スーパーや自然食品店などでも目にすることが増えてきた無農薬野菜。食の安全性への注目が高まっていることで、無農薬野菜も注目を浴びています。特に小さな子どもがいる家庭やアレルギーが出やすい人などは、安全な野菜を食べたいと思う傾向にあります。そのような人々に注目される無農薬で栽培した野菜は、健康的で安心というイメージがあります。
しかし自分で栽培となると「大変そう…」や「害虫が…」などマイナスなイメージも多いのが現状
今回は無農薬栽培(特別栽培)のメリットとデメリットをまとめてみました。
日本は農薬大国
日本の農薬使用量が諸外国と比べると非常に高く、必然的に残留農薬基準を下げることが難しくなっているのが現状です。ただ残留農薬は決して野放しになっているわけではなく、国が定めた基準により管理されています。農薬それぞれにどの程度の毒性があるのかを動物実験などで確認し、どのくらい残るのかもチェックされています。
それならば安心と思われるかもしれませんが、じつは日本の残留農薬基準は諸外国と比べると緩い設定となっています。
依然として米国と比べた1-25倍、EUと比べると1.5-300倍も高くなっています。
農薬を使うといっても1回、2回、あっても数回程度だろうと思っている方が多いかと思いますが本当に諸国と比べて桁違いに多く使われているのです。
なんと驚くことに、ナスで74回、かぼちゃで68回、ピーマン62回、トマト62回と想像以上に農薬が多く散布されています。
無農薬とは
よく耳にする「無農薬野菜」「無農薬栽培」「自然栽培」「オーガニック」
この「無農薬」という言葉、実は農林水産省が定めた「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」によって、“原則的に表示をしてはならない語(表示禁止事項)”として定められています。
このガイドラインは、農産物につけられた表示によって消費者に誤解や混乱を与えないために作られました。順守の義務や罰則はありませんが、場合によってはJAS法による指導や公正取引委員会による排除などの対象になることがあります。
表示禁止の理由は?
農薬を全く使わない栽培をしても、土壌に残っている農薬や周辺の土地から流入または飛散してきた農薬が含まれる可能性があることが挙げられるからです。
全く使用していなくても影響を受けた可能性があり、「無」と付くだけでは正確な情報が伝えきれていない場合があります。
そこで“自分が栽培している限りでは農薬の使用はしていない”ということを示す言葉として、「農薬:栽培期間中不使用」や「特別栽培」の表示が推奨されることになりました。
そのほか、ガイドラインに沿った表示を行うことを前提として、「農薬未使用」「農薬無散布」「農薬を使っていません」などと表示し、消費者に栽培方法を伝えることもできます。
農薬や肥料の使い方による分け方
野菜の栽培法は農薬や肥料の使い方によって4種類に分けられます
①慣行栽培…農薬や化学肥料を使う(一般的な栽培方法)
②特別栽培…“自分が栽培している限りではまったく農薬の使用はしていない”
節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下
(「無農薬栽培」と表記出来ないため)
③有機栽培…農薬や化学肥料を使わない、遺伝子組み換え技術を使用しない
しかしJASが認定している31種類の農薬についてのみ使用が認められてます。
有機=完全無農薬ではない
(「有機」日本語「オーガニック」英語「ビオ」ヨーロッパ言語)表記
④自然栽培…一切農薬・化学肥料を使用しない
無農薬栽培のメリット
SDGsへの取組
ガイドラインでは、農薬を使用しない、または低減することについて、その目的を「農業 の自然循環機能の維持増進を図るため」としています。
自然のサイクルを利用し、農業がその一部になることで、環境への負荷を減らすことがで きるというものです。
体への害を減らせる
農薬は虫を殺しても人体に影響がほとんどない薬剤とされていますが、実は人体にも悪影 響を及ぼす報告が相次いでいます。
特に、最近主流となっている「ネオニコチノイド系農薬」は、残存性が高く、神経伝達物 質を撹乱させる恐れがあると指摘されています。農薬を使った野菜を食べてすぐその日 に、具合が悪くなることはなかったとしても、将来の健康を脅かす可能性はゼロではあり ません。
野菜の味をしっかり感じられる
無農薬で育てた野菜は農薬や化学肥料の力に頼らず、自力で成長しようとします。厳しい 自然環境の中で、限られた栄養源を効率よく吸収して育とうとするので、非常に力強く栄 養を蓄えた野菜が生まれるのです。
もちろん、土地ごとに相性の良い野菜は違うため、無農薬なら何でも美味しいという訳で はありません。場所によって無農薬では育てられない野菜もあります。
ただ、土地の土壌 や気候、環境を理解した上で、野菜の特性にマッチした条件で育てれ ば、全く農薬を使わなくても野菜はしっかり育ちます。
栄養価が高いだけでなく、味が濃く、野菜本来の美味しさが強調されることも特徴です。 苦味やえぐみを苦手とするお子様でも、無農薬の甘みが強い野菜なら大丈夫なこともある ほど。まさに自然の恵みと言える美味しさが魅力です。
生産者の顔を見せることで消費者の安心感を得れる
無農薬野菜は「〇〇さんが作った」と写真や名前付きで売られていることがほとんどで す。
気に入ってもらえたらリピーターになって応援してもらえたり、消費者と直接つながった りすることで、農家体験や農家さんが教える料理教室など新しいビジネスが生まれること もあるかもしれません。
無農薬栽培のデメリット
・害虫や雑草の問題
農薬は、害虫や雑草の駆除をし、農作物の品質を保ち、効率よく安定して生産し、生産コストを抑えるために開発されているものです。
そのため無農薬だと害虫や病気になる野菜も増えるので、栽培が難しく、手間をかけて野菜も土も育てていかなければなりません。
ですが最近ではICT技術により対策もできるようになりました。
・近隣農家さんとのトラブル
「お前のところが農薬撒かないから、害虫が発生して、うちが迷惑被っている!怒」
と言われることもあります。
無農薬の田んぼで被害が拡大する
↓
周りの一般の田んぼに被害が拡大する
つまり、無農薬被害が拡大してその被害が周辺の田んぼに拡大していくと認識している農家さんも多くいます。
しかし現実の農業界では真逆の事象が起こっています。
それは、「目に見えないところを大事にする」害虫にやられない環境を作る生物達の力を活かすことで土俵を良くし、害虫被害を最小限、もしくはほとんど影響を受けることはありません。
・100%無農薬とは限らない
農産物自体には農薬が散布されていなくても、昨年農薬を使って野菜を栽培した場合は、農薬が残った土で、無農薬野菜が育てられている可能性も考えられます。
また近隣の農薬散布が風にのり、入る可能性もあります。
いわゆる残留農薬の問題です。
・形が不揃いになりやすい
便利な農薬や化学肥料の力を借りることができないため、形が不揃いになりやすいことが特徴です。
とはいえ、形が不揃いでも人体への悪影響はありません。
見た目が良くても農薬を大量に使った野菜と、形は悪いけれど農薬を一切使っていない無農薬野菜では、どちらが健康的かと考えれば、無農薬の方がやはり安心できると言えるのではないでしょうか。
・値段が高い
無農薬栽培が難しく、手間をかけて野菜を育てているため、仕方がありません。
無農薬野菜は農協を通さずに直販や現地の直売所などで売られることが多く、農協を通して商品が売られている野菜よりも無農薬野菜は高くなってしまうのです。
海外で健康志向が高まりオーガニック商品が一般商品と同価格で市場に出ています。
有機農業・自然栽培を助けるICT技術
有機農業や自然農業において、先進的なICT技術を用いたスマート農業の例も増えている。
ドローンに搭載したセンシング技術で、生育状況や収穫時期などを把握する「ドローン米」も、そのうちのひとつです。
これまでのドローンは農薬散布に活用されるケースが多かったが、昨今のセンサー技術の進歩により、上空から光合成の活性度を測定したり、生育度を数値化したりすることが可能になりました。
農家は、その分析に従って作業することで生産効率を上げていくことができます。
また、太陽熱により雑草の種を死滅させる「太陽熱処理」という有機農法に、農業IoTなどのセンサーを利用する例も出てきています。
健康に対する意識の高まりは、同時にこうした有機農業や自然農業のための技術を高めていくことにも繋がっています。
この傾向は日本に留まらず、特別栽培や自然栽培は世界的にもトレンドとなってきています。
また補助金なども自治体にやってはあるので新規導入しやすくなったと思います。
まとめ
農林水産省は「2050年に有機農業用の農地を100万ヘクタール(全体の約25%)に増やす目標などを盛り込んだ新たな農業戦略をまとめた。環境意識の高まりで、有機農産物への需要が拡大しているからだ。今後、普及に役立つ技術開発などを補助金で支援したり、有機農産物を扱うメーカーを減税したりする。」と発表しました。引用:朝日新聞より
特別栽培を最新ビジネスとして着目している方もいます。
生産者も消費者もメリットのある時代が待ち遠しく思います。
今回は無農薬栽培のメリットとデメリットをしっかりと把握して頂きご自身に合う栽培を始めるきっかけになれば幸いです。
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