コロナ禍によって、日本の農林水産業が抱える問題に興味を持った方もいるのではないでしょうか。
コロナ禍より前から、現在の日本の食料自給率は、同じ先進国と比べてもかなり低い水準となっています。ここで指す「食料」は、米や麦、肉、魚介類、野菜、果物などが挙げられます。他にもわたしたちが生活する上で必要な住居なども、コロナ禍によって近年変わりつつあります。コロナによって浮き彫りとなった現在の日本にはどのような課題があるのでしょうか。
では、以下に現在の日本が抱える農林水産業について紐解いていきましょう。
農林水産業とは
みんなが生きるために必要な食べ物を作ったり、魚をとったり、生活するめに必要な木材を生産するために欠かせない「農業」「林業」「水産業」を総称したものを「農林水産業」と言います。他にも農林水産業は、食べ物をつくるだけではなく、水をたくわえる、空気をきれいにする、文化を伝える、自然とのふれあいの場所になるなど、様々な役割を持っています。
農業の役割
農作物を育て,または家畜を飼育して生産産業を行う産業のことを指します。人間の食生活などに必要な、基礎的な物を作る第一次産業のうち最も重要なものです。農業は、天候や、地形など自然の強い影響を受けます。世界の農業は、その土地の自然条件や、そこに住む人々の文化の違いなどによって色々な形で行われています。
他にも、雨水を水田や畑が蓄えて、徐々に川へ流出することで洪水を防止する天然ダムのような公益的機能や、植物の蒸散や水田に水があることにより、気温上昇を緩和したり、美しい農村景観が保全されるなどの他面的機能もあります。
林業の役割
主に木を育て森林を保全し、育った木を伐採して利益を得る産業です。木材をうみだすだけではなく、木を薪や炭などにして燃料にしたり、地面に雨をたくわえてきれいな水を作り出したり、空気をきれいにしたりもします・近年の林業の役割はそれにとどまらず、豪雨や台風などの被害を抑えるための造林・間伐といった治山事業といった側面も高くなっています。このように、森を守ることで上記のような働きを守っていくのも林業の仕事です。
水産業の役割
漁をする漁師のほか、陸で稚魚から育てる養殖業や、加工を行う工場まで幅広い分野を指しています。獲る魚の種類や漁の種類により漁師の生活パターンはガラッと変わりますので、希望の地域で獲れる魚や漁の方法の調査は大変重要です。
農林水産業全体における現在の課題
日本の農林水産業は、日本を支える主要産業ではあるものの国民総生産の1.3%しか占めていないのが現状です。さらに、従業者の高齢比率が高いため全体として労働者が減っています。
令和3年7月に水産庁から出ている調査結果では、漁業労働力である男性のうち38%が65歳以上であることがわかっています。国内の労働力人口の減少に伴って漁業への新規就業者数も減っていくと見込んだ場合、将来の漁業就業者数は、10年後には約10万人、20年後には約8万人に減少すると考えられています。(令和3年7月水産庁から出ている調査結果 P8参照)
今回は漁業を事例としましたが、日本の農林水産業を存続させるためには、若い新規就業者を少しでも多く獲得する必要があります。
『コロナ禍と農林水産業』
入国制限による影響
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う外国からの渡航者に対する入国制限措置により、令和2(2020)年4月から来日を予定していた外国人技能実習生等の外国人材の入国が困難となり、入国者数は大幅に減少し、農業分野への人手不足の影響が懸念されていました。しかし、他産業からの代替人材の確保等により対応することができました。コロナ禍によって宿泊業等の他産業とのマッチングによる労働力の確保、農福連携やスマート農業機械の導入による労働力不足への対応等の取組が展開されました。
小中学校の臨時休校・イベント等自粛の影響
コロナ禍によって全国の小中学校等の臨時休業の影響がありました。例えば、学校給食で使う野菜や 果物、牛乳・乳製品などの注文キャンセルが発生しました。他にも、卒業式やイベント等の中止・縮小により、需要が減退し、価格も下落しました。さらに、インバウンドを含めた外食・観光需要の減少により、団体の宴会予約の キャンセル等の発生もありました。
『各国の農林水産業』
アメリカの農業
アメリカは「世界の食料庫」とも呼ばれる世界有数の農業大国です。特にトウモロコシ、大豆、小麦などの穀物や豆類を多く生産し、ほかには牛乳や牛肉、鶏肉、豚肉などの畜産物の生産も盛んです。このような背景として、日本は少ない面積で多くの資本を費やす集約農業なのに対して、アメリカの農業は少ない人手で多くの面積を大型の機械で管理する「大農法」をもちいています。農家一人あたりの耕作地はおよそ日本の100倍とも言われており、これはアメリカのほかにもヨーロッパなどで主流の大規模農業です。また、少ない労働力で多くの農産物を生産できるので、非常に効率の良いやり方をとっています。
ドイツの林業
世界の林業国の1つであるドイツですが、森林面積は日本の方が広く(2500万ha・森林率67%)一方のドイツは日本の半分以下(1100万ha・森林率32%)で日本より多い木材産出量を輩出している国と言われています。
その背景としてドイツの林業は、国の方針で、天然更新(人が手をかけなくて済む、自然の力によって成立する森林)を基本とした自然に近い形での林業が行われています・そのため、木を植えるときでも、気候に合った育ちの良い広葉樹が多く植えられています。一方日本の木材生産は伐採して植えるといった循環的な林業を行なっていますが、木材価格の低下などからこの循環がうまくいかなくなっているのが現状です。
中国の水産業
中国は世界最大の養殖国家だと言われており、その漁業生産量は全世界の約18%を占めています。その背景として、多くの国は漁獲高が年々減少し漁業が衰退している中で、中国では内水面で早くから養殖業に取り組んでいたことが漁業が発展している原因の一つと考えられています。
『各分野における日本の課題と解決策』
農業
「高齢化」と「労働力不足」この2つが大きな課題となっています。
農林水産省の農業における人口推移によると、農業就業人口のうち65歳以上が占める割合は、2010年の約62%から、2019年には約70%へと上昇しました。現在の農業就業人口の高齢化は、日本の高齢化問題と比例するように進んでいます。
労働力不足という点においては、2014年に農林水産省の支援を受けて1,591人が新規就農したものの、3年目までに35.4%(564人)が離農しています。(総務省データ参照)このような離農を防ぐためには、働き手が安心できる就労環境を整える必要があリます。
上記、高齢化及び労働力不足の解決策として、少子高齢化が進展する日本において、働き手を物理的に増やすのは現実的には難しいといえます。つまり、IT化によるスマート農業によって必要な労働力そのものを減らしていく必要があるでしょう。すでに自動航行ドローンによる農薬散布など、「スマート農業」への取り組みは始まっています。将来的には農業用ロボットの導入により、さらに省力化が進むことも考えられます。こうした最新技術を活用したスマート農業は、人手不足の解消及び、離農防止に大いに貢献するでしょう。
林業
外国から輸入されてくる安価な外材との競争が課題となっています。安くて一度にまとまった供給量が可能な外国産木材が本格的に輸入されるようになり、現在の日本は40%に満たない木材自給率となり、木材の輸入に依存しています。それによって、輸入材への依存は国内林業の産業化を遅らせ、林業従事者も長期にわたって減少し続けました。
しかし、最近ではウッドショック(世界的に木材需要が伸び、その結果として木材価格が急騰し手に入れにくくなる問題)によって、国産の木材に注目が集まりました。このチャンスを活かし、日本木材を使用するメリットを打ち出していくことや、国産木材を使用した建築による補助金利用についてなど、林業における課題はまず「現状を知る・知らせる」というところではないでしょうか。今後、コスト削減を進めるにあたり、多くの人が取り組めるような新しい対策の方法を模索する必要があるでしょう。
水産業
「高齢化」「労働力不足」に加え、「水産資源の減少」が挙げられます。
現在の日本では「水産資源減少」により、「養殖」が水産資源の枯渇を防ぐことができる持続可能な手段として、注目を集めています。しかし養殖は、餌による水質汚染、生態系の撹乱、生餌など他の資源の使用、過度な抗生物質の使用、過酷な労働環境など、養殖にも様々なリスクがあることが問題視されています。ICTやAIを活用した養殖生産管理の高度化をしていく取り組みによって、業務の効率化や人材の確保等、持続可能な社会作りとして「スマート漁業」が注目されていくでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。日本の農林水産業の課題としては慢性的な人手不足や高齢化が影響しており、それを改善するためのDX化などが課題になっていることがわかりました。そのために私たちがまずできることは日本の農林水産業における課題を「知ること」からスタートするのではないでしょうか。
みんなで農家さんは、『農家人口の減少』という日本農業の根本的な課題を解決するために『稼げる農家さん』をコンセプトに、新規就農へ興味を持ってくれる人を増やす取り組みを行なっています。
様々な課題を持つ農業において、充実した研修・収益面以外にも、農業事業に参入するまでのサポートも行なっています。
ぜひご一読ください。
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