今農業界で注目されている「ローカル5G」とは?

今、農業界で注目されているのが「ローカル5G」と呼ばれるものです。

5Gといえば、2020年、総務省が5G電波の割り当てを発表したことが話題となりましたね。

しかし、そもそも5Gって一体何なのか?なぜそれを農業界が注目しているのか?

正確に理解している方はどれくらいいるでしょうか?

今回は、5Gと農業の関係について説明していきたいと思います。

ローカル5Gの解説

まずは、ローカル5Gについて解説していきます。

似たような言葉がたくさん出てきますが、順を追って説明していきます。

5Gとは

5Gとは、言葉自体の意味としては「5th Generation」の略語で「第5世代」のことであり、ネットワークでスマホなどをつなぐ通信規格の一種です。

動画などの大きいデータの読み込みも格段に速くなり、長編映画をダウンロードする場合、4Gでは8分かかりますが、5Gではわずか5秒しかかりません。

また、4Gは1km²あたり10万台程度の端末と同時接続可能とされていますが、5Gは100万台程度が同時に接続可能と予測されています。

ローカル5Gの特徴

ローカル5Gとは、通信事業者によって提供されている5Gネットワークと切り離して、企業や自治体がニーズに応じて一部のエリアまたは建物・敷地内に個別に利用できる5Gネットワークを構築する方法のことです。 

通信事業者によって全国に提供されているパブリック5Gは、まだ使用できるエリアが限られています。

それに対してローカル5Gは、地域・企業が自らの地域や建物内などの特定のエリアで独自の5Gネットワークを構築・運用・利用することができます。 

また、ほかのエリアでの通信トラブルやネットワークの混雑などの影響を受けにくく、外部のネットワークから遮断された環境でデータを送受信できるため、情報の漏洩リスクが低いことも特徴です。 

「ハンドオーバー」という技術で、Wi-Fiより広い面積の場所でスムーズに利用できるローカル5Gは、Wi-Fiに代わる新たな選択肢として注目されています。 

実際に企業や自治体がローカル5Gを運用するには、無線局の免許を取得する必要があります。

情報システム部門の責任者などが免許交付の対象となりますが、このような人員がいない場合には、外部に委託することも可能です。

免許申請には、無線エリアの設計、申請書類の作成、設備の性能検査などが必要になり、処理期間は約1ヶ月半とされています。 

農業とローカル5G

さて、そんな最先端通信技術に目を付けたのが農業界です。

それを聞いて「農業に通信技術なんて必要ないんじゃないか?」と思ってしまう農業従事者もいると思います。

ところが、このローカル5Gは、農業界の救世主と成り得る可能性を秘めている画期的な技術なのです。

今農業界は、深刻な高年齢化・後継者不足に喘いでいます。

さらに、農業従事者は年々減少し、慢性的な人手不足という厳しい労働環境にあります。

そんな中、ローカル5Gを活用することで、それらの問題を大幅に改善できるのです。

要は、これまで人力で行っていた作業を「機械任せ」にできるようになったのです。

例えば、4Kカメラによる農作物の監視が挙げられます。

ローカル5Gびおかげで、4Kカメラは、従来のカメラとは比べ物にならないくらい鮮明な画質で農作物を監視することが可能。

これにより、農作物の生育状況や整理障害などの情報を正確に読み取ることができるようになったのです。

他にも、走行式カメラ、スマートグラスなどローカル5Gを活用した便利アイテムが多数登場。

公益財団法人東京都農林水産振興財団は、ローカル5Gを活用した一連の農業活動についての検証を行っています。

結果、農作物の質は維持しつつも、収穫量は全国平均の2倍まで増加したとのことです。

人手がかからなくなっただけでなく、収穫量まで増えるとなると、農業界にとってはローカル5Gを放っておく手はないですよね。

ローカル5Gを農業で活用するメリット・デメリット

他にも、ローカル5Gを農業で活用する上でのメリット・デメリットを紹介します。

メリット

①通信速度

ローカル5Gは、大容量のデータを超高速で送受信、超低遅延、多数同時接続が可能という3つの特徴があります。

農機等のあらゆる機器や設備に接続することができて、遅延なくリアルタイムでAIからのガイドを受けながら農作業をすることが可能になり、さらに、遠隔での操作など自動化ができます。

②パブリック5Gの影響を受けない

パブリック5Gは通信トラブルが発生した場合や災害に影響がでる可能性があり、ネットワーク通信にトラブルが生じる可能性があります。

しかし、パブリック5Gとは別のネットワークをであるローカル5Gを活用することで、パブリック5Gの影響を受けずに、農場を運営することができます。

③Wi-Fiより広範囲で使用可能

Wi-Fiは接続できる台数や範囲が限られていることから、建物の面積が広範囲な場合、設置方法などに工夫が必要となります。

ローカル5Gは、広範囲で使用できる上多数同時接続も可能なので、工場や農場などで活用することができます。

④外部環境の影響を受けない

一般的なネットワークは、不特定多数が使用することで混雑で通信速度が遅くなり、トラブルが発生しやすくなります。

しかし、ローカル5Gであれば、外部の使用環境の影響を受けずに利用できます。

通信事業者に通信障害が発生した場合でも、ローカル5Gは影響を受けることはありません。 

⑤セキュリティが強い

独自のネットワークを研究所や工場、農場など特定の範囲でのみ利用することができるため、情報漏洩のリスクを軽減することができます。

デメリット

①コストがかかる

ローカル5Gを導入するためには、4Gと5Gの両方のネットワークを構築する必要があります。

単純に基地局の数が増えコストがかかり、導入規模によりますが、5Gネットワークの構築に数千万~数億円のコストが発生するケースもあります。

また、年額固定の電波利用料も支払わなければなりません。

処理性能や信頼性が高い専用ハードウエアの導入も相応のコストがかかります。

初期費用や運用費用などを確認して、費用対効果も検討したうえで導入すべきでしょう。

②障害物に弱い

ローカル5Gの周波数の28.2-29.1GHz帯は、直進性の強い電波となり、障害物の影響を受けやすいとされています。

そのため、障害物の多い環境によっては通信できる距離が短くなるリスクがあります。

ローカル5G使用事例

では最後に、ローカル5Gを活用した農家さんの事例を紹介していきます。

①カキ養殖の生産性向上

海中の状況をリアルタイムで把握することによってカキ養殖の効率アップを目指した、NECネッツアイ株式会社さんによる事例です。

NECネッツアイ株式会社さんは、遠く離れた場所から水中ドローンを遠隔操作することで、海の状況を映像とセンサーから得られる環境データにより把握することができるようになりました。

これにより、カキ養殖の生産性向上がアップしたそうです。

5Gにおける魅力である超大容量通信を使用することで、海の状況をより綺麗な映像で映し、より正確に海の状況を把握出来たことが成功の鍵だったということです。

Wi-Fiでは速度が遅く、通信範囲が狭いために陸からの遠隔操作と映像での監視は難しいとされていました。

そんな壁を、ローカル5Gのメリットを上手に活用することで乗り越えた事例です。

②農機の自動運転化

複数台のトラクターを遠く離れた場所から監視し制御することで自動運転を実現した、東日本電信電話株式会社さんによる事例です。

東日本電信電話株式会社さんは、ローカル5Gとキャリアの5Gの双方を応用することで、農地と農地の間にトラクターを自動運転させています。

5Gの魅力である超低遅延な通信と多接続により、複数のトラクターを安全に制御することが可能になりました。

農家の方は、夏場の酷暑でも自宅等から遠隔で状況把握ができます。

このような取り組みは、生産性を向上させることだけに留まらず、新規就農者の減少による労働不足や高齢化による収益低下等の課題の解決に貢献しています。

③物流現場における人の動態把握

NTT東日本と国立大学法人東京大学と共同で設立した「ローカル5Gオープンラボ」における事例です。

両法人は、物流倉庫の疑似環境とローカル5Gによる高精細カメラ撮影環境を構築し、物流現場を想定した動作を複数人が行いました。

映像データをAIで分析した結果、人物の検知・特定・追跡への有用性を確認することに成功しました。

作業員の稼働をリアルタイムに見える化し管理していくことは、物流倉庫内における作業進捗の把握や人員配置の適正化といったメリットがあります。

他に、業務量や作業の生産性に関するデータの取得・蓄積を可能にし、作業効率の向上や、今後の省人化への投資を判断していく重要なデータとしても活用することができるようになります。

④農耕機の大幅な性能アップ

国内の農耕機分野において絶大なシェアを誇る株式会社クボタさんの事例。

株式会社クボタさんは、ローカル5Gの特性である「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」を活用することで、自社の農耕機の大幅な性能アップに繋げています。

例えば、自動運転農機。ローカル5Gの技術を活用することで、複数の農機の監視・制御や、人・障害物の検知をリアルタイムで行えるようになりました。

もちろん、安全面についてもバッチリです。

他には、物を触らずにして情報を収集ことができる技術「リモートセーシング」。

一般的に、高精細の画像データは容量が大きくなりますが、5Gでは高精細画像も高速でやり取りすることが可能です。

広範囲に及ぶほ場の画像を短時間で収集・分析することにより、作物の生育状況をスピーディに把握でき、生育が良くないエリアには重点的に施肥を行うなど、適切な肥料散布ができるようになります。

まとめ

今回は、最新の通信技術「ローカル5G」を活用した農業の紹介でした。

5Gについては、農業に限らず私たちの私生活にも影響良い影響を与えてくれるものなので、身近な関心ごととして捉えていただいた方も多いと思います。

これから先、6G、7Gという時代が到来した未来にはどのようなことが起きるのか?そして、農業はどのように変わっていくのか?

注目していきましょう。

「みんなの農家さん」では、農業に関する最新情報や気になるトピックスなどを逐次配信しています。

 興味が湧きましたら、是非とも他の記事も読んでみてくださいね。

報告する

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。