草木の灰は一般でも草木灰として販売がされているほどです。

灰の成分として含まれている

・カリウム

・リン酸

・ケイ酸

これらの成分が土壌にとってプラスな成分です。

主成分として土をアルカリ性にする働きがある微生物が活発に稼動して害虫や病原菌の予防になります。

リン酸は果実の育ちを増進し、カリウムは球根や根を大きくする効果があります。

熱帯地域の土壌は酸性の土壌が多いためこの焼畑にすることで灰の成分でアルカリ性の土壌となり熱帯地域でも農作物を育てることが可能になります。

そのため、熱帯地域などで焼畑農業は行われる方法になります。

また、成分以外の効果としても焼畑農業の利用はうまく利用されています。

これは熱帯地域などの地域的環境を利用していることです。

どういったことなのかについて解説していきます。

熱帯地域の特性

熱帯地域などの雨が降りやすい地域の土は農作物が育ちにくい反面雑草などは生えやすい特徴があります。

焼畑農業ではこの特徴を生かしてサイクル的に農業を行なっています。

焼畑農業のサイクルは下記のようなサイクルになります。

1.伐採、火入れ

2.種まき

3.収穫

2.3.を数年繰り返す(約2〜3年)

4.休耕(10年以上)

1.に戻る

このようなサイクルで行われています。

4.での休耕は土壌の栄養分がなくなり作物が育たなくなった段階で休耕にはいります。

そして、違う土地に移り同じサイクルを繰り返しまた、休耕が終わった頃に元の場所に戻ってくるといった流れです。

この休耕の間に熱帯地域の特徴が上手く作用されており農作物をしてない間にまた植物(雑草)や木が生えてくるというわけです。

他の土地からまた戻ってきた時にはまた焼畑農業が出来る状態になっており草木を灰にして土壌に栄養を与えることができるようになります。

このため焼畑農業は1箇所で長く農業を行うわけではないので生産量はそこまで多く取れるわけではないですが、熱帯地域の特性をうまく利用した農業方法です。

焼畑農業のメリット

熱帯地域の特性でも説明したように焼畑農業は熱帯地域などの特徴を生かしているためメリットと言えます。

他にもメリットとして挙げられるのは2つあります。

1.経費と手間の削減

2.土壌改良のない環境を生かした栽培

この2つが挙げられます。

1.の経費と手間の削減として、伐採と肥料のを削減できるとこです。

一般的なやり方であればもちろん伐採にも費用や人件費に労働力とコストがかかります。

焼畑では、単純に火を入れて焼くためこの伐採に関わる費用が基本的に抑えることができます。

また、肥料においも購入して散布するのにこちらも費用に手間がかかりますが、草木の灰がそのまま肥料して使用するため新しく肥料を購入する必要も散布する手間もかかりません。

これはコスト面で大幅な削減になるのと人件費や労働力を抑えることができるため大きなメリットです。

2.の土壌改良のない環境を生かした栽培というのは焼畑農業がサイクルを生かした農業方法だからです。

現代のやり方では、農薬や肥料を化学的に作りだし土壌を作成するため元々の自然本来の物ではありません。

農薬も使用しすぎれば環境に悪影響があり、使用のしすぎは農作物を育てるためであってももちろん許されません。

また、化学的物で作成されているため環境を生かしているとも言えません。

焼畑農業ではあくまでも肥料として使用するのは元々あった草木です。

そのため、農薬のように化学的な物を使用していないため環境に悪影響ということもおきません。

また、焼畑農業はサイクルで行うため休耕によってまた元の状態に戻ります。

このため自然環境のみ使用であるため土壌改良を特段必要とせず環境を生かした栽培方法と言えます。

デメリット

メリットは大きいですが、その反面のデメリットももちろんあります。

デメリットとして3つが挙げられます。

1.煙害と火災

2.土地の開発

3.人口の増加

1.の煙害と火災については、火を使い広大な範囲を燃焼させるためイメージがつくと思います。

煙を大量に吸い込んでしまうと呼吸器系の障害や飛行機や道路などで視界を塞いでしまうため運行遅延などの原因になります。

2.土地の開発では道路の整備や市街地化を行うことによって、焼畑のように土地を転々とし広い範囲を利用していましたが行うことができなくなってきています。

3.人口の増加の問題として2.の問題とも近しいですが人口増加によって土地の開発を行う必要性がでてきたのと何よりも農作物の生産性が追いつかないことにあります。

焼畑農業では生産が少ないため人口増加にあった生産性を確保することができません。

このようにデメリットは昔と比べて産業の発展と人口の増加による影響でできないようになってきました。

焼畑農業を行なっている地域

引用元:https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1602/mf_topics03.html

日本でも唯一焼畑農業を行っている地域があります。

宮崎県東臼杵郡椎葉村です。

平成27年に世界農業遺産として、日本国内代表として選出されています。

宮崎県東臼杵郡椎葉村は日本で唯一残る伝統農業で、日本国内で焼畑農業を行っているのはこの1軒だけになります。

現在は地域の子供達の体験学習として利用されています。

また、世界農業遺産に選出された理由として

・選定条件は満たさないが保全の必要性が高い里地里山であること

・焼き畑の継続により独特の里山生態系(生物多様性)が維持・保全されている地域であること

・一時的な耕作地と周囲の森林が一体的に取り扱われており、何千年もの営みを通じたモザイク林相の形成により、地域固有の生物多様性が育まれているため

上記の理由から伝統的農業として認められて世界農業遺産として登録されました。

このように、焼畑農業は現在では難しいですが伝統農業としては古くからある農業方法であることがわかります。

参考、引用元:環境省 https://www.env.go.jp/nature/satoyama/45_miyazaki/no45-7.html

世界で焼畑農業が行われている国

日本では国内で1軒しか焼畑農業を行なっている農家はありませんが、世界でみるとまだ現在も行なっている国はあります。

・ブラジル

・インドネシア

・コロンビア

・ミャンマー

・メキシコ

・エクアドル

などの国で現在も行われています。

一番活発に行われているのはブラジルです。

ブラジルは農業の面積が8万平方メートルと東京ドーム約170個分に相当します。

これだけ広大な農地があるため他の国よりもいまだに焼畑農業が行えています。

しかし、今後は地球温暖化の問題などからいつ完全に規制されるようになるかはわかりません。

現在では地球温暖化の問題やデメリットでも記載した問題から焼畑農業を規制する国が増えてきています。

まとめ

農業の伝統的な方法として焼畑農業について紹介してきました。

環境問題の点から今すぐに規制すべきと感じた人や伝統的な農業のため今後も完全になくさずに伝統を残した方がいいのではと思った人もいるかと思います。

現在の日本ではすでに1軒しか残っていないようにデメリットの部分が目立ち衰退してしまいましたが、世界で見れば現在も行われている方法ではあります。

メリット、デメリットがありますが、上手く活用すれば焼畑農業は伝統的な農業のため衰退していくのは伝統がなくなるようで勿体ない気持ちがあるのも分かります。

今後も世界的にも色々な問題などで規制があるかもしれませんが焼畑農業がどうなっていくのかについても農業に携わる人にとっては伝統が経済の発展とともにどうなっていくのか動向をみてみるのもいいかもしれません。



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