畜産農業は牛や豚、鶏などの家畜を飼育して牛肉や豚肉鶏肉などを生産する農業になります。
私たちの生活には畜産農業が欠かせないほど浸透しています。
牛肉、豚肉、鶏肉は外食にしても自宅にしても食することが非常に多い食材です。
他にも卵や牛乳などそこからの加工食品なども元は畜産農業からの物になります。
私たちの生活に欠かせなくなってはいますが畜産農業は実は環境問題についても度々話題になっています。
どんなことが問題になっているのでしょうか。
まずは家畜を飼育していることから糞や尿などの排泄処理に関する問題です。
それに付随する形で悪臭や水質汚染などが環境に対して問題があるとして話題となり畜産農家ではこれらの対策をしていかなくてはいけない状況です。
そこで今回の記事では、環境問題として取り上げられている内容についてと対策について紹介していきます。
私たちの食生活に欠かせなくなっている畜産について私たちの手元に届くまでに畜産農家が飼育する意外にもどれほど大変なのか少しでも知って頂ければと思います。
畜産農業の環境問題
それでは畜産農業の環境問題とは何を指しているのでしょうか。
大きく分けると3つになります。
1、悪臭問題
2、水質問題
3、混住化
この3つが畜産農業の問題になっています。
この畜産農業の問題は畜産農業に関わる変化が大きく関わっています。
それではそれぞれについて少し紹介していきたいと思います。
環境問題で悪臭や排泄物の問題が取り上げられるようになった背景として食文化の変化があります。
まず一つ目として食のグローバル化による影響です。
グローバル化の影響?と不思議に感じる人もいるかと思いますが、食のグローバルの変化によって肉の消費が昔に比べてかなり増加したことがあげられます。
この肉の消費がなぜ環境問題に直結するのでしょうか。
それは消費量に合わせて畜産も増加しているからです。
畜産が増加することによって必然的に悪臭の問題になる糞や尿の量は増加します。
家畜特有のにおいも増えてしまいますので畜産が増加するとどうしてもこういった問題は相対的に増えてしまいます。
次に周辺環境の変化が関わってきます。
畜産農業を行うのは都市部ではなく地方がほとんどになりますが、地方の発展に合わせて畜産農業の近くも住宅街に発展したいりと畜産農家の周辺環境自体が変化してきています。
これによって今まではなかった悪臭といった苦情などが増加している傾向にあります。
畜産農家としてはこれまでと変えていなくても周辺の環境が変化したことが環境問題として取り上げられるようになっています。
発生要因
畜産農業で最も大きな環境問題として取り上げられているのは家畜の排泄物です。
家畜の排泄物を固形状にしえ単に積み上げて放置する『野積み』や地面に穴を堀り液体状の家畜排泄物をためておくといった『素掘り』など不適切な処理や保管方法が畜産農業での環境問題の最も大きな発生要因になっています。
参考、引用元:農林水産https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kankyo/taisaku/t_mondai/01_mondai/
この『野積み』『素掘り』の不適切な処理や保管方法はその方法から周辺環境に影響があるとされています。
近年で問題になっているのは硝酸性窒素による地下水汚濁やクリプトスポリジウム(原虫)による水道水源の汚染など人の健康に影響を与えるとされていることです。
この問題は家畜の排泄物との関わりがあるとされているため畜産環境の問題として適切な処理が必要とされています。
家畜ふん尿と家畜排せつ物
家畜のふん尿全てがふん尿とは区別されないのはご存知でしょうか。
家畜ふん尿の成分や性状は、家畜から排せつされた後、乾燥したり微生物の分解を受けたりすることで徐々に変化していきます。
微生物分解によってできたたい肥のことを「家畜ふん尿」と呼ぶことは一般的にありません。
それでどういった区別がされているのでしょうか。
区別される基準として畜産環境の問題として取り上げられている家畜から排泄されてまもないふん尿だけではなく、微生物によって分解を受けた物を含めて『家畜排泄物』として一括として取り扱うとされています。
ややこしいと思いますのでもう少しわかりやすくまとめます。
1、家畜ふん尿を原料としてできたたい肥は、「家畜ふん尿」とは呼ばれないが、「家畜排せつ物」と呼ばれる場合がある
2、炭や灰のように、その成分や性状がもとの家畜ふん尿の成分や性状とかけ離れた状態になっている場合は、「家畜排せつ物」には含めない
3、「家畜排せつ物」には、価値の高いたい肥や乾燥物なども含まれますので、「家畜排せつ物」であることがいわゆる「廃棄物」であることを意味するのではない
引用元:農林水産省https://www.maff.go.jp/j/chikusan/kankyo/taisaku/t_mondai/01_mondai/
ここで伝えたいこととして家畜のふん尿も一括りではないということと環境問題を改善
していくためには家畜排泄物を適正に管理することで利用価値の高いたい肥としていく必要があるということです。
また、畜産環境問題の発生要因は区別されていたとして不適切な管理が要因であることであるのは間違いないのでそこを改善していく必要ももちろんあります。
家畜排泄物の現状
それでは現状の家畜排泄物についてみていきましょう。
家畜排泄物(牛・豚・鶏のふん尿)発生量は、年間約8,300万トン程度です。
家畜排せつ物発生量の約9割が堆肥化や液肥化処理に、約1割が浄化や炭化・焼却処理などがされています。
それでは排泄物の内訳についても紹介していきます。
乳用牛 約2357万トン
肉用牛 約2442万トン
豚 約2238万トン
採卵鶏 約745万トン
ブロイラー 約514万トン
このデータを見るだけでも牛と豚の排泄量が多いことがわかります。
次に畜種別の家畜排泄物量発生量をみていきます。
搾乳牛 ふん:45.5 尿:13.4 (kg/頭・日)
肉用種(2歳以上) ふん:20.0 尿:6.7 (kg/頭・日)
肥育豚 ふん:2.1 尿:3.8 (kg/頭・日)
採卵鶏(成鶏) ふん:0.136 尿: (kg/羽・日)
となっています。
この2つのデータからわかることは牛は日あたりの排出量が多いのに対して豚は排泄物の量が日あたりは少ないが排泄物量は牛に匹敵するほど排出している点です。
つまり豚は牛に比べて家畜として多く飼育されていることが排泄物のデータからもわかります。
何が言いたいの?と思うかもしれませんが牛と豚では飼育の環境が違ってきます。
そのため適切な処理として日に出てくる量が違うためいかに適切に糞や尿を処理するかが大事になってきます。
家畜排泄物法の概要
それでは家畜の排泄物を適切に処理するといっても決まりがなければどのように処理していいかわかりません。
そこで家畜排泄物法というものがあります。
家畜排泄物法では下記のように目的が設定されています。
畜産業を営む者による家畜排せつ物の管理に関し必要な基準を定めるとともに、家畜排せつ物の処理の高度化を図るための施設の整備を計画的に促進する措置を講ずることにより、家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進を図り、もって畜産業の健全な発展に資する。
参考、引用元:農林水産省生産局畜産部畜産企画課 畜産環境・経営安定対策室https://www.env.go.jp/council/09water/y0917-03/mat03.pdf
つまり目的として排泄物の処理のための施設の整備を計画的に進めること、適切な処理管理の促進を図っていくことということです。
この家畜排泄物法の概要としては下記のようになっています。
1、農林水産大臣は、家畜排せつ物の管理の方法等に関し、畜産業を営む者が遵守すべき基準を定め、畜産業を営む者 は、その基準に従い、家畜排せつ物を管理しなければならない。(基準に従わない場合は、都道府県知事より指導・助言・勧告・命令)
2、利用の促進を図るため、農林水産大臣は、「家畜排せつ物の利用の促進を図るための基本方針」を策定。都道府県は、 基本方針に即し、各都道府県計画を定めることができる。
3、畜産業を営む者は、都道府県知事から処理高度化計画の認定を受けることができ、計画に従い施設整備のために必 要な資金を日本政策金融公庫から借り受けることができる。
こちらの概要は大まかな内容を農林水産省で定めあとはそれぞれの条件に合うように各都道府県で定めることができるという点と施設整備をするために認定を受けることで日本政策金融公庫から借り受けることができるようになることが概要として定められています。
排水対策
排泄物の対策として排水処理がありますが、この排水についても色々なことが義務付けられていますのでその義務内容について紹介していきます。
1、畜産経営から排出される汚水には窒素やリン等が多く含まれ、公共用水域等に流出した場合には、水質汚濁の原因ともなる。
このため、水質汚濁防止法により、一定規模以上の畜産事業所から排出される汚水については、所定の水質を満たすよう処理を行うことが義務付けられている。
2、事業者は、排出水について、1年に1回以上、特定施設の設置に係る届出事項(硝酸性窒素等については日排水量に関わらず、特定施設の設置の届出の対象)について、公定法により測定し、その結果を記録・保存する必要がある。
3、畜産経営に起因する水質汚濁防止対策として、
1 家畜排せつ物の適正な管理の徹底
2 浄化処理施設等の整備に対する支援 等の措置を講じている。
硝酸性窒素等(一般排水基準:100mg/l)については、平成25年7月1日以降、新たな暫定排水基準(700mg/l)が適 用(平成28年6月末日まで)。将来的には一般排水基準へ。
引用元:農林水産省https://www.env.go.jp/council/09water/y0917-03/mat03.pdf
このように畜産経営では管理に対する条件などが定められています。
特に気をつけなければいけないのは日頃から行う水質基準は忘れにくいですが1年に1回以上、特定施設の設置に係る届出事項の実施と結果の保存は忘れやすいため十分に注意しなくてはいけません。
まとめ
畜産農家の環境問題について、現状について紹介してきました。
私たちの生活に畜産は既に欠かせない物になっています。
しかし、私たちの手元に届くまでには畜産農家では家畜のことだけではなく環境問題についても対応していかなくてはいけません。
畜産農業は昔と比較してもグローバル化の影響や周辺環境の変化などで大きく変化してきています。
しかし、この変化の中でも消費量に見合うだけの供給ができるように畜産の生産向上なども図っていかなければいけません。
環境の変化に対する対応は常に更新していかなければいけないため大変ではありますが不適切な処理をしてはいけません。
適切な処理をして対応していくことが畜産農家には今後も求められていきます。
私たち消費者も畜産業が家畜だけではなく環境問題などにも対応していかに大変なのかを知っていただき畜産のありがたみを少しでもしる機会になればと思います。
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